ホーム » エッセイ » 【 オキナワ : アメリカ軍からの土地返還、不安も不満も緩和されず 】《前編》
「米軍には沖縄の人々に対するいかなる思いやりも無いということを、極めて残念に思います。」
沖縄に駐留するアメリカ軍の主な任務は日本の国土の防衛だけではなく、アジア全域におけるアメリカの権益を護ること
モトコ・リッチ / ニューヨークタイムズ 2016年12月22日
米軍基地の存在を巡って緊張が高まっている沖縄県で、12月22日アメリカは日本に対し沖縄本島北部にある約4,000ヘクタールの土地を正式に返還しました。
アメリカ合衆国が第二次世界大戦(太平洋戦争)後占領を続けてきた沖縄を1972年に日本に返還して以降、最大規模の土地の使用権の移動になりました。
米国のキャロライン・ケネディ駐日大使は今回の返還について、沖縄本島におけるアメリカ軍の存在を今後縮小していく動きの第一歩になるものだと語りました。
日本に駐留しているアメリカ軍の約半数の50,000人の兵員が現在沖縄県内各地に配置され、沖縄本島の5分の1の面積をアメリカ軍が占有しています。
22日名護市の海岸にあるリゾート地で開催された式典で、ケネディ大使は今回の返還を「マイルストーン」と表現し、次のようにつけ加えました。
「日本全土に対する安全保障上の盟約の実効性を維持しながら、沖縄県における基地負担の軽減を継続的に行っていくアメリカの決意を示すものである。」
しかし今回の返還もまた、これまで多発してきた県民とアメリカ軍との間の軋轢同様、沖縄県内に激しい論争を巻き起こすことになりました。
アメリカ軍がその半分を兵士のジャングルでの戦闘を想定した訓練のために使ってきた土地を返してもらう代わり、日本政府は沖縄県内のアメリカ軍が占有している敷地内に新たに6カ所ヘリコプター発着パッドを設備することに合意しました。
今回の合意について、人数的には多くはないものの激しく反発するグループは、ヘリパッドを建築することによる騒音被害の拡大、さらには事故発生の可能性がある事への懸念を表明しました。
長い間、沖縄の人々はアメリカ軍の基地の存在に関連した暴力と騒音に悩まされ続けてきました。
今年5月にはアメリカ軍の元海兵隊員が20歳の沖縄の女性を殺害して逮捕され、アメリカ軍の存在に対する県民の反発はここ数カ月間高いままになっています。
沖縄本島の北部、ちょうどヘリポートが造られている名護市沖合にでアメリカ軍のオスプレイ・ティルトローター機が墜落した(アメリカ軍当局は『不時着」と主張)今月、県民の懸念はいやがうえにも高まることになりました。
米国軍は飛行を再開すると公式に発表する以前から、1週間をかけてオスプレイの編隊すべての地上の基地への移動を行い、地元住民を怒らせ、翁長雄志沖縄県知事がケネディ駐日大使も出席した土地返還の式典を欠席する事態となりました。
「米軍には沖縄の人々に対するいかなる思いやりも無いということを、極めて残念に思います。」
翁長知事は声明でこう述べました。
日本の稲田防衛大臣は今回の土地返還について、すべての沖縄県民に恩恵をもたらすことになったと賞賛しましたが、オスプレイが事故を起こした件については「遺憾」の意を表明した上で、アメリカ軍は「二度とこうした事故を起こさないよう、万全の対策をとること」を求めました。
第二次世界大戦の終了とほぼ同時に、日本はアメリカ軍にとって最前線の重要拠点となりました。
駐留アメリカ軍の主な任務は日本の国土を防衛するだけではなく、アジア全域におけるアメリカの権益を護ることです。
アメリカ合衆国でつい最近展開された激しい大統領選挙戦において、ドナルド・J・トランプは日本に駐留するアメリカ軍兵士と基地の存在を争点の一つに挙げました。
トランプはアメリカ合衆国が日本を防衛するために過剰な経済的負担を強いられていると主張し、場合によってはアメリカ軍を日本から撤退させるという選択肢もあることを示唆しました。
しかし現在のところアメリカ軍当局は引き続き日本に、そして沖縄に駐留を続けることを約束しています。
ただしケネディ駐日大使は22日の返還式典でアメリカ合衆国が「アメリカ軍の存在の影響を減らす」よう努めるとの発言を行いました。
《後編に続く》
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私という『本土』の人間は沖縄の苦しみを正しく理解しているだろうか?
それは結局、沖縄県民となって家族とともにその場所で暮らす以外に方法はないのかもしれません。
しかし理解に一歩でも近づくため、土地返還を扱ったニューヨークタイムズの記事、そして続いてアメリカ軍が常駐することになった背景を全島の史跡を巡りながら考察したアメリカCNNニュースの記事をこの年末年始、続けて掲載することといたしました。
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【 2016年報道写真50選 】《2》
アメリカNBCニュース 2016年12月21日
2016年3月20日、キューバ、ハバナ市内の国際空港に着陸態勢に入ったアメリカ大統領専用機。
バラク・オバマ大統領と彼の家族を乗せたエアフォース・ワンがハバナ市街上空を通過した時の写真。オバマ氏は1928年に当時のC・クーリッジ以来キューバを訪問した初の現職米国大統領として歴史に名を残すことになりました。(写真上)
6月10日ケンタッキー州ルイビルでボクシング・チャンピオンの故モハメッド・アリの葬列の到着を待って、遺体を運んでいる霊柩車に触れようとする人々。
手にした旗には「モハメッド、あなたを愛しています」と書かれています。(写真下・以下同じ)
モハメッド・アリは長くパーキンソン病に苦しんだ後、6月3日74歳で永眠し、この日遺体が生まれ故郷の町に運ばれてきました。
3月5日フロリダ州ブエナ・ビスタ湖のチャンピオン・スタジアムでブレーブスとパイレーツの春季トレーニング試合で、打者が手を滑らせて客席に飛んできたバットを避けようとする人々。
写真中央の男の子は間一髪で顔を直撃される被害を免れました。
4月14日仙台市の八木山動物公園から逃げ出した雄のチンパンジー、チャチャが電柱の上で近づいてきた捕獲員に威嚇する瞬間。2日間に渡る逃亡の後、チャチャは動物公園に戻されました。
8月24日イタリアのアマトリーチェを襲った大地震の後、携帯電話をチェックするアルバニア出身の32歳の修道女。
地震発生の直前、数人の女性が丘の上にある中世の町アマトリーチェで下界の暑熱を避け、くつろいでいました。
地震に襲割れて修道院の半分が倒壊し3人の修道女と4人の初老の女性が犠牲になりました。
9月1日にイタリアのアマトリーチェ近くの山村ラツィオで、粗石の間に生き埋めの人間がいないか捜索する救助隊員。マグニチュード6.2の大地震が8月24日にイタリア中部を襲い、292人を殺しました。
http://www.nbcnews.com/slideshow/year-pictures-2016-n697021