ホーム » エッセイ » 『国家の主人公、それは国民』独裁者プーチンに立ち向かえ!〈第1回〉
【ロシアでも成長を続ける市民運動】立ち上がる市民たちが、国を変える!
「主義主張の些細な違いにこだわって互いに言い争い、反目を繰り返すだけの反体制派」
ベンヤミン・ビッダー、マティアス・シェップ / シュピーゲル・オンライン 11月25日
クレムリン宮殿の塔が影を落としているモスクワ川の中州で、古い体質のロシアの体制の隙間から、新たなロシアが芽を出し始めています。
チョコレート色の工場跡地、かつての『赤い10月(革命)』ビルに、アーティスト・カフェ、ナイトクラブ、そしてインターネット出版会社の編集部などが引っ越してきました。
ここにあった工場は1917年の10月革命の後、国有化され『キャンディ工場1号』と名称が変更されましたが、今は若くて裕福なモスクワっ子 – アーティストやロシアの新興資本家、そして最新流行のスタイルに身を固めた女の子たちのたまり場になっています。
▼ 告発
この日、現体制に反対の立場の新しい情報連絡協議会は、ココア倉庫だった場所に作られたバーで、初の会合を開催しました。
ウェイターたちが一斉にラウンジチェアを長方形に並べて行きました。
そして、2つのマイクを設置しました。
一個は各派の代表のため、もう一つのマイクには弁護士であり、ブロガーとしても活躍するアレクセイ・ナバルニーの名前を書いた紙がピンでとめられていました。
数週間前、ナバルニーは45人のメンバーからなる情報連絡協議会の議長に選ばれました。
彼は、ユダヤ人の詩人、極右の活動家、自由主義の経済学者、そして2004年以来共産主義への回帰を唱えるスターリン主義者のセルゲイ・ウダルゾフなど、種々雑多なメンバーから構成されるこの協議会を率いることになりました。
協議会の目的はただ一つ、ウラディミール・プーチン大統領をクレムリンから放り出し、クレムリンを支配しているプーチンの与党に、直接民主主義の洗礼を与えることです。
反体制派のテレビ局Dozhdは、協議会の各候補の演説を放送する、アメリカの大統領選挙スタイルの討論番組を制作しました。
「私たちの協議会の目的は、変化を願っているこの国の何百万という人々の力を結集するための取り組みを援護していくことです。」
ナバルニーがこう語りました。
「一般市民の声をまとめ上げる仕組み、そんなものは今までこの国には存在しませんでした。」
▼ ひとすじの光明
そのことは真実です。
何十年もの間、体制に反対する人々は主義主張の些細な違いにこだわって互いに言い争い、反目を繰り返すだけの集団でした。
新しく選出された情報連絡協議会のメンバーには、双方の陣営から参加がありました。
ゲンナディ・グドコフはソビエト連邦当時の立法機関であった、Dumaを追い出された前KGB大佐です。
金髪の名士クセニア・ソブチャクは、プーチンの師の一人であった前サンクトペテルブルグ市長の娘です。
この雑誌を広げた人々は、皆一様に同じ感想を口にしました。
「金持ちがすることはいつも同じ。贅沢な環境で、プールサイドでくつろぐ…」
この事実は、新たに台頭してきた反政府勢力の次なる問題を明らかにしました。
モスクワの富裕者層と中産階級が、それぞれに抱いているこの国の政治体制に対する不満の中身がかけ離れているという問題です。
そして肉体労働者、そして農民は相変わらずプーチン支持者のままです。
▼ どうしようもない場所
かつてのココア倉庫で開かれた会議は、結局喧嘩別れに終わりました。
共産党の政治家ウダルゾフは、「手順づくりの段階ですでにケンケンガクガク」の議論をするよりも、もっと大規模なデモ行進を行うべきだと考えています。
いちばん若い議員のマキシム・カズは、こうした考えには反対です。
27才の彼はデモ行進などはあまり重視しておらず、議題からデモ行進の類を除外するよう求めました。 「生意気な、ひよっこめが!」
ウダルゾフがやり返しました。
カズはポーカーの腕前により、経済的に自立することが出来ました。
カズは有望なプレーヤーに大きな大会への参加費用を貸し、賞金の何割かを受け取る事業を立ち上げました。
カズの年収は2,800万円を超え、この国の将来の政策を考えることに専念することが出来ます。
カズが反プーチン集会で行った演説は多くの注目を集めましたが、2012年3月4日、プーチンが3度目の大統領に就任したその日、プーチン率いる統一ロシア党が強固な地盤を持つシュキノ地区の地区評議会の席につきました。
この辺りは旧ソビエト連邦の原爆製造の母体となったクルチャートフ研究所があった場所で、通りにはかつてのソビエト時代の将軍の名前がついたままになっています。
http://www.spiegel.de/international/world/grassroots-movement-gains-momentum-in-russia-a-868338.html
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今日からドイツのシュピーゲル・オンラインの記事を3回に分けご紹介します。
社会を変えていくのは、市民自身の力、そして市民の意思。
その事を伝える記事です。
私はロシアというとどうしても「暗い」イメージがつきまとい、はっきり言って「得手」ではありません。
その暗さはロシア特有の「陰険で残酷な権力」にあるのだ、という事をこの記事を読んで改めて感じました。
しかし『市民が立ち上がる』ことについては、日本以上に制約の多いそのロシアで、市民が立ち上がり始めました。
日本の大手メディアは、権力者の動向については実に些細な事も取り上げますが、いくら志が高く価値があっても、一般市民となると手のひらを返したように冷淡になります。
日本で市民運動が盛り上がらない原因のひとつ、それも大きなもののひとつに、この日本の大手メディアの体質があると思います。
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【 続く過酷な挑戦 : ダカール・ラリー2013・第4ステージヘ 】
アメリカNBCニュース 2012年1月8日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
カタールのナセル・アル・アッティヤとその同僚スペインのルーカス・クルース・チームの上を飛んでゆくヘリコプター。2013年ダカール・ラリーは第4ステージに入り、ペルーのナスカからチリのサンチャゴ間で、1月20日まで争われる。1月8日。