ホーム » エッセイ » 【 元首相の方針転換と日本の反原子力発電運動 】
今や日本人には、穏やかに見えるその外面の下に、脱原発に対する強い信念が潜んでいる
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 10月3日
一時に比べ、その勢いが減衰している日本の反原発陣営に、予期せぬ新人が参加することになりました。
かつてこの国で最高の支持率を得ていた首相の一人、小泉純一郎元首相がこれまでの原子力発電容認の立場から方針転換することを、公の場で明らかにしたのです。
10月1日火曜日、名古屋で開催された企業経営者などを集めて開催された講演会で、小泉元首相は日本は原子力発電所を可能な限り早く終了させ、太陽光発電などの再生可能エネルギー開発に切り替える必要があると語り、原子力発電の継続を強く支持する人が数多くいるこの日の聴衆を驚かせました。
この時の小泉首相の発言は、翌日東京新聞によって報じられました。
2001年から2006年まで民営化、規制緩和の推進を唱えて首相を務めた小泉元首相は当時、「安価でクリーンな原子力発電を基盤に据えた日本の発展」を叫ぶ実業界に肩入れし、太陽光発電パネルに対する公的補助金制度の打ち切りという、東京電力に有利な決定を行いました。
しかし小泉元首相は2年半前に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、少なくとも83,000人の人々が家を失ってしまったこと、そして東京電力による福島第一原発の事故収束作業において、絶えることなく事故、トラブル、作業ミスなどが繰り返し発生したことを目の当たりにし、その考え方を改めたと語りました。
「原子力発電ほど高くつくものは、他にありません。」
小泉元首相(71歳)がこう語ったことが伝えられました。
「国内の原子力発電所をゼロにする必要があり、その上で日本はさらに持続可能な社会を目指すべきです。」
小泉元首相は同日、彼の政治的後継者である小泉進次郎氏(32歳)が、3月11日に襲った巨大地震、巨大津波、そしてそれがきっかけとなり福島第一原発の3基の原子炉がメルトダウンを起こした、東日本の三重災害に苦しむ東北の復興を担当する、閣内の最高責任者に任命されたことに言及しました。
今回小泉元首相が公の場でこうした意見表明を行ったことは、きわめて珍しいでき事だと言わなければなりません。
在任当時小泉氏は、その時代の人びとが有する政治に対する要望・気分をいち早く読み取る、鋭い感覚の持ち主であり、そして有権者に急進的な改革の必要性を訴えて共感を得ることにより、権力の頂点に上り詰めました。
しかし4年前首相を退任後はほとんど表舞台に出ることは無く、テレビのインタビューなどもそのほとんどを断り続けてきました。
9月後半、地方のメディアは小泉氏が非公式に、原子力発電反対の立場に転向したと報じ始めました。
火曜日、2,500名を前にした講演は、小泉元首相が原子力発電に反対する立場に立つことを公式に認めた、最初の声明となりました。
日本の反原子力発電運動は、昨年毎週数万人の人々が首相官邸前に集まり、口々に抗議の声を挙げていた時期に最高潮に達しましたが、今回の小泉元首相の発言がどれほどの影響力を持つことになるか、今の時点では不明です。
世論調査では日本人の半数以上が現在稼働を停止している国内の原子力発電所の再稼働に反対していますが、首相官邸前で抗議を行う人々の数は目に見えて減少しました。
昨年12月に行われた国政選挙でも、原子力発電問題は争点にならず、原子力発電を推進する立場の自由民主党が地滑り的勝利を手にしました。
しかし火曜日、小泉元首相は日本国民の様子は一見穏やかそうには見えるが、その中には原子力発電に反対する強い信念が潜んでいると語りました。
小泉元首相は自民党と、かつて小泉氏の下で党幹事長などを歴任した安倍晋三現首相に対し、原子力発電の廃止を決定することで、今回の福島第一原発の事故を克服する力を生み出すことかできると呼びかけました。
「今、原発ゼロという方針を自民党が打ち出せば、一挙に(脱原発への)国民の機運が盛り上がります。」小泉元首相がこのように語ったと報じられました。
「日本人にはピンチをチャンスに変える特性があります。今こそ、原発をゼロにして(太陽光など)、再生可能エネルギーによる循環型社会をつくるという夢に向かって結束できるのです。」
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昨年12月の選挙で、脱原発勢力が衆議院内で『一大勢力』を築くことはできませんでした。
ひとえに『小異を捨てて大同につく』ことが出来なかったからではないでしょうか?
まずは止める、原子力発電を止める、そこから日本の再生を始めるべきだと私は考えています。
国家の大計を決めるのに、そんな大雑把なことが出来るか、という反論に対しては、ドイツが原子力発電の全廃をいち早く決め。メルケル政権が総選挙で大勝したことを、反証として挙げることが出来ます。
フランスですら24基の原子炉の廃炉を決めました。
アメリカもサンオノフレ、ヴァーモント・ヤンキーの廃炉決定がきっかけとなり、エネルギー革命が加速しています。
ところが日本は、廃炉が決定しているのは、事故を起こした福島第一原発の1~4号機だけなのです。
同じ敷地の5、6号機すら、東京電力が「考えさせてくれ」と言っている状況。
そして福島第二原発の存在については、なぜか口にしようとしません。
事故、トラブルという事では『札付き』のもんじゅも継続が決まり、活断層の上の原発すら運営会社が怒声を張り挙げて、再稼働を要求する始末。
福島の教訓などどこ吹く風のあり様です。
これで世界の『最先進国』だと、胸を張れるのでしょうか?
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【 4分おきに新しいシステムが誕生!アメリカの太陽光発電 】
グリーンテック・メディア / ブレイキング・エナジー(旧アメリカAOLエナジー) 8月20日
そしてアメリカのエネルギー産業はもうすぐ、1分半ごとに新しい太陽光発電システムを稼働させることになる予定です。
次にあげるのは、アメリカ国内で4分ごとに起きている出来事です。
この短い時間の間、30人の赤ちゃんが生まれます。
マクドナルドでは4,080個のビッグマックが売れていきます。
そして、48,000トンのCO2が放出されています。
これと対を成すようにして、アメリカでは今太陽光発電システムが4分おきに新たに設備されています。
アメリカ国内での太陽光発電の成長がこのまま進めば、2016年には1分20秒ごとに1基、新たな太陽光発電システムが誕生することになります。
これを2006年と比較すると、その劇的変化に驚かざるを得ません。当時は80分おきに1基のペースでした。
それを証明するのが、下記のグラフです。
縦軸は何分おきに新たな太陽光発電システムが設備されているか、横軸は年度の経過です。
このグラフを制作したGTMリサーチ社のシェール・カン副社長によれば、太陽光発電システムの設置ペースは加速度的に拡大し続けています。
そしてもう一つのグラフ、設備ペースの増加により、太陽光による発電量がどのように増えていくかを現しています。
まだまだビッグマック売り上げには追いつくことはできないかもしれませんが、太陽光発電の成長には著しいものがあります。
GTMリサーチ社の調査によれば、現在アメリカ国内で稼働している太陽光発電装置の3分の2は、この約2年半の間に新たに設備されたものです。
そして2016年には、太陽光発電システムの総設備量は現在の2倍になるものと予想されています。
そこのタイミングで、アメリカでは100万世帯が太陽光発電装置つきの住宅で暮らすことになる見込みです。
そして市場は2010年の10倍に拡大する見通しです。