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南京大虐殺・中国側資料をユネスコの世界記憶遺産に登録、日本政府は抗議
具体的な犠牲者数を立証できる資料は現在残されておらず、具体的数値を出せるかどうかについては中国国内でも議論が分かれる
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 10月13日
1937年南京を占領した日本軍は6週間に渡り各所で虐殺・略奪を繰り返し、合計で300,000人を殺戮したと中国の歴史家は主張します。
これに対し日本の歴史家は犠牲者の数はもっとずっと少ないと主張しています。
日本政府は異議を申し立てていたにもかかわらず、ユネスコが中国側が提出した南京虐殺に関する記録を世界記憶遺産に登録したことに反発し、拠出金を回収するとつめよりました。
第二次世界大戦(太平洋戦争)中の中国大陸における日本軍の事歴に関わる一連の問題は、尖閣諸島を巡る領有権の争いと同様、日中関係を悪化させる主な要因となりました。
日本の菅義偉官房長官は、今回登録が決定された記録は中国側の一方的な見解に基づくものであるとのコメントを発表しました。
「見解の大きな相違が日本と中国の間にあります。一方の見解だけを取り上げるという決定は、歴史問題を政治問題化してしまうものです。」
ユネスコに対し「我々は(資金提供の停止を含む)あらゆる対抗処置を検討しています。」
菅官房長官はこう語り、次のように続けました。
「意思決定プロセスにおける透明性が不足しています。我々は中国側が提出した記録について、内容を確認する事すら拒否されました。」
日本は昨年、ユネスコ予算総額の約10%、37億2,000万円の資金を拠出しました。
ユネスコは第二次世界大戦(太平洋戦争)の敗北と占領の後、1951年に国際社会に復帰した日本が国連に加盟した際、最初に関わった機関です。
14人のメンバーからなる公文書収集記録委員会から推薦を受け、ユネスコのイリナ・ボコヴァ事務局長は11日、アブダビにおける会合で南京虐殺事件の記憶遺産登録を承認しました。
日本の外務省は10月10日付で、
「日本政府が,これらの基本的な考え方について随時申入れを行ってきたにもかかわらず,中国側が提出した「南京事件」に関係する文書が記憶遺産として登録されたことは,中立・公平であるべき国際機関として問題であり,極めて遺憾です。」
との談話( http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_001450.html )を公表しました。
一方でユネスコは中国側が併せて申請した、日本軍が中国で従軍慰安婦を使役したことに関する文書や写真を南京虐殺の記録に含めることは拒否しました。
南京虐殺は1937年後半に日本軍が中国南西部にあるこの都市を攻略した際、数万とも数十万とも言われる中国人を殺害、強姦するなどした事件を総称したものです。
中国の歴史家は大日本帝国の陸軍部隊が6週間に渡り略奪・暴行などを行った結果、300,000人以上の兵士と市民が殺害されたと主張しています。
一方日本の歴史家においては諸説あり、犠牲者数は少ないもので数万、最大で200,000人と主張しています。
日本政府の公式見解は次のようなものです。
「多数の非戦闘員の殺害、略奪、その他の行為が行なわれました。」しかし犠牲者の数については「特定するのは困難です。」
日本政府当局は、ユネスコの中立性に疑問を呈し、中国政府がその政治目的を達成するための手段として国際的・文化的な舞台を利用したとして非難しました。
中国が提出した資料には、第二次世界大戦(太平洋戦争)後に行われた極東軍事裁判の法廷資料も含まれています。
この裁判では日本の戦争指導者二十数名が有罪判決を受け数名が処刑されましたが、この時証拠として提出されたのがカメラマンが南京虐殺の様子を写したものだとした写真、そしてアメリカ人宣教師が撮影したフィルム映像でした。
しかし日本側はこの資料の信ぴょう性に疑問を呈しました。
日本側は中国側の専門家も立ち会った上で、この資料の中身の検証作業を行いたいとの申し入れを行ったが、中国政府が拒否したと付け加えました。
日本の外務省は今回の記憶遺産登録について、「中立・公平であるべき国際機関として、この度の取り扱いには疑問を提起する」コメントし、
「当該文書は完全性や真正性に問題があることは明らかであると考えます。」
と付け加えました。
一方、中国の外務省報道官は日本の抗議を退け、南京虐殺事件を「重大な犯罪」とし、「国際社会が広く認めている史実である」とコメントしました。
「史実を否定することはできません。歴史は歪曲されるべきではありません。その発言もユネスコに対する措置も、日本側が史実と正面から向き合うことを忌避していることを明らかにしましたが、そうした態度は誤りです。」
日本国内の新聞はユネスコの決定に対し、共通して批判的な論調を展開しました。
「我々は元来世界の文化遺産を保護するための仕組みを日本を攻撃する手段として利用し、その独善的な歴史解釈を世界の共通認識に仕立て上げようとする中国政府のやり方を容認するわけにはいかない。」
自由主義の立場に立つ朝日新聞は犠牲者数が300,000以上とする中国政府の主張に対し、中国国内にも疑問を呈する歴史家が存在する点を強調しました。
「具体的な犠牲者数を立証できる資料は現在残されておらず、具体的数値を出せるかどうかについては中国国内でも議論が分かれるところです。」
朝日新聞はこう伝えました。
「しかし中国国内にはこの問題について公然と議論を行う自由がありません。」
ユネスコは今回2件の日本の申請を認定しました。
(1)東寺百合文書
平安時代以来一貫して東寺の宝蔵(ほうぞう)に収められ,1,000年以上にわたって東寺に伝承した約2万5千通に及ぶ寺院文書。日本の仏教史,寺院史,寺院制度史研究上で貴重な資料。1685年(貞享2)に加賀藩第五代藩主・前田綱紀(まえだつなのり)により「百合」の箱が寄進され,保存・管理されてきた。
(2)舞鶴への生還
1945-1956年のシベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録
「シベリア抑留体験の記録」,「安否を気遣い帰還を願う日本の家族に関する資料」,「引揚関連資料」に係る570点の資料から構成。
(以上は外務省ホームページより引用)
ユネスコ記憶遺産は1990年代の発足以来、アンネ・フランクの日記、とカール・マルクスの『資本論』の草稿の注釈つきコピーを含む数十件について、認定を行ってきました。
http://www.theguardian.com/world/2015/oct/13/japan-threatens-to-halt-unesco-funding-over-nanjing-listing
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私自身も南京虐殺の犠牲者については、確定できる資料はもはや現存せず、日本・中国の歴史学者が共同調査・検証を行った上で『規模を推定』する以外の途は無いと考えています。
そしてこれ以上歴史を政治のプロパガンダの材料にすべきでないとも考えています。
シリア内戦の現状を見れば、戦時の犠牲者の数の特定が極めて困難な作業であることが解ります。
2015年の現在であっても、あれほどの混乱状態に陥ってしまえば、正確な犠牲者数の特定はほとんど不可能でしょう。
政情不安定な都市における1937年の事件ともなればなおさらであり、この点中国政府側の主張のみ認めた形でのユネスコの判断には確かに疑問が残ります。
しかし少し古い記事にもかかわらず今回ご紹介した理由はその点にはなく、与党の外交部会が
「言う事を聞かないなら金など払わん!」
という反応をした際、「ああ、これが日本の政治の本質なのだろうな。」と感じたからです。
だからこそ『金を払ってやるから俺の言う事を聞け』(例えば中央政界→地方政界)、『あんたの言う事を聞くから金をくれ』(地方政界→中央政界)という『日本の政治のルール』を無視するかのようなユネスコの対応に、与党『外交部会』の議員たちは激高したのでしょう。
そして下記のテロ事件。
テロリストによるこれだけの攻撃を可能にしているのが、旧東欧諸国から流出している武器です。
カラシニコフは旧ソ連、そしてプラスチック爆弾はチェコ製だと言われています。
冷戦の負の遺産が未だに人を殺しているのです。