ホーム » エッセイ » 【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈4〉
使用年限の到来により、原子力発電所の設備すべてが巨大な核廃棄物と化す
原子力発電所を建設するという事は、自分たちの子孫に巨大な核廃棄物を押しつけるということ
あまりに巨額の廃炉費用を賄うには不良債権化しか道はない…それでも核廃棄物の問題は全く解決できない
原発の不良債権化により負担は国民全体へ、しかし廃炉のスケジュールは早まる
デア・シュピーゲル 5月15日
各電力会社は深刻な問題に直面する中、電気を生み出す代わりに日々損失を生み出しています。
このため数千人規模の人員整理を行い、手持ちの有価証券等を現金化して財源に繰り入れるなどの措置を強いられています。
電力事業の継続のため法律で定められた引当金を全額確保できるのは、E.onとEnBWの2社だけのようです。
現状ではRWEは事業を継続するためには、増資を行わなければならなくなっています。
これまで長い間考えられなかった、電力会社の経営破たんという事態もあり得ない事ではなくなってきました。
もしそうなればその会社が所有する原子力発電所の解体と原子炉廃炉のための費用は、ドイツ政府が支払わなければならなくなってしまいます。
ドイツ連邦会計裁判所は、最近以下の判決を行いました。
「電力会社が原子力発電所の解体・原子炉の廃炉を実行できなくなった場合、ドイツ連邦政府は保証人として部分的、あるいは全面的な信用供与を行うべきかどうか検討しなければならない。」
メルケル政権の経済・エネルギー担当大臣のガブリエルにとって原子力発電所の問題は、ドイツの再生可能エネルギー法の改正の次の主要な課題になりました。
普段は政府と対立する各電力会社も、この問題についてはガブリエル大臣に協力しないわけにはいかないでしょう。
原子力発電所を不良債権としてしまうこと、あるいはもう少し歩み寄って『公益信託』とすることについては、ドイツ政府には3つの利点があります。
1番目はドイツ全体の送電網からの原子力発電所の除外が計画よりも早まること、あるいは電力が不足した時の予備電源として位置付けることにより、原子力発電の廃止のスケジュールが早まるという事です。
2番目は電力会社が経営破たんに陥っても、政府に直接の被害が及ばなくなるという事です。
なぜなら債権とした段階で、電力会社は負担しなければならない金額を事前に払い込まなければならないからです。
そして3番目が、電力会社が訴訟を取り下げることにより、ドイツ政府には原子力発電の全廃による補償金の支払い義務が消滅するという事です。
しかし利点だけではありません。
今後いったいいくらに膨らむのかその予測も出来ない核廃棄物の保管・処理費用については、ドイツ政府が全責任を負わなければならなくなるという大きな欠点があります。
▽公益信託を選択した場合のシナリオ
原子力発電所を段階的に廃止していくために公益信託をつくるというアイデアは、決して新しいものではありません。
すでに2年前、ラザルド投資銀行はこれと似た案を作成し、公表していました。
そして脱原発運動の先頭に立ってきたグリーンピースと緑の党も、政治の場において同様の提案を行ってきた経緯があります。
緑の党やグリーンピース側の提案は、電力会社の社内留保金すべてをこの公益信託に投入する一方、原子力発電所の廃炉と核廃棄物処理に伴うリスク負担に責任を持たせるというものです。
当然のことながらE.onを始めとする各電力会社は、自社の貸借対照表の中身が、すでに放棄したはずの原子力発電所という『負の資産』にこれから何十年もの間圧迫され続けることを嫌い、こうした提案をすべて拒否しています。
電力会社自らが『不良債権』という提案を行っている背景にあるのは、社内留保金を吐きだしたり、核廃棄物処理にともなくリスクを回避するためなのです。
結局のところ、原子力発電というものが本質的に持っている歪みが、今日の事態を招いたと言うことが出来ます。
これまで何十年もの間、原子力発電を使い続けるために様々な策を用いてきた電力業界は、今やできるだけ早く原子力発電と手を切りたいと考えています。
「早くこの問題に決着をつける必要があります。」
ひとりの電力会社の役員がこう語りました。
それができるかどうかは、電力会社とドイツ政府に係っています。
原子力発電所という『負の遺産』を整理するため、双方とも何千億、何兆円もの費用負担を迫られています。
しかしこの問題に決着をつけられるのは、電力会社でもなければ、政府でもなく、また環境問題に取り組む人々でもありません。
国民全員が負担しなければならないのです。
不良債権とする・しないに関わらず、電気料金の値上げという形をとるか、増税という形をとるかの違いだけで、国民全員が莫大なコストを負担していくことになるのです。
〈 完 〉
http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
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この記事は『原子力発電所は使用年限が過ぎれば、設備全体が巨大な核廃棄物と化す』という重要な事実も伝えています。
という事は現在原子力発電所が立地している日本国内の各市町村は、いずれ巨大な核廃棄物を抱え込むことになるはずです。
今宮城県では山形県と境を接する山側の3つの市町のいずれかに、福島第一原発の事故で出た核廃棄物の処分場を作ろうという国の計画が持ち上がり、地元が猛反対しています。
当たり前の話で、これらの市町村は福島第一原発の運営によってどのような経済的利益を得ていた訳でも無く、事故によって『出てしまった』廃棄物を引き受けてくれと言われても、理不尽な話だとしか思えないはずです。
こうした状況を考えれば原子力発電所によって『潤っていた」市町村が、核廃棄物の保管場所の負担という問題については、いずれその『全責任』を負わなければなくなるのでしょう。
そんな事実を認めるくらいなら、むしろ再稼働の方を認めたい、そういう事なのかもしれません。
しかし認めたくなくとも、巨大な核廃棄物と化した原子力発電所という『事実』は残ります。
その負担を負わなければならないのは、ここでも将来の世代なのです。
明日15日(日)は休載日です。
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【 『原子力発電所を不良債権に』、ドイツの主要電力各社が提案 】
ドイチェ・べレ 5月15日
ドイツは原子力発電の段階的廃止を決定しますが、巨額に上る原子力発電所の解体・廃炉費用について主要電力各社は、公的な負担を求めています。
これに対しドイツ政府は電力各社が責任を取るべきだとの見解を示しています。
ニュース誌デア・シュピーゲルの報道によれば、ドイツの主要電力各社は原子力発電所の解体・廃炉の責任を軽減するため、現在政府と交渉を続けています。
主要電力会社4社(E.ON、RWE、EnBW、スウェーデンのファッテンフォール)は、原子力発電事業と発電所の所有権を『不良債権』化し、公的資金による運営・整理についてドイツ政府と交渉を行っています。
この報道に対し、ドイツ政府はこの問題に関する各電力会社との話し合いが行われたことを否定し、どのような決定も行われてはいないとしています。
環境省は、原子力発電所を運営している各電力会社が、その解体・廃炉についての全責任を有していると強調しました。
電力会社の提案しているのは、これから8年間に渡り原子力発電所の解体・廃炉と核廃棄物処分について全責任を負う公的基金を設立するというものです。
電力会社側はこの基金を実現するため、すでに30億ユーロ(4,200億円)の資金を準備済みです。
「この提案は、原子力発電所のに関わる一切のリスクを、ドイツ政府に転嫁するためのものです。」
ロイター通信の記者が、この交渉に実際に加わっている匿名希望の関係者の話を明らかにしました。
この計画の存在はデア・シュピーゲルが初めて明らかにしたものですが、ドイツ政府は交渉が存在すること自体を認めてはいません。
3年前、福島第一原子力発電所の事故の発生を見て、メルケル政権は2022年までにドイツの原子力発電の段階的廃止を決定しました。
http://www.dw.de/german-utilities-want-bad-bank-for-nuclear-energy/a-17629231