ホーム » エッセイ » 【 フクシマ : 私たちが学びそこねた教訓 】《後篇》
核燃料は鉱山のある場所一帯を放射性物質で汚染した後、生産国から危険を海外に輸出し、放射性廃棄物と化してその地域一帯にそれまでなかった危険を作り出す
原発事故は他とは比較にならない程深刻に環境を汚染し、経済と人間生活を徹底的に破壊、今なおその後遺症は日本国内にとどまらず、遥か離れた場所にまで及んでいる
デイブ・スウィーニー / ガーディアン 3月10日
世界のウラン鉱物資源の約35%が埋蔵されているオーストラリアは、これまで長期間世界の核燃料取引の舞台の主役であり続けました。
1980年代以降、オーストラリアのウラン採掘は、2つの巨大事業によってほぼ独占されてきました。
いずれも南オーストラリア州の北辺に位置するカカドゥ・レンジャー・ウラン鉱山とオリンピック・ダムウラン鉱山です。
2011年以降も世界各国の巨大企業は、両方の事業に出資をすることにより、核燃料事業に対する考えを明らかにしてきました。
カカドゥ・レンジャー・ウラン鉱山における採掘事業はすでに終わりましたが、これまでに採掘され備蓄されている鉱石の処理始業は継続しています。
そしてはカカドゥ・レンジャー・ウラン鉱山のオーナーであるリオ・ティント社は、高額な費用を要ししかも複雑な構成を持つこの施設の復旧作業に取りかかる準備を進めています。
オリンピック・ダムでは世界最大のウラン鉱山会社であるBHPビリトン社が、2012年承認を受けた数十億ドルを投資した長期間に渡る拡張計画を棚上げにし、南オーストラリア州政府を唖然とさせました。
同じ南オーストラリア州のハネームーン社のような比較的小規模な鉱山会社は事業の見直しと再編、そして設備のメンテナンスなどを行っている状況にあります。
採掘事業などの現業から撤退し、受注取次や営業事務など普通の企業と変わらない業態への転換を行い、『再び良い時代が巡ってくることを』待っています。
歴史的に見てウラン採掘業は政治家との癒着に対する不信、鉱山の数に対する規制、当然課されるべき許認可についての数多くの不備、そして先住民族アボリジニと地域社会の反発といった問題を抱えたまま今日に至っています。
近年これらの問題のうち、政治的制約は低下する傾向にありますが、福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電に対する反発と拡大と、それに伴うウラン燃料価格の低下が、いずれも劇的なほど大きなものになっています。
10年前世界市場で18%のシェアを持っていたオーストラリアのウラン生産量は、現在約11%ほどになりました。
2014年のオーストラリアのウラン生産量は5,000トンでしたが、この量はこの16年間で最低となりました。
ウラン鉱業はオーストラリアの輸出総額の0.2%未満、雇用面では0.02%の割合を占めています。
ウラン関連産業で働いている総人数は1,000人未満です。
ウラン産業の継続と安定した業績の確保に関する熱意を秘めるオーストラリア政府は、思い切った手を打とうとしています。
彼らは求められているウラン採掘業という業態そのものに対する再評価を行おうとはせず、その代わりに最も最近の例ではまだ規制基準の整っていないインド向けに、大量のウランを無責任に売りつける商売を急速に拡大しつつあります。
こうした事業に対する許認可は極めて迅速に行われ、原子力規制機関もあえて問題にせようとはせず、地域社会の懸念などは真剣に取り上げられないままうやむやにされています。
さして儲かるあてもなく、将来性もないウラン採掘業はこうして続けられています。
要するに大きな危険を伴う割には配当の少ないのが、オーストラリアのウラン核燃料事業なのです。
それは鉱山のある場所一帯を放射性物質で汚染した後、生産国からと核燃料の危険を海外に輸出し、その挙句に放射性廃棄物と化してその地域一帯にそれまでなかった危険を作り出すのです。
このサイクルこそは福島第一原発の事故の原因のひとつを作り出しました。
他とは比較にならない程深刻な環境汚染をもたらし、経済、人間の生活を徹底的に破壊し、今なおその後遺症は日本国内にとどまらず、遥か離れた場所にまで及んでいます。
「福島で起きたことを、私たちは絶対に忘れないようにすることが必要です。」
福島第一原発の事故発生から5年という節目を迎え、長谷川健一さんが語ったこの言葉こそ、オーストラリアのウラン核燃料事業の本当の価値を、利害から離れた立場で表現した、まさに正しい評価だということを、私たちは胸に刻み込む必要があります。
〈 完 〉
http://www.theguardian.com/commentisfree/2016/mar/11/fukushima-five-years-on-and-the-lessons-we-failed-to-learn
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【 東京のサクラの名所、満開に 】
アメリカNBCニュース 4月4日
4月4日、満開になった皇居のお濠のサクラ。(写真下・以下同じ)
4月4日、皇居のお濠から東京タワー方向を望む。
3月22日、桜の花の蜜を吸うオカメインコ。
4月5日、横浜。
4月2日、東京。
http://www.nbcnews.com/slideshow/today-pictures-march-23-n544581