ホーム » エッセイ » 【 安定と成長を選択したつもりの日本人、その先の民主主義の崩壊と支配される身分への転落 】《前篇》
自民党の改憲案は民主主義的条項に代わり、言論の自由・出版の自由を制限できる条項を提案
与党の選挙争点の転換戦術の前に、国民に届かなかった野党の声
選挙期間中、政権与党に有利になるよう情報操作を繰り返していたNHK
モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 7月11日
政治においては本質的な改革より安定と前例を重視する日本国民の性情を反映し、安倍晋三首相の自由民主党は61年間で初めて4回連続で選挙戦に勝利するという記録を打ち立て、日本を自在に政治的に支配し得る地位を手にしました。
しかし日本の政治基準から見ても、10日に投票が行われた参院選の安部自民党の地滑り的勝利は、衝撃的なものでした。
史上初めて、日本の有権者は議会3分の2以上の圧倒的多数の議席を自民党とその与党に提供しました。
この結果安倍首相は、日本国憲法の中から国際紛争の解決手段として戦争を行う事を禁止している条項を取り除くという長年の宿願を実現できる環境を手にしました。
安倍首相はさらに、世界の軍事紛争の場で日本が主導的立場で戦争に参加できる、軍事力の増強を目指しています。
世論調査だけを見れば、安倍首相の軍事能力拡大路線も、さらには日本経済を復活させるというその経済政策もそれほど多くの支持を得ている訳ではありません。
しかし日本の有権者はそれ以上に、対立する最大野党の民進党にもう一度政権につくチャンスを与えるつもりは無かったようです。
民進党は民主党時代に短期間政権の座に就きましたが、その政権運営はことごとくうまくいかず、中でも2011年に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故への対応については厳しい批判を受けました。
国内の安定を望んだ投票結果はしかし、第二次世界大戦の日本の軍国主義の記憶が未だに残るアジア全域で不安を煽ることになりそうです。
そして軍事拡大路線を推進する安倍政権の政策は、中国の領土問題を巡る軍事的台頭と北朝鮮の核兵器開発に悪影響を与えることになるでしょう。
中国の国営通信社・新華社は、今回の選挙結果が「日本と地域の安定に対する脅威となる可能性がある」と11日付けの解説記事の中で警告しました。
専門家は安倍首相率いる連立与党がすぐに憲法改正を実現させることは不可能だと語っています。
憲法改定の必要性やどのように変更するのかという点において、内部に異なる意見があるからです。
一例として、最大の連立与党である仏教徒に支援される公明党は、戦争の放棄を謳う第9条の廃止には反対する立場を明らかにしています。
投票日翌日11日の記者会見の席上、安倍首相は憲法改定に関する議論を迫るつもりであると語りました。
一方で「それほど簡単なことでありません」と認め、こう付け加えました。
「議論が深まることを期待します。」
安部首相率いる自民党の憲法改定案の中には、公共の利益に危険をもたらす場合、民主主義の基本を保証する現行の条項に代わり、言論の自由・出版の自由を制限できるとする条項を提案しています。
もう一つ自民党が提案するのは、非常事態における首相の権限を拡大することです。
どのような改訂であっても、公開の国民投票で大多数に承認される必要があります。
しかし今回の選挙での自民党の勝利は、こうした憲法改定への道を容易なものする一方、改憲を阻止する姿勢を野党第一党の民進党の前途が多難であることを思わせるものでした。
「民進党に対する国民の疑念は、非常に高いものがあります。」
東京大学で国際政治学の講師を務めるリュリ三浦氏がこう語りました。
「2009年に民主党は政権を獲得しましたが、その後は失敗、失敗の連続であり、かつて民主党を支持した人々でさえ民主党に対して疑いを抱くようになっています。」
一部のアナリストは、多くの国民が日本経済の弱体化への関心が高いままであったのに対し、野党側は安倍首相の改憲姿勢に対する反感の方を過大評価したのではないかと指摘しました。
安部首相の側は、選挙演説ではアベノミクスの名の下に宣伝が繰り返されてきた経済計画の継続と推進を訴えることにほとんどの時間を費やし改憲問題についてはほとんど触れる事はありませんでした。
「野党は政治課題として憲法問題を強調し過ぎたのではないでしょうか?」
憲法の改定を支持する立場の村田光二同志社大学教授(国際関係論)がこう語りました。
「しかし実際には国民は、今回の参院選挙では憲法問題にさほどの関心は示しませんでした。」
野党候補として東京でかろうじて議席を確保した小川俊夫議員は、有権者が野党の経済プランが自民党の経済政策とどのように異なるのか、ほとんど理解できなかった可能性があると語りました。
しかし、小川氏は次のように続けました。
「安部首相の本当の目的が安全保障問題と改憲にあることは明らかでした。私はその事実を国民の前に明白にする必要があると考えたのです。」
批評家は選挙期間中、憲法改定の問題については、安部自民党が故意に軽く扱っていたと批判しました。
さらに一部の批評家は日本のニュースメディア、特に公共放送であるはずのNHKは安倍政権とその与党に明らかに迎合する放送を行い、選挙期間中政権にとって不利になる問題を取り上げないようにしていたと批判しました。
〈 後篇に続く 〉
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戦争や軍拡競争などというものは、始めた時には『そこまで徹底的にやるつもりは無い』はずだったものが、気がつけば抜け出すことのできない泥沼にはまって国力が疲弊し、国民全員が不幸になるという性格を持っています。
日本にとっての第二次世界大戦(太平洋戦争)は盧溝橋という中国のごくごく一部で始まった銃撃戦が、やがて日本全土に爆弾の雨が降り、最後には二度にわたって核兵器による攻撃を受けるという惨劇を生みました。
その『劇』の進行を徹底的に煽ったのが、当時の国権派新聞、そして国営放送でした。
21世紀になってまたそれをやるのか?
良識というより、良心の問題ではないでしょうか?。
ソ連の崩壊はどのような経緯をたどりましたか?
アメリカはこの世界史的事件において、一発の銃弾も撃ってはいないはずです。
逆にベトナム戦争では戦場に駆り出された人間たちが、『狂気』を国内に持ち帰りました。
イラクでもそう、アフガニスタンでも…
銃社会も原因であることには違いありませんが、『テロ』が横行する社会を生んでしまったのは、戦争に手を染めたアメリカ人が戦場で繰り返し体験させられた『狂気』が原因の一つであると私は考えています。
中国はもちろん、北朝鮮ですら武力で圧伏することは不可能だと思います。
内部崩壊、そのための外交努力、経済戦略こそ必要なのではありませんか?
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【 雲の海にそそり立つ雷雲 】
アメリカNBCニュース 7月11日
パイロット・のサンチァゴ・ボルハ氏は、太平洋のはるか上空で、稲妻を光らせ嵐を巻き起こそうとしている巨大な雲の撮影に成功しました。
37,000フィートの高度で、ニューヨークからエクアドルのグアヤキルへの飛行を行った際、ボルハ氏は叩きつけるような雷雨の中、くっきりとそこだけ盛り上がった巨大な雲を撮影しました。
「こんなにくっきりと、嵐を起こす雲を撮影できる機会など、そうあるものではありません。」
NBCニュースの取材にボルハ氏はこう答えました。
「通常、こうした雲は雲の海の中に埋没しています。見つけるためにはレーダーを使わなければなりません。」
ボルハ氏は彼の写真をナショナル・ジオグラフィックの読者コーナーに寄稿しました。
世界中で話題になるまで、自分の写真がそれ程特別なものだとは考えなかったと語っています。
http://www.nbcnews.com/news/photo/pilot-captures-stunning-storm-37-000-feet-above-pacific-n607276