最大手の広告代理店でキャリアを磨くという夢が無惨に打ち砕かれ、命まで奪われることになった
職場の人数が減少傾向、こなすべき仕事が多すぎ、慢性的に長時間労働を強いられている労働者
山口まり / AP通信 / ワシントンポスト 10月21日
日本最大手の広告代理店である電通で自分自身のキャリアを磨くという高橋まつりさんの夢は、ひと月に100時間以上という時間外労働が続いた後、彼女の自殺という形で終わってしまいました。
「眠りたいという以外どんな感情もなくなった…」
就職した6ヵ月後、消耗しつくし意気消沈した彼女は2015年10月ツイッターにこう投稿しました。
そしてクリスマスの日、24歳まつりさんは母親に仕事にも生活にももう耐えられなくなったと最後の電子メールを送信し、マンションのバルコニーから身を投げたのです。
高橋さんの「過労死」は、電通にとって初めての事例ではありませんでした。
電通は社員に長時間労働を要求する点について、芳しくない評判が知れ渡っていました。
過剰な長時間労働を削減する取り組みはこの20年間続けられてきましたが、日本では毎年数百件の勤労者の過労死、あるいは健康被害が報告されています。
被害者は高橋さんのようなエリート『サラリーマンやキャリア・ウーマン』からIT技術者、あるいは手作業を行う労働者まで広範囲に及んでいます。
2015年8月、労働基準監督局は電通の社員が上限と定められている月70時間を上回る時間外労働を行っている事実を確認し、是正勧告を行いました。
コメントを求められた電通は、2015年10月時点で70時間を超えて時間外労働を行っているという報告は1件も上がっていなかったと報告しました。
「我々は労働環境を適切に保つ努力を続けています。労働時間の短縮を行い、従業員の健康の維持に努めています。」
電通はAP通信に対し、このような声明を伝えました。
しかし労働基準監督機関は電通を始め多くの他の企業で、多くの時間外労働が報告されないまま行なわれているのが実態だと語りました。
1週間に40時間の標準労働時間を定める労働基準法ですが、例外として労使協定により時間外労働時間の上限を設定することを認めています。
専門家はこの規定が法律を実効性の薄いものにしていると指摘しました。
日本の男性優位のしかも階級的な会社世界では、まず最初に会社の利益が優先される傾向があります。
従業員の中でもとりわけ若い社員、外国人労働者、女性社員は、上司から長時間の時間外労働や過重な労務負担を強いられても、これを断れない立場に置かれていることが数多く見受けられます。
終身雇用制度の下で高額な退職金を支給されて退職した高齢の社員に代わり、組合にも加盟せず労働者保護の観点からほとんど権利を有しないパートタイマー労働者や契約社員が配置されることもしばしばあります。
「過剰な時間外勤務は予期しない出来事に対応するため発生していると考えられます。しかし日本では、時間外労働は誰も拒否することができない、日常業務の一部分と考えられているのです。」
労働問題の専門家である関西大学の森岡孝二教授がこう語りました。
「職場の人数が減少傾向にあり、こなすべき仕事が多すぎるため、労働者は慢性的に長時間労働を強いられているのです。」
安倍晋三首相が率いる現在の政権は、労働時間を大幅に短縮し男性が自宅で家事や育児に参加できるようにする一方、女性の就業機会を大幅に拡大することを望んでいます
しかし『ウィメノミクス』と呼ばれるこの政策は、ほとんど効果を上げていないように感じられます。
政府機関がまつりさんの自殺を「過労死」と認定した後、高橋さんの事件は公になりました。
「土曜日も日曜日も、また仕事をしなければならなくなりました。 私はもう死にたい…」
高橋さんは2015年11月、こうツィートしました。
12月までの高橋さんの1日の平均睡眠時間はたった2時間でした。
この事件に関する議会質問の場で電通の『過労死』が3例目になったことが明らかにされ、塩崎厚生労働大臣は、日本の大企業と政府の広告を独占的に支配している電通に対し、厳しい内容の訴訟を起こす可能性をほのめかしました。
「これまでの教訓が生かされないまま、同じ会社でまた別の若い社員が長時間労働を強いられた挙句に自殺してしまったことは、きわめて残念です。」
塩崎厚生労働大臣はこう語りました。
現在、過重労働を開所させるための取り組みがうまくいかないまま、若い勤労者に対する重圧がますます強まっていると語るのは、かつてシェフであった夫が過労死した後、全国過労死を考える家族の会を設立した寺西笑子(えみこ)さんです。
〈 後篇に続く 〉
https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japan-overwork-deaths-among-young-show-lessons-unlearned/2016/10/21/6d33f422-9769-11e6-9cae-2a3574e296a6_story.html
+ – + – + – + – + – + – + – + – +
今さらという感じですが、自分がこれまで翻訳してきた記事の選び方の傾向を改めて振り返ってみると、自分が一番許せないのは
「理不尽な死」
ということのようだと気がつきました。
人間は死ねばすべてが終わり - 死後の世界が一度も証明されたことがない以上、そう考えざるを得ません。
だからこそ命というものは、かけがえがないのだと思います。
私が一番許せない「理不尽な死」は太平洋戦争中の空襲・餓死・玉砕・特攻、第二次世界大戦中の強制収容所などです。
人間は生まれ落ちた時から、自分の人生を大切に生きる権利を持っています。
それを活かしきるかどうかは本人次第ですが、他人に犯されるべきではないと考えています。
+ – + – + – + – + – + – + – + – +
【 フランス国内の難民キャンプの撤去作業 】
アメリカNBCニュース 2016年10月25日
10月24日フランス政府は北部海岸のノルマンディー地方にテントを張り、英国に渡る機会を窺っている数千人の難民キャンプの撤去作業を開始しました。
最高で10,000人が滞在していたキャンプは『ザ・ジャングル』と呼ばれヨーロッパの難民危機を象徴するもののひとつとなっていましたが、現在は6,300人程にまで減少しました。
一部の難民は無住となったテントを燃やすなどして抗議の意思を表しましたが、前週末に見られたフランスの治安部隊との衝突などは発生しませんでした。
http://www.nbcnews.com/slideshow/france-begins-evacuating-jungle-n671781