ホーム » エッセイ » 「アベの利用価値はほとんど無くなった?」トランプ《前編》
「安倍首相は完全に無視されていた」!
安倍首相の外交努力が何か功を奏したことはほとんどない
ジョン・ハドソン、ジョシュ・ドーシー / ワシントンポスト 2018年8月28日
6月のホワイトハウスで行われた会見の席上、緊迫した空気の中でトランプ大統領は安倍首相の不意を突くようにこう発言しました。
「私は真珠湾を忘れないよ。」
米国を第二次世界大戦への参戦に追い込むことになった、日本軍による奇襲攻撃に言及したのです。
その後トランプは日本の経済政策に対する辛辣な批評を始めました。
この時の会議の状況に詳しい人間が説明しました。
トランプは日本に対する米国の貿易赤字について不満をぶちまけ、安倍首相に向かい牛肉や自動車などの米国の輸出産業にとつてにとって有利になるよう、二国間貿易交渉を速やかに開始するよう言い渡しました。
安倍首相を憤慨させたこの会談で、トランプは世界の中で「最も親密な関係にある」首脳との関係が逆説的なものであることを証明しました。
2人の関係は『蜜月』と表現されるほど緊密なものでした。
トランプはどの国の首脳よりも多い8回安倍首相と会い、電話での会談は26回に上っています。
ホワイトハウスのある補佐官はゴルフをネタにこんな冗談を言っています。
トランプは世界中にその映像が流れたエピソード、一緒にゴルフした際にバンカーに転がり落ちた安倍首相をからかう一方、素早くバンカーから這い上がる安倍首相の様子を見てその俊敏さを褒めたのです。
トランプは安倍首相を抜け目のない交渉相手と見なしているように見えます。
そして安倍首相について「いいヤツだ」と表現しています。
「私はトランプ大統領が安倍首相を悪く言う場面をみたことがありません。他の国の多くの首脳については違いますが…。」
ホワイトハウスを始めとする米政府関係者、国務省職員、そして日本政府関係者らは異口同音にこう語りました。
今回の記事を書く際、日米の二国間交渉についてインタビューした際の彼らの反応です。
しかしここ数ヶ月は、トランプの北朝鮮への意表をつくようなアプローチ、日本の貿易慣行に対するしつこいほどの否定的な見解が、トランプと安倍首相の関係を合意形成ができない膠着状態に陥れ、日本政府の側は不満を募らせています。
こうした亀裂が生じたことは、トランプの「傑出した姿」と「卓越したリーダーシップ」をおおっぴらに褒め称え、3,800ドルもする金メッキゴルフクラブを気前よく進呈し、貿易摩擦について他の同盟各国がアメリカ製のバーボン、トウモロコシ、オートバイに対して素早く報復関税をかけたのとは対照的に日本製鉄鋼製品とアルミニウムにトランプが高額の関税を課す措置を取っても報復しないなど、トランプとの個人的関係の構築に重点的な投資を行ってきた安倍首相にとっては事態が失望しなければならない局面に入ってしまったことを意味します。
安倍首相の外交面での取り組みが何か功を奏したことはほとんどありません。
日本は金属製品の関税の暫定的免除を受けていない唯一のアメリカの主要な同盟国であり、今度は日本の自動車産業が高額の関税を課される可能性が出てきました。
これは自動車産業が稼ぎ頭というだけでなく国の産業の精神的支柱にもなっている国にとっては、容易ならざる事態です。
「安倍首相はトランプとの個人的な関係がそのまま強い二国間関係に発展することを望んでいました。しかし安全保障面と経済面の両方で、彼は大きな挫折に直面しているのです。」
こう語るのは、ワシントンのシンクタンクであるウィルソン・センターの日本専門家、ゴトー氏です。
環太平洋パートナーシップ(Trans Pacific Partnership)からの撤退による影響によって生じた損失を相殺するためにも、トランプ政権日本との強力な提携を必要とします。
TPPは経済的に好調な太平洋沿岸地区11カ国の中で、アメリカをあらためて中心的存在にするはずでした。
日本の政府関係者は会談中にトランプが間違っている経済データを基に話を進めた上、北朝鮮問題に対する日本の助言は断ると発言しました。
6月にシンガポールで開かれた歴史的な北朝鮮の金正恩総書記との会談の前、安倍首相は電話会談や会合の場で北朝鮮が非核化の具体的な措置を講じるまで、韓国との軍事演習を中止しないよう、そして朝鮮戦争を正式に終了させないよう、トランプに対し繰り返し助言してきました。
安倍首相に近い日本政府の関係者のひとりは「安倍首相は完全に無視された」と述べました。
「安倍首相の補佐官達は、今やマティス国務長官の言うこともケリー大統領首席補佐官の言うことも耳に入れようとしないトランプの意向に従うしかないと諦めています。ましてホワイトハウスの安全保障問題の顧問であるジョン・ボルトン氏の影響力は極めて限られたものでしかありません。」
トランプ政治の先行きに対する不透明感はさらなる懸念へとつながっています。
トランプが上級補佐官の助言も無視し、北朝鮮との核交渉を軌道に乗せるため、沖縄や韓国に駐留しているアメリカ軍の存在も交渉のテーブルに乗せてしまう可能性すら懸念されています。
6月に急遽行われた安倍首相の訪米によるトランプとの会談の後、日本の当局者は自分たちが彼の意向を十分に理解しているということに自信を持っていたはずでした。
アメリカ政府当局者は、米国の軍事体制を変える計画が検討されていることを否定していますが、両首脳間で貿易交渉について厳しい応酬が続いていることについては当然のことだと考えています。
《後編》に続く
https://www.washingtonpost.com/world/national-security/i-remember-pearl-harbor-inside-trumps-hot-and-cold-relationship-with-japans-prime-minister/2018/08/28/d6117021-e310-40a4-b688-68fdf5ed2f38_story.html?utm_term=.ebfd26c20543
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状況について的確に表現する言語力を持たないトランプは、安倍首相を単に「good friend」ではなく、「good and convinient friend」と言いたかったのだろうと思います。
単に「良い友だち」というのではなく、「都合の良いときだけ友だち」ということです。
友だちグループの中で、いつも金を持っていて気前よく人におごったりして友人たちの歓心を買おうとするものの、その実あまり尊敬もされていなければ大切にもされていない存在、それが今のアベ日本だと思いませんか?
対トランプということを考えると、日本はそもそも入り口で間違っていたと思います。
自分の利害にキタナイ人間とつき合わなければならなくなったら、「オレは理不尽な要求は許さないぞ」という毅然とした態度を取らないとどこまでもつけこんでくるのがこの類の人間。
今や日本全体がトランプ・アメリカの「good and convinient friend」にされてしまいそうになっているのは、誰の目にも明らか。
このままではアメリカが世界各地で行っている軍事介入に、徴兵された日本の若者が送り込まれる可能性すら見えてきたのではないでしょうか?
日本は急ぎ看板をかけ替えなければ、大変なことになってしまいます。
「We are not ABE!」