ホーム » エッセイ » 【大阪市長の急進的な呼びかけ、疲れてしまった日本人の心をとらえる〈前篇〉】[ニューヨーク・タイムズ]
半世紀もの間原子力業界に勝手放題を許し、福島第一原発の被害を巨大なものにした自民党、透明な政治、『民主主義の復活』の公約を反故にした民主党
マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2012年9月27日
※この記事の印刷版は、28日付のニューヨーク版に掲載されました。
日本の大阪をご存知ですか?
ここ最近20年間の経済停滞期も含め、日本の有権者がそれまで長期独裁政権を続けてきた政府与党を政権の座から追い、真の二大政党制を実現するまでに、実に60年という年月がかかりました。
それから3年、今度は多くの有権者が、政府の思い切った改革を約束する、当たるべからざる勢いの若い指導者が率いる、これまで無名であった政党に心惹かれ始めています。
その政党の名は『維新の会』。
舌鋒鋭い橋下徹大阪市長により、この9月、正式に国政政党としてのスタートを切りました。まだ童顔が残る43歳のかつてのテレビのコメンテーターは、数年前どこからともなく登場し、およそ日本らしくない押しの強いスタイルで、このズブズブの商業都市に喝をいれました。
そんな彼は、かつての数少ない真の国家的指導者だけが持つ、優れた能力を身に着けているかのように見えました。
つまりは困難な改革を成し遂げられる…
橋下市長は大阪府や市の職員組合と戦いを繰り広げて赤字財政を削減し、学校の教師に対しては厳しい規律を用いて服従を強いました。
今や彼は350人の政治の初心者を自らが主宰する「にわか仕込みの学校」でつめこみ訓練を行い、早ければ11月にも実施される国政選挙に立候補させ、その既成体制打破を国政レベルにまで広げようとしているのです。
橋下氏のカリスマ性により、維新の会は一夜にして恐るべき力を持つ政治集団と化した観がありました。
正式には2週間前に全国政党として発足した維新の会は、世論調査において野党の中で第2位の票を集め、しかもその支持率は与党民主党を上回るものでした。
さらに一部のアナリストは、橋本氏のグループが全国1位の支持率を獲得するのも不可能ではない程の接戦であったことを認めました。
政治評論家や議員によれば、橋下氏の台頭は彼自身の個人的な主張が評価されたというよりは、慢性的な経済の停滞、2大政党におけるリーダーシップの欠如に飽き飽きした国民が、思い切った変化を望んでいることが背景にあります。
また、橋下氏の評価が上がったのは、昨年発生した福島第一原発の事故が、世襲や官僚からの転身ばかりが目立つ政治的エリートを信用しなくなった一般国民に、この国が一番に大切にしなければならないものは何か、という点について改めて考え直すよう促したからでもあります。
こうした新しい形の政治不信は、現政権の野田首相が誰も支持しない原発再稼働をこの夏やってのけた後、頂点に達した観がありました。
これは日本国内で多数の原発が稼働する、事故以前の状態に戻す口火を切ったとして、国民の大多数から非難されました。
この点でも橋下氏は、原子力産業界によって支配されてしまっている原子力安全・保安院の機構改革を、早くから主張していました。
昨年、与党である民主党を離党し、現在は維新の会への加盟を希望する横粂勝仁(よこくめかつひと)衆議院議員がこう語りました。
「日本の閉鎖的な政治社会に対する不満が爆発寸前になったタイミングで、橋下氏が登場したのです。
「日本の人々は、既成政党にはすっかり裏切られたと感じています。」
橋本氏が提案する変化は、根本的なものに他ならなりません。
かつては日本の強さの源とされたものの、現在は社会改革の最大の障害とみなされている、過剰なほど中央集権化が進んだ日本の政治構造、それを解体することです。
維新の会が目指すのは、アメリカの連邦制度に倣った、地方がより大きな自治権を持つ道州制の導入です。そして現在は国会議員によって選出される首相を、直接選挙により選出することです。
政治評論家は、橋下氏の維新の会が政権をとるためには、2つの点を改める必要があると指摘しています。
日本人の多くが、彼の反抗を許さない断固とした姿勢、そして右翼的挑発的な考え方に不安を感じているのです。
そして、彼自身が国政選挙の候補者として選挙に臨むことが、おそらくは最も大切な点でしょう。
これまでは橋下氏は国政選挙に打って出るつもりも無く、自身首相になる器ではない、と語っています。
政治費用論家の多くはいずれ彼は態度を変えるだろうと菅前首相゛得ていますが、彼自身は大阪にはまだやり残した仕事があると語っています。
この点について評論家は、橋下氏のこうした姿勢により、維新の会は若干ではあるが勢いを削がれることになった、と指摘しました。
当面は農村部でしっかりした組織を握っている野党第一党の自民党が、名前が売れていることもあり、維新の会に比べ僅差で維新の会をリードしているようです。
しかし自民党の将来について、楽観的にとらえている有権者は多くはありません。
自民党はほぼ半世紀にわたり、日本の原子力業界に勝手放題を許し、その結果今回の災害の被害を巨大なものにしてしまった責任があると、多くの有権者は非難しています。
一方の野田首相率いる民主党も、2009年の選挙の際、官僚による政治支配を終わらせ、日本に民主主義をよみがえらせ、透明性の高い政治を実現するとする公約を保護にしてしまったとして、国民全体から非難されています。
〈つづく〉
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兵庫県の日本触媒の火災、世界規模でおむつの生産に打撃
アメリカNBCニュース 9月30日
9月29日土曜日、兵庫県の化学プラントで発生した爆発と火災により、消防士1人が死亡、数自由人が地涌合う軽傷を負ったと、地元消防および警察の発表があったとジャパンタイムズが報じました。
この化学プラントでは使い捨ておむつに使われる主要な成分が生産されていたため、世界的におむつの生産が影響を受ける恐れがあると、日本のメディアが報じました。
火災は午後2時ごろ、兵庫県姫路市にある日本触媒の工場で発生しました。
最初の爆発は午後2時40分、消防士がアクリル酸の入ったタンクに放水中に発生し、その後立て続けに爆発が起きました。
爆発により、消防車一台が炎上しました。
28歳の消防士1名が死亡、少なくとも30人が負傷したと伝えられています。
日本触媒はアクリル酸の世界最大のメーカーのひとつですが、その主要成分はSAP(多量の水を吸収してゲル化する成分)と呼ばれ、使い捨ておむつに使われています。
日本触媒の工場は世界のSAPの20%を生産し、また世界で生産されるアクリル酸の10%を生産しています。
この事故のため日本触媒の工場は長期間の操業停止においま来れざるを得ず、またSAP樹脂を生産している他のメーカーはいずれもフル操業の状態で、不足する分を補うだけの増産は不可能と見られていると、30日日曜日、日経ビジネスが報じました。
http://worldnews.nbcnews.com/_news/2012/09/29/14154759-chemical-plant-explosions-in-japan-kill-one-may-cripple-global-diaper-output?lite