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【 「広島の教訓を平和な社会の実現のため役立てる」そんな気持ちは持ち合わせていない安倍首相 】《前篇》

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所要時間 約 11分

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大日本帝国の軍国主義は、結局日本全土を焼き払われるという悲惨な結末を招き寄せた
国家として一切戦闘に関わらない日本の平和主義は、世界史上最長の記録を更新し続けている

ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 5月26日

NYT広島01
東京は日本の政治、そして商業分野における首都です。
京都はいたるところに寺院がある伝統文化の宝庫です。
その一方、71年前にアメリカが投下した原子爆弾によって消滅させられた後、平和と経済的繁栄の下で新たに再建された広島は、現代日本の国家のアイデンティティの核心部分において多種多様な価値観の下に置かれています。

20世紀の前半、軍国主義者が支配する大日本帝国はアジアを引き裂きましたが、その戦争は結局日本全土を焼き払われる悲惨な結果を招きました。
そして迎えた敗戦により、日本は一夜のうちに民主主義と非好戦的姿勢を全面的に受け入れたかに見えました。

その日本の平和主義は1945年に同じように民主主義国家へと変貌したかつての同盟国であったドイツさえも上回り、国家として一切戦闘に関わらずにきたという記録を更新してきました。

しかしオバマ大統領が5月27日に広島を訪問したことにより、あらためてこの都市の存在と歴史的意義に世界的な注目が集まる一方、日本国内では被爆地広島が世界に向け訴えてきた理想にどんどん陰りが生じてきていることに対する懸念が深まっています。
これまで日本人の中に深く根付いてきた泥沼化する軍事紛争に対する心からの嫌悪は、安倍首相率いる保守タカ派による、軍事復権とも言うべき運動のかつてない攻撃の的になっています。

「ヒロシマという言葉には、ただの都市の名前という以上の意味があります。」
ノーベル賞受賞の文学者であり、直接の犠牲者だけでも併せて200,000人を超える広島と長崎への原爆攻撃、そしてその後の出来事について幅広く著述活動を行ってきた平和運動家でもある大江健三郎氏がこう語りました。
「ヒロシマという言葉には日本人の感性の中で最も大切な願いのひとつが込められていましたが、現在も尚その通りかどうか、私には確信がありません。」

NYT広島02
「日本国憲法は日本政府の憲法である以上に、広島の体験に基づく憲法なのです。」
大江氏は第二次世界大戦の敗北後、アメリカ合衆国によって導入され、日本社会の在り方を一変させた国家の基本法についてこのようにつけ加えました。

日本国憲法は戦争の放棄を宣言し、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定しています。

しかし国外における危険の度が強まりつつある中、平和憲法とそれを基底に持つ平和主義的法律は絶えざる攻撃にさらされることになりました。
広島を中心に長く続いてきた平和主義運動は、現在若い世代の人々への引き継ぎに困難が見えるようになりました。
これら若い世代の人々は第二次世界大戦(太平洋戦争)が終了して、すでに数世代を経ています。
「オバマ大統領の広島訪問は、都市として直面する現実と国家レベルで起きている現実のとのギャップが大きくなり続けているタイミングで行われました。」
秋葉忠利元広島市長がこう語りました。

安倍首相の与党である自由民主党は、かつて軍国主義に基づく侵略を行ったがゆえに課されることになった軍事的制約について、第二次世界大戦が終了して70年が経った現在においては時代遅れであり、日本を弱体化させるものだと主張しています。
そして日本の平和主義を後退させる条文も含め、現在の日本国憲法を大幅に書き換える提案を行っています。

NYT広島03
安倍首相は軍事的台頭を続ける中国と核武装した北朝鮮の脅威は日本のすぐそばにまで迫っており、こうした憲法の書き換えは不可欠だと主張しています。
安倍首相は日本を他国と変わらない軍隊を持ち、国際的な軍事紛争にも積極的に関わる「普通の国」に変えるためのキャンペーンを展開、広島・長崎への原爆投下によって日本国民が持つようになった内向的な平和主義に対し全く別の選択肢を突きつけたのです。

こうした一連の動きは、広島市内の爆心地に原爆の記憶を永遠に残すために保存されている原爆ドーム近くにある原爆慰霊碑に刻まれた一文、「過ちは二度と繰り返しません」というメッセージへの挑戦であると考える人々がいます。
「安部首相のアプローチは戦争を国家の当然の権利だとする、いわば『軍事的平和主義』です。」
元外務省の官僚で、2005年から2011年まで広島平和研究所の所長を務め、現在大阪経済法科大学の教授を務める浅井基文氏がこう語りました。
「もし日本人がこれを受け入れてしまえば、日本国憲法の下で築き上げてきた平和主義を否定することになります。」

日本の平和主義には常に多くの矛盾がつきまとってきました。
「平和憲法」は日本が軍隊を再建することを止めることはできませんでした。
ただし実質的な軍隊であるこの自衛隊は、これまで海外で実戦に携わったことはありません。
日本の指導者たちは自国での核兵器開発は否定してきましたが、米国が提供する『核の傘』の下に入ることは歓迎してきました。

そして日本は世界各地で行われてきたアメリカの軍事介入を支持する一方、日本自身がこうした戦闘に加わることはしませんでした。

「日本の平和主義は、日本はアメリカ合衆国の保護下にあるという事実によって実現が可能になりました。」
防衛大学の前校長である神戸大学の五百旗頭真(いおきべまこと)教授がこう語りました。

day01
現在、安倍首相はこの日本の矛盾した状況を変えるよう求めていますが、そのやり方は国民の多くを不信と不安に追いやっています。

「日本は、新しい役割を演ずるよう求められています。」
五百旗頭教授はこう語り、次のように続けました。
「そしてその事が、戦後日本の伝統的な平和主義者の間で危機感を生むことになったのです。」

安倍首相は憲法を変えてしまうほどの支持は得ていません。
そして多くの専門家が安倍首相にその力は無いと考えています。

ハードルは高いと言わなければなりません。
どのような変更でも、憲法を書き換えるためには衆参両院の3分の2以上の賛成と、国民投票における過半数の賛成が必要です。
日本国憲法は1947年に実施されて以来、一度も変更されたことはありません。

しかし、安部首相は日本国憲法の理念の下で戦後作られた体制を少しずつ破壊してきました。

2012年に自民党をふたたび政権の座に据えて以降、安倍首相はまず10年間続いてきた防衛予算の縮小を中止し、大幅な増額を要求しました。
次に数十年間続いてきた武器輸出禁止令を解除しました。
そして戦後初めて、自衛隊に海外での戦闘を可能にする安全保障関連法案を国会の場で可決成立させたのです。

〈 後篇に続く 〉

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【 硫黄島の星条旗に関わるミステリー 】《1》

アメリカNBCニュース 5月30日

硫黄島03
歴史の女神はアメリカ陸軍のジョージ・バーンズ上等兵と海兵隊ルイス・バーマイスター軍曹に対し、微笑んではくれませんでした。
1945年2月23日硫黄島のすり鉢山頂上に6人の米国軍兵士が星条旗を打ち立てる写真が配信された時、世界はここでの戦いがアメリカ軍の勝利に帰したことを確信しました。
この世界史に残る写真によってAP通信のカメラマン、ジョー・ローゼンタールは後にピューリツァー賞を得ました。
この時軍のカメラマンとしてその場所にいたバーンズ上等兵とルイス・バーマイスター軍曹はともにそれぞれが独自にこの時の写真を撮影し、その写真が存在するはずだと主張しています。

しかしその事実はアメリカ軍史上謎とされたままです。
誰もその写真を見たことが無く、永遠に失われた可能性があります。
海兵隊は、そもそもそのような写真は存在しなかったのではないかとの見解を示しています。

硫黄島01
(写真上)
この写真はAPカメラマン・ジョー・ローゼンタールの手になる有名な写真が撮影される数時間前に、バーンズ上等兵が撮影したもの。
すりばち山に実際に最初に翻った星条旗の写真。

海兵隊が硫黄島の戦闘記録の中で本来永遠に記録されるべき人間が一人抜け落ちてしまったのかどうかについて再検証を始めたことにより、ローゼンタールが撮影した写真が再び話題になるとともに、2名の軍カメラマンの存在と失われた可能性の高い写真に注目が集まっています。
もしどちらかの写真が見つかれば、3日早朝すり鉢山の頂上に立てられた小さな星条旗に代えて大きな星条旗を揚げたのは誰なのかという、これまではっきりしていなかった事実が明らかになる可能性があります。

硫黄島02
(写真上)
硫黄島のバーンズ上等兵自身を撮影した写真。

バーマイスター元軍曹の申し立てによりアメリカ国防総省はこの件に関する再調査に着手、その結果1980年にバーマイスター軍曹が1945年2月23日硫黄島で撮影した70枚前後の写真が発見され、彼の証言に対する信ぴょう性が増すことになりました。
しかし問題の大きな星条旗が打ち立てられた瞬間の写真だけは見つからなかったのです。

この約70枚の写真とは別に、その日バーンズ上等兵が撮影した写真は彼が所属していた『ヤンキー』(アメリカ陸軍発行の兵士向け雑誌)に掲載されましたが、彼が撮影したとする大きな星条旗を打ち立てた瞬間の写真だけは掲載されませんでした。


http://www.nbcnews.com/news/us-news/star-spangled-mystery-what-became-lost-iwo-jima-flag-raising-n581741

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