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【 東京電力の広報事業と福島第一原発、その現実 】

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所要時間 約 9分

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メルトダウンした1~3号機の廃炉、現在の東京電力にとっては難しすぎる課題
日本は未だ、破滅の淵から抜け出した訳では無い
毎日放射線を浴びその身を危険にさらし、懸命に働く数千の作業員

アンナ・コレン / アメリカCNNニュース 12月5日

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2011年3月11日金曜日の午後、私はCNNのニュース編集室にいて、日本から恐ろしい内容の報道が次々と送られてくる、そのテレビの画面にくぎ付けになっていたことを憶えています。
そして日本の沿岸に押し寄せ、そこにあるもの何もかもを飲みこんでいく津波の上空からの映像に、身も心も恐怖でいっぱいになりました。
この時目にした映像は、一生私の心から消えることは無いでしょう。

そのわずか24時間後には自分自身が日本の災害現場に立ち、現地からの報告を行うようになろうとは、その時点では思ってもみませんでした。

そのとき私たちは地震と津波による大量破壊、そして膨大な数の犠牲者の発生と向き合っていましたが、他方ではその時点ではまだ視界に入っていない、もうひとつの大災害が進行していたのでした。
そう、福島第一原子力発電所事故…

大量破壊をもたらした地震と津波は福島第一原発では3基の原子炉をメルトダウンさせました。
そして日本の前途にはアルマゲドンが見え始めていたのです。
当時福島第一原発の状況はあまりに危険であり、報道関係者の立ち入りは一切許されませんでした。
あれから2年半以上が経ち、私はやっと福島第一原発の施設内に足を踏み入れることが出来たのです。

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私たち報道関係者は現在福島第一原発の内部で行われて事故収束・廃炉作業の進捗状況を検証するよう、東京電力からの招きを受けていました。
この事故収束・廃炉作業をメディア関係者が間近で直接検証するのは、これまで一度もありませんでした。

その日私たちは福島第一原発に向け車を走らせていましたが、通過する途中の家々には人の気配は無く、庭や田畑には植物が伸び放題に生い茂っていました。
察するに2011年の福島第一原発の事故発生の際、この場所から避難して以来、一度もここには帰ったことが無いのでしょう。

かつては60,000人の人々がにぎやかに暮らしていたこの場所は、今や完全なゴーストタウンと化してしまいました。
唯一人間が居る場所、それは道の途中に設けられた検問所だけです。

我々は、「立ち入り禁止区域」に入りました。
目の前を行きかう人間は福島第一原発の施設内で事故収束・廃炉作業に従事するため、毎日宿舎と現場を往復する3,500人の作業員だけです。
放射線量の高い場所で働く彼らは、毎日放射線を被ばくし続けています。

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東京電力の案内で福島第一原発に到着した私たちは、放射線量を測定するためある建物に連れていかれました。
私たちは福島第一原発を出る際にもう一度この検査を受けることになりますが、これは敷地内に滞在している間、どれだけの被ばくをしたか確認するためです。

最初の検査の後、私たちは同じ場所で放射線防護服のセットを完全装備しました。
防護服はタイベック・スーツ、2枚重ねの靴下、ゴム長靴、3枚重ねの手袋、帽子、そして防護マスクからなります。
皮膚の露出部分はありません。
また、自分がいる場所の空間線量の確認のため、線量計を携行していきます。

防護服の着用、機器の携行を確認の上、私たちは山裾を切り開き、海岸線のすぐ脇に位置する福島第一原発の現場に入っていきました。

当時の海は穏やかに凪いでおり、この海が2011年3月のあの日、巨大な規模の殺人者・破壊者として襲いかかってきたことを想像することは、きわめて困難です。

4号機建屋
東京電力によってたったひとつ幸運なことがありました。
事故当時、4号機だけは稼働を停止していたという事実です。
水素爆発が起きましたが、4台並んで建っている原子炉のうち、被害は最小限に留まりました。
理由?
それは当時4号機は呈点検中で、地震と津波に襲われた当日、稼働を停止していたからです。

巨大な原子炉建屋の中に、補強・修理工事の済んだ使用済み核燃料プールがあります。
陽のプールの上に、緑色をした水の中深く沈んでいる核燃料アセンブリの取り出し作業を開始した巨大なクレーンがあります。
1,500組の核燃料アセンブリの取り出し作業は順調な滑り出しを見せ、東京電力はそれをもって「事故収束・廃炉作業において、記念碑的な一歩をしるした」と表現しました。

取りだされた核燃料アセンブリは、別の場所にある共用プールの中に運ばれ、これから20年の間貯蔵されることになっています。
この作業は2014年内に完了することになっていますが、原子炉4号機を廃炉にするための困難な上に、ゆっくりとしか進行しないさぎようで作業です。
しかし、これ以外に「事故収束・廃炉作業において、記念碑的な一歩」を期待できる状況は福島第一原発の中にはみあたりません。

3号機
東京電力が本当に克服しなければならない課題は別にあります。
メルトダウンしてしまった原子炉1~3号機を、どうやって廃炉にするかという問題です。
付近は放射線量が極めて高く、近づくことすら容易ではありません。

もう一つの大きな問題は、高濃度の放射性物質を含む汚染水です。
東京電力は毎日約400トンの高濃度の汚染水を汲み上げ、敷地内に作り続けているタンク内にため続けています。
この汚染水が地面に漏れ続け、最終的には海に浸出しているのではないかという恐れは未だ払しょくされてはいません。

私たちはひとつの高い建物の上から、福島第一原発の全体を見渡すことが出来ました。
そこから見えた景色は、必死に事故収束・廃炉作業に取り組んでいる原子力発電所、そしてその事故により未だに破滅の淵から抜け出せないでいる日本の姿でした。

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福島第一原発の現場で毎日放射線を浴びその身を危険にさらしながら、与えされた仕事を何とかやり遂げようとしている数千人の人々の姿は、日本の歴史に鋭い痛みとともに刻まれなければなりません。
この国の未来は、まさにこの人々の双肩にかかっているのですから。

http://www.independent.co.uk/news/world/asia/fukushima-nuclear-plant-delicate-operation-underway-to-remove-uranium-fuel-rods-from-unstable-storage-facility-8946429.html?origin=internalSearch
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明日12日(木)は都合により掲載をお休みさせていただきます。
13日(金)新たな記事をご紹介しますので、よろしくお願いいたします。

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【 海に輝く星空 】

アメリカNBCニュース 12月9日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

ランドサット
緑がかった植物プランクトンが、バルト海に浮かぶスウェーデンのゴットランド島を囲むようにして渦巻いており、さながらファン・ゴッホの有名な作品「星が多い夜」を見ているかのようです。
この写真は2005年にランドサット7号衛星によって撮影されたものですが、41年間に渡り続いているランドサット地球観察プログラムの中でも、ベスト5に入る傑作とされています。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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