ホーム » エッセイ » 【 ついに連続殺人鬼の正体を現した、核の『平和』利用・原子力発電 】〈第1回〉
[広島、長崎、ニューメキシコ、ナバホ・インディアン、チェルノブイリ…あらゆる場所で、あらゆるプロセスで、人々が殺されてしまった]
チップ・ワード / ル・モンド・ディプロマティーク(フランス)
まず言わなければならないことはメルトダウンは起きている、という事です。
ちょうど25年前に起きたチェルノブイリ事故で、ソ連当局が放射線の拡散を否定し、制御不能に陥りすぐには状況を把握できない程悲惨な原子力発電所の状態を甘く見たのと同様、日本の当局も内容が矛盾し合い、意味不明の報告を連発することで福島で発生した危機の最初の一週間を空費しました。
私たちには「放射線量が上がった」「下がった」「また上がった」と混乱した情報が入り、実際に放射能を測定していた一部の官僚を除き、ほとんどの人間が正確な数値を把握していませんでした。
現場の状況は制御下にある、と伝えられていましたが、一部を除く原発職員の避難は続いていました。
汚染の危険性は無いと伝えられましたが、原子炉も発電所も封鎖されました。
▽ 最初の放射性降下物質
恐ろしい状況にもかかわらず、予想していた通り当たり障りのない、安全を保障する官僚的作文が発表されました。
特に東京電力から誤った情報が提供されたことは、『お約束』ともいうべきものでした。
もしあなたが、原子力産業界の際立った特徴はその専門性にあると考えているとしたら、こう考えなおしてください。
彼らは人類が生み出した中で、最も洗練された恐ろしい技術をマスターするための数学と物理を習得した、ミニ・アインシュタインの集団に過ぎない、と。
記録に当たれば、彼らが根っからのうそつき集団である、という事がその際立った特徴であることがわかります。
私はそのことを、一人の市民運動家として学び取りました。
原子力発電を行った結果生み出される、高い濃度の放射線を放出する使用済み核燃料の廃棄について、何万トンであろうがそれをただただ地中深く埋めるしかない、という原子力産業界の基本的枠組みに、反対を唱える厳しい戦いの中で。
それは今、福島で高熱を発しながら燃えており、私が暮らすユタ州の裏庭に埋められています。
これからお話しすることは、私の実際の経験に基づくものです。
原子力業界は常習的に不正表示を行い、自分たちに都合の良い解釈を広め、疑惑はすべて否定し、ときにはあからさまに他人をだます伝統を持つ、詐欺的集団です。
これまで50年以上にわたり、ずさんな管理と事故の隠蔽を繰り返しながら、原子力発電の危険性とコストについて常習的に嘘をつき続けてきました。
原子力発電の支持者と広報担当者が嘘をついてきたかどうか、それとも私たちがただ単に騙されていたのか。
人々を危険に陥れる誤った情報を与える当局側、メルトダウンは起きているという正直な市民の見方、という構図はチェルノブイリと変わらないにしても、福島の事故に遭遇することによって、私たちはやっと議論をできる状況になってきました。
核時代の幕開けとともに確立された偽装の手口は、福島第一原発が制御不能に陥るずっと以前から、手垢がつくほど繰り返し用いられてきました。
1950年代初頭、原子力の使者、あるいはその時名づけられた『原子力の平和利用』は、原子力発電がすぐにタダ同然の低コストで、効率的に消費者に電力を供給できるようになる、と主張しました。
彼らが披露した『先見の明』の中には、都市のビルディングを建設する際、ウラニウムを建築材料に混ぜ込めば、核分裂によって発生する熱によって冬場の除雪が不要になるだろう、というものまでありました。
新たな港の開削を簡単に片付けるために原子爆弾をに使うべきである、そう強く主張した人々さえいました。
また低線量であれば、放射線は健康に良い、と誓ってみせたのです。
そのようなたわごと、愚劣な絵空事は新たに生まれた産業界、そして戦争の方法が生み出したプロパガンダであり、今日では一笑に付されるだけですが、その当時は深刻な悲劇を生むことになりました。
たとえば、アメリカの数千人の兵士たちの悲劇。
将来の核戦争の戦場で、兵士たちはどのように対応すればよいのか軍事計画担当者の資料とするため、ニューメキシコで原子爆弾を投下した直後、塹壕に隠れていた兵士たちが投下地点めがけて進撃を命じられました。
当然の結果として無知は、実り多い研究結果をもたらすどころか、数千人の兵士に原爆症を発症させることになりました。
多くの若い兵士が間もなく死亡しました。
このアメリカ西部にある核実験場の風下に当たる地区に住んでいた、何も知らない一般市民もまた被ばくすることとなり、あらゆる種類の癌や原因不明の病に倒れることになりました。
核時代の幕開け、地中深く潜って原子力発電や核兵器の原料となるウラニウムの採掘に従事した鉱山労働者たちも、被ばくにより原爆症を発症、短期間で死亡していきました。
福島の事故以前、核時代の幕開けに起きた原子力ルネッサンスの犠牲になったのは、当時ウランブームに沸いたユタ州の貧しいナバホ・インディアンの人々だったのです。
〈つづく〉
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今日からご紹介するのは、フランスの月刊誌『ル・モンド・ディプロマティーク』に掲載された、アメリカの市民運動家チップ・ワード氏の評論を5回に分け連載します。
実はこの原稿に限りあえて掲載の日付を伏せてあり、最終回にお知らせします。
それにしても、長年反核運動家として活動を続けて来たワード氏の舌鋒(筆法)にはきわめて厳しいものがあり、訳していてたじろぐ程でした。
しかし好んで激しい表現を使っているわけではなく、綿密に調べた事実の裏付けがしっかりとしており、そのあまりのひどさにそれ以外表現のしようがなかった、という感じを受けます。
というわけで全5回をお読みいただければ、私たちがこれまで「教えてもらえなかった」数々の原子力の真実に触れることにより、そのイメージを明確にできるはずです。
そして後半のABCの動画、「定職に就きたい」というメッセージが多かったようですが、寝ている猫の脇には「もっとネズミを捕まえて!」というのもありました。
私なら
「Stop the radiation(放射能漏れを止めてくれ)!」「Save the children(子どもたちを守れ)!」「Rule the Politician(政治家を監視せよ)!」
と言ったところでしょうか.....
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【 今年の抱負を3つの単語を使って表現してください 】
アメリカABCニュース 2012年1月1日
『HAPPY』『NEW』『YEAR!』という言葉は、3つの単語から成り立っています。
そこでABCテレビでは皆さんにそれぞれ好きな三つの単語で今年の抱負を表現してもらいました。
皆さん、2012年にはおおいに期待しているようですよ。
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いかがでしたか?
私の3つの単語はシンプルですよ。
「 Happy New Year! 」