ホーム » エッセイ » 【 市民の自由を脅かす欠陥だらけの共謀罪法を成立させた安倍政権 】
国連の専門家を含め高まる批判、安倍政権が一般市民を対象に反政権的市民運動への抑圧を強める
日本の一般市民の表現の自由が侵害される恐れが現実になってしまった
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2017年6月15日
日本は一般市民の人権を侵す恐れがあると国連が指摘するなど、内外からの批判が相次いだにもかかわらず、テロ行為や重大犯罪を縦鼻計画した場合に適用される共謀罪法 – テロ等対策法を可決成立させました。
国会の外では数千人の市民が集まって抗議の声を挙げていましたが、政権与党の自民党と公明党は参議院で強引な可決を行いました。
国連の専門家はこの法律について「数多くの欠陥がある」と指摘しましたが、日本の安倍首相はこの指摘に対し感情的に反発、幅広い層からの反対が相次いで3度に渡り成立が見送られてきたこの法案でしたが、今回採決が行われました。
日本の政府当局は2019年に開催されるラグビー・ワールド・カップとその翌年に予定されている東京オリンピック開催の準備を進めていますが、安全な開催運営のため世界的な組織犯罪を対象としている2000年の国連条約を批准して、日本がテロ対策について効果的に実施できるようこの法律が必要だと主張してきました。
「東京オリンピックとパラリンピックの開催まで残りわずか3年です、そして日本がテロ行為を防止するために国際社会としっかり協力することができるように、できるだけ早く組織犯罪に対応するための条約を批准したいと考えています。」
安部首相はインタビューにこう答えました。
「今回の法制定はそのために必要な措置です。」
この法律は277項目の「重大犯罪」を計画したり準備したりする行為に『関わる』ことを違法とします。
しかし日本弁護士連合会やこの問題に詳しい政治評論家などは、テロ行為や暴力団などの犯罪組織と無関係な一般市民が、マンション建設に反対するため座り込みをしたり、音楽を著作権法に違反してコピーした場合などにもこの法律が適用される恐れがあると指摘しています。
反対派の人びとは、この法律も一方的に政府の権力を強化しようとする安倍首相の政策の一環にあり、政府が否定している一般市民を監視する体制が現実になる恐れは充分にあると語っています。
最大野党民進党の蓮舫代表は、安倍政権が内心の自由を侵害する恐れのある「欠陥だらけの」法律を強引に成立させたと批判しました。
専門家は今回の法律が警察による盗聴の許可範囲を拡大し、司法が警察権力の無制限な拡大に制約を課すことを阻止する副次的な狙いがあるものと懸念しています。
与党自民党と公明党は、この法律の成立を早めるため、参議院委員会における投票を省略する『中間報告』という、めったに行われることの無い批判の多い手続きを採用しました。
プライバシーの権利を専門とする国連の特別報告者であるジョセフ・ケナタッチ氏は今年5月、今回の法が成立すれば
「プライバシーの権利が不当に侵害される恐れがあり、表現の自由が脅かされる事態に発展する危険もある」
点について慎重に検討を重ねるように依頼する書簡を送りました。
しかし安倍首相はケナタッチ氏の見解を
「極めて偏ったものだ」と一蹴し、さらには
「専門家のものとは思えない程客観性を欠いている」
と批判しました。
ケナタッチ氏は6月15日、安倍政権が「欠陥だらけの法律」を強引に成立させるため「恐怖心理を」利用したと批判し、次のように語りました。
「今回この法律が法律として施行されるにあたり、日本は個人のプライバシー保護のための態勢を改善する必要があります。」
批評家は犯罪計画実行に関する情報を収集するため警察権力の一層の強化が図られる可能性があり、その現実は第二次世界大戦(太平洋戦争)以前の日本で治安維持法が制定された後、警察が「思想警察」の性格を強め、公共の法秩序に違反する団体などを捜査するため強大な権限を与えられていた状況に通じるものだと批判しました。
5月に共同通信社が行なった調査では、この法律を支持する人は39.9%、反対は41.4%と、有権者の意見がかんぜんに分かれている状況を明らかにしました。
この日は夜になっても5,000以上の人びとが国会前で抗議デモを行っていました。
そして新たに制定されるテロ等対策法は「独裁的」だと非難し、日本が「監視社会」に変わる事を防ぐために戦い続けると誓いました。
「これからは平和的なデモ行進ですら、テロ行為と関係があると決めつけられれば禁止される恐れがあります。」
女性の増山美由紀さんが共同通信の取材にこう答えました。
「私たちの表現の自由が侵害される恐れが現実になってしまいました。」