ホーム » エッセイ » 【福島J-ヴィレッジ潜入記 : 使い捨てられる人々】〈第2回〉
「テレビで見るよりずっと悪い状況〈家族には教えられない〉」
〈ものすごい数の防護マスク / J-ビレッジ〉
Cordula Meyer / デア・シュピーゲル(ドイツ)2011年9月21日
▽ 汚れ仕事をする緊急作業員〈増加した発ガンリスク〉
こうした作業員の一人が世の中の人々にはここで行われていることを知る権利がある、と考え、匿名を条件にシュピーゲルにJビレッジの実態を話す決心をしました。ここでは仮に秋本朔朗さんということにしておきましょう。
彼は忙しい日には3,000人の労働者が放射線チェックを受けていた、と語ります。
毎日一個旅団(2,000名から6,000名程度の兵員によって構成される部隊)の作業員が、福島第一原発の復旧のため配置につきます。
作業員はうだるような暑さに耐え、危険な程に高い放射線を浴びながらこつこつ働いています。
通常なら原子力関連施設で働く従業員の被ばく限度は50ミリシーベルトです。
しかし東京電力は関連政府機関と協議のうえ、値を250ミリシーベルトまで引き上げました。
この値はガンになる可能性を、著しく増加させる可能性があります。
3月11日以来、約18,000人 の緊急作業員が福島第一原発に投入されてきました。ほとんどが東京電力による雇用ではなく、派遣会社から順番に下請け会社に回されてきた 人々です。
津波が押し寄せる前は、これらの人々は別の原子力発電所で、報酬の高い汚れ仕事を行ってきました。
彼らのほとんどは国のために仕事をしているわけではありません。建設作業に従事する佐々木さんもまた、収入を得るためにやって来たのです。
彼は住んでいる北海道の会社から、ここに送り込まれました。
彼は若かった頃、別の原子力発電所で大掛かりなオーバーホール作業に従事した経験があります。
佐々木さんの話では毎朝Jビレッジでつなぎ服とマスクを装着すると、次に福島第一原発の門を入ったところで止められます。ここで鉛製のベストを着用させられ、その上に非常に薄い素材で作られた防護服、ゴーグル、顔をすっかり覆うマスク、そして3種類の異なった手袋を重ねて着用します。
「耐えがたい程暑苦しいです。顔からマスクをむしりとりたくなります。しかし所内ではどこであろうとそれは許されません。」
と佐々木さんが語ります。
しかし、ときおりマスクを外して煙草を吸う作業員の姿が目撃されています。
▽ テレビで見るよりずっと悪い状況〈家族には教えられない〉
その日度の場所で働くのかにより、朝それぞれミーティングが行われ、その後バスは福島第一原発に向かって出発します。佐々木さんが働けるのは一日一時間、長くても90分 以内と決められています。それ以上働くと佐々木さんは非常に高い値の被ばくをしてしまうことになります。
この労働の後、彼はバスで再びJビレッジに戻ります。
そ してそこからさらに、いわき湯本にある仮住まいのペンションに戻ります。別の3名の男性とルームシェアをして暮らしています。
彼はこんな生活を、もう6カ月続けているのです。
佐々木さんは背は小さいが、筋骨たくましい男性です。
彼の腕の筋肉は、彼の黒いTシャツの下ではちきれそうになっています。
彼は8月になって初めて、破壊された原子炉を目の当たりにした時のことを、はっきりと覚えています。
「テレビで見たものよりも、ずっと悪い状況のように見えました。まるで9.11同 時多発テロの後のニューヨークのようでした。至る所が破壊されていました。」
彼は福島第一原発で働いていることを、家族には知らせていません。
「心配させたくないのです。」
彼自身、心配を抱えています。
彼にはお金が必要なのです、ちょうど一日10,000円程度。
しかしこのままの状態が続けば、あと2、3週間で彼の被ばく線量は、彼が勤める会社が定める基準を超えることになります。
〈つづく〉
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【 パンダの国勢調査、そして新たな生命の誕生 】
アメリカNBCニュース 11月20日
かわいらしく、抱きしめたくなるほど愛らしく、そして絶滅の危機に瀕している生き物のお話です。
パンダの人口を増やすためには、まず実際の野生の生息数を把握する必要があります。
どうすれば良いのでしょう?
もちろん、パンダの国勢調査をすればいいんです。
NBCのエイドリアン・モグが派遣先からレポートします。
レポーター : パンダは本当にユニークな生き物です。この国の保護動物は広大な中国のごく一部分にしか生息しません。その面積はコネチカット州程(面積は全米50州中48位)しかありません。
そしてパンダは世界で最も絶滅が危惧されている動物でもあります。
そのため中国は10年ごとにパンダの生息数の調査を行っています。
今回の調査は3か所あるパンダの原生地のひとつ、四川省から始まります。
70名の調査員がこれからの2年間、自然界におけるパンダの生息状況の調査を行うことになります。
私たちは許可を得て、急こう配の滑りやすい斜面での調査を行う、調査員の一人に同行しました。彼は昨年も調査に参加しています。
3回目の調査となる今回は、GPSのような新たな技術を利用することにより、調査の時間を節約できるようになった、と彼は話します。
ジャイアントパンダの好物の竹を観察し、我々の近くに彼らがいることを確信しました。
でも私たちは野生のジャイアントパンダは、一度も見たことがありません。彼らは本当に希少なのです。
前回の調査で生息が確認されたのは、1,600頭だけでした。
にもかかわらず、調査されるべき情報はまだまだあります。
人々は生息数ばかり気にかけますが、生息状況を注意深く観察する必要がある、と同行したこの科学者は語ります。
調査結果をもとに、もつと効果的な保護対策を立てることが可能になります。
しかし、パンダに対する最大の脅威は依然として人間です。
最も人口の多い州のひとつ四川省は、今急速に都市化されています。
このため特に飼育下のパンダは、独自の交尾の習性を持つためにその繁殖が脅かされています。そのため科学者たちが、繁殖センターの運営に努力を集中しています。
今年初め、まさに記念碑的とも言える十数匹の誕生に恵まれました。
これは世界中の飼育パンダの数が、300頭に達したことを表すマイルストーン(一里塚)となった、と繁殖センターでこの科学者が話しました。
研究者は、新たな調査によりもう一つのマイルストーンが、打ち立てられることを願っています。
すなわち育種プログラムと保全の努力が、正しい方向に進んでおり、多くの生命の誕生を表しているという記念碑です。
エイドリアン・モグ、NBCニュー ス、四川省、中国。
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