ホーム » エッセイ » 【 アベノミクスは失敗? 】《前篇》
アベノミクスが掲げた経済目標の大部分は失敗に終わっている
日本経済全体を見る限り、アベノミクスの金融緩和政策はその目標を達成できなかった
キヨ・デーラー / ドイチェ・ヴェレ 2016年11月17日
2016会計年度の第3四半期の日本経済の好転は明確なサインのひとつです。
しかし日本経済全体を見渡す限り、明るい要素というものは見えてきません。
この経済状況は、安倍首相が打ち出した経済政策『アベノミクス』の結果をどのように反映しているのでしょうか?
ドイチェ・ヴェレが独自に検証した結果をお伝えします。
日本の安倍晋三首相が彼の経済政策『アベノミクス』を導入したのは4年前のことでした。
目的は停滞する東アジア地域の巨大経済圏を再び活性化し、底上げを図る事でした。
『アベノミクス』には柱となる主要な政策が3つありました。
積極的な金融緩和、大規模な財政拡張と構造改革です。
安部首相はこの経済モデルが日本経済の成長を促進することを望みました。
しかし多くの専門家が、大部分の『アベノミクス』の目標が失敗に終わったと語っています。
2012年12月安倍氏が再び首相の座に返り咲いた時、安倍政権が設定した最も重要な経済目標は、2パーセントのインフレを実現させることでした。
このために日本銀行券を大量に印刷して市場に流し込み、市中金利を引き下げるなどの一連の金融政策が実行に移され、安倍首相が掲げた野心的計画の達成が図られることになったのです。
こうした政策には一連の金融緩和により為替市場で円安が進み、その結果輸出企業の業績が向上することも視野に含まれていました。
さらには、業績の回復により企業が新たな設備投資を積極的に行って景気が拡大し、それがさらに雇用拡大と賃金上昇につながっていく、安倍政権の言う『経済の好循環』が達成されると目論んでいたのです。
これが現実になれば消費の拡大もインフレも進行するはずでした。
しかし現実に日本のインフレ率が上昇したのは、3パーセントの消費税引き上げの直前の2014年4月から2015年4月の1年間だけ、いわゆる駆け込み需要が発生したこの時だけ2パーセントを上回るインフレが起きました。
しかしその後は反動もあってインフレ率は非常に低い状態が続き、2016年9月現在7ヶ月(連続)で消費者物価が下落を続けています。
これは安倍政権が2%のインフレ目標の達成を再度延期し、達成時期を明確に出来ないと判断したそのタイミングで明らかになりました。
日本銀行はこれまで、日本のGDPの70パーセントに相当する額の国債と債権を購入してきました。
比較すると米国連邦準備制度理事会も欧州中央銀行も、貸借対照表に表記された同種の金額は、それぞれGDPの25パーセント以下に留まっています。
対照的に輸出に特化している日本企業の収益は記録的高さに達しました。
一方で日本銀行は2016年1月にマイナス金利を導入しました。
世界中の中央銀行でマイナス金利を導入しているのは5行に過ぎず、異例の金融政策ですが、未来敵は企業の設備投資の促進でした。
▽どこにも存在しないトリクルダウンの効果
しかしこうした政策のいずれも、日本の一般消費者へは恩恵をもたらしませんでした。
安部首相は国内の企業に対し、繰り返し企業内に積み上がった利益を賃金の上昇という形で労働者に還元するよう求めましたが、一向に現実にはなりませんでした。
国際通貨基金日本支部の上級職員であるリュック・エイバラート氏は、2015年の日本の勤労者の昇給は不十分なものだったと語りました。
今年8月彼は「日本国内の賃金上昇を実現する政策」をあくまで追求していくべきだと、日本政府の当局に迫りました。
「日本経済全体を見る限り、金融緩和政策はその目標を達成できませんでした。」
ドイツ国際保安研究所の(German Institute for International and Security Affairs)のハンス・ギュンター・ヒルペルト氏が、ドイチェ・ヴェレの取材にこう答えました。
「インフレ幅はますます減少し、経済刺激策としても十分な効果を発揮できませんでした。勤労者の給与水準の改善にも見るべきものはありませんでした。企業の設備投資も停滞している状況から抜け出せないままです。」
ヒルペルト氏はこう語りました。
そしてとうとう今月始め、日本銀行は黒田東彦総裁の在任期間中に2パーセントのインフレ目標を達成することを断念したのです。
〈 後篇に続く 〉
http://www.dw.com/en/has-japanese-pms-abenomics-failed/a-36425940
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【 政府軍による奪還を目前に、住民たちが大挙して脱出を図るシリア・アレッポ 】《前篇》
ロイター / アメリカNBCニュース 11月30日
これまで反政府勢力の支配下にあったアレッポは、アサド政権指揮下の軍の突入が間近に迫る状況になりました。
この事態に戦闘に巻き込まれることを恐れる市民が、大量に脱出する事態となっています。
11月29日政府軍の侵攻が間近に迫り、急ぎ市内を脱出しようとするすでに住む場所も失ったアレッポの一般市民。アレッポ ・メディア・センター提供の写真。(写真上)
一進一退の攻防が続く中、攻撃によって廃墟と化したかつての住まいを後に数千人以上が続々と避難を続けています。
11月30日アレッポ東部から西部へと家財道具を抱えて避難する一般市民。(写真下・以下同じ)
国連の人権機関はアサド政府軍の攻撃から逃れるためすでに16,000人を超える人々がすでに脱出し、これからさらに多くの避難民が発生すると見ています。
11月29日、アサド政権側が用意したトラックに乗り込み、政権側がすでに制圧しているアレッポ東部に避難しようとする住民の集団。
アサド政府軍は一気に攻勢を強め、反政府勢力の支配地域は3分の1にまで減少、破滅的敗北が目前に迫っています。
11月30日一週間前まで反政府勢力の支配下にあったアレッポ東部のマサケン・ハナノ地区を、戦闘車両に乗って住民の脇を走り抜けるアサド政府軍の兵士たち。
http://www.nbcnews.com/slideshow/aleppo-exodus-terrified-syrians-flee-besieged-city-n690266