ホーム » エッセイ » 【 アベノミクスは失敗? 】《後篇》
アベノミクスの巨額の財政出動は、長期的な効果が一切無いまま、財政状況をなお一層悪化させただけに終わった
長期的視野に立って日本経済全体の体質強化に必要な政策が、アベノミクスには欠けている
キヨ・デーラー / ドイチェ・ヴェレ 2016年11月17日
▽ 機能不全と弊害
アベノミクスの第2の柱である大規模な財政出動(公共事業等)もハードルに直面しました。
2013年、そして今年安倍首相は60兆円に上る巨額の予算を財政刺激策に振り向けると発表しました。
当初は2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故によって大きな被害を受けた被災地の復興に振り向けるとされた巨額の公共投資の対象は、現在は福祉政策とインフラ整備に向けられています。
しかしEU(欧州議会)の日本を担当する経済分析専門機関は、安倍政権のこの巨額の支出について
「日本経済について長期的に有効な効果が一切無いまま、ただ単に日本政府の財政状況をなお一層悪化させただけに終わった。」
という最新の分析結果を公表しました。
日本の国債残高は安倍政権の下で歴史上かつてない程膨れ上がり、2015年末には国内総生産(GDP)の248パーセントという金額を記録しました。
2016年会計年度末までに、その金額がいっそぅ膨れ上がると予想されています。
2014年6月、安倍首相は日本企業の競争力を強化し、少子高齢化が進む日本の人口構造を改善するはずの多方面にわたる政策を発表しました。
その1年後、安部首相は金融拡大と財政刺激の彼の最初の2つの方針を拡大しつつ、アベノミクスの第3の柱である構造改革に着手しました。
「構造改革に関連するいくつかの問題は、若干対処されることになりました。その中には日本経済の構造改革に必要不可欠だと言われているコーポレート・ガバナンスの改善も含まれています。」
ドイツ国際保安研究所の(German Institute for International and Security Affairs)のハンス・ギュンター・ヒルペルト氏がこう語り、国際競争力を強化するため、農業分野と電力業界の市場開放が行なわれたとつけ加えました。
しかし専門家は、一般消費者側から見れば、日本の経済構造にはまだまだ改善しなければならない点があると強調しました。
対応を急ぐ必要がある革新の問題は人口減少、そして所得格差です。
「しかしながらこれらの問題は、きちんと扱われませんでした」
ヒルペルト氏はこう指摘しました。
▽ ほどほどの業績?
いわゆる「ウィメノミクス」(女性の就労機会を増やし、日本が現在直面している人口の減少と高齢化による労働力不足の問題に対処しようとするもの)には、若干の改善効果が見られました。
「そのペースは遅いものではありますが、非熟練の女性労働者が労働力として各職場に参入しつつあります。」
テンプル大学の東京キャンパスの現代アジアの学科研究所所長のロバート・デュジャーリク氏がドイチェ・ヴェレの取材にこう答えました。
「しかしこれまで確認した限りでは、より高い地位に女性を昇進させようとする取り組みは見られません。」
デュジャーリク氏はこうつけ加えました。
夫が高給取りなら妻はわざわざ働く必要はない、日本の税制上の誘導措置は女性が働かない状況を奨励します。
こえした日本社会のシステムを変えていくことが日本の議会で討議されましたが、
「安部首相と与党自民党の保守的な思考法は、日本社会の基本的な概念を変えたくは無いのです。」
ヒルペルト氏が指摘しました。
そして次の点を強調しました。
「確かに安部首相は日本経済をさらなる不況に突き落とした訳ではありません。しかしアベノミクスという経済政策を導入し、具体的目標を自分自身で掲げておきながら、何ひとつ計画通りにはいかなかったという事も言えます。」
「そして長期的視野に立って日本経済の体質強化のために必要な政策を考えた場合、安倍首相の計画は決して十分なものではありません。」
〈 完 〉
http://www.dw.com/en/has-japanese-pms-abenomics-failed/a-36425940
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この記事を読んで感じることは、安倍政権の政策というものがすべて
「今さえ良ければ、それで良いのか?」
という性格のものであるという事です。
そしてそうした批判を抑え込むための報道支配です。
原発の再稼働は処理不能の放射性廃棄物の量を増やし、将来の世代に大きな負担と危険を押し付けることになるでしょう。
そして巨額の財政赤字を積み増すこともまた、将来の世代に大きな負担となるはずです。
私は安倍政権の『大規模な財政出動』なるものが、決まって国政選挙後に行われている事が気になっています。
選挙で自民党候補を当選させた地区に、ご褒美として多額の公共事業費がばらまかれる、そんなことは無いのでしょうか?
この記事にも書かれていますが、先の参議院選挙で全国で唯一自民党が勝てなかった東北地方については、国政の場で急激に『復興』がトーンダウンするという事態が起きているように感じます。
国の巨額の財政赤字については、国内の報道機関の扱いがどんどん小さくなっています。
それはこれ以上国民に危機感を抱かせないようにするための『配慮』なのでしょうか。
それとも政権に不利な情報を国民に伝えないようにするための、報道支配なのでしょうか?
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【 政府軍による奪還を目前に、住民たちが大挙して脱出を図るシリア・アレッポ 】《後篇》
ロイター / アメリカNBCニュース 11月30日
これまで反政府勢力の支配下にあったアレッポは、アサド政権指揮下の軍の突入が間近に迫る状況になりました。
この事態に戦闘に巻き込まれることを恐れる市民が、大量に脱出する事態となっています。
11月30日政府軍のものと見られる砲撃の後、アレッポ市内の反政府勢力が支配するジブアルケベー地区に散乱するビニールバッグに入れられた遺体。アレッポ ・メディア・センター提供の写真。(写真上)
反政府勢力の支配地区に対し再開された政府軍の砲撃により、市民45人以上が殺されましたが、その大部分が女性や子どもたちだったと、地元の救助隊員が語りました。
11月30日政府軍の支配下にあるアレッポ市内のジブリーン地区でロシア軍が行なっている食料の配給を受ける人々。手前左端はロシア兵、1人おいて右隣はシリア政府軍兵士。(写真下・以下同じ)
ロシア、イランとシーア派民兵にバックアップされているシリアのバシャル・アル・アサド大統領の政権にとって、アレッポの支配権を巡り6年間の戦闘を続けてきました。
11月30日ジブリーン地区でたき火をする、東部から逃れて来た市民。
しかし反政府勢力が支配するアレッポ市内東部にはなお数千人が生活をしており、2011年から始まった戦いをあきらめて投降するなら、むしろ死を選ぶと語っています。
11月30日アレッポ市内のジブリーン地区にある退避豪内に座る避難民の男の子。
11月30日アレッポ市内のジブリーン地区でたき火を囲む避難民の家族。
http://www.nbcnews.com/slideshow/aleppo-exodus-terrified-syrians-flee-besieged-city-n690266