ホーム » エッセイ » 【 まだまだ続く『がんばろう!』〈後編〉】
「前に進もうと言う取り組みが、恐怖、怒り、そして時には暴力的なほどの感情の爆発に支配されることがあります」
フランス/ル・モンド2011年9月
災害後の混沌と暴力的な無政府状態の大部分は単なる伝説であり、私は後で、私が体験したことの方が一般的な現象であることに気づきました。
危機の中だからこそ連帯することを通し、人間の魂の本当の強さが証明されたのです。
ボランティアとして海岸で作業することは楽しいことではありません - 魅力にもかけるし、ヒーローとみなされるわけでもありません。
ほとんどの場所では、何時間もかけで泥をかき出し、再び植え付けができるよう田畑の土を洗浄し、各家の敷地から壊れた家具などを取り除ける仕事を行います。
写真はニューヨークタイムズから
しかし仕事を終え、一日かけた仕事の成果を振り返れば、その場所が作業を要する数千か所のうちのたった一か所だとしても、心を満たすのは満足感や達成感です。
私が沿岸部に行って尋ねると、ボランティアを行った人々は例外なく、これが自分たちにできることの中で最も納得がいき、被災者を勇気づける行為なのだ、と話します。
ボランティアの人々は日本中から、時には海外からもやってきますが、ときにがれきの中から、今回の人々の悲劇の大きさを思い知らせるようなものを拾い上げることがあります。
私の場合、痛烈な悲しみを感じたのは、私自身ががれきの山の中から拾い出した子供のおもちゃと写真でした。
これらの品物を手にする時、その持ち主達があの瞬間に、何とか生き延びたことを願わずにはいられません(あまりに多くの人々が津波にのまれ、流されていきました)。
そう、これらの写真で、私は回復を伝えたいのです。
仙台市も、東北も、その他の地区も、表面的には正常な状態に復帰しています(変わってしまったことは、地中深く埋められました)。
いたるところにある『がんばろう、東北』のポスター : 『東北よ、あきらめるな、闘い抜こう』という意味です。
このスローガンは東北ではすっかり有名になりました。しかし、みんなの心をつかんでいるかけではありません。
とあるコンサートで一人のシンガーが、このスローガンに関する不安を語りました。
問題を単純化しすぎている、ということでした。
彼の指摘は置かれている状況も、直面している問題も、一人一人違っている、というものでした。
私も同感です、私自身の問題は微々たるものですが。
私の年上の隣人は、4月に起きた二度目の大地震で屋根が壊れてしまったため、家の中で使える部屋は二つだけになってしまいましたが、
「私の人生もずっとガンバローだったのよ。」と語ります。
彼女は今回の震災はもっと深刻なもの、ただしまったく違うというわけでもない、と語ります。
こうした感想の方が一般的です。
今や地震が起きたことをはっきりと指し示すものは、人々の脳裏にしかないのかもしれませ ん。
最近、私は幸運にも、遠足途中の小学生たちと話をする機会がありました。
「3月11日には、どうしていたの?」という質問を受けました。
子供たちは地震のとき私が彼らと同じように仙台にいた、ということを聞いて驚いたようでした。
そして私の故郷のアイルランドには地震は起きない、『震災』などというものを体験するのは初めてなのだ、と聞いて驚いていました。
今度は私が、前日に起きた日本の基準でいう震度4 - それ自体かなり大きな地震なのですが - の余震が起きて、驚いたかどうか尋ねました。
すると一人の少年、11歳の星ケンシロー君は私の目をまっすぐ見て、こう言ったのです。
「別に、ふつうだよ。」
それが恐怖を感じるほどの揺れであっても、友達や家族と一緒にいれば、
「大丈夫だよ。」
と彼は語りました。
仙台市、宮城県、そして日本は概ね、いまだに3月11日の災害からの復旧作業が続いています。
一つの場所で、一度にこれほどの悲劇が重なって起きたことに、人々の心はまだ動揺しています。
発生した事実のすべてを受け入れることは、まだまだ難しい状況が続いています。
前に進もうと言う取り組みが、恐怖、怒り、そして時には暴力的なほどの感情の爆発に支配されることがあります。
しかし、生き残った人々のほとんどは、どれほどの代償を払うことになっても、この大災害を乗り越えようとしています。
取材や調査を行う人々にとって、ここは災害現場のひとつです。
しかし、仙台市、宮城県や東北の人々にとって、この場所が故郷なのです。
〈完〉
記事中に記載されている写真は、こちらのオリジナルサイトからご覧ください。
http://mondediplo.com/blogs/ganbaro-keep-fighting-on
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【イタリア歴史遺産『発売中!』』】
借金返済のため広告塔にされた名勝
アメリカABCニュース 11月10日
世界的な金融大災害のため、ローマがグラウンドゼロになってしまいそうです。
イタリアの金融の混乱は重症化しています。
同国の負債は、その経済規模全体より大きい2兆5千億ドル(192兆円以上)です。
このためイタリア政府は、その債務返済のためありとあらゆる方法を検討しましたが、その中にイタリアの歴史遺産の数々が含まれていました。
ミケランジェロのダビデ像や、ピサの斜塔を忘れるイタリア人はいません。
その結果この数年間、これらの歴史的建造物が広告塔にされてしまいました。
ローマのコロッシアムからヴェネツィアの運河にいたるまで、今や手つかずのものなど無くなってしまいました。
「この世の見納め」、美しいため息の橋をめぐる金を稼ぎ出すための契約は、ブルガリのような企業から200万ドル以上の利益をもたらしました。
これらの広告は、最近になってやっと撤去されました。
破綻を防ぐためには、イタリア政府は負債の利子だけで、来年4,080億ドル(3兆円以上)にのぼる金額を支払わなければなりません。
そのためには272,000件以上の、歴史遺産広告を獲得しなければならない計算になります。
専門家は、イタリアが投資家の信頼をとり戻すためには、政府の信頼性の回復と責任を果たすことが必要だと語ります。
スキャンダルだらけのシルヴィオ・ベルルスコーニ首相の首を、マリオ・モンティという名前の経済学教授の首とすげ替えることは、そのための第1ステップですが、それは来週になれば実現するでしょう。
第2ステップには痛みが伴います。
増税と社会保障のカットです。
イタリア人は彼らの『美しき人生』をあきらめなければならなくなります、加えて終身雇用、長いバケーションと手厚い年金なども。
しかし痛みを分かち合うことは、容易なことではありません。
ベルルスコーニ首相が先月、歳出削減を行おうとした際には、街中で暴動が発生しました。
しかし、それを行わなければ事態はもっと悪くなります。
残りのヨーロッパの国々もアメリカも、ともに破綻を迎えることになるのです。