ホーム » エッセイ » 【 福島第一原発、きわめて困難、隠される廃炉作業の真実 】《第3回》傷ついていく戦士たち
いまだに1時間あたり1,000万ベクレル、放射性セシウムの漏出
「福島第一原発の作業員には、ベトナム戦争の帰還兵士を苦しめた、戦場後遺症に教われる危険がある」
山口まり・竹中きよし・ジェームズ・トップハム
/ アメリカNBCニュース 3月5日
福島第一原発は東北地方の太平洋岸、東京の北東から240kmの場所にできたガン細胞です。
事故直後は破壊された原子炉から1時間あたり800兆ベクレルの放射性セシウムが漏出、現在はよほど減ったとはいえ、それでも一時間あたり1,000万ベクレルの放射性セシウムの漏出が続いています。
放射性同位元素は崩壊の過程で、一定のエネルギー量を持つ放射性物質を放出しますが、これは人間の各器官を透過する能力があり、細胞を傷つけ、ガンの発生原因を作り出します。
人間の健康に対する放射線の脅威をできるだけ小さいものにするため、日本政府は福島第一原発の周囲20キロメートルを立入禁止地帯にし、一般の人々が入ることを厳しく制限しています。
そんな環境の中に、福島第一原発の事故収束・廃炉作業の拠点となっているJ-ビレッジがあります。
毎日、立ち入り禁止区域のすぐ外側からおよそ3,000人の労働者が、このJ-ビレッジに集まってきます。
彼らはこの場所で全身を覆う防護服を身に着け、ゴム手袋をはめ、靴にもビニール製の覆いを被せます。
いったん福島第一原発の中に入れば、彼らは放射性物質が体内に入らないよう、防護マスクをつけたままにしなければなりません。
第一線で働く作業員の一人が匿名を条件に、ロイター通信社に作業の様子を語りました。
重い防護スーツを着たままの作業は息苦しく、そして孤独であり、精神的ストレスも相当のものであるにも関わらず、その報酬は不当に安い、彼はそう不満を述べました。
この辺りの日払いの建設作業員などは時給1,500円支払われているにもかかわらず、昨年末東京電力が調査したところでは、福島第一原発の緊急作業員の7割が、時給837円をかろうじて上回る賃金で働かされていました。
昨年、東京電力の財政上問題を扱う委員会で議長を務めた中央大学の安念潤司(あんねんじゅんじ)教授は、同じような条件の下、福島第一原発からは離れた場所にある市町村で除染作業を行ったり、復旧建設工事などに携わる労働者よりも、その賃金は低いものだと語りました。
「福島第一原発の緊急作業員の賃金条件は、増々悪くなっています。一体誰が、そんな条件で働きたいと思うでしょうか?」
福島第一原発から40km離れた場所にあり、急ぎ拡張された作業員宿舎がある広野町の居酒屋でくつろぎながら、40代の重機オペレーターがこうこぼしました。
「私は胃痛に悩まされっぱなしです。そしていつもストレス漬けです。宿舎に戻ってすることといえば、翌日のことを考え、憂鬱になることだけ。」
彼は零細な下請け会社に雇用されています。
「雇い主は、私たちに勲章をくれるべきです。」
精神衛生学の専門家は、彼らが受けているストレスを、前線で戦う兵士たちと同様のものだと指摘しました。
一般の人々の東京電力に対する憤りが、ともすれば前線で働いている作業員に向けられる傾向があるのです。
「福島第一原発で働いた緊急作業員には、ベトナム戦争の帰還兵士を苦しめた戦場後遺症に襲われる危険性があります。彼らの帰還を喜ばない社会によって追いつめられ、ホームレスの境涯に落ち、自殺を図ったり、アルコール中毒、薬物中毒になったりといった危険があるのです。」
福島第一原発の1,500人の作業員たちに対する無償奉仕の医療活動を行った、防衛大学医学部病院、精神医学科講師の重村淳医師がこう語りました。
経産省と東京電力がまとめた廃炉計画書は、充分な数の作業員の確保はこれから先の数十年間、保証されていると主張しています。
しかし。潜在的な不足は徐々に明白な事実となりつつあります。
その原因のひとつに、被爆線量の限界に達してしまった『燃え尽きてしまった』作業員の存在があります。
2012年12月末現在、146人の東京電力職員と21人の緊急作業員が、5年間で100ミリシーベルトと決められている被ばく限度の上限を超えて被ばくしてしまったことを、東京電力の資料が明らかにしました。
これまで8名の職員、あるいは作業員が福島第一原発の現場で死亡しました。
このうち2名は津波が襲った当日に死亡しましたが、放射線被ばくによる死亡は正式に報告されてはいません。
《第4回・最終回に続く》
http://www.nbcnews.com/id/51056548/ns/world_news-asia_pacific/t/insight-japans-long-war-shut-down-fukushima/#.UYtDCUr0cnV
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これまで何度もその危険性が指摘され、作業員の人々の環境の劣悪さについて警鐘が鳴らされているにもかかわらず、福島第一原発の緊急作業員の人々の多重下請構造の問題は改善されません。
何重もの下請け構造の中、緊急作業員の人々に渡るべき報酬は次々にピンハネされていきます。
ピンハネされた資金はどこへ行くのでしょうか?
『反社会勢力』、そしてゲンパツ政治家、ゲンパツ議員などへの資金の還流は無いのでしょうか?
この問題の解明もまた、海外メディアに頼るしかない、それが『日本の現実』なのでしょうか?