星の金貨 new

星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

ホーム » エッセイ » 【 大災害、福島第一原発、そして原子力産業界 】〈前編〉

【 大災害、福島第一原発、そして原子力産業界 】〈前編〉

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

所要時間 約 7分

広告
広告

世界で、不適切な安全管理を行っている原子力発電所の数が最も多い国、日本
どんなに備えをしても、それを超える天災はやってくる

エヴァン・オスノス / ザ・ニューヨーカー 2012年11月2日

NYK01
ハリケーン・サンディがアメリカ東海岸を襲った際、ニューヨーク市の北約40キロ、ハドソン川の蛇行地点沿岸にあるインディアン・ポイント原子力発電所の3基の原子炉が停止を余儀なくされました。
さらに3基の原子炉について、災害の拡大に備え出力を低下させる措置がとられました。

そしてアトランティク市の北約50キロの場所にある国内で最も古い原子力発電所、オイスター・クリークでは、職員たちがかつて経験したことが無い状況に遭遇させられることになりました。
強まる一方の高潮と暴風雨が、同発電所の冷却水供給装置に異常なほど大量の水を送りこんだのです。
メンテナンスのため停止していた同原子力発電所ではこの時同時に、電力網からの送電がストップしてしまったのです。

発電所内では『緊急警報』を発令、最も低い警戒態勢から緊急度を一段階引き上げました。
そして原子炉の冷却を続けるため、予備発電装置を稼働させたのです。

こんなことは初めての事でした。
これまでアメリカ国内ではハリケーンなどの暴風に対し、最も危険な状況に陥りやすいのは送電網の方だと考えられてきました。全体から見て、104基の原子炉については送電網ほどの危険は無いと考えられてきたのです。

しかしこれの事態に対し、原子力産業界はいち早く自画自賛してみせました。
「ハリケーン・サンディはアメリカ国内にある原子力発電施設の堅牢さを、再び証明しました。それぞれの地方で各原子力発電所は、その地区で記録されている最大の洪水、そしてハリケーンがもたらす最大の暴風にも耐えられるよう設計されていることを証明したのです。」
原子力産業界の最も強力なロビー団体である、原子力発電研究所所長のマーウィン・ファーテル所長がこう語りました。

しかし一般の人々の感想は、そのような自画自賛からは程遠い場所にありました。
エネルギー問題に関する啓蒙活動を行っている非営利団体のフェアウィンズを主宰し、原子力産業界に対して厳しい意見を持つアーニー・ガンダーセン氏がブルームバーグ・ニュースの取材に対し、こう述べました。
「もしオイスター・クリーク原子力発電所が稼働中だったら、あと6インチ(約15センチメートル)水位が上がっていれば冷却水の取水システムは破壊されてしまい、、同発電所を運営するエクセロン社のスポークスマンが言うところの『取り返しがつかない事態』に陥っていたはずです。」

いったいどちらの言い分が正しいのでしょうか?
私は元原子力発電所の技術者で、現在は『憂慮する科学者連盟』で原子力発電の安全問題に取り組むデヴィッド・ロックバウムに尋ねてみました。
「正確を期するとなると、私はさらに悪条件が重ならなければ、アーニーが語る『取り返しがつかない事態』にまで事態が悪化することはないと思います。フクシマ程の災害にまで発展するとは思えません。」

3・4号機(大)
フクシマとはもちろん、2011年3月に襲った巨大地震と巨大津波がきっかけとなり、3基の原子炉がメルトダウンを引き起こした福島第一原発の事です。
この時は原子力発電所を運営する東京電力の予測をすべて上回る規模の天災が襲いかかり、チェルノブイリ以来最悪の原子力発電所事故に発展しました。

福島第一原発の事故がもたらした最も明確な教訓のひとつは、過去の経験に基づいていかなる備えをしようとも、あらゆる場面でそれを上回る規模の災害が襲う可能性があるという事です。

スタンフォード大学のショーレンスタイン・アジア太平洋リサーチセンターの3人の研究者によれば、原子力産業界が過去に発生した災害規模を基に、それに耐えられるだけの対策を施していると主張しているとしても、我々はさらにその上の安全対策について知識を深める必要があるのです。
フィリップ・リプシー、ケンジ・クシダルトレヴァー・インセルティの3名の研究者は、水辺に建設された原子力発電所に関して地震、地滑り、ハリケーンの3種類の天災につき、その脆弱性を検証しました。
ワシントンポストの記事の中で彼らは、ハリケーン・サンディがもたらした災害の数的データを検証し、米国内の原子力発電所の内いくつかは、高潮や津波による災害発生を防ぐことが出来ない可能性があるとの指摘を行いました。

我々アメリカのエネルギー問題研究者のデータベースに基づけば、世界の中で、不適切な安全管理を行っている原子力発電所の数が最も多い国は日本です。

その次に数が多いのがアメリカ合衆国です。
1938年に東海岸を襲ったニューイングランド・ハリケーンは、約7.5~9メートルの高潮を発生させましたが、この数値はハリケーン・サンディの記録を上回っています。
仮にこの規模で高潮が発生すれば、平均で海水面から平均で約6メートルの高さに建設され、最低限の防潮堤しか設備していない東海岸の原子力発電所は、軒並み水没してしまうことになります。

〈後編に続く〉

http://www.newyorker.com/online/blogs/evanosnos/2012/11/sandy-fukushima-and-the-nuclear-industry.html#ixzz2PXxVhmNA
  + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

【 エトナ火山の噴火 】

アメリカNBCニュース 4月11日
(掲載されている写真は、クリックすれば大きな画像をご覧いただけます)

etna1
ヨーロッパで一番高く、そして最も活発に活動を続けているのがイタリア南部、シシリー島のエトナ火山です。
3枚目の写真、空中に浮かぶ白い煙の輪は噴火の間、火口付近で観察されることがあります。

etna2
etna3
etna4
etna5

広告
広告

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事に関連する記事一覧

このサイトについて
ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
最近の投稿
@idonochawanツィート
アーカイブ
広告
広告
カテゴリー
メタ情報