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【 崩壊の危機が続く、福島第一原発・事故収束・廃炉作業の現場 】〈 前編 〉

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廃炉完了までの年数、政府内の本音は最低でも50年

ワシントンポスト 5月23日

廃炉現場 3
3基の原子炉がメルトダウンし、無残な姿をさらす東日本にある福島第一原発の現場は、安定した状態を維持し続けるためには、毎日数千人の労働者を必要とします。

しかし福島第一原発で働く労働者を確保することは日に日に困難になりつつあり、今後安全な状態を保ちながら、数十年かかる事故収束・廃炉作業を続けることが可能かどうか、重大な懸念が生じています。

福島第一原発を運営する東京電力は、2011年3月に津波の襲来を受け3基の原子炉がメルトダウンした後、溶け落ちた核燃料と破壊された原子炉の冷却を続けるためのぎりぎりの人数の作業員を確保するのがやっとで、これまで冷却水を送り込むための電源が落ちたり、大量の放射能汚染水が漏れ出したりといったトラブルが相次いで発生しています。
しかし東京電力はこの場所で過去に、そして現在働いている職員・作業員こそが現場の状況に精通しているのだと主張しています。

福島第一原発周辺の市町村では、津波の被害を回復するため、建設業を中心に仕事の口が豊富にあります。
日本の安倍首相が打ち出した経済政策『アベノミクス』は、公共事業への支出を大幅に増やす方針を打ち出しており、割の良い建設関係の仕事はいくらでもあるのです。

さらにはより危険が少ない事故によって放射性物質が降り注いだ地区の除染作業も、福島第一原発の事故現場そのものと比べれば賃金も高く、もう一つの選択肢という事になります。
AP通信の取材に対し、長年福島第一原発の現場で働いてきた作業員は、累積被ばく線量が健康に危険を及ぼすほどのレベルに達したベテラン作業員たちが、現場を去って行ったと答えました。

彼らを雇っている下請け会社は報道機関に作業員が接することを厳しく禁じ、もし身元が分かった場合にはただちにクビになると語り、彼らの匿名が守られるようAP通信に対し求めました。

廃炉現場 4
東京電力の広報担当の清水亮氏は緊急作業員が不足している事実を否定し、事故収束・廃炉作業は順調に進んでいると語りました。
「必要な数の作業員の確保はこれまでうまく行っており、不足してはいません。必要があれば、その都度増員していくつもりです。」

しかし今後の障害は、今縮小を見せ始めた原子力産業界そのものから発制するかもしれません。
これまで電力会社は原子力発電所内の作業を下請けに発注し、下請け会社はその見返りとして作業員を集めていました。そして電力会社から直接仕事を請け負った下請けは、さらにその下請けを別の会社に行わせ、その結果現在では5層もの下請け構造が出来上がってしまいました。
東京電力のような電力会社は最終的に現場に送り込まれた人数を把握しているだけで - 福島第一原発の場合は3,000人 - 、その人数を揃えるための苦労はしていません。

東京電力は福島第一原発で事故収束作業を行っている作業員への支払い賃金、あるいは被ばく限度量に達し、現場を去らなければならなくなった作業員の数を明らかにしていません。
そして下請け会社の作業員に対する待遇について、注意深く検討している訳でもありません。

2012年末に行われた調査では、作業員の48%が東京電力とは契約関係に無い下請け企業によって採用されており、正式な雇用契約書もされないまま働いていました。

一体どれだけの法律が無視されているか明らかではありませんが、政府と東京電力は下請け会社に対し法律を遵守し、状況の改善に努めるよう警告を発してはいます。

汚水タンク 1
福島第一原発で働いている作業員たちと定期的に面談を行っている、いわき市議会の渡辺博之議員は、福島第一原発の現場の作業員の不足は今後一層悪化するものと見ています。
「下請け会社があちこちかけずりまわって、かろうじて必要な人数を揃えている、それが現実です。」
「他に条件の良い仕事がいくらでもあるのに、一体誰が福島第一原発の現場のような場所で働きたいと考えるでしょうか?」

渡辺氏によると、福島第一原発の作業員に支払われる報酬は一日あたり約10,000円です。
これとは対照的に、環境省によって雇用され付近の市町村で、より被ばくの危険が少ない場所で除染などを行う作業員の日給は、公的に『危険性』が認められているため、その分の手当が加算されて一日16,000円前後になります。

福島第一原発の事故収束・廃炉作業については、日本政府の中で最も楽観的な観測をする専門家でさえ、最低でも50年近くかかると語っています。
東京電力もメルトダウンした3基の原子炉の炉心がどうなっているか、未だに検証できないため、廃炉の完了までに必要な年数を正確に割り出すことは不可能だと認めています。

〈つづく〉

http://www.washingtonpost.com/business/stricken-japan-nuke-plant-struggles-to-keep-workers-in-setback-for-decommissioning/2013/05/23/052afba0-c382-11e2-9642-a56177f1cdf7_story.html

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