ホーム » エッセイ » 【 公然化している日本のメディアへの政治的圧力 】
圧力が公然とかけられ、圧力に屈する報道機関の姿勢が今、日本のジャーナリズムを危機的状況に立たせている
呼び出しは報道番組の編集内容に公然と干渉する、安倍政権と自民党内の一部の方針を具体的に示すもの
安倍政権への批判を展開してきた古賀氏を、首相官邸の官僚たちがよってたかって『バッシング』した
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 4月16日
報道番組の編集内容に関連する問題で、与党自民党が報道機関の幹部を呼びつけるだ事実が明らかになり、日本の現在の政権の報道介入への懸念が再燃しています。
自民党は放映されたニュース版組の内容について放送局の幹部を呼び出して質問を行いましたが、日本の有名なニュース解説者は、安倍政権に対する批判を和らげるよう報道機関に圧力をかけたとして批判しました。
元経済産業省の官僚だった古賀茂明氏は、同氏の安倍政権に対する批判に憤った政府官僚が圧力をかけたため、人気の高い夜のニュース番組『報道ステーション』の解説者を降板させられたと訴えています。
自由党民主党内の委員会のメンバーは、放映された内容について番組を制作したテレビ朝日の幹部を呼び出し、質問を行いました。
3月の最終出演の際、古賀氏はあらかじめ用意されていた草稿には無い番組に関わる放送局の幹部が古賀氏を首にしたのだという趣旨の発言を行い、番組のホストの古舘伊知郎はその場でこの発言を否定しました。
自民党の内の委員会のメンバーは、現在もうひとつの問題になっている、日本の公共放送局NHKが報道番組『クローズアップ現代』のやらせ問題についても、幹部に対する聴き取り調査を行いました。
批評家はこの呼び出しが、報道番組の編集内容に公然と干渉する安倍政権と自民党の一部の方針の一端を具体的に示すものだとして、懸念を表明しています。
「メディアが政権側と戦う代わり、そこから圧力がかかることを恐れ、対立を避けているということが今、日本で起きています。」
古賀氏がこう指摘しました。
古賀氏や他のジャーナリストは、今年2月にイスラム国(ISISまたはISIL)に日本人人質2名が首を切られ殺害されて以降、安倍政権に対する報道姿勢が明らかに柔弱なものに変わったと仲間のリポーターたちに食ってかかりました。
昨年12月の選挙において自民党は、放送機関などのメディア組織に対し、「公正さを示す」ように要請を行いましたが、批評家はこうした動きは自民党の要求に応じない組織無言で脅す、先例のない報道機関に対する脅威だと批判しています。
古賀氏によれば、自民党は選挙期間中に自分たちに有利な報道を行なえなどという具体的要求は行いませんでしたが、日本政府には放送局の許認可権があり、意に従わない放送局からその許可を取り上げる権限を持っています。
そうなることを恐れる全国ネットの各局は、無言の圧力に対し屈せざるを得なかったというのが古賀氏の指摘です。
「数年前はこの無言の脅迫状を破り捨てたであろうテレビ局の幹部も、今回はそれをコピーして各部門に配布したのでしょう。」
古賀氏がこう語りました。
「こうした圧力が公然とかけられるようになったこと、そしてその圧力に屈し自ら進んで報道を控えようとする姿勢を取り始めたということにおいて今、日本のジャーナリズムは危機的状況にあります。」
安倍首相はNHKに対する影響挙力を強めるため、その会長に籾井勝人氏を送り込んだとして、広く批判を浴びました。
籾井氏はNHK会長に指名されると、中国との間に領土紛争が起きている尖閣諸島問題などの重要な外交問題に関する報道については、政府の意に沿った報道を行うと表明し、国内のみならず国際的にも驚愕を引き起こしました
「国際的報道は国内報道と異なって当たり前です。」
籾井氏はこう語り、次のように続けました。
「政府が『右を向け』と言っているのに、我々が左を向くわけにはいかない、そうではありませんか?!」
ベテランの自民党の国会議員は、これまで何度も報道ステーションに出演し、発言への評価が高かった古賀氏をテレビ朝日が降板させたことについて、自民党が圧力をかけたという事を否定しました。
これまで幾度となく安倍政権への批判を展開してきた古賀氏を、自身そして首相官邸の官僚たちがよってたかって『バッシング』したという主張に対し、菅義偉官房長官は然りを露わにしました。
「私は自民党による事情聴取がメディアに圧力をかけることが目的では無かったと思います。」
菅義偉官房長官はこう語りました。
「私は、何も間違ってはいないと考えています。」
安倍首相が報道機関に圧力をかけたとして批判されるのは、これが初めてではありません。
安倍氏は2005年、NHKのスタッフに対し、従軍慰安婦問題を取り上げたドキュメンタリーの内容を変えるよう『強く要請した』ことを認めています。
http://www.theguardian.com/world/2015/apr/16/japanese-media-political-pressure-shinzo-abe-critic
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新たに生じた日本の病根が海外メディアによってこれほど明らかになっているのに、私たち一般国民の危機感の無さに焦りを感じます。
意に沿わないメディアへの現政権の攻撃の実態を見ていると、歴史関係の資料に詳説されているナチス・ドイツの手法にきわめて似ていると感じます。
最大の特徴は、相手の周囲に『見えない恐怖』を作りだすやり方です。
見えないもの、理解できないもの程恐怖が大きくなるという人間の心理を衝いています。
ナチス・ドイツも当時最も進んでいた民主主義体制、ワイマール体制を国民が気づかないように破壊しようという意図を持っていました。
いずれの場合も、自分たちがやっていることに疾しい点があるからこそ、言論統制に躍起になるのではないでしょうか?
現在の政権が何事も公明正大に行おうとしているのであれば、ことさらにメディアに政治的圧力をかけ続ける必要はないはずなのです。