ホーム » エッセイ » 【 原子力発電にさよならを!人間も、地球も、もうこれ以上耐えるのは無理 】〈3〉
国の電力の主要な部分を原子力発電によって賄おうとする計画は、不当に危険性が高すぎる
原子力発電所固有の弱点と異常気象、世界中で原子力発電に対する懸念が高まり続けていることは当然
自国の経済をこの危険過ぎる発電手段に依存し続けることに、正当性は見いだせない
アダム・チメンティ / ル・モンド・ディプロマティーク
東アジアの他の場所では事態が悪化する様相を見せています。
2013年、台湾では福島第一原発の事故発生から2周年となった日、国内各所で200,000人以上に上る人々がデモや抗議集会を行い、台湾で計画されている龍門原子力発電建設への反対を強く訴えました。
台湾で4カ所目となる龍門原子力発電所は北東部地区にあり、2016年までに稼働を開始する予定です。
しかしその建設については安全に対する深刻な懸念から、何十年もの間論議を呼んでいました。
台湾の環境問題に取り組む多くの活動家は、同国が人口ちゅう密な狭い島国で、全電力の17%を原子力発電によって賄おうとする計画は、不当に危険性が高すぎると指摘しています。
台湾の馬政権は龍門原子力発電建設の推進を標榜していますが、世界原子力発電協会の調査結果によれば、燃料棒がまだ装置されていないものの、この原子力発電所に対しては世界で14番目に危険な原子力発電所であるとの評価がくだされているのです。
しかし地震学者や津波専門の研究者は、台湾南部の原子力発電所の方をより問題視しています。
日本を三重災害(巨大地震、巨大津波、福島第一原子力発電所事故)が襲った直後、ミネソタ大学の地球科学部のデイヴィッド・ユアン教授を始めとする世界の科学者は、世界で最も地震と津波の被害が懸念される場所は台湾南部であるとの見解を示しました。
科学者たちはマニラ海峡に大きなエネルギーが蓄積されている点を指摘しました。
この場所ではこの数百年間大きな地震が発生していないため、今後発生する危険性が高いとみなされています。
もしこの場所で巨大地震が発生すれば、中国本土南部にある4か所を含め、5か所の原子力発電所が津波にのみこまれる危険性があり、理論的に2011年に福島第一原発と同じ事態に見舞われる可能性があります。
この辺一帯はシンセン経済特区、香港、広州など沿岸部に数千万人の人口と産業が密集する場所であり、先例のない規模の原子力災害が発生する危険性があります。
原子力発電が抱える逆説的な矛盾は、原子炉の冷却を行うため水資源の豊富な場所に立地する必要性があるにもかかわらず、いったん水害が発生すれば施設全体で深刻な危機が発生する危険性があるという点にあります。
この問題は原子力発電所が海の近くに立地している場合その危険性が最も高いように思われがちですが、実は湖や川の近くに立地している場合でも同様の危険を考えなければなりません。
アメリカ合衆国の例では、ネブラスカの原子力発電所が、大雨とそれに伴う河川の氾濫により水没の危険に見舞われました。
この時この原子力発電所では事前に原子炉を冷温亭状態にしていましたが、水没すれば緊急電源が失われるとともに、冷却装置も稼働しなくなる可能性がありました。
その同じ年には強力な一連の竜巻がアラバマ州とヴァージニア州を襲い、原子力発電所で一時的に電源が失われる事態が起きています。
このような原子力発電所固有の弱点と異常気象が増え続けている状況を考え合わせれば、世界中で原子力発電に対する懸念が高まり続けていることは当然と言わなければなりません。
様々な問題を指摘されている年数の経った原子力発電所をこれ以上稼働させるようなことをすれば、これから先チェルノブイリやフクシマを超える最悪の原子力発電所事故が発生する危険性があります。
原子力発電に反対の立場をとる人々は、フランス、日本、アメリカなどの政府が必要充分な対応を採っていないと指摘しています。
たまたま運よく今後数十年間は原子力発電所の事故は起きないかもしれません。
しかしおそらく私たちが見習うべきはドイツ、スイス、イタリアなどの決断です。
そして自国の経済をこの危険過ぎる発電手段に依存し続けることに終止符を打てるようにするため、いち早く準備に取り掛かる必要があります。
イギリスのガーディアンに寄稿しているジョージ・モンビオットは、原子力発電の危険性について正反対の主張を行っています。
彼は福島第一原子力発電所の事故を見て、その環境被害は大したことは無く、原子力発電に対する信頼性が増したとすら書きました。
彼は原子力発電を停止した場合、多くの場所で代替の発電手段として用いられる火力発電の方がはるかに害は大きいと主張しています。
しかし大部分の専門家、そして科学者は次のように指摘しています。
モンビオットの主張はメルトダウンの事故発生から10日後の状況だけを主張の根拠としていましたが、原子力発電所の事故についてはその長期的影響こそが深刻なのであり、その結果については誰もまだはっきりした答えを出せずにいるのだと…
〈 第4回につづく 〉
http://mondediplo.com/blogs/time-for-a-nuclear-phase-out
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