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核兵器妄想に取りつかれたトランプ《2》悪夢を再び世界に押しつけるアメリカ大統領

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所要時間 約 9分

核兵器使用のトランプの基準はあまりにも曖昧で、その決断条件は誰も理解できない

核兵器を用いた戦争が始まる危険性を現実の世界に持ち込んでしまったトランプ

 

レベッカ・ゴードン /ル・モンド・ディプロマティーク 2017年10月31日

実際、「核シェルターに関するモラル」は当時、好んで取り上げられた倫理問題のひとつになりました。この問題の中身は次のようなものでした。

万が一に備えて核シェルターを準備しておいた人々が実際に核攻撃が行なわれ自分たちが助かった場合、準備する事無く攻撃で犠牲になった人々に対し責任はあるのか?

 

ライフ・マガジンは1962年発行の号に巻頭記事で、核攻撃に備え『持てる者』と『持たざる者』に格差が生じないように政府に対し、核シェルターの大量建設を求めました。

フィレンツェ・エルガン夫人によるこの記事の中で、彼女は「私は核シェルターに関するモラルに失望しています。」と述べ、次のように続けました。

「自分の家族を守りたいというのは人間として当然のことですが、私の中の倫理観は隣人をも守るための姿勢をもとめています。」

 

今日でも大学の政治学やビジネス倫理学を学んでいる学生が「核シェルターに関するモラル」の課題を与えられることがありますが、これはもう間違いなく古代史の一項目のようなものであり、やらされている学生たちは困惑気味です。

この課題では限られたスペースと乏しい食料しかない核シェルターの中に、ラテン系の娼婦とその幼い息子という親子、白人男性の生物学者、等々が留まり続けることを許すべきかどうかということを考えなければなりません。

スマートフォンの画面に描き出されるこれらの人物は1950年代に制作された、核戦争に備えるよう求める映画の3人の短いスカートを身に着けた女性たちに比べれば、明らかに多様化しています。

思春期、私は皮肉屋として知られたトム・レーラーの『次は誰?』の全文をほとんどそらんじていました。

『まずは核兵器を手に入れること。それでもう大丈夫、なぜなら私たちは平和を愛しているし、母性の大切さをちゃんと認識しているから…』。

そして核戦争に関わるフィクションも読みました。

『フェイルセーフ』、核戦争の結果地球上の生物が全滅に向かう様子を描いた『渚にて』など、どれもぞっとする内容でしたが、中でも最悪だったのは核戦争と人種差別の二重の恐怖を描いたロバート・ハインラインの『ファーンハム・フリーホールド』でした。

この物語では核爆発によって作者の分身とも言うべき自由主義者の主人公が、異次元世界にあるアメリカに送り込まれます。

そこで主人公が目にするのは、若い白人女性が『珍味』として扱われるほど、黒人と白人の人口割合が逆転している世界でした。

 

そしてこの作家は『異星の客』を発表、この本は直感と物事の深層を理解し『共感』し合う事を説き、後にヒッピーの経典とされ大切にされました。

ハインラインは1960年代の快適な白人社会のモラルを完全否定し、別種の完璧な調和をフィクション化した作家でした。

 

核兵器が持つ瞬時に大量殺戮を行う能力や潜在的脅威、つまり自分の人生の中で核戦争の危険性がどの程度現実味を帯びてくる可能性があるかということについて説明することは難しいことですが、1991年のソビエト連邦崩壊の後に生まれ育った人たちに理解してもらうのはなおさら難しいことです。

例えば夜中サイレンの音にたたき起こされて、すべての人が地球最後の日が訪れたことを知らされるような世界で生きていることを説明することは、とても困難なことです。

当時眠れなくなった私はトランジスタラジオを枕の下に置いて、普段は馬鹿にしていたポップスやロック・ミュージックを専門に流していた放送局にチャンネルを合わせ、当時のトップ40のヒット曲を聞きながら、そんな事態はやってこないと繰り返し自分に言い聞かせていました。

現代から見れば病的としか言いようがないこうした恐怖感は、当時は珍しいものではありませんでした。

核戦争に対する絶えざる恐怖は、この時代に子どもだったすべての世代の背景を形作りました。

私の友人たちの両親の多くはアメリカ合衆国政府の職員として働いていましたが、私と同じ恐怖に脅かされていました。

私たちは電話でおやすみを言い合いましたが、高校のボーイフレンドと私は時々、明日自分たちは生きていられることができるかどうかという疑問を口にすることがありました。

私たちの青春時代は常に死という問題と向かい合い、それは人間という種の絶滅によるものでした。

中には少しおかしくなってしまう人すらいました。

私たちは他に例のない戦時意識の中で暮らしており、そんな中で自分たちの将来について計画することは何の意味も無いように感じていたのです。

 

▽21世紀の私たちの現実

 

ベビーブーマー世代の恐怖は現実のものにはなりませんでした。

しかしドナルド・トランプはその恐怖を復活させただけではなく、2017年に北朝鮮との間で核兵器を用いた戦争が始まる危険性を現実の世界に持ち込みました。

世界の各所で行われている調査や分析の結果は、そうした危険が現実のものになる可能性は低いという事を示唆しています。

トランプは今年8月9日に北朝鮮に対し、もしアメリカを脅迫するようなことを再度行ったら「世界がかつて見たことの業火と怒り」によって国土を焼き払うといった類いの脅しを口にしなくなりました。

あるいは、アメリカ本国や同盟国を北朝鮮の攻撃から防衛しなければならない事態に立ち至った場合には躊躇無く北朝鮮の全土を破壊するという、周囲を唖然とさせた国連での約束も実行してはいません。

どちらの場合についても政治学者のスティーヴン・ブラムス氏が指摘していますが、トランプの言い方では核兵器の使用に踏み切る基準をあまりにも曖昧にしているため、どのような事態になれば一線を超えることになるのか理解できません。

 

2017年10月13日のニューヨークタイムズ紙によると、北朝鮮の政府当局者から次のような情報を入手したと伝えています。(https://www.nytimes.com/2017/10/13/...

「西太平洋におけるアメリカ軍の軍事的領域であるグアム周辺に、北朝鮮が弾道ミサイルを撃ち込む脅威が再燃している。」

現時点でトランプからは何の反応もなく、北朝鮮の脅威が何を意味するものであろうと核兵器を使った報復などは考えられないということだけは言えます。

人類にとって幸いなことに、トランプは当初の過激な発言については後に撤回するか、あるいは別の対応を選択するしか無い状況に置かれているようです。

 

《3》に続く

https://mondediplo.com/openpage/trump-s-nuclear-dreams

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トランプはアメリカ国内で共和党の議員に、北朝鮮は未だアメリカ国内に目標を設定できるだけのミサイル技術を持っていないという前提で、

「戦争になっても、今度は死ぬのはアメリカ人ではなく、朝鮮半島と日本列島の人間たちだ。」

という意味の発言を行ったと一部で伝えられました。

こんなアメリカ大統領はおそらく史上初めてであり、『アメリカ・ファースト』というキャッチフレーズの持つ意味が

「そこまでのものなのか…」

と、絶句せざるを得ません。

 

根底にそんな考えを隠し持つ大統領の国から、

「さあ、やるぞ!」

とばかりに、進んで高額な兵器を大量に買い入れる現政権の姿勢には強烈な違和感を感じます。

 

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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