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【 重要な課題を山積みにしたまま改憲に走るアベ政治 】

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現状のまま憲法改定を強行すれば、日本の経済改革は崩壊へと向かう

安倍氏は構造改革についてたくさんの話をしてきたが、身を入れて取り組んだことはほとんど無い
安倍政権の政策は日本の財政事情により持続不可能なものばかり

エコノミスト  2018年9月20日

 

若干の計算違いはあったものの、自民党総裁選の結果ははっきりと、そして楽勝という形で安倍首相の勝利を明らかにしました。
9月安倍晋三は自民党総裁選挙で3期連続で首位に立ち、党所属の議員票の69%を獲得しました。
自民党は日本の国会で過半数の議席を占めており、安倍氏は自動的に首相として3年間の任期を手にしました。

 

安倍氏はすでにそれまで連続2期に制限されていた自民党総裁の任期を自分の手で3期に延長しており、今度が首相として最後の3年間になるでしょう。

2019年の新天皇の誕生、そして2020年の東京オリンピック開催、安倍首相はこれらに加えこれからの3年間で何をしようとしているのでしょうか?

 

安倍首相は外交上の安全保障政策に固執しています。
彼は戦前軍国主義と植民地主義につき動かされ歴史に汚名を刻んだことにより出来上がったコンプレックスから日本を抜け出させ、国際紛争の場で日本が武力も含めどんな権限でも行使できるようにすることを強く願っています。

そのため安倍首相は、日本の平和主義の土台を築いた第二次世界大戦の敗戦後にアメリカが課した憲法第9条を廃止しようと長い間望んできました。

「憲法を見直すことは安倍氏の魂と血の中にあります。安倍氏を突き動かすマグマが入っているのです。」
ニュースレター「インサイドライン」を主宰する歳川隆雄氏がこう語りました。

 

しかし一方で安倍氏は現実主義者でもあります。
日本が平和主義から後退したことが明らかになれば、中国、韓国、北朝鮮を怒らせ、多くの有権者を警戒させることになるということが明らかになると、彼は若干の軌道修正に着手しました。

安倍首相は現在、日本が常設の軍隊の保持を禁止する条文、単に「自衛隊」の存在を正当化する一項を加えるよう主張するようになりました。

 

自民党とその連立与党である公明党は、憲法改定案を可決するのに十分な両院の過半数の議席を占めています。
しかしすべての国会議員が憲法改定に熱心であるわけではありません。
それでも尚憲法改定を押し進めると言うことになれば、安倍首相はそこに相当力を集中しなければならなくなります。
改定案はさらにその後、一層ハードルが高い国民投票での批准を必要とします。

▽ 安倍首相の『第一の公約』は経済問題だったはず

 

そのことは結局、安倍政権は経済政策に多くの時間を割くことはないという見方につながります。

安倍首相が、第3の任期中に30年間続いた日本のデフレに終止符を打つことができたと宣言することを願っている、歳川氏はそう考えています。

 

しかし日本経済は現在も尚、前例のない財政出動と金融緩和策に依存せざるを得ない状況にあるようです。
2012年に首相に就任して以来、安倍氏は構造改革についてたくさんの話をしてきましたが、身を入れて取り組んだことはほとんどありません。
最後の3年の任期もそのパターンが繰り返されるものと見られています。

 

首相は大企業が賃金の引き上げや国内の設備投資にこれまで溜め込んだ巨額の現金を投入ことを奨励するために、税法上の優遇措置を導入するかどうか迷ってきました。
さらに起業する人々への支援策、特に地方における対策については曖昧な話ばかり繰り返してきました。

事実、2018年初めに雇用に関する法律を修正した以降は、終身雇用制度の見直しを含めはっきりと違いがわかるような経済改革を再開する様子はありません。

同様に、これまで手厚い保護の下に置かれていた産業を自由競争の波にさらす取り組みに着手したものの、競争を加速させることについてはほとんど言及していません。

 

一方、安倍首相に最も忠実な同志であるはずの自民党議員の松島みどり氏ですら、安倍首相が日本の人口減少・高齢化の問題を無視していると認めています。
人口は1日当たり1,000人ずつ減少している一方、高齢化が進行し今や5人に1人は70歳以上です。
すぐに何か対策を取らなければ、労働者と消費者の両方が減少しているという最も深刻な理由で経済が萎縮している以上、安倍氏がいかなる経済政策を採用したところですべて無駄になってしまいます。

 

しかし安倍首相は労働力不足の問題を解決するために、大きな規模で移民を受け入れるつもりはないようです。
いや、むしろ移民の受け入れ拒否のチャンピオンといってよいでしょう。

 

日本国内の企業や団体はこれまでより多くの外国人労働者を雇っていますが、雇用期間は短期に限られ、従って家族とともに日本にいるわけではありません。
ただ新たに日本にやってきた人々も永住は許されないということを強調することだけはしなくなりました。

働く女性の割合は表向き上昇しており、労働世代人口の減少を補うのに役には立っています。
しかし日本の税制は結婚している女性にとって、特に収入の低い側(女性が多い)にとってメリットがありません。
女性が150万円以上の収入があれば途端に税金が重くなるため、多くの女性は非正規労働にのみ従事しています。

 

さらに自民党総裁選挙で安倍首相の対立候補が指摘しているように、安倍政権の政策は財政的に持続不可能です。
公的負債はGDPの250%に達しています。
政府は2025年にこうした収支のバランスをとる予定ですが、既に赤字はGDPの4.4%に達しています。
安倍首相は1年間後に消費税を8%から10%に引き上げるとしているが、それによって得られる歳入のほぼすべてが無料の託児所と保育園を設備する方針が既に決定しています。

 

さらに安倍首相は定年退職年齢を70歳にまで延長し、年金支給開始を遅らせることを可能にし、裕福な高齢者には医療費の自己負担割合を引き上げる方針も明らかにしました。
すべて財政上は歓迎すべきものですが、これからさらに積み上がると予想される日本の債務解消には見るべき成果は得られないでしょう。

「安倍首相が取り組もうとしていることはある程度は評価できますが、本当に問題を解決できるほどの効果はありません。」
と早稲田大学の中林美恵子教授がこう語りました。

 

悪いことに最後の任期ということから、さらには自民党内での後継者選びが激しくなると予想されることもあって、安倍首相が任期中に改革を達成することは難しいかもしれません。
そして来年には、参議院議員と多数の地方議会選挙が目白押しになっています。

 

もし安倍首相が自分の経歴を磨きたいと思っているなら、経済改革の手は抜かない方が身のためです。

 

https://www.economist.com/asia/2018/09/22/japans-prime-minister-has-a-lot-to-do-in-his-last-years-in-office

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この記事は既にご紹介した【 アベさん、経済再生の公約を反古にして改憲に走ったら、地獄を見ますよ… 】( http://kobajun.biz/?p=34495 )と同じ日のエコノミストの電子版に掲載されたものです。

これまでご紹介しただけで

アベノミクスが掲げた経済目標の大半が失敗に終わっている(ドイチェ・ヴェレ - http://kobajun.biz/?p=29815)

問われるべきは安倍首相の経済の実績「そんなものはあったのか?」(エコノミスト - http://kobajun.chips.jp/?p=28156)

大企業とそこに連なっている投資家と、中小企業や一般庶民との間にはっきりと格差を作ったアベノミクス(ニューヨークタイムズ - http://kobajun.biz/?p=25382)

などの指摘がありました。

 

政治の良心、それはアベ政治の下では『死語』なのでしょうか?

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