ホーム » エッセイ » 【『政権の悪口は言うな…』政府の圧力の前に、うなだれたままの日本のメディア 】
テレビ朝日を厳しく訊問したことで、古賀氏の主張が事実であることを証明してみせた自民党
たとえ憲法が保障する表現の自由を侵してでも、自民党は報道規制を強化する意図を持っている
日本の一般市民に広く深く浸透している平和主義を捨てさせるため、メディアに圧力をかけ宣伝工作を進める安倍政権
支配層に対する監視の目を緩めようとしない朝日新聞に向け、最大の攻撃と威嚇を行う安倍政権
エコノミスト 5月16日
弱体な反対勢力、選挙マシーンが機能すれば勝利が確実な選挙制度、大手メディアが伝える政権支持率の高さ、安倍首相が率いる日本政府は今、向かうところ敵なしという状況にあるように見うけられます。
しかしそれでも安倍政権は、メディアを脅す手を緩めず、ますます圧力を強め続けています。
これには政府支持派のジャーナリストさえ、非難の声を挙げています。
政治家が用心深くメディアに干渉するというのは、長く続いてきたいわば慣習です
しかし政府官僚からテレビ解説者に転身し、政府・政策批判を繰り広げてきた古賀茂明氏が、リベラル派の放送局と見られていたテレビ朝日の報道ステーションをクビになったことで、安倍政権がメディアに対し、弱い者を仮借なく攻撃している事実がつい最近明らかになりました。
政権与党の自民党はこの件で直ちにテレビ朝日の番組制作者を呼びつけ、日本の放送法に違反している可能性があるとして厳しく尋問しましたが、その行為は古賀氏の主張通りの事実が存在することを証明することになりました。
この一連の動きは、たとえ憲法が保障する表現の自由を侵すことになっても、自民党は報道規制の意図を持つことを証明するものであると、メディア問題を専門とする学術関係者が指摘しました。
放送免許取り消しを盾に無言の脅迫を行う、あからさまと言って良い言論抑圧の動きは、つい最近別の形で現実になっていました。
昨年の秋、自民党は12月に実施されることになった解散総選挙で、公平な中立不偏の報道を要求しました。
多くの日本人はこの解散総選挙について、時間と税金の浪費と考えていました。
日本のテレビ局は、おしなべてこの問題に関する報道量を減らしました。
結果、後援会組織などに属する人間ばかりが投票に行くことになった結果、投票率は下がり、自民党はやすやすと勝利を手にすることができました。
これらはすべて、偶然の結果ではないのです。
安倍政権が進めてきた経済政策アベノミクスが一般的国民の生活を改善できていないというのは、国民の間ではごく一般的な感想ですが、この点に関するテレビ取材を安倍首相は拒否しています。
今や日本の主要な放送局の人事異動は、政府の圧力の下で行われているという噂すらあります。
海外の報道機関のジャーナリストでさえ、日本の外交官が彼らの報道に干渉しようとしていると不満を露わにしています。
その長期的な狙いは、日本の報道体制を作り変えてしまおうというものである可能性があります。
2009年から2012年の間、民主党に政権の座を奪われていたことについて、自民党はその責任は日本の報道体制にあると考えています。
今日、安倍首相が最重要課題としているのは、長年の宿願でもある憲法の改変です。
日本国憲法は70年前にアメリカが主導して起草され、紛争の解決手段としての戦争をする権利を放棄しています。
日本の一般市民に広く深く浸透している平和主義を捨てさせる、あるいは少なくとも憲法の改変に対する批判を小さくするためには、メディアの幅広い支援を必要とするのです。
その主目標がNHK、日本の国営放送です。
自民党はテレビ朝日と並び、あまり重要ではない問題について査問するとして、自民党は時事問題について精力的な取材報道をおこなっている『クローズアップ現代』の番組編集責任者を呼びつけました。
安倍首相とも個人的に親しい籾井勝人会長は昨年、NHKは今後、日本政府の方針に忠実に従う内容の報道を行うと明言しました。
さらに自民党は2013年、『家庭の事情により』みのもんた氏がテレビ界から去ることを後押ししました。
みのもんた氏が出演するテレビ番組では、ゲストたちが日常的に政権与党をやり玉に挙げる発言を行っていたと、上智大学のマイケル・チュチェック教授が指摘しました。
しかし威嚇を用いた報道機関に対する最大の圧力は、支配層に対し厳しい視線を向け続ける日本を代表する日刊紙、朝日新聞に向かいました。
テレビ朝日は朝日新聞の姉妹会社です。
昨秋、従軍慰安婦に関する報道記事の一部が偽の証言に頼っていたとして朝日新聞が謝罪を行った際、日本政府と保守系の新聞社や出版社などが集中攻撃を行いました。
この問題に関する史実の全体像は未だに明らかではありませんが、少なくとも朝日新聞社の記者たちは今やこの問題に関する記事を執筆することが非常に難しくなったと語っています。
日本政府の記者会見の場において、朝日新聞社の政治記者たちは時に怯えたようになっている、ライバル紙の記者がこう語りました。
自民党内の議員の一人は、安倍首相は放送免許の取り消しまでは行わないだろうと語りました。
そんなことをすれば、国権主義政府の評価が決定的となり、選挙において極めて不利な状況を作りだすことになる、この議員はそう指摘しました。
しかし客観的には、報道機関を怯ませる材料がふんだんに見受けられます。
国家機密の漏えいに関わったジャーナリストを刑務所送りにする新しい特定秘密保護法の成立は、調査報道の矛先を鈍らせることになるでしょう。
パリに拠点を置く国境なき記者団が公表した、世界の報道自由度に関するランキングで、日本は現在61位です。
この5年間で、日本は50位から10位以上順位を落としました。
http://www.economist.com/news/asia/21651295-japans-media-are-quailing-under-government-pressure-speak-no-evil?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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エコノミストと言えば、アメリカの大手メディアも度々引用する程の『世界の良識』を代表するメディアですが、そのエコノミストがこれだけの事を書いているのに、日本のメディアが冒頭のイラストの通りだというのはどういう事でしょうか?
ところでエコノミストの記事は読んでいると、『わが意を得たり!』と感じることが度々ありますが、今回は記事に加え、イラストもそうでした。
安倍首相の椅子の下にぬかずいているのが髪の長い女性記者ですが、首相が外遊する際同行するNHKの記者じゃないでしょうか?
IWTというこの女性記者のレポートを聞くたび、私は「何でこの記者は報告と称し、いつも政権のプロパガンダばかり話すのだろう?」と感じていました。
エコノミストのイラストレーターも同じことを感じていたのかもしれません。