ホーム » エッセイ » 【「政治状況はわが術中にあり!」選挙戦の勝利に確信を深める安倍政権 】
国内野党のあまりの力の無さと中国・北朝鮮の軍事的台頭に、計り知れない恩恵を受けてきた安倍首相
国民の多くが憲法第9条の改定には反対、しかし報道統制の上に乗り、着々と進められる改定への環境づくり
「衆参両院の3分の2議席以上の確保は可能!」メディア支配をさらに強め、安倍政権が衆参同日選挙に踏み切る公算は大
ジュリアン・ライオール / ドイツ国際放送 2016年1月25日
第二次世界大戦(太平洋戦争)後に制定された現在の憲法を書き換えるという最終目標に向け、7月に安倍首相が衆参両院の同日選挙に踏み切る可能性が現実味を帯びてきました。
複数のアナリストが安倍政権下の自由民主党が、憲法改定の発議に必要な衆参両院の3分の2の議席を確保できる可能性があると見ています。
自民党を始めとする日本の保守派の多くが、現在の憲法は1945年に戦争に勝利したアメリカによって『押しつけられたもの』だと主張してきました。
安倍首相が改定の目標にしているのは第9条です。
第9条は国際紛争の解決手段としての戦争を放棄するとうたっており、日本の交戦権を認めていません。
保守派はこれではいざという時に国民を守ることができないと批判し、憲法改定の特定目標としてきました。
一般市民の多くが第9条の改定には慎重であるにもかかわらず、安倍首相は国内野党のあまりの力の無さと中国の軍事能力の台頭に計り知れない程助けられてきました。
「最大野党の民主党ですら党内はまとまらず、首尾一貫した方針があるかのように見せつつ、内部に異論があることについては取り繕うしかないという有様です。」
明治大学国際総合研究所客員研究員の奥村準氏がドイツ国際放送の取材にこう答えました。
日本の民主党の党内には政治信条的に極右から極左までが混在し、それを何とかまとめあげようとしているため、結果的に矛盾が表面化することになっています。
その点がまさに自民党の思うつぼとなっているのです、奥村氏はこう指摘しました。
「安倍政権の政策に対し、その弱点を明らかにする有効な手立てを持たないだけでなく、民主党はその政権与党としての短い任期の最終段階においては、国内の報道機関のほとんどを敵に回してしまったのです。」
「こうした経緯すべてが、野党として否定的な評価につながっているのです。安倍政権を増々利するばかりです。」
奥村氏がこうつけ加えました。
▽追い風に乗る安倍政権
安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスが中身に乏しく、薄っぺらな基盤の上に築き上げられたものだと批判勢力が声を強めても、現在の日本経済が数年前と比較すればまだましだと思われている以上、安倍政権に対する支持はさらに拡大するでしょう。
衆参同日選挙が行なわれた場合、アジア太平洋地域の現在の情勢は日本の有権者の投票行動にどう影響するか、テンプル大学の日本キャンパスで研究を続けるジェフ・キングストン教授がドイツ国際放送の取材に次のように答えました。
「中国政府、そして北朝鮮政府の強硬姿勢が、結果的には安倍政権にシャンパンのケースを送ることになった、このことに賛成する意見が数多くあります。」
南シナ海で次々と領土紛争を引き起こしている中国政府の強硬姿勢、そして北朝鮮が最近行った核実験が、日本人の間の安全保障問題に関する懸念を大きくしたと、キングストン教授が指摘しました。
「中国北朝鮮の武力による威嚇のすべては、直接自民党への支持拡大につながりました。」
こうした国民感情の変化が、安倍首相の憲法改定への意欲を増々後押しすることになったのです。
「平和憲法を改定することに日本人の多数派の意見が向かうかどうか、私には判断はできません。しかし自分たちの安全が脅かされていると日本人が感じていれば、安倍政権が強調しているように、安全を保障する党への支持が拡大することを回避することはできません。」
アジア太平洋地域の専門家は厳しい口調でこう語りました。
▽ 自民党の圧倒的多数
2014年12月に実施された直近の衆議院議員選挙では、日本国民は475の議席中291議席を自民党に与え、6割以上を支配する第1党としての地位を不動のものにさせました。
そしてこの選挙で議席数を31に増やした仏教団体が後援する公明党は、自民党と連立を組んでいます。同党は2015年、第二次世界大戦以降初めて日本の軍隊の海外での戦闘行動を可能にする安全保障関連法案の成立のため安倍政権の政策を支持、成立させました。
しかし日本人のこの問題の専門家である奥村氏は、憲法改定の最終手続きである国民投票において、計算違いをするのは安倍首相の側になるだろうことを信じています。
かなりの数の有権者が安倍政権の政策の多くを支持するようになるかもしれないものの、中東その他の世界の紛争地帯に自衛隊を派遣するという方針にはためらいを見せる可能性が強いと奥村氏は考えています。
「日本の内外の状況がこれまでとあまり変わらないのであれば、私は自民党・公明党の連立与党か衆参同日選挙で若干の議席を失うことは確実だと思っています。しかし野党の側の状況が今以上に悪くなってしまえば、結果はますます不透明なものになるでしょう。」
奥村氏はこの点に留意するよう促しました。
「無所属の議員が議席数を増やし、その結果先行きが一層解りにくくなる可能性は充分にあります。」
http://www.dw.com/en/japans-abe-sets-sight-on-supermajority/a-19002776
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自民党安倍政権はナチスドイツのゲッペルス宣伝相が果たした重要な役割を熟知している、そして一方で民主党はそのことにあまりに鈍感に過ぎる、そんなことを感じました。
今問題にされている北朝鮮のミサイル発射にしても、日本のNHKのように「大変だ!大変だ!」と取り上げているメディアはなく、アメリカNBCニュースも英国ガーディアンも現時点でこの問題はトップ10ニュースにも入っていません。
そして米国CNN、アルジャジーラそれぞれの【アジアのトップ10ニュース】にもありません( http://edition.cnn.com/ASIA/ , http://www.aljazeera.com/topics/regions/asia.html )。
安倍政権のメディア支配、実に巧妙なものだな…と思います。
そして野党の弱体。
福島第一原発の事故、沖縄の基地問題、広島や長崎の過去の真実の軽視…
全国各地に反安倍政権の強い思いがあるはずなのに、それを国レベルに引き上げ、反安倍フォースを形成させることができずにいます。
これまでもワシントンポスト(米)やエコノミスト、ガーディアン(英)などを中心に、この状況では日本国民は救われないという指摘がありました。
野党、特に民主党はこの点に関する強烈な反省と、行動が必要だと思います。
ヴ・ナロード(民衆の中へ)!