ホーム » エッセイ » 【 安倍政権、森友文書改ざんで再再度窮地に 】
スキャンダル騒ぎはもうたくさん、汚い話とは無関係なもっと謙虚な人物を日本の首相に!
何でも隠したがる上、傲慢かつ威圧的な日本の官僚主義
モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2018年3月12日
日本の安倍晋三首相は1年前、国有地が異常に安く払い下げられた事件に自分または夫人が関与していたということが証明されたら、首相の職も議員の職も退くと明言しました。
しかしこれまでそうした証拠が示されたことは無く、スキャンダルをやり過ごしながら権力を握り続けてきました。
しかし3月12日に発表された政府報告は、公文書からいくつかの重大な証拠が削除された可能性があることを示唆していました。
この事実は安部首相を再び批判の矢面に立たせることになりました。
財務省の内部調査は、氏名不詳の財務省の当局者が問題となっている土地取引に関連する公式文書を改ざんしたと結論づけました。
調査結果が明らかにされた直後から日本国内では大きな騒動が持ち上がり、政権に批判的な立場の人びとからは麻生太郎財務大臣の辞任を求める声が大きくなっています。
首相経験もある麻生財務大臣は3月12日の記者会見で、現職に留まり続けると述べました。
しかし政治解説者などは、今回の事実の暴露は実際に安倍政権にとって政治的に不利な現実を導き出すだろうと見ています。
ニューヨークに本拠を置く政治的リスク・コンサルタントであるテネオ・インテリジェンスのアナリストであるトビアス・ハリス氏は、
「これは安倍首相が思い描いている今後の大きく変えるものだ」
と語りました。
「安倍首相は3期連続で首相を務めなければならないと求めていますが、そのための基盤は雲散霧消しました。」
民間の極右的教育機関に対し国有地が不当に安く払い下げられた事件について、ごく一部の人間しか関わることが出来ない状況であり安倍首相と昭恵夫人の関係性が強く疑われてきましたが、両者ともこれまで1年以上に渡りそうした批判をそらし続けてきました。
野党の議員からは幅広い分野に対する捜査を繰り返し求められましたが、昨年の突然行われた衆議院の解散総選挙では一方的勝利を獲得し、首相として史上最長の任期を手に入れることが確実視されていました。
しかし財務省が3月12日月曜日、政権与党である自民党に対し80ページにわたる報告書を提出したことで、状況は一変しました。
財務省官僚が国有地売却に関する14件の文書を改ざんし、そうした趣旨の発言をしたはずだとこれまで疑いを持たれてきた安倍昭恵首相夫人の発言などが削除していたことが明らかになったのですこれに対し麻生財務大臣は、文書改ざんは限られた少数の官僚が行なったものだと示唆しました。
「文書の改ざんに関与したのは、財務省官僚の一部の人間だけです。」
麻生財務大臣は、今回の改ざんが財務省の一握りの官僚の手によるものだという事を示唆しました。
「財務省全体が関与しているわけではなく、一部の人間のせいで全省の信頼が失われるのは残念です。」
安部首相は、事実が公表された直後に謝罪しました。
「行政の長として、深くお詫び申し上げます。」
安部首相は調査によって「真実全体が明らかにされる」ことを望むとつけ加えました。
今回財務省が認めた事実の中で最も劇的なのは、安倍昭恵首相夫人に関連する記述を財務省官僚が削除したという点です。
そして幼稚園児に19世紀に作られた国家への奉仕を説く教育勅語を復唱させ、他で使われている教科書に掲載されている第二次世界大戦(太平洋戦争)中のアジア各国における残虐行為に関する記述により大日本帝国の本当の姿が歪められている、そう教育していた森友学園の経営陣と財務省の官僚が会合を重ねていたという記述も削除されていました。
削除された記述によれば森友学園側は、安倍昭恵首相夫人が一時名誉校長の地位に就いていた小学校を新しく建設する予定だった土地について、「良い土地ですから、話を前に進めてください。」と語ったと大阪の財務省当局者に伝えていました。
大阪市は現在全国で3番目に人口の多い都市です。
報告書によると財務省当局者は、土地の売却文書からいくつかの自民党議員の名前を削除しただけでなく、安倍首相を始めとする有力な保守系政治家が所属し、大きな影響力を持つ保守系圧力団体である日本会議に関わる記述も削除していました。
記者会見で麻生財務大臣は、財務省官僚が書類の改ざんを行ったのは昨年の2月から4月の間であったことも明らかにしました。
昨年2月、安倍晋三首相は1年前、国有地が異常に安く払い下げられた事件に自分または夫人が関与していたということが証明されたら、辞任すると明言していました。
記者たちは麻生財務大臣に対し、財務省の官僚たちは安部首相の立場を守るために改ざんに踏み切ったのかを尋ねると、自分の知る限りにおいて安部首相自身はこの件に一切関わっていないと答えました。
先週、土地売却を監督した財務省理財局の元局長だった佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官が辞職しました。
さらに今月初め、土地売却を担当していた大阪の出先機関の財務省職員が自殺しました。
野党の議員たちは問題の国有地払下げ問題について、関与していないという安倍首相の発言に長い間疑問を持ち続けてきました。
しかし財務省における甲状腺がん文書の改ざんが明らかにされたことで安部首相自身が率いる与党内にも、官僚が独自の判断で改ざんに及んだという説明に疑問を持つようになりました。
日経新聞の報道によれば小泉純一郎元首相の後継者で将来の自民党のリーダー候補の一人と目される小泉進次郎氏は、「トカゲのしっぽ切り」と批判しました。
「改ざんが事実なら、ありのままを国民に伝える必要があります。」
小泉氏がこう語りました。
「単に行政上の手続きという問題でなく、すべての政治に影響を及ぼす問題として取り上げなければなりません。」
また、自民党内の安部氏のライバルのひとりである石破茂氏は3月11日に行ったスピーチの中で、次のように語りました。
「財務省の官僚が政治家からの支持が無いまま、公文書を改ざんするという権限を持っているとは考えられません。」
「誰がこれを行ったかを明らかにしない限り、自民党自体に対する信頼が揺らぐことになるでしょう。」
日本国内の報道によると、文書改ざんが行われた可能性が取りざたされて以降、世論調査では安倍首相に対する支持率は低下していると見られます。
読売新聞が週末に行った世論調査では、安倍首相への支持率は5カ月ぶりに50%を下回りました。
そして回答者のうち80%の人々が安倍政権は一連の疑惑に適切に対応していないと答えました。
アナリストらによればトランプ政権が打ち出した鉄鋼製品やアルミニウムに対する高関税の付加対象から日本を除外するよう求める交渉や、北朝鮮のキム・ジョンウン委員長との直接会談を目指すことを表明したトランプ政権と日本の外交政策の今後の展開によっても、安倍首相への支持率は下がる可能性があります。
法政大学の政治学教授である山口二郎氏は、次のように語りました。
「今回の事件によって日本の国政に対する信頼や安倍政権の威信は大幅に低下することになるでしょう。」
安倍首相に対し批判的な立場の人々は、正確な事実に関する情報開示がまるでためらうようにゆっくりとしか進まない状況について、日本の報道機関の腰の弱さと日本政府の官僚制が持つ保守的傾向のを象徴するものだと語りました。
上智大学の政治学者である中野晃一教授は日本の官僚主義についてこう語りました。
「何でも隠したがる上、傲慢かつ威圧的です。」
中野教授は野党が分裂状態だったため、安倍首相の政治姿勢に掣肘を加える程の力を持つことが出来なかったことを付け加えました。
アナリストはスキャンダルが繰り返されたことによるダメージは、必然的に安倍首相とその政治的プロパガンダを徐々に弱らせていくことになるだろうと語りました。
安部首相が最も重要視してきた長期目標は、日本国憲法における平和主義条項を改変する事です。
その目標も見通したが立たなくなってきています。
たとえ安倍首相が辞任を回避できたとしても、9月の自民党総裁選挙における再選の可能性は低下しています。
テネオ・インテリジェンスのトビアス・ハリス氏は
「安部首相自身が関与したという明確な証拠がなければ、辞任を余儀なくされるまで追いつめられるという状況は今のところ考えにくいと思います。」
と語り、次のようにつけ加えました。
「しかし9月に行われる自民党の総裁選挙については、これだけのことが繰り返されればもうたくさんだという気分があると思います。自民党内ではおそらくこんな会話が交わされているのではないでしょうか?
『こんなハラハラさせられる展開も、これ以上のスキャンダル騒ぎももうたくさんだ。そろそろもっと控えめで、汚い話とは関係ない人物を党首に据えようじゃないか?』
自民党内はそんな気分になっているのではないでしょうか?」
https://www.nytimes.com/2018/03/12/world/asia/shinzo-abe-japan-scandal
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この問題に関する3月19日付の朝刊に掲載された共同通信社のアンケート結果を見て驚いたのは、安倍内閣の支持率がまだ38パーセントある、ということです。この種のアンケートについてはサンプルの抽出方法に多少の疑問がありますが(電話番号を機械的に純粋にランダムに発生させたら、必然的に人口の多い都市部が軽視される結果になりますね)、それでもこの数字は安倍政権以前の歴代の『不人気』な内閣のそれと大差ありません。
さらに安倍首相が辞職する必要はない、と回答したのは約48パーセントに上っています。
ということは、今回のこの事件が民主主義制度の根幹を揺るがす近代民主主義国家にはあってはならない事件であり、ましてそれに一国の首相や権力中枢が関わっている疑いを持たれた以上、もはやそのような政権の存続は許されない、という意識を5割近い日本国民は持っていないということになります。
ここからは私見ですが、戦前同様「お国のためだ」と強権的に要求されたら抵抗できない(あるいはするつもりのない)国民が5割近くいるということになります。
「今の政権はおかしい。政策に恣意的な歪曲が多すぎる上、国民の基本的人権を侵そうという意図が透けて見える。今すぐそうならなくとも、戦前同様国民の生命すら軽視する危険な強権国家に続く道を開こうとしている。それは決して許してはならない。」
今私たちに必要なのは寛容ではなく、こうした危機感だと思うのですが…