ホーム » エッセイ » 実録『トモダチ』作戦・第4部「放射能汚染」[第6回]汚染されてしまった人生、そして再出発
髪の毛がごっそり抜ける・体力の極端な低下・生理が止まり、不定期に大量の出血
「うそをついたのは日本人です。私たちが責めるべきは日本人です。」
ロジャー・ウィザースプーン / ハフィントン・ポスト 3月15日
空母USSロナルド・レーガンが率いる第七艦隊機動部隊は、『トモダチ』作戦終了後、逃げるように急ぎ日本を離れていきました。
航海士のジェイミー・プリムとモーリス・エニスは、開放感に胸をなでおろしました。
『トモダチ』作戦の任務は完了しました。
そして放射線対策班は全員の無事を宣言したのです。
「でも彼らは私たちの内部被ばくについては、検査も何もしませんでした。」
ジェイミーがこう語りました。
「彼らはセンサーで体の外側を撫で回しただけでした。血液検査など体内の状態については、どのような検査もありませんでした。」
「私たちは80日間、日本の沿岸に居ました。そして任務が終わりに近づいた時、私は自分の下あごのところに小さなこぶができていることに気がついたのです。私がそれを検査してもらおうと医務室に行ったのですが、対策班はすでに艦を飛び去っていました。」
モーリスがこう話しました。
「その後、私は悪性の胃潰瘍に侵され始め、体にさらに2つのこぶができたのです。ひとつは太ももの下の方、もう一つは顔の目と目の間にできたのです。」
空母ロナルド・レーガンはプジョー・サウンドに向かい、そこで1年間をかけ汚染除去と全面的なオーバーホールを行うことになりました。
海軍にちょうど4年間在籍していたモーリスは、国内に戻りオリンピック・カレッジに入学しました。
ワシントン州のブレマートンにあるこのカレッジで、モーリスは5年間の軍務に就く契約をしていたジェイミーの退役を、時間を生産的に使いながら待つことにしたのです。
「海軍にいる間、決まっていつも口にすることは…」
モーリスが当時を振り返りました。
「退役したら、髪を伸ばし、思いっきりひげを伸ばしてやるぞ、といった類いの事です。海軍にいる間は髪を短くし、いつもひげをさっぱりしておかなければなりませんから。」
「そこで退役した私は髪を伸ばし、ひげも伸ばし放題にしました。そうしたら、髪が抜け始めていることに気がついたのです。櫛で髪の毛をとかすと、ごっそりかたまって髪が抜けてしまうのです。そしてペンを持つと、右手が震えることにも気がつきました。」
身長185センチの大柄なモーリスは、オリンピック大学時代はフットボール・チームのMVPに輝いたきわめて健康な男性でした。400メートルダッシュでは、あと2秒タイムを縮めることが出来れば、オリンピックの予選会に出場する資格を得る所に居ました。
ところが今や、一日朝から晩までただ暮らすだけの体力すら、彼の体には無くなってしまったのです。
「私は未だ25歳でしかありません。なのに体が壊れ始めてしまったのです。こんな形で体の機能が失われていくことは、とても耐えられるものではありません。努力して運動能力を高めてきましたが、今や体の中のスイッチが次々にオフになっていくのです。一気に老化が進んでいくようなものですが、耐えられない思いです。」
「放射線がどう影響しているのか、私にはわかりません。でも、自分から進んでそうした訳では無い、それだけは確かです。」
モーリスは彼の医療記録が、海軍の正式な記録から削除されてしまったことを告げられました。
現在彼が苦しんでいる症状と、空母ロナルド・レーガンに乗組んでいる間に彼がこなした任務との因果関係を、公的に証明するものが失われてしまったのです。
従って彼の治療費を、海軍が負担することはできなくなってしまったのです。
ジェイミーにとって、始めのうち問題はいくつかの不快な症状だけのように感じられました。
「私の生理のサイクルが、この半年で完全に消えてしまったのです。医師たちは私に対し、何度も妊娠検査を行いました。それ以外に生理が止まった原因を特定出来なかったのです。でも私は妊娠などしていませんでした。」
「そしてその6カ月後、私は突然大量の出血をして気を失い、緊急処置室に担ぎ込まれたのです。」
そして彼女は原因も病名もわからないまま、数か月ごとに大量の出血をするようになってしまったと彼女は語ります。
規則正しいはずの女性の生理現象が、彼女の場合は医療機関での処置を必要とする、原因不明の大量出血現象に変わってしまったのです。
彼女はぜんそくも発症し、2012年12月に海軍を退役するまで6回の発作を起こしました。
最初に発作が起きたのは同年3月のことでした。
海軍はジェイミーが発症した婦人科系の病気と、海軍勤務の因果関係を認めていません。
『トモダチ』作戦に参加した将兵について、深刻な健康問題は存在しないとの決定を国防総省が行ったために、ジェイミーの肺に起因すると考えられる一連の症状が、『トモダチ』作戦に参加した際に放射性物質の吸入に起因するという可能性も否定されることになったのです。
そのために彼女は今、どのような補償も受けられずにいます。
ジェイミーとモーリス、2人の元航海士は今、フロリダ州ジャクソンビルで暮らし、北フロリダ大学への編入を目指し、セントジョンズ・リバー州立大学で学んでいます。
2人とも、アメリカ海軍については好ましい思い出しかありません。
ジェイミーがこう話してくれました。
「私の中の声は、海軍には私たちを傷つけようとする意図は無かった、そう信じたい、と語っています。」
「作戦に従事していた間、私たちが得ることが出来た情報はわずかなものでした。そして日本人がこう言ったのです。『福島第一原発が及ぼす危険はない。放射能漏れなどは無く、原子力発電所は制御下に置かれている。』」
「うそをついたのは日本人です。私たちが責めるべきは日本人です。」
モーリスの方はまだ、意を決しかねています。
「日本人がアメリカ政府にウソをついたことは間違いありません。」
「でも海軍が私たちに同じことをしたとは思いたくありません。そして目的のために、私たちを危険な状況の中に追い込んだとも考えたくはないのです。」
「でも別の自分がこう言っているのです、『アメリカ政府も日本人と同じだ!』と…」
〈 第4部・完 〉
A Lasting Legacy of the Fukushima Rescue Mission: Part 4 Living with the Aftermath
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この第6回で第4部が終了しました。
大切なことは、知られている放射線障害の他に、「知られていない放射線障害」が存在する可能性がある。
その大切な指摘をしたのが、第4部だったのではないでしょうか?
第5部があるのかどうか、原文には記載がありませんが、おそらくは裁判の行方、公判内容などが紹介されるのではないでしょうか?
そこはウィザースプーン氏と交流がある訳ではないので、何とも言えませんが、公判によってさらなる真実が明らかにされる可能性があります。
期待しましょう。
ところで、私事で恐縮なのですが、今週母親が亡くなり、長男であるため【星の金貨】の編集が思うにまかせませんでした。
読みにくい所などがあり、お読みいただいている皆さんには、ご迷惑をおかけしたかもしれません。
この場を借り、お詫び申し上げます。
尚、このような事情ですので、掲載スケジュールが今後少しイレギュラー化する可能性があります。
できるだけ早く通常のペースに戻すつもりでおりますが、その節はご容赦ください。
今後とも【星の金貨】をよろしくお願いします。
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【 新たな命の成長を支え、希望と夢を守り続ける : ケニヤ 】
NBCニュース[メイキング・ア・ディフエレンス / この世界を変えて行く!] 3月23日
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アフリカのケニヤで、少女たちが抱く希望と夢がいつかかなうように、注目すべき取り組みが行われている学校について、チェルシー・クリントンがお伝えします。
リポーター:ケニヤの首都ナイロビにある女子中学校での、おとぎ話のようなエピソードをご紹介することにしましょう。
それはきわめてユニークな場所での、変わった体験だと言えるかもしれません。
ご紹介する一人の少女、ヴァネッサはこの地球上でもっとも貧しい境遇にいる女の子です。
しかし彼女は今、より良い将来を実現する可能性を手にしました。
ヴァネッサ「私の夢は医師になる事です。」
リポーター:彼女たちの境遇では、その夢をかなえることは容易なことではありません。
ケネディ「ようこそ、いらっしゃい。」
リポーター「ありがとう。」
ケネディ「ここが我が家です。」
彼ケネディもまた、ケニヤに広がり続ける貧民街のひとつであるここガベッラ、スラムの中から立ち上がった人間の一人です。こうしたスラムでは水道も電気も無い環境の中、約100万人ほどの人々が暮らしており、20%の子供たちが15歳になる前に死んでしまいます。
ケネディとそのアメリカ人の妻ジェシカは、少女たちが逆境を克服するための手助けをしています。
2人は自らの力で、少女たちのために学校を設立しました。
子どもたちはケネディのことが大好きです。どうして彼はこれ程愛されているのでしょうか?
女の子「彼は立派な人だからです。」
少女たち「立派な人だから!」
リポーター: 多くの子供たちが、学校に通った経験すらないこの国で、ここに居る少女たちは、貧困の負の連鎖を断ち切るためのスキルを身に着けつつあります。
ジェシカ「親にとって自分の子が、より良い未来を築くための機会を手に入れたことを見るくらい、うれしいことは無いと思います。」
リポーター:使用所達の母親の一人、エスターは少女の頃に医学を志したことがありました。しかし、彼女は14才で結婚せざるを得ませんでした。
エスター「娘がこの学校に出会うことが出来て、本当に良かったと思っています。」
彼女は今、娘のヴァネッサが医師になる日を夢見ています。
ヴァネッサ「私は強い女性です。」
ケネディ「私には自信があります。」
少女たち「私には自信があります。」
リポーター: この学校はスラムにつきものの、絶え間ない危険から身を守る場所も提供しています。
ケネディ「口にするのもつらいことですが、私たちの生徒の実に27%が、性犯罪の被害者なのです。私たちは、少女たちが身を守るための場所も提供したいと考えています。」
リポーター : 決してあきらめない、前向きな努力こそが支えでした。
ケネディは捨て子同然の境遇から身を起こし、独学で読み書きを憶えました。
そして彼はアメリカのコネティカット州立大学を卒業し、カベッラの地区長として皆に知られるようになりました。
ケネディ「どこから来たのか、それは問題ではありません。どこに向かって進みたいのか、それが大切なのです。」
リポーター :ケネディとジェシカは昨年6月、この場所で結婚しました。そうして少女たちのための温かい家庭が出来たのです。
チェルシー・クリントン、NBCニュース。
※チェルシー・クリントンはクリントン元大統領とヒラリー・クリントン元国務長官の一人娘。
http://www.nbcnews.com/id/3032619/ns/NBCNightlyNews/#51305012