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【 アメリカと北朝鮮は戦争を始めるのか? 】《後編》

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所要時間 約 9分

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各国の専門家が読み解く『緊迫する朝鮮半島情勢』今後の展開・冷静な分析
朝鮮戦争の休戦状態を終わらせて平和条約を締結するため、米国側に何度も和平交渉を提案した北朝鮮

「俺は最強国家アメリカの大統領だ」とトランプが虚勢を張れば張る程、北朝鮮国内の団結が強まる結果になる

 

ベンジャミン・ハース(香港)ジャスティン・マッカリー(東京)トム・フィリップス(北京)バーニー・メルキン(シドニー)/ ガーディアン  2017年8月9日

▽ ロバート・ケリー 釜山国立大学准教授

 

トランプ大統領の発言については、2通りの解釈方法があります。
楽観的な解釈をしたいですか?
そしてあなたはトランプの支持者ですか?
トランプは自分の意図を隠そうとしていますが、トランプはアメリカはこれ以上戦略的な意図から忍耐を続けるつもりはないという意思を中国政府に伝え、圧力をかけることです。

それほど楽観的ではなく、おそらくこちらの方がより正確でしょうが、トランプは自分が強大な権力を持つアメリカ大統領だということを誇示したいのです。

北朝鮮とアメリカ、そのどちらにも戦略と呼べるほどのものはあるのでしょうか?
それはまるで子供たちの遊び場で見かける、いつも弱いものいじめをしている2人の罵り合いのようなものです。

北朝鮮は挑発などせず、ある日突然アメリカの主要な基地や国土を一方的に攻撃するつもりはないのでしょうか?
そのやり方なら、米国の報復攻撃を封じ込めることが可能です。
核兵器を自前で開発できる北朝鮮人の頭が悪いはずはありません。
彼らの核兵器は、犯罪ではなく防衛のためのものです。

 

北朝鮮は、かつてカダフィ大佐とサダムフセインに何が起きたのか、心配しているのはその点です。
彼らはアメリカ人が変化を利用して何かを仕掛けてくることを心配しており、核兵器は機に乗じてアメリカが乗り出してくることを防ぐことを保証しています。
これがすべてです。
グアムにミサイル撃ち込むなどというのは、ただのこけ脅しが一つ増えたというだけの話です。

しかし北朝鮮はもう後戻りするつもりはありません。


彼らはミサイル実験を続け、その結果近いうちに核弾頭の小型化を実現することでしょう。
さらにはミサイルが大気圏に再突入する際、破壊されないようにその強度を高める作業が残っています。
それまでの間、北朝鮮とアメリカの激しい応酬が続くことになるでしょう。

 

▽ ジョン・デュルリー(韓国ソウル市延世大学、北朝鮮専門家)

 

米朝関係において私たちは、よもやアメリカ側から予測不能な発言行動や不安材料が飛び出してくることなど予想していませんでした。
だからこそ世界中の人々がこれほど狼狽しているのであり、私たちはアメリカ大統領がこのような口調で相手を罵ることに慣れてはいません。

こうした類の罵り合いや声高な脅迫が、戦争や制裁といった国際的な問題を合理的解決に導いた例などはなく、全く無意味で馬鹿げています。

 

もし解決に向け一歩でも前進させたいのであれば、我々がするべきことは外交的努力です。
アメリカ政府の北朝鮮へのメッセージは次のようなものでなければなりません。
「アメリカ合衆国は北朝鮮が経済的発展を成し遂げ、アジア社会との融和関係を構築し、他の東アジア諸国同様国家としての安定した状態を手するよう望んでいます。それができれば北朝鮮は核兵器の開発と保有を放棄することが可能になるでしょう。」

しかし事態が進展しないことを望んでいる人々もいます。
例えば、核兵器の不拡散に焦点に問題を絞れば、日常的に北朝鮮に打撃を与える政策を実行して弱らせ、孤立させることにより、これから核兵器を作ろうあるいは持とうとする国々にこう自戒させるのです。
「とりあえず我が国が、北朝鮮の二の舞にだけはならないようにしなければならない。」
こうした政策が実在することについては論理的根拠があります。

 

アメリカや韓国からの敵意がこうした形で示されることは、北朝鮮にとっては大歓迎なのです。
北朝鮮は国際社会がうんざりするほどこのやり方を続けるでしょう。
彼らはアメリカ政府との間で日常的に脅し合いをすることにより、国内での立場を安定させるやり方に満足しています。
それは実際に素晴らしい効果があります。
彼らはむしろ危機的状況を望んでおり、アメリカによって包囲されているという点を強調することで国内の引き締めを図ることができるのです。

しかし軍事紛争が発生することはあり得ないことではありません。
バランスを取り続けることは容易ではありません。
私はもっと憂慮すべき点は別にあると考えています。
私は韓国人はこの問題の本質を見極めようとしていないと考えています。
私は韓国政府がこの問題についてあまりにも消極的であると思います。

 

▽ グリフィス大学弾道ミサイル実験専門家 アンドリュー・オニール教授

 

ミサイル実験の結果次第で今後の北朝鮮の姿勢は変化し、多くの問題が影響を受けることになるでしょう。

北朝鮮は今年2017年7月にICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を2度成功させたことにより、その技術開発が新たな段階に到達したことを世界に印象付けました。

これに2016年に2度の核爆発実験を行ったことを考え合わせると、事態はアメリカやその同盟国にとっては黙って見過ごせないレベルに到達しました。

中国も深刻な懸念を抱くこととなり、北朝鮮に圧力をかけるための追加措置に歩調を合わせざるを得なくなっています。

ここで問題となるのは、

①北朝鮮を思いとどまらせるようには、国連の安全保障理事会の制裁が機能していない

②北朝鮮の大量破壊兵器がある軍事施設に攻撃を仕掛ければ、北東アジア全域で戦争状態に陥る危険性があり、現実的選択肢ではありえない

 

しかしトランプ大統領の「炎と怒り」の発言は、国際社会におけるアメリカの絶対的優位を守るためには軍事力の行使も辞さないとの意思表示を行ったという意味で、ひとつの大きな転換点となる可能性があります。

 

もし北朝鮮がさらに大規模な挑発行為に踏み切ったにもかかわらず、アメリカが有効な対抗措置を採ることができなければ、トランプの大統領としての信頼の失墜へとつながり、焦るあまり直接軍事行動を決断する可能性があります。

歴史的観点から見た場合、米国も北朝鮮も紛争ぼっ発の危険性が高まれば高まる程、それを回避すべく対策を採ろうとしてきました。

しかしドナルド・トランプと金正日(キム・ジョンウン)には、これまでにない問題があります。

それは2人とも、負の連鎖に陥ることを防ぐ抑止力よりも、自分たちの危機管理能力と事態を回避させられる能力の方が上だという根拠のない自身を持ち過ぎているという事です。

金正日(キム・ジョンウン)体制の北朝鮮の国内情勢もまた重要な役割を果たしているということを理解することも重要です。

北朝鮮政府の高官クラスの失脚は頻繁でその後の運命は残忍なものであり、金正日(キム・ジョンウン)自身は自分の基盤の強度はまだ不足していると考え不安を持っていますが、それ以上に心配しているのは中国が後ろ盾になったクーデターの勃発です。

 

北朝鮮にとって歴史的な敵であり、現代においては絶えざる脅威を押し付けてくる敵、すなわちアメリカに対し、毅然と立ち向かう金正日(キム・ジョンウン)という物語は、国内統制の手綱を引き締め、政権、軍隊、北朝鮮労働党に対する彼の支配力を強化するのに役立つことになります。

 

https://www.theguardian.com/world/2017/aug/09/north-korea-v-the-us-how-likely-is-war

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