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【 目前?『フクシマ・ウォーター』の海洋投棄 】《後篇》

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所要時間 約 8分

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東京電力・日本政府の相変わらずの隠ぺい体質、それを改めない限りは国際社会に疑惑を持たれて当然
福島第一原発がトリチウムを海洋投棄してもアメリカが受ける影響は軽微、日本の沿岸漁業への打撃は不明
処理済み放射能汚染水の海洋投棄による環境への影響、国際原子力機関の調査要請を無視する東京電力

カール・マチーセン / ガーディアン 4月13日

汚染水2016
福島第一原発の事故では太平洋中に、これまで0.1~0.5ペタベクレルのトリチウムが漏出あるいは放出されました。
サウザンプトン大学の海洋科学者であるサイモン・ボクサール教授は、トリチウム以外の放射性物質を取り除いた後の福島第一原発内の汚染水の全量を太平洋中に投棄したとしても、アメリカ西海岸に到達するのは約4年後になり、その頃には検出不可能な程度にまで減少しているだろうと語りました。
「大きな物差しで考えれば、福島第一原発が処理済みの汚染水を太平洋に投棄しても、その海洋の規模から考えて、影響は最小限に留まるものと考えられます。」
ボクサール教授はこう語りました。

福島第一汚染水タンク
「理想を言えば、こうした解決方法は望ましいものではありません。しかしこうなってしまったら、物事を前に進めるために必要な、そして安全な解決方法とは何かという事が最大の問題になります。様々な点で、処理済み汚染水の海洋投棄が実際的な解決方法なのです。」

しかしボクサール教授はある点について指摘しました。
それは地元に対する影響の可能性です。
太平洋に放出されたトリチウムが拡散していくまでに時間がかかり、すでに大きな打撃を受けている水産業にさらなる悪影響が及ぶ可能性があります。

国際的な海事法は、廃棄物を沖合に投棄するためのパイプラインの建設を禁止しています。
したがってどのような海洋投棄を行うにしても、ゆっくりと進行させる必要があります。
東京電力は処理済みの放射能汚染水を海洋投棄した場合の環境への影響を調査するようにという国際原子力機関(IAEA)の求めに対し、回答はしませんでした。

spiegel07
福島第一原発内に保管されている3.4ペタベクレルのトリチウムの海洋投棄を行っても全世界的にはそれ程の脅威ではないという事が明白であるにもかかわらず、福島第一原発の事故発生以降の収束作業過程について日本政府と東京電力が相変わらず極めて不透明な態度を取り続けているため、今後どのような対応を行うにしても、その結果が安全かどうか断言することは不可能だと、ウッズホール海洋科学研究所の上級研究員であるケン・ビュッセラー氏が語りました。
「詳細なデータが提供されない限り、その処置が良いアイディアかどうか判断することはできません。
私が欲しいのは独立した機関がすべてのタンク内を検証したデータ、残っている放射性物質の種類と濃度、そしてそれを一日あたり何トン海洋中に放出するのかという情報です。そうすれば、私たちは『心配する必要はありません。私たちを信用してください。』という根拠の不明な発言よりもずっとましな情報を手にすることが可能になります。」

ビュッセラー氏はあるわずかな相違点を指摘しました。
東京電力はすべての放射性物質の漏出が止まったと公表していますが、ビュッセラー氏自身が参加したウッズホール海洋科学研究所の調査では、非常に低い濃度ではありますが福島第一原発からはまだセシウムとストロンチウムの海洋中への漏出は止まっていません。

汚染水02
「何が起きているかについて誰も独立した公平な判断が下せる状況に無ければ、様々な疑いを招く結果になるのは当然のことです。」

トリチウムを取り除かないまま、放射能汚染水を海洋投棄する動きが強まっていることは、米国企業のクリオン社とその親会社であるヴェオリア社の取り組みにとっても打撃になりました。
同社は2014年、福島第一原発の汚染水問題に対応するためのトリチウム除去テクノロジー開発のため、日本政府から1000万ドル(約10億9,000万円)の補助金を与えられました
この計画では90,000トンの水素ガスを作り、これを水素自動車の燃料として活用することになっていました。
しかしこの取り組みを福島第一原発の事故収束・廃炉作業現場で実行した場合、どれ程の費用が必要になるのか公開を求めた報道機関に対し、東京電力もクリオン社も回答はしませんでした。

クリオン社のウェブサイトはこの方法での汚染水処理対策は「費用対効果において優れている」と述べ、18ヵ月以内にはデモンストレーション設備を稼働させることが可能だとしています。

漏水防止護岸工事
このため必要になる費用は、放射能汚染水を海洋投棄する際にトリチウムを除去するかどうか、それを決定する際の重要な条件になります。
福島第一原発の現場での混乱が長引く中、放射能汚染水からすべての放射性物質を取り除いた上で海洋投棄を行うのか、それともトリチウムの除去だけは見送りのまま投棄を始めるのか、これ以上高額な費用負担をためらう日本の行方に注目が集まっています。

〈 完 〉
http://www.theguardian.com/environment/2016/apr/13/is-it-safe-to-dump-fukushima-waste-into-the-sea
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【 4月7‐14日の報道写真から 】

アメリカNBCニュース 4月14日

week01
4月11日タイの古都アユタヤでゾウの鼻から水を浴びせられる女子学生。タイの伝統的な新年行事ソンクラン水祭で。(写真上)

4月10日、マケドニアとの国境に接するギリシャのイドメニ村、500人程の難民の抗議に対しマケドニア警察が催涙弾を発射。現場から避難してきた難民の男性。(写真下・以下同じ)
week02
4月12日アフガニスタンのマザリシャリフ郊外、トラックの石炭の積み下ろし作業の合間に一息つく労働者。
week03
4月14日仙台市の八木山動物公園から逃げ出した雄のチンパンジー『チャチャ』、高所作業車を使って近づいてきた男性を威嚇する瞬間。
week04
4月11日にエルサレム郊外の山泉の水を集める超正統派ユダヤ教徒。一週間にわたる過ぎ越しの祭りの休日は、聖書の時代にエジプトからのユダヤ人の脱出を祝います
week05
4月7日ミクロネシアの無人島ファナディク島、ヤシの葉で作った『ヘルプ!』の脇に立ってライフジャケットを振る2人の男性をアメリカ海軍の哨戒機が発見した瞬間。この後2人は連絡を受けグアムからやって来た小舟に無事救助されました。
week06
4月9日シリアの遺跡の町パルミラで地雷の処理をするロシア軍工兵。ロシア国防省が公開した写真。3月27日にシリアの正規軍がパルミラ奪回に成功した後、ロシア軍工兵隊はイスラム国(ISIS)の戦闘員が仕掛けたに地雷の信管を外す作業を行っています。
これまでに1,500個の地雷を撤去しました。
week07
4月8日、マケドニアとの国境に接するギリシャのイドメニ村の難民キャンプで、雨の中傘をさして調理のため火を起こそうとしている男性。
week08
http://www.nbcnews.com/slideshow/week-pictures-april-7-14-n556101

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