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【 ロック・オン!】

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その『戦術』に関わったのは、中国の誰なのか?
2月末の日米会談の効果は?

エコノミスト 2月9日

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誰も住んではいない5つの小さな島々、尖閣諸島あるいはダイユー諸島を巡る日本と中国の武力衝突はまだ起きないという観測の方が一般的です。
しかし、あり得ないという事ではありません。
危うく実弾射撃に発展しそうな事態が起きていたことが明らかになりました。

2月5日、日本政府は3km先から日本の海上自衛隊の駆逐艦めがけ、6日前に中国の軍艦がミサイル発射の前段階である射撃用レーダーの照射を行ったと発表しました。
「中国側による一方的な挑発行為であり、誠に遺憾です。」
日本の安倍信三首相は、2月6日の議会での演説でこのように語りました。

今回の事件は尖閣諸島から約100km離れた公海上での出来事で、中国が行う武力による威嚇を行う際の行動パターンに一致します。
1月19日にも中国は、日本の艦載ヘリコプターに向け射撃用レーダーの『ロック・オン』を行ったものと見られます。

昨年9月以降、中国は日本政府が尖閣諸島の内の3つの島を個人所有者から購入して『国有化』して以来、日本政府が主張する主権だけでなく、実効支配を行っていることにも強く反発しています。

日中力語句の艦船と航空機が尖閣諸島を巡る哨戒活動を繰り返し、互いの『侵略行為』に対してはジェット戦闘機による緊急発進を繰り返すなど、空と海で一触即発の危機が続いています。

アメリカ政府は尖閣諸島の所有権については一切公式の見解を明らかにしていませんが、日本との安全保障条約に則った行動を行う事を確約しています。
しかしこの数週間、アメリカ政府の複数の外交官がアジア地区に派遣され、日中力国に対し自制を求め、冷静になるよう説得工作を行っています。

キューバ危機

キューバ危機


アメリカは冷戦期間、現場における計算外の衝突や事故により深刻な軍事衝突などが起きないようにするため、ソビエト連邦との間に抑止のための仕組みを構築していました。
しかし日本と中国との間には、そうしたメカニズムはありません。

冷戦の間、誤算または事故に起因している重大な対立を妨げるために、アメリカとソビエト連邦はメカニズムを少なくとも確立しました。 中国と日本には、そのようなほとんどメカニズムがありません。

解しかねるのは、両国間の緊張関係が緩和する方向に向かっている、そのタイミングで1月30日の事件が発生したことです。

12月に首相に就任した安倍氏と、新たな中国の指導者習近平氏との間で、緊張緩和に向けた会談についての話し合いがすでに始まっていました。

中国はこれまで尖閣諸島周辺の哨戒活動に海軍では無く、沿岸警備機関の艦船を主に使っていました。
そして中国メディアも表向き好戦的な論調は行っていませんでした。

ところが実質的な中国共産党の機関紙であり、常々国家的主義的主張を展開してきた環球日報の2人の解説者が、今週に入ってただ一紙、1890年代、1930年代、そして1940年代の日本による『侵略行為』を忘れないよう、強い呼びかけを始めたのです。

こうした経緯から日本側は、今回の行為が政権の上層部の指示によるものでは無く、現場指揮官の判断によるものだと分析しています。

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日本の政権与党である自民党の外交問題に関するスポークスマンである河井克行氏は、今回の事件に中国政府自身も困惑しているのではないかと考えています。
「中国はまるで無法者の国家のようだという印象を受けました。」
中国の新政権が軍部を把出来ていないことが、日本政府の『最大の懸念』であると語りました。

しかし別の見解、今回の『ロック・オン』が中国政府の上層部の方針により決定したものであるとすれば、事態は予断を許さないものになります。

オーストラリアのシンクタンク、ロウィ研究所で中国の外交政策について研究を行っているリンダ・ヤコブソン氏は、中国側の対応については、尖閣諸島をめぐる今回の危機が重要な政策課題の一つである新政権、その指導者である習近平氏自身が深く関与していると主張しています。
ヤコブソン氏は今回の対応に関わった匿名の中国政府高官から、直接話を聴いたと語っています。
この高官は、習近平氏が『ロック・オン』という行為の危険性は認識はしていたものの、より強い姿勢を示すよう求める政権内部の強硬派の意見に従わざるを得なかったと語っています。

安全保障問題に関する前政権の補佐官を務めた長島昭久氏は、中国側は日米の同盟関係の強度を試しているのだと考えています。
尖閣諸島の問題については強硬な姿勢で臨むことを国政選挙で約束した安倍首相に対し、中国側が揺さぶりをかけたのだとする、別の見方もあります。

今のところ習近平氏と安倍首相との会談が行われる保証はありません。
どちらも『強い指導者』としての評価を得たいと考えている以上、互いに譲歩することは簡単ではなさそうです。

前出のヤコブソン氏は、今回の紛争解決の第一歩としては、両国がこの水域での漁業権を互いに認め合い、政府機関によるパトロールについては、日を違えて行うよう、申し合わせを行うべきだと考えています。
しかし日中両国によるこのような緊密な連携は、日本側が受け入れるためには多大な努力が必要であり、それは中国にとっても同じことです。

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こうした対応を行うためには、尖閣諸島の主権については問題が生じていることを、少なくとも安倍首相が暗黙にでも認める必要があり、そうなれば日本の体面に少なからず英気要することになります。
安倍首相は今月末、ワシントンを訪問することになっており、オバマ大統領が日米同盟の重要性についてあらためて確認することを、何より強く望んでいます。
それにより中国がより慎重な姿勢に転換するよう願わざるを得ません。

しかし、9月以降の中国の対応を見る限りにおいて、その可能性は極めて少ないと言わざるを得ません。

http://www.economist.com/news/asia/21571466-dangerous-dance-around-disputed-islets-becoming-ever-more-worrying-locked
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この問題に関する世界の視点は「あの小さな島々に一体何があるのか?」というのが主流のようですが、一方では中国の横車に対する目も厳しくなっています。
だからといって、中国の外交政策が国際社会の圧力によって簡単には方向転換しそうには無い事が、記事中で述べられています。
結局は中国もその外交政策の舵取りは、国内世論の行方を注視しながら、という点で日本と違いは無いようです。

「外交とは、その9割が内政問題である」と英国の政治家の誰だったかが言っていました。
国際社会は尚、頑迷で自らの非を認めない政権に対しては、倦む事無く圧力をかけて行きながら、中国国内の世論を喚起する働きかけも必要なのではないでしょうか。

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写真集【世界を驚かせた突然の退位宣言】

アメリカNBCニュース 2月11日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)

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2月28日をもって世界の12億人のローマ・カトリック信者の指導者としての地位を退くと、11日にローマ法王ベネディクト16世が発表したことに世界が驚いています。
最早重要な責務を果たすだけの力がもう残されていない、というのが退位を決断した理由です。

85歳の法王はこの日の早朝に開催された少人数での会合、「オトラントの殉教者を聖人の列に加えることのための教皇枢密会議」の席上ラテン語で発言を行っている間、この発表を行いました。

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発表のあった日の聖ピエトロ広場、2月11日、ヴァチカン(写真下)。
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若き日のベネディクト16世、ジョセフ・ラッツィンガー青年(右後ろ)、家族とともに。1951年7月、ドイツ
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