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【 カルロスゴーン逮捕・追放の背景に隠されていたのは…… 】 

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財務上の『違法行為』で告発された自動車業界の巨人、しかし後を継げるほどの人材は不在
「偽証による裏切り」: 日産・ルノー・三菱3社連合のフランスによる国有化の動きへの怒りと報復

エコノミスト 2018年11月24日

 

地球上のいたるところにオフィスや工場が存在する巨大なグローバル企業を経営するということは、企業が所有するジェット機に乗って世界中を文字通り飛びまわるということが日常化するということです。
しかし11月19日に東京の羽田空港でカルロス・ゴーンを出迎えた歓迎委員会諸氏は、いつもの顔ぶれとはまったく違っていました。
日産自動車・三菱自動車の会長でありルノーの最高経営責任者であり3社の自動車メーカーを結び付ける連合を束ねるカルロス・ゴーン氏を出迎えたのは、周囲に広がる闇をそのまま映し出したような色のスーツを着た男達でした。
彼らは1999年に倒産しかかっていた日産を立て直したことにより日本のビジネスのスーパースターになったゴーン氏を逮捕するべく、待ち構えていたのです。

 

ゴーン氏の転落の程度の大きさ、そして突然さは目を剥くほどのものでした。
フランス系レバノン系ブラジル人のこの実業家は、かつては日本の首相にふさわしい人物の人気投票で7位になり、シリーズ漫画の主人公にもなった人物でした。
しかし日産自動車は内部告発により社内調査を行った結果、紛れもない「重大な違法行為」の証拠が見つかったと公表しました。

 

日産自動車の主張によれば、その不正の重大さに鑑み、ゴーン氏はグレッグ・ケリー代表取締役とともに直ちに解任されるということでした。
エコノミストの印刷版が既に明らかにしていたことですが、11月22日の取締役会が横浜で開催された際、確認されることになっていました。

ルノー側の幹部はゴーン氏を支持することを表明しましたが、取締役会は調査中はルノーの役職を停止することとし、ティムリー・ボローレ氏を暫定社長、フィリップ・ラガイェット(Philippe Lagayette)氏を代理社長として独立取締役に任命しました。

三菱自動車もこれに倣うとみられています。

 

逮捕以降、ゴーン氏の発言は伝わってきません。

 

11月21日には拘留期間を10日間延長されることになりました。
彼は2011年から5年間の報酬について規制当局への申告および有価証券報告書への記載について、約50億円(5億1,000万ドル)と過小に報告したとの容疑がかけられています。
もう一つの告発は、ベイルートを含むいくつかの都市で日産自動車が所有する不動産物件を特権として不正使用していたというものです。

 

逮捕直後、ゴーン氏が2017年にその役割を放棄した際に引き継ぎを受けた西川廣人社長は、元最高経営責任者を攻撃するために記者会見を行いました。
彼は日産の復活にゴーン氏が果たした役割の多くを否定し、その「権力集中」について「長期政権の否定的側面」だったと語りました。

ゴーン氏は実際、あらゆる役割において巨大な権力を築き上げ、その力を使って今年は1,100万台という数の自動車を生産する世界最大の自動車メーカー・グループを作り上げました。
彼が本当に一線を超えて権力を乱用したというのであれば、日産のガバナンス、そして取締役会の管理監督機能に対し疑問が突きつけられるべきです。

 

しかし彼の逮捕以降、ゴーン氏自身の発言は一向に伝わってきません。

しかしアナリストの中には、今週の出来事について一般に伝えられているものとは別の解釈を示唆する人々がいます。
それは日本の中で日常的に行われており、ゴーン氏に対しても同様だったのかもしれない見て見ぬ振りをするというやり方のことです。
西側諸国では大企業の幹部は驚くほど高額な報酬を受け取ることは珍しくありませんが、日本の大企業の幹部はそんなにはもらえません。
ゴーン氏が受け取っている報酬の金額を過小に見せようとする一連のやり方が、政治的意図を持ったものだと見なされた可能性があります。
日本では賃金の低さを目に見えない形で便宜供与を与えることによって埋め合わせするという行為が慣習化しており、日常的に行われています。

 

ではなぜ、この段階で日産はゴーン氏に対し、こうした行為を犯罪だとして告発したいと決断するに至ったのでしょう?

説明の一つは、寛大な措置を与える代わり社内の不正行為について進んで告発することを奨励する新しい日本の法律を、日産が利用したいと考えた可能性があることです。

 

もう一つの説明は、彼の独裁的な経営手法とルノーへの忠誠心に怒りを募らせていた日産の反ゴーン派閥が、当局に対し内部告発を行った可能性です。

 

「偽証による裏切り」、問題は真実を知る立場にある人間が状況についてどう語ったのかということです。

この仮説はフランスの自動車メーカーが舵を握るグループ内で、日産の一部の経営陣が怒りを募らせ、企業内クーデターによってゴーン氏の足元をすくったというものです。
ルノー・日産・三菱連合は、ルノーが日産の43.4%を保有して経営権を握る一方、日産はルノーの15%の株式を保有しています(三菱自動車については日産が34%の株式を保有しています)。

このグループでは日本側が生産規模においても、利益規模においても日本側が優位であるにもかかわらず、経営権で上位に立つのは15パーセントの株式を握るフランスのルノーです。
ルノーのドル箱として扱われている日産は、相当苦々しい思いをしてきたはずです。

 

日産にとってさらに悪いことは、ここにきてフランス側による全面買収の見通しが出てきたことです。
時として悲惨な結末を迎えたこともありましたが、これまで他の自動車メーカーはライバル企業を完全に合併しようとしてきました。

 

しかし日産とルノーは互いに独立したまま、調達など幾つかの機能を分かち合うにとどまっています。

しかしこの形のままでは合併によってもたらされるはずのコスト削減による完全な効果が得られません。
ゴーン氏は同盟を「不可逆的」にしたいと考えたはずです。
彼はもっと明確な形での『連合』を企図し、おそらくはこの完全合併のためにフランス政府の支援を取り付けたと考えられます。

こうした見通しはゴーン氏に疑いをもちはじめていた日産の経営層の人間たちを驚かせ、巨大な国内企業がフランスの手に渡ってしまうことに日本政府も憂慮する事になりました。

 

ゴーン氏が追い出されたことで、日産は再び順国内企業に戻る可能性があります。

では世界最大の自動車連合はどうなるでしょうか?

 

フランス側も日本側も連合関係を維持継続すると語りましたが、ルノーと日産の株価がともに急落したことは、非常に難しい連合を軌道に乗せたゴーン氏の精力・力量が、ともにずば抜けたものであったことを証明することになりました。
世界最大の自動車連合の要となり得る交代要員を見つけるのは極めて困難です。
ゴーン氏の力が大きくなりすぎたことの弊害の一つが、誰がその後を継ぐのかという計画の欠如であったことは否めません。

3社連合が崩壊すれば、マスマーケットブランドの弱い2つの自動車会社が残され、すべての自動車メーカーが取り組まなければならない電気化と自動運転技術に対する莫大な投資の基盤が不十分なものになります。

仮に3社が完全な合併ではなく、現在のままの連合という形で漂い続けることになれば、ディーゼル危機を乗り越え再び隆盛へと向かい始めたフォルクスワーゲン、そして好業績を上げ続けるトヨタという2大巨人ほどの競争力は望めません。

 

ゴーン氏を放逐したことが正当化される証拠を揃えることは可能かもしれませんが、自動車業界が変革という激震に見舞われている今日、連合という形は極めて先行きが不確実な状況にあると言わざるを得ません。

 

https://www.economist.com/business/2018/11/24/a-giant-of-the-car-industry-is-accused-of-financial-misconduct

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つまりそういうことか…

ゴーン氏が逮捕されたと報じられた直後から、多くの人が背景にある事情について疑問に思ったことでしょう。

この記事を翻訳し終えて、NHKなどが『ゴーン容疑者』という呼び方を繰り返しているのを聞くと、彼をことさらに貶めようとする悪意が感じられ、日本人として非常に後味の悪い思いがしています。

 

 

 

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