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繰り返される情報操作 : 福島第一原発の汚染水投棄

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汚染水の海洋投棄は、東京電力にとって最も簡単で安上がりな放射性核廃棄物の処分方法
東京電力と日本政府は世界に向け再び真実を曲げて伝えようとしている

                    

アーニー・ガンダーセン/フェアウィンズ 2021年4月19日

                    

                       

2021年春に掲載を始めたフェアウィンズ原子力発電所シリーズの第8回では、福島第一原発から100万トン以上の放射能汚染水が海洋投棄されることが決まったという最新の報告について、そこに隠されている欺瞞について検証し、真実を明らかにしたいと考えています。

                         
ニューヨークタイムズ紙の報道では、海洋投棄の決定は先週、日本政府によって承認されました。
日本政府は、放射能汚染水の海洋投棄は無害であると主張し、東京電力は毒性が高い放汚染水を太平洋に投棄する以外に選択肢はないと述べました。

                       

おかげで私たちはまた福島第一原発の問題と向き合わなければなりません。
福島第一原発の崩壊が始まって数週間、東京電力と日本政府はメルトダウンは起きていないと主張し、さらには問題はすべて順調に解決に向かっていると主張していた時と同様、世界に向け再び真実を曲げて伝えようとしています。

                    

現在、日本政府と東京電力は再び足並みをそろえ、彼らが計画している太平洋への汚染水の放出は結果的に異常な量の放射能を世界の海に拡散してしまうという事実を隠蔽しています。
東京電力と日本政府がいかなる主張を展開しようとも、100万トン以上の放射能汚染水を太平洋に投棄することは、海とそこで暮らす水生生物にとって、そして汚染が最終的に到達する他の国々にとって、死の宣告にも等しいものです。

                   

こうした行為は、命豊かな地球という惑星の上で互いに密接に関わり合いながら存在するすべての生命の尊さを、あからさまに無視するものです。
そしてさらに、こうしたやり方は誰をどのように傷つけることになるかわからない行為を許すことになるだけでなく、世界中の国々が国際環境を破壊することに法的根拠を与える扉を開くことにもなるのです。

                      

日本の産業界がこうした行為を行うのはこれが初めてではありません。

                 

日本政府と東京電力は世界に向け100万トン以上の『処理済み』放射能汚染水を海洋投棄することを正当化するため、トリチウムをゆるキャラのように表現するキャラクターを制作しましたが、1993年にも『頼れる仲間、プルト君』というキャラクターを使ったキャンペーンを展開しました。

                 

1993年、東京電力と日本政府はプルトニウムを身近な友人か何かのように表現しましたが、今回も太平洋をトリチウムやその他の放射性物質を流し込んでも無害だと世界に信じこませようとしています。

                      

           

1993年、日本政府は『頼れる仲間、プルト君』という可愛らしい子供のようなキャラクターをフィーチャーした、考えうる限りのプルトニウムのすべての利点を強調したプルトニウム・ストーリーを制作しました。
彼らはギリシャ神話ではプルートは冥界(死後の世界)の神であることを知らないのでしょうか?

                     

日本の原子力産業を代表してプルトニウムの印象を曖昧にするために1990年代半ばに登場したのがプルト君でした。
プルトニウムの化学記号が付いた緑色のヘルメットをかぶり天使ケルビムのような顔をしたプルト君は、少年がプルトニウムの入った水を飲み干すシーンがあるアニメを使った『啓蒙用』映画に登場した後、どのような影響があったのかわからないまま姿を消しました。

                   

そうです、これは企業の利益追求の姿勢が世界にどのような脅威を与えるのか、その典型的な事例と言えます。
大企業や政府は常に、広告代理店などの広報(PR)企業に高額な報酬を支払い、自分たちに利益を生み出すスキームをあたかも社会全体に貢献するかのような形で広報活動を行います。

                     

                            
これらのプロの情報操作を得意とする人間たち(スピンドクター)は、問題についてむしろ早い段階で提示することが議論の方向を自分たちに有利にできるという議論の構築方法と公開の場での議論をコントロールする術を学びました。

                   

最初に発言することは、PRの世界では真実を語ることより有利な立場を獲得します。
先に自分たちに有利に議論の場を構築し、そして戦いに勝利するのです。

                       

これまで企業や政府が重大な環境事故を引き起こした際、実際には危険な状況をどのように作り変えてしまったのか、いくつかの具体例を簡単に見てみましょう。

                

1979年:スリーマイル島原子力発電所のPR担当者であるビル・グロスは、メルトダウンが発生したその日の朝(1979年3月28日午前10:20)、放射能監視チームが原子力発電所の敷地内でも周辺でも何も異常は確認できなかったとする声明を読みあげました。

                      

2010年:「この災害による環境への影響は非常に軽微なものであったと考えています。」ブリティッシュ・ペトロリアムの責任者であるトニー・ヘイワードは、メキシコ湾へのディープウォーター・ホライズンの原油漏れ事故を引き起こした際にこう述べていました。

                     

2011年:日本の巨大地震と津波で制御不能に陥っていた福島第一原発の原子炉について、当時の野田佳彦首相は2011年12月16日、「冷温停止」しているとの発表を行いました。
「発電所の事故そのものは収束に至ったと判断される」、野田氏は世界中に放映された演説の中でこう語りました。
「原子炉は安定しており、私たち国民全員にとって大きな懸念事項の1つを解決するはずです。」

                   

2014年:日本の安倍晋三首相は、2020年の東京オリンピック開催権利を獲得した演説の中で、崩壊した福島第一原子力発電所が「制御下にある(アンダーコントロール)」ことを保証しました。

                          

こうした報道対応を行ったことについて、悪意はなく必要なことであった、現時点でも彼らはそう主張しています。
しかしその主張はそもそも前提から3つの点において誤っています。

                     

第一、東京電力が放射能汚染水からトリチウムを除くすべての放射性物質を除去することができる、という主張は間違っています。
すでに1,000,000トン以上の放射能汚染水がろ過されていることに留意すべきですが、使われたフィルターはすべての放射性物質を捕捉することはできません。
米国マサチューセッツ州ファルマスにあるウッズホール海洋研究所も同じ懸念を表明しています …

                     

トリチウムに加えて、ルテニウム、コバルト、ストロンチウム、プルトニウムなど、放射性崩壊の時間がもっと長いより危険な放射性物質が、ALPSプロセスを捕捉されないまま通過することがあります。
この事実を東京電力は2018年にになってやっと認めました。

                  
東京電力は現在、こうしたトリチウム以外の放射性物質がタンク内の放射能汚染水の71%に含まれていると述べています。
「これらの放射性物質は、海洋中においてトリチウムとは異なる形で拡散し、容易に海洋生物や海底堆積物の中に入り込むことになります。」
ウッズホール海洋研究所の海洋科学者であるケン・ビュッセラー博士はこう述べています。

                  

                        

日本政府当局者は、福島第一原発内にある放射能汚染水はこれらの放射性物質に関する規制基準を満たすまで、「浄化」作業が行われると述べています。
しかしビュッセラー博士は、現在ある基準は正常に稼動している原子力発電所を対象に設定されたものであり、事故を起こした原子力発電所から意図的に放射能汚染水を排出することは想定していないと指摘しています。
「日本が放射能汚染水の海洋放出を行えば、世界中で原子力発電所の通常運用とは異なる場合の放射性廃棄物の海洋投棄への扉が開かれるのではないでしょうか?」
ビュッセラー博士はこう懸念しています。

                      

第二の誤りはトリチウムは無害であるということです。
トリチウムが無害であるとする主張は、トリチウムが胎盤の障壁を越えて子宮内の赤ちゃんに損傷を与える可能性があるという事実、そしてトリチウムが人や生物の体内でどれほどの内部損傷を与えるかという真実を隠すため、原子力産業が意図的に作り出した神話に他なりません。

                          

フェアウィンズの長年のフォロワーは、この問題をちょうど5年前、有名な科学者イアン・フェアリーとの『トリチウム被曝』(Tritium Exposé - 2016年4月18日)というタイトルの下で行われたインタビューで、詳しく取り上げたことを覚えておられるでしょう。
トリチウムの危険性を特定した科学者は、フェアウィンズとフェアリー博士だけではありません。(フェアウィンズのオリジナルページの下部に記載された詳細をご覧ください。)

                  

そして第三の誤りは、福島第一原発の敷地内の土地を使い果たし、貯水タンクを増設する場所がないと臆面もなく嘘をついていることです。 

写真を見れば福島第一原子力発電所周辺には、同原発の崩壊によって汚染された土地が広がっていることが一目でわかります。

                        

                                             
写真は、東京電力がすでに建設したタンク群に隣接する場所に、より多くの貯蔵タンクを建設するための十分な土地があることを明らかにしています。
東京電力と日本政府は、致命的な福島の放射能汚染水を無害なものにするためもうこれ以上金をかけたくないのです。
その代わり責任を転嫁して自分たちの負担を軽くするため、太平洋を汚染させても仕方がないと考えているのです。

                       

幸いにも日本国民、科学者、そしてこの問題に関心を持つ世界中の人々が、太平洋が日本政府と東京電力のゴミ捨て場として都合よく利用されることに深刻な懸念を表明しました。
「汚染水を海に放出したいという政府の願望が全てに優先されているように感じます。」
と、福島の漁師の渡辺勝夫氏(82歳)が共同通信にこう語りました。
「私たちが直面している問題の深刻さと、キャラクターの軽いノリとの間のギャップは非常に大きいです。」

                         

地元民で作家である小松理虔氏は、技のようにツイートしました。
「かわいいキャラクターを作りさえすれば、国民に理解してもらえるともし日本政府が考えているのだとしたら、随分とリスクコミュニケーションをバカにしています。」

                    

汚染水の放出が始まる前に、この不正な環境破壊を公の圧力と法的措置によってくい止めるチャンスはまだ残っています。

                   

ちなみに100万トンがどのくらいの量なのか全体像を粗悪できるようにしてみましょう。
簡単な数学ですが、100万トンは20億ポンドです。
この写真のトラックは5,000ガロン、つまり約40,000ポンドの水を運びます。
20,000,000,000 / 40,000 = 50,000
つまりこのトラックで50,000台分の放射能汚染水が太平洋に捨てられることになるのです。

                         

東京2021オリンピックは最も必要なタイミングで、日本の医療と財源を浪費する

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日本政府が新型コロナウイルス感染拡大危機に正面から取り組むことができない原因、それが東京2021オリンピック
欧米の先進各国と比較して死亡者数が少ないという日本の相対的な成功は、政治が仕遂げたことではない
ソフトロックダウンがいつ終わるともなく繰り返され、収入面でも生活面でもじわじわ追い詰められる日本人
新型コロナウイルスの『培養シャーレ』として世界的に悪名を馳せたダイヤモンド・プレンセス、東京2021はその陸上版?!
新型コロナウイルスが世界的規模で猛威をふるう中、それとは無関係にオリンピックを開催することは世界中のどこであれ正当化できない

                       

                

中野晃一 / ガーディアン[意見記事] 2021年5月24日

                       

東京オリンピックの聖火は現在、実況中継を重ねながら日本各地を巡っています。
5月末時点では、全国の47都道府県のうちすでに28都道府県を通過しました。

                  

大会は2ヶ月以内に開催される予定です。
日本国民はオリンピックを待ち受け音を立てるほど気分を高揚させていると思われるかもしれませんが、現実は違います。
日を追うごとに否定的な結論に到達する国民が増えているのです
すなわち東京2020大会は何もかも全て中止する必要がある、というものです。

                           

最新の世論調査では、80%以上の国民が東京オリンピックの中止または延期を望んでいることが明らかにされました。

                  

しかし国際オリンピック委員会(IOC)は中止も延期もありえないと表明しています。
国民が見ている通り、東京オリンピックは日本政府が新型コロナウイルス感染拡大危機に正面から取り組むことができない原因になっています。

               

                      

さらには最も必要なタイミングで、日本の医療および財源を浪費することになるだろうと予測されています。
日本での新型コロナウイルスによる死亡の約80%は昨年12月以降、すなわち直近の6ヶ月に発生しています。

                

そして多くの人が最悪の事態がまだやって来てはいないということを恐れています。

                       

数字だけ見ると12,261人の死亡という日本の記録は英国、米国、その他のG7諸国ほど悪くはありません(ただし日本以外のアジア、オセアニア諸国と比較すると死者の数は群を抜いています)。
問題視しなければならないのは、欧米の先進各国と比較して死亡者数が少ないという相対的な成功は日本の政治が仕遂げたことではないと考えていることです。

                        

最新の世論調査では菅義偉首相自身、そして菅内閣の支持率は、彼が昨年9月に就任して以来最低の35%に低下、『支持しない』は43パーセントに達しました。
さらに菅政権の新型コロナウイルス対策については33%が好意的な評価を行う一方、63%が不満を表明しました。

               

              

東京を含む日本最大の都市部は、現在、パンデミックの開始以来3度目の非常事態宣言下に置かれていますが、これは今年に入って2度目です。
この非常事態宣言は当初5月11日に終了する予定でしたが、現在は5月31日まで延長されており、さらに延長される可能性があります。

                  

日本の非常事態は決して厳しい封鎖を意味するものではなく、学校や商店、レストランは閉店時間その他の制限が課されてはいるものの営業していますが、比較的大規模な会場については厳しく管理されています。

                  

しかし日本国民は概ね現在の対策が弱すぎる、そして後手に回っていると見ています。
厳格なロックダウン措置は日本では人気がありませんが、ソフトロックダウンがいつ終わるともなく繰り返され収入面でも生活面でもじわじわと追い詰められる現在の苦境は、最も忍耐強く協力的な人々でさえ音を上げたくなるほどのものです。

                      

そして他の国々とは異なり、日本の新型コロナウイルスがうまくいかない・うまく進まない根本的な原因は、新しい変異株の出現や医療・保険システムの欠陥にはなく、オリンピックにあるのです。

                 

                   

菅首相は「オリンピックを最優先させたことはない。」
と主張していますが、今年の夏、世界が日本の動向を注視しその影響が自分たちの国にも及ぶと考えていることに間違いはありません。

                  

菅首相は非常事態宣言の適用など、難しい決定を下すのをためらい、そして遅らせています。
最終的にやっと非常事態を宣言しても、期間を短く設定し過ぎて、再延長を繰り返す羽目に陥っています。

                  

そうしている間にも、禁止措置は形骸化し始めています。
ラッシュアワー時の通勤電車は相変わらず混雑している一方、飲食店やバーでのアルコールの提供は禁止されています。

                    

理解に苦しむのは、劇場はライヴパフォーマンスのために定員の半数に入場が制限されるものの活動を続けることができるのに、大規模な映画館は閉鎖を命じられていることです。
このように基準があいまいなまま禁止されたり許可されたりという恣意性は、決して最終責任を取るつもりがない国と都道府県の間の調整がうまくいかないことも原因の一つです。

                 

                      

しかし何と言っても日本における最悪の状況は、ワクチン接種プログラムの失敗が誰の目にも明らかなことです。

                        

これまで第一回目のワクチン接種を受けたのが人口のわずか4.4%という日本は、OECDランキングでは最下位であり、医療専門家ですらまだ全員がワクチン接種を終えていません。

                   

菅首相は最近になって、7月末(オリンピック期間中)までに高齢者への予防接種を完了させることを目標にすると宣言しましたが、これまでの1日あたりの接種件数は必要な数の3分の1にとどまっているため、今後は1日あたり100万件の接種を行う必要があります。

         

日本は必要なワクチンを調達するための資金はありますが、接種体制の不備により購入したワクチンはしまいこまれたままになっています。
東京2020大会が始まる時点ではまだ大多数の国民がワクチン未接種のまま取り残され、感染のリスクにさらされることは今や確実な状況になっています。

               

学生を含む外国人の新規入国は全面禁止されているものの、オリンピック・パラリンピック参加選手約11,500人、関係者まで含めると約9万人が新たに来日することになります。
選手村で参加選手が一人一人厳重に隔離されない限り、たちまちのうちに昨年新型コロナウイルスの『培養シャーレ』となり世界的に悪名を馳せたクルーズ船ダイヤモンド・プレンセスの陸上版と化してしまう可能性があります。

                      

                 

日本の組織委員会は参加選手を優先的に診療する30の病院を指定した上、医療システムがすでに危機的状況に陥っているこの時期に、200人の医師と500人の看護師を『ボランティア』として募集、無報酬での労働を求めています。

                 

菅首相の頭にあるのは、新型コロナウイルスが蔓延する長いトンネルの向こう側に、東京2020大会が人々が求めている気晴らしと救済を提供するという世界のようです。
さらには今年の秋に予定されている日本の総選挙のことも念頭に置いておく必要があります。

                   

菅首相はこ東京2020大会は『人類がウイルスを打ち負かした象徴』になるだろうと繰り返し強調しています。

                    

しかし『人類がウイルスを打ち負かす』などという認識は、特にワクチン接種が進まない中強力な感染力をもつ変異ウイルスの出現により深刻な感染拡大が続いている地球の赤道付近から南半球にかけての現実とは、まるで矛盾するひとりよがりな思い込みでしかありません。

                  

                   

IOCの副会長であるジョン・コーツは、東京が非常事態下にある場合でもオリンピックは開催が可能であるという驚くべき見解を披露しました。
しかし新型コロナウイルスが世界的規模で猛威をふるう中、それとは無関係に速さと強さを競い合う映像をテレビで放映するための舞台を設営することは、たとえ世界中のどこであれ正当化するのは難しいはずです。

            

それは日本も例外ではありません。

                   

https://www.theguardian.com/commentisfree/2021/may/24/japan-cancel-olympics-coronavirus
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まずお詫びしなければならないのは、原文はもう少し抑えた調子の品の良い文章であるということで、翻訳しているうちに自分の感情が移入されてしまいました。
「こんな風に訳そう」と考えたわけではなく、「こう訳さずにはいられなかった」のです。

「 IOCは何様のつもりだ?!」『犠牲』と『逆境』を強いられ、怒りを噴き上げる日本人

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「 IOC会長のバッハは、オリンピックのために日本人が安全な暮らし、健康、そして命まで犠牲にするべきだと言っているのですか?」
「私たちは恐怖と不安に満ちたオリンピックの強行を祝う気にはなれない」
「もう看護師の仕事はしたくない…」新型コロナウイルス病棟で働く看護師の半数以上が

                      

                       

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2021年5月24日

                    

新型コロナウイルスの感染拡大に苦しむ日本の状況を無視し、東京2020大会を確実に前進させるために日本人は「犠牲」を払わなければならないという国際オリンピック委員会(IOC)の主張が強い反発を誘発し、大会中止を求める声が一層高まっています。

                      

IOCのジョン・コーツ副会長は、開催都市が新型コロナウイルスの感染拡大により未だ非常事態に陥っていても大会準備を進めると発言し、日本国内の反発を招きました。

               

東京2021の準備を監督する立場のコーツは21日金曜日、開催地が非常事態宣言の下であってもオリンピックの開催は実現できるのかと質問されると、こう発言しました。
「何であろうと答えはイエスです。」

                   

日本国内のソーシャルメディアのユーザーは、今年の大会の開催に圧倒的な数の国民が反対している日本の世論を無視していると、コーツとIOC会長のトーマス・バッハを非難しました。

                 

                      

「トーマス・バッハとジョン・コーツは、日本で一番忌み嫌われる存在目指して抜きつ抜かれつの競争をしている。デッドヒートが続くだろう。」
ツイッターユーザーの一人はこう発信しました。

                  

日本人は「逆境」に耐えなければならないと発言して批判を浴びていたトーマス・バッハは、22日土曜日さらに国際ホッケー連盟の会合で次のように語りました。
「最終的にアスリートたちはオリンピックの舞台で夢を実現することができるでしょう。それを可能にするために私たちは何かを犠牲にしなければなりません。」

                          

バッハが『犠牲』という言葉を使った際、誰が犠牲になるのかは明確にはしませんでしたが、多くの日本人は犠牲にされるのは自分たちだと感じていました。
「バッハは、オリンピックのために日本人が安全な暮らし、健康、そして命まで犠牲にするべきだと言っているのですか?」
ツイッターユーザーの一人はこうツイートしました。
「世界が新型コロナウイルスの感染爆発に苦しんでいるときに、なぜ日本人だけがオリンピックのために犠牲を払わなければならないのですか?そんなことは絶対に受け入れられません。」

                       

                     

ソフトバンクグループの孫正義CEOは、日本政府がIOCに巨額の賠償金を支払うことなく大会中止を求める能力に明らかにかけている点を批判するコメントの中で、このまま東京2021開催を強行すれば、「ワクチンの遅れ」が著しい日本ははるかに高い代償を払わなければならなくなる可能性があると指摘しました。

               

「現在、80%以上の国民が、オリンピックの延期または中止を望んでいます。いったい誰が、どのような権限があって大会開催を強制しているのですか?」
電気通信分野の巨人はこうツイートしました。
「(大会が中止された場合)巨額の賠償金についての懸念があるようです。しかし200カ国から10万人がワクチン接種が大幅に遅れている日本に降り立ち、変異型ウイルスが蔓延するようなことになれば、人命が失われ、非常事態宣言の発令によりさらなる補助金の支払いが発生し、結果として国内総生産が低下する可能性があります。耐えなければならない数々の問題を考えれば、私たちはもっと多くのものを失ってしまうことになるでしょう。」

                 

日本のメディアは、バッハ会長を始めとするIOCの幹部やスポーツ関係者が日本滞在中に享受することになる「ロイヤル」ステータスの実情について掲載しました。

                      

                  

週刊ポストによると、大会組織委員会は東京都内の少なくとも4つの最も高価なホテルに、それぞれまとまった数の部屋を予約・確保していますが、IOCは請求される金額のほんの一部しか負担しません。

                  

東京2020に公式スポンサーとして投資しているほとんどの全国紙はオリンピックに関する報道を控えているように見受けられます。
これに対し地方紙はもっと率直な意見を表明しました。
公式スポンサーでもある北海道新聞は菅義偉首相について「人の生命と健康に関する首相としての責任を失った」と非難し、信濃毎日新聞は大会を中止すべきだと伝えました。
「私たちは恐怖と不安に満ちたイベントを祝う気にはなれません。」
「東京オリンピックとパラリンピックは中止されるべきです…。日本政府は人々の命と生活を守るための決定を下さなければなりません。」

                     

日本での新型コロナウイルスによる死者は12,000人を超えており、単位人口当たりの死者数としては東アジア地区で他の国より多くなっています。
さらに東京、大阪、その他8つの道府県では医療機関と医療従事者への重圧を国として軽減できない状態が続いていることもあり、非常事態宣言は6月まで再び延長される可能性があります。

                  

                   

国立病院労働組合による最新の調査では日本国内の新型コロナウイルス病棟で働く看護師の半数以上が、ストレス、倦怠感、感染の恐れを理由に、医療専門職を辞めることを検討していることが明らかにされました。

                 

日本は先進国の中でとりわけ遅れている予防接種プログラムをスピードアップしようとしていますが、約80,000人のオリンピック関係者、ジャーナリスト、サポートスタッフの来日が新型コロナウイルスの新たな感染拡大を引き起こす可能性があるという懸念も高まっています。

                   

菅首相が65歳以上の3,600万人の高齢者に7月末までに予防接種を完了させることを約束した翌日の24月曜日、自衛隊が運営する集団予防接種センターが東京と大阪にそれぞれ開設されました。

                 

2月中旬にワクチン接種が開始されて以降、174,000人の高齢者を含め、日本の人口1億2,600万人のうち、接種が完了したのは約2%だけにとどまっています。

                  

https://www.theguardian.com/sport/2021/may/24/tokyo-olympics-anger-japan-ioc-coronavirus-sacrifices

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新型コロナウイルスの感染爆発により、ただでさえ逼迫している医療現場から何千人という単位で医療従事者を引き抜いてしまったら、負の連鎖がたちまちのうちに拡大してしまうことは火を見るより明らかです。

                    

とりわけ懸念されるのが出産や小児医療の現場が手薄になってしまうことです。

少子高齢家に苦しむ日本としては、オリンピックなどより妊娠中の家族や子供たちを守ることを何より大切にしなければなりません。

79,000 プラス 11,500人が大挙来日!東京2020、選手は検疫なしで入国可能

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日本国民の大規模な反対感情を無視、大会開催へとひた走る - IOCもJOCも
数多くの訪問者が結果的にオリンピックを「スーパー感染爆発」イベントに変える可能性がある
開催を強行すれば、新型コロナウイルス感染そして死亡者の増加につながる可能性が高い

                 

                   

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2021年5月20日

                          

日本国内では圧倒的な数の国民が開催反対を表明しているにもかかわらず、主催者側は大会の開催計画を推し進めていますが、日本国内の報道によれば、東京オリンピックが開幕する7月には約8万人のオリンピック関係者、ジャーナリスト、サポートスタッフが来日することになります。

                       

共同通信と日本経済新聞は、匿名の情報筋を引用し、東京2020大会に参加するため推定79,000人が海外から来日することになると発表しました。

                   

これは新型コロナウイルスの感染爆発が2020年に開催予定だった東京大会の延期を余儀なくさせる以前に予想された人数の約半分ですが、組織委員会が日本のオリンピック委員会とスポーツ連盟に代表団の規模を縮小するよう要請した結果です。

                       

日本の組織委員会と国際オリンピック委員会(IOC)は、反対している日本人にオリンピック開催は可能だと安心させるため、東京2020組織委員会の最高経営責任者である武藤敏郎委員長が海外からの訪問者数は9万人未満に抑えられ、その数はさらに削減される可能性があると述べていました。

                 

これとは別に、大会の競技に参加する11,500人のアスリートは到着時に空港での検疫を受ける必要はなく、その代り新型コロナウイルスについて毎日検査が行われ、行動範囲は宿泊施設と競技会場に限定され、移動は選手専用のフェリーで行います。

                      

5月19日、IOC会長のトーマス・バッハは7月23日の大会開幕までに選手村に滞在する人々の80%以上が予防接種を受けると予測していると語りました。
「様々な事情によりまだすべての詳細を選手全員に伝えることはできませんが、最重要原則は非常に明白です。オリンピック村は安全な場所であり、オリンピックとパラリンピックは安全な方法で開催されます。」
バッハ会長は IOC、東京主催者、その他の関係者が参加するオンライン会議でこう語りました。

                   

                 

メディアの報道によると、バッハは開会式の11日前の7月12日に来日する予定になっています。
本来の予定では5月中旬に広島県での聖火リレーの際に挨拶することになっていましたが、日本国内で第4波の感染が拡大しているため来日が延期されました。

                      

東京と国内のいくつかの地域は、医療体制を崩壊させる恐れのある第4波の感染者急増を受け、4月末に再度実施された非常事態宣言から4週目に入りました。
バーやレストランなど飲食業を対象とした規制は、少なくとも今月末まで実施されることになっています。

                      

感染者急増の影響を受けた地域には、オリンピックマラソンとウォーキング・イベントが開催される札幌を含む北海道、5月12日に記録的な数の新たな感染を報告した後、緊急事態宣言地区への追加を求めている沖縄県などが含まれます。

                      

今年の夏に来日する数多くの訪問者が結果的にオリンピックを「スーパー感染爆発」イベントに変える可能性があるという懸念から、ほとんどの日本人がオリンピック開催に反対しています。

                

                    

最新の世論調査では、日本国民の83%が東京オリンピックを中止または延期する必要があると回答しました。
これに対しIOCは2022年は北京での冬季オリンピック開催などすでにスケジュールが確定しているとして、延期はありえないとしています。

                      

大会の中止を求めるオンラインのキャンペーンには、わずか2週間で375,000以上の署名が寄せられました。
さらに東京中心部では街頭での抗議行動が続いています。

                  

日本の医療従事者も中止の呼びかけを行っています。
今週、東京の6,000人の医師を代表する組織は、大会の中止は「正しい選択」であり、開催を強行すれば感染症や死亡者の増加につながる可能性が高いと警告しました。

                      

               

この1週間で東京では症例が減少傾向におりますが、その他の地域では高止まりしたままの状況が続き、その原因として専門家は伝染性の強力な変異ウイルスが新たな感染の大部分を占めていると警告しています。

                

IOC、ファイザー、BioNTech間の合意に基づき、すべてのアスリートにはワクチン接種が行われましたが、日本の総人口1億2,600万人のうち、少なくとも1回の接種を受けたのはわずか3.7%にとどまり、主要先進国の中で最も低い割合となっています。

                    

さらに日経新聞は、東京の医療従事者のうちワクチン接種を受けたのは30%未満に留まったままであると報じました。

                  

https://www.theguardian.com/sport/2021/may/20/organisers-of-tokyo-olympics-press-ahead-despite-covid-fears

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日本国内の感染状況の最近の推移で気がかりなのは、5月連休以降に北海道と沖縄の状況が一気に悪化したことです。

これは連休中に大量の人が流れ込んだ結果であろうことは誰にでも推測できることでしょう。

なのに、オリンピックになれば検疫なしで海外から大量の人がやってくることになる。

これは現時点では問題を通り越して、危機そのものであると言わざるをえません。

                         

そして国民の生命と健全な生活を危険にさらすことを平然と行う現在の日本の政治について、私たちはもっともっと危機感を持つべきです。

「No Tokyo!」は80%超え! 「今年のオリンピック開催には反対」– 日本国内の世論調査

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日本の医療制度は限界点、多くの医療の専門家が人員不足と燃え尽き症候群について繰り返し警告
「中止」要望も「延期」要望も1ヶ月前より増加、この夏の開催を支持する人は半減

                  

                   

AFP通信 / ガーディアン 2021年5月17日

                   

もはや日本人の80%以上がオリンピックを今年開催することに反対している、開催まで10週間を切った段階で5月17日に発表された世論調査が明らかにしました。

                     
最新の調査は日本が第4波の新型コロナウイルスの感染拡大と戦っている中、5月7日に非常事態宣言の対象地域が拡大された後に実施されました。
感染者の急増は日本の医療制度を限界に追い込み、多くの医療の専門家が人員不足と燃え尽き症候群について繰り返し警告しています。

                         

朝日新聞による5月第1週の調査では、回答者の43%が東京オリンピックの中止を望んでおり、40%がさらに延期されることを望んでいることが明らかにされました。
1か月前の同紙による調査では中止を支持した人は35%、さらに延期することを望んでいた人は34%でしたが、それぞれ増加しています。 3,191件の電話をかけ、1,527件の有効回答を得た今回の世論調査では、今年の夏に予定どおりに大会を開催することを支持しているのはわずか14%であり、1ヶ月前の28%から減少しました。

                        

仮に開催された場合、回答者の59%が無観客で行うべきだと答え、33%が観客数を制限することを支持し、従来通りの形式での開催を支持したのは3%に止まりました。

                    

これまでの数ヶ月、繰り返し実施された世論調査は日本人の過半数が今年の夏に大会を開催することに反対していることを明らかにしてきました。
5月16日日曜日に発表された共同通信による別の世論調査では、再度延期することを選択肢に入れていませんでしたが、回答者の59.7%が中止を支持しました。

                

                   

主催者者側は、アスリートの定期的なテストや海外から観戦の禁止など、厳しいウイルス対策が大会開催中の安全を可能にすると述べています。
しかし共同通信の世論調査では回答者の87.7%が、海外からのアスリートやスタッフの来日は新型コロナウイルスの拡大につながると懸念していることがわかりました。

                   

日本では他の多くの国よりも新型コロナウイルスへの感染・発症割合が少なく、これまでの死者は11,500人未満です。
しかし日本政府は国民へのワクチン接種の実施が遅いという批判にさらされています。
共同通信の世論調査では、回答者の85%がワクチン接種の実施が遅れていると考えており、71.5%が日本政府の新型コロナウイルスの感染拡大への対応に不満を持っていることがわかりました。

                     

https://www.theguardian.com/world/2021/may/17/tokyo-olympics-more-than-80-of-japanese-oppose-hosting-games-poll

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この国で暮らすほとんどの人は医療従事者の方々の手を借りてこの世に生まれてきたはず。

そして人生が終わる時も、再び医療従事者の皆さんに付き添っていただくことになります。

逆に言えば、医療従事者の方はそれだけの重責を日々担っておられる、そう考えます。

                    

その医療従事者の方々が今、限界に追い込まれています。

何を置いてもまず、医療従事者の方々を守るために万全の対策をとるべきです。

                  

一国の規模で特定の職業の人々だけが限界に追い詰められるというのは、極めて異常な状況です。

しかもこれらの人々は何か過失があったわけではなく、一つでも多くの人命を救おうと懸命に働いているわけで、その恩恵は国民全員が受けています。

                    

こうした人々を守るのが二の次三の次にされるような国家は、もはや先進国でもなく文明国でもない、その事実と向き合うべきです。

                        

その意味で呆れたのが19日夜に報道されたIOC会長トーマス・バッハの発言です。

「日本人は逆境を耐え抜く能力がある。」

と伝えられましたが、この発言は

「日本人は新型コロナウイルスによる犠牲者・感染者の増加という『逆境を耐え抜いて』でも、東京2020オリンピックを開催しろ。」 

と言っているのと同じです。

バッハ会長は世界的に有名なスポーツメーカーの国際部門の責任者などを歴任したドイツ有数の財界人のようですが、我々日本人はIOCの従業員ではありません。

IOCの利害を守るために日本の医療従事者の『逆境』を悪化させるいわれはありません。

なぜ中止しないのか?:東京2021オリンピック

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市民生活の混乱と医療崩壊が続く中、開催強行の姿勢を崩さないIOC

新型コロナウイルスの世界的大流行の真っ只中、オリンピック開催は人々の生命と健康に対する脅威

大会中止による損失 - IOCは保険金の支払いを受け、日本国民はツケを支払わせられる

                   

                        

アンドレアス・イルマー/ 英国BBC 2021年5月15日

                 

新型コロナウイルスの感染爆発による非常事態宣言が首都東京で続く中、東京オリンピックの開催まで残すところ2か月余りという段階で、オリンピックを中止するよう求める声は日ごとに大きくなっています。
ではなぜ日本政府及び関係者は大会のキャンセルについて公式に語ろうとしないのでしょうか?

                 

結論を言うと、答えがそれほど単純ではないからです。

                     

日本の状況は良くありません。
新型コロナウイルスの非常事態宣言は、首都東京と他の3つの主要な都道府県で感染者数が増え続けているため対象地域が拡大しています。

                    
健康問題の専門家と世論の双方が大会の中止を求めて声を上げているにもかかわらず、大会のキャンセルに関する公式のコメントはどこからも聞こえてきません。
現時点における世論調査では、日本人の人口の70%近くがオリンピックの開催を望んでいないことが明らかにされていますが、国際オリンピック委員会(IOC)は、飽くまで大会を開催するという姿勢を崩しません。

                  

昨年夏に開催されはずだったオリンピックが今年開催されることについて、日本は安全で安心できる環境のもとで開催できるということに疑問の余地はないと長い間主張してきました。
しかし今週初め、菅義偉首相は初めて世論の圧力に屈した形で、日本政府は「オリンピックを最優先するわけではない」と述べましたが、最終的な決定はIOCに決定が委ねられるだろうと付け加えました。

                  

                   

では、誰が実際に大会を中止する力を行使できるのでしょう?
そしてキャンセルが発生する可能性はあるのでしょうか?

                  

▽ どうすれば大会を中止させることができますか?

                   

IOCと開催都市東京との間の契約は単純です。
キャンセルに関する記載が1項目あり、開催都市ではなく、中止を決定する権限はIOCだけに与えられています。

                     

「これはオリンピックがIOCの『独占的財産』であるためです。」
国際スポーツを専門分野とする弁護士のアレクサンドル・ミゲルメストレ氏がBBCにこう語りました。
そしてオリンピック大会の『所有者』として、契約を終了させる権限もIOCが握っています。

            

戦争や大規模な暴動などを除けば、中止を正当化する理由の1つは、「いかなる理由であっても、大会の参加者の安全が深刻な脅威あるいは危険にさらされると信じるに足る合理的な理由がある場合」であり、この場合IOCは独自の裁量権に基づき中止を決定します。

            

新型コロナウイルスの感染爆発はこうした脅威である可能性があることは疑いがありません。

                      

オリンピック憲章はまた、IOCが「アスリートの健康」を保障しなければならないとしており、「安全なスポーツ」を促進することを規定している、とメストレ氏は指摘しています。
それにもかかわらず、IOCの現執行部は大会決行に固執しています。

               

                        

では日本はIOCの方針に異を唱え、オリンピック開催を自ら取りやめることはできるでしょうか。

                    

「日本が一方的に開催中止を決定した場合、これらの開催都市約款のさまざまな条項の下では、発生するリスクと損失は開催国の組織委員会が負わなければならなくなるでしょう。」
メルボルン大学のジャック・アンダーソン教授はBBCの取材にこのように答えました。

                          

しかしこの契約内容は通常ありうる一般的なもので、もちろん日本側はどんな内容の契約を取り交わしたかは十分承知していたはずだ、スポーツ法の専門家であるミゲルメストレ弁護士はこう説明しました。

                         

日本側が予想していなかったのは、開催直前に新型コロナウイルスの世界的に大流行するということでした。

                             
「契約には特定の不測の事態の発生が織り込み済みですが、現在の世界的状況の実態は明らかに前例のないものです」
「オリンピックは世界的に最大のスポーツイベントであり、日本とIOCにとって、放送権料販売の点で数十億ドルの損失発生の危機に瀕しています。巨大なイベントであるだけに、すべての側が巨大な契約上の義務を負っているのです。」

                      

したがって唯一の現実的な解決策は、日本がIOCと共同で電源プラグを引き抜き、契約に従って事後処理を進めることです。

                      

もしそうなった場合でも、保険金が支払われることになります。
IOCにはこうした場合の保険契約があり、開催国の組織委員会も保険に加入しており、世界各国の放送局やスポンサーも保険をかけています。

                  

「東京オリンピックが中止された場合、こうした類の最大の保険支払いイベントになることは間違いないと思います。その点については疑いの余地はありません。」
アンダーソン教授がこう語りました。
ただし保険は主催者が支払った直接的な費用はカバーしますが、開催を見越して全国のホテルやレストランなどが観光客の増加を見込んで行った改装などにかかった間接費用については、保険による支払いを受けられない可能性が高いと考えなければなりません。

                    

▽ 批判の合唱

                         

今のところ開催をめぐり不透明な状況がダラダラと続いています。
これまでの道のりも決して平坦ではありませんでした - 大会は1年延期され、聖火リレーは何度も中断され、海外からの観客は入国することもできず、今や無観客での競技も視野に入ってきました。

                

しかしこの問題について発言したアスリートはほとんど存在せず、この問題については彼らの中でも意見が分かれているのかもしれません。

                  

この大会での記録達成を目指してきた人々にとって、オリンピックは競技人生におけるハイライトであり、そのために何年にもわたってトレーニングを積み重ねてきました。

                       

しかし新型コロナウイルスの世界的大流行の真っ只中にあっては、オリンピックの開催は人々の生命と健康に対する脅威となりえます。

                  

日本最大のスポーツスターの一人であるテニスチャンピオンの大坂ナオミは、こうした議論に参加した数少ない選手の1人です。
しかし彼女も慎重に言葉を選びながら躊躇の思いを表明しただけでした。
「もちろん、オリンピックの開催を望んでいます。」
5月中旬、彼女はこう語りました。
「特に昨年は非常に重要な問題が起きたと考えています。」
「多くの予期せぬことが起こりました。私としては、この問題が人々を危険にさらしているのではないかと考えています…だとしたら間違いなく議論すべきです。それは今すべきことだと思います。結局のところ私はただのアスリートであり、パンデミックは世界規模で起きている問題であり、なおさらそう考えています。」
「人々が大きな不安を抱えているのだとしたら、それが真実大きな懸念の原因になっています。」

                      

米国の陸上競技チームは5月中旬、安全が確保できないとして、日本でのオリンピック前のトレーニングキャンプを中止しました。
さらにキャンプが行われる予定だった日本の自治体の首長ですら、次のように語りました。
「現在の状況下、米国チームは可能な限り最善の決定を下したと確信しています。」

                  

                     

大会を構成するはずだった関係諸機関においても、同様の不安定要因が噴出しています。
東京周辺の全域にわたり、海外選手をホストする予定だった市町村が、オリンピック関連のイベントが新型コロナウイルスの感染拡大を加速してしまうことを恐れ、相次いで辞退を表明する事態になっていると国内のメディアが伝えました。

                             

ある地方自治体の首長は5月中旬、アスリート専用の病床を病院内に確保するという要求を拒否したことを明らかにしました。
代わりに彼は、新たな延期または場合によっては中止の可能性について検討する必要があると語りました。

                    

さらに医師会も政府あての声明の中で、新型コロナウイルス感染の拡大状況を考えると大会を開催することは「不可能」であると述べています。

                     

これらはいずれもオリンピックの中止を明確に求めてはいませんが、医療の専門家による警告と世論が大会開催に反対することにより、始めは細々としたものでしかなかった大会開催への疑念と懸念は過去数週間を経て人々が集まり大きな合唱になりつつあります。

                

▽ 金の問題、そして…

                  

しかし、大会中止による経済的損失以上のものも危機に瀕しています。
世界的スケジュールではもう来年の2022年2月には冬季大会の開催が予定されており、開催地は日本のライバル中国の北京です。
ですから全体を見れば、日本が東京オリンピックを完遂するためにはいかなる労をも厭わないということに疑いを差し挟む余地はありません。
日本が最後に夏季オリンピックを開催したのは1964年、この大会は第二次世界大戦後からの復興と再建の重要な象徴と見なされました。

                

東京2020/21大会は再び象徴的な意味合いを持つことになった、こう指摘するのは、メルボルン大学のアンダーソン教授です。
「日本は長期にわたる経済の停滞を経て、東日本大震災と福島第一原発の崩壊に遭遇しました。この大会は再び復興の象徴となるはすでした。
「その点が特に重要視されていたのです。」

                

               

しかし最終的に、大会を開催するかどうかは日本人が準備を進めるつもりがあるかどうかということとは別の問題です。
近代オリンピックの史上、大会がキャンセルされたのは3回だけです。
1916年、1940年、1944年。
2度の世界大戦による3回だけです。

                     

これだけ逆風が高まっているにもかかわらず、IOCは中止を検討することさえ拒否しています。
これを見て事情に詳しい関係者は、東京2021オリンピックは準備が進められ、7月23日に開幕することになるだろうと見ています。

                

https://www.bbc.com/news/world-asia-57097853

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以前から感じていたのですが、この記事を読んで改めて認識を深めたことがあります。

かつてヘレン・カルディコット博士が原子力発電のことを『極悪非道の連続殺人鬼』( relentless serial killer )と表現しましたが、現在のIOCもまた「relentless serial killer」と呼ばれても仕方がありません。

人命、そして人々の暮らしの安寧よりも自分たちの組織の存続と利害を優先させる組織に、『人類の祭典』などをつかさどる資格などないからです。

「医療は限界!」「オリンピックは中止を!中止!」6割〜7割の日本人が中止を望む

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「大会開催は『人々を非常な不安に陥れる!』開催そのものについて話し合うべき時が来ている!」
感染者が急増の大阪、病院のベッドは満床、新型コロナウイルスと診断された13,000人以上が自宅待機を求められている

                       

                     

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2021年5月10日

                    

東京オリンピックへの準備作業は開催まであと3ヶ月という段階で、日本の60%近くの国民が中止を望んでいることが世論調査で明らかにされ、さらなる障害が立ちふさがることになりました。
国内では東京を始め複数の府県で非常事態宣言が5月末まで延長されることになりました。

                    

背景には、新型のより伝染性の強い変異ウィルスによって引き起こされた新型コロナウイルス感染者の急増を抑えきることができず、医療関係者が日本の医療が一部の地域において崩壊寸前の危機にあることを警告していることがあります。

                   

                    

新型コロナウイルスの世界的感染拡大により1年延期された東京2020オリンピックは7月23日に開幕する予定で、国際オリンピック委員会(IOC)と日本の大会組織委員会は、アスリートやその他の来会者、そしてナーヴァス担っている日本国民の安全を確保するため万全の措置を講じると主張しています。

                   

政府寄りの論調を展開する読売新聞が5月7日から9日にかけて行った調査では、大会の中止を望む人は59%で、開催すべきだと答えたのは39%でした。
IOCによって除外された「延期」は選択肢には含まれていませんでした。

大会準備にを進めるべきだとかいうした人のうち、23%が観客なしで開催すべきだと答えました。
外国人の観客は禁止されていますが、日本人の観客に関する最終決定は6月に行われます。
TBSが5月初旬に実施した別の世論調査では、65%が大会の中止または延期を望んでいました。
37%が大会の完全な中止に投票し、28%が再度の延期を求めています。
共同通信が4月に行った同様の世論調査では、70%がオリンピックの中止または延期を望んでいることが明らかにされました。

            

                 

開催に反対する人々は開催するかどうかの最終決定は開会式の約70日前にははっきりさせる必要があるとしており、IOCと日本政府は最終的を行なうべき責任者について、互いにさまざまなメッセージを送っているように見えます。
IOCのジョン・コーツ副会長は5月8日、大会に関する日本の感情は「懸念されるものがある」が、最大規模のスポーツイベントを中止するというシナリオは考慮に入っていないと語りました。
「日本の首相は2、3週間前、米国大統領に同じ趣旨の発言を行いました。IOCにも同じ内容を伝え続けています。」
コーツ氏はこう語りました。

                          

しかし10日、日本の菅義偉首相は自らの政権は国民の生命と健康より大会開催を優先してはいないと主張し、最終決定権を持つのはIOCになるだろうと述べました。
国会の委員会で新型コロナウイルス感染者が急増してもオリンピックの開催準備を進めるのかどうかを尋ねられた菅首相は、「オリンピックを最優先したことは一度もない」と答えました。

                  

菅首相は次のように付け加えました。
「私の優先課題は日本国民の生命と健康を守ることです。まず第一に、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ必要があります。」
しかし菅首相はCovid-19の症例が急拡大していたにもかかわらず、飽くまでオリンピックの開催準備を進めることを繰り返し主張していました。

                 

                   

TBSの調査では、菅内閣の支持率は40%であり、今年初めに記録された最低値に近いことがわかりました。
フジ・ニュースネットワークは9日月曜日、5月に来日を予定していたIOCのトーマス・バッハ会長が6月に来日する予定であると報じました

                  

日本のメディアはバッハ会長が5月17日に広島で開催される聖火リレーイベントに参加すると報じていましたが、東京2020組織委員会はそうした訪問予定は確認したことがないと述べました。
フジテレビはバッハ会長の訪問の前提条件は、日本の非常事態宣言が解除されることだと伝えました。

               

今夏に開催される大会に公然と反対する有名アスリートはいませんが、日本のテニススターである大坂なおみ選手は、パンデミックの真っ只中にイベントを開催することのメリットについて話し合うべき時が来たと語りました。

                    

世界ランキング第2位の彼女は、大会を開催することが「人々を非常に不安に陥れる」ことである以上、開催そのものについて話し合うべきだと述べました。
「もちろん、オリンピックが開催され自分も参加したいのは山々ですが、現在非常に深刻な問題が進行中であり、特に昨年は非常に重要な問題が起きたと考えています。」
大坂なおみ選手はイタリアオープンに先立って記者会見でこのように語りました。
「多くの予期せぬことが起こりました。私としては、この問題が人々を危険にさらしているのではないかと考えています…だとしたら間違いなく議論すべきです。それは今すべきことだと思います。結局のところ私はただのアスリートであり、パンデミックは世界規模で起きている問題であり、なおさらそう考えています。」

                 

                  

感染拡大は聖火リレーと予選競技会にも混乱をもたらしました。
先週カナダの体操協会は、新型コロナウイルスへのの懸念を理由に、6月にリオデジャネイロで開催されるラストチャンスのオリンピック予選にチームを派遣しないことを決定しました。
これにより男子体操競技、女子体操競技、新体操の選手が東京2020には事実上参加しないことを決定したと発表しました。

                    

日本は60万件以上の新型コロナウイルス感染症例と10,500人以上の死亡を記録しており、東アジア地区で最も多い数字を記録しています。

                  

8日には、1日で7,000件を超える感染が報告され、これは1月以来の最悪となりました。
さらに、新たに新型コロナウイルスに感染していると診断された人々のための病床を確保するのが困難になってきましたが、2月に開始されて以来、日本の1億2,600万人の人口のうち、少なくとも1回のワクチン接種を受けたのは2パーセント以下にとどまっています。

                      

東京都立川市の病院は、医療能力が限界に達したことを警告する横断幕を掲げています。
「私たちも休憩が必要です!オリンピックは不可能です!」

                 

                  

厚生労働省のデータでは感染者が急増している大阪府では病院のベッドが満床になっているため、新型コロナウイルスと診断された13,000人以上が自宅待機を求められています。

                     

https://www.theguardian.com/sport/2021/may/10/tokyo-olympics-poll-shows-60-of-japanese-people-want-games-cancelled

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ここ、そして前回の記事に掲載されている新型コロナウイルス患者の治療にあたっておられる医療従事者の写真の数々。

これらはGoogleの画像検索『exhausted medical worker』の表示結果から得られたものです。

こうした人々に対し

『東京オリンピック開催期間中、500人の看護師をホランティアとして差出せ』

と本当に要求したのだとすれば、私たちは

『お前、正気か?!』

と問いたださなければなりません。

                   

なぜなら私たちは、人々の命を救うために疲弊の極に達している医療関係者の方々に、大規模イベントで「ボランティアとして働け」と言うほど狂ってはいないからです。

「中止だ!中止!」東京2020、開催中止を求める署名に数十万人

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収容先がないまま自宅で死亡する新型コロナ患者が出る中、東京2020組織委員会は医療関係者10,000人の派遣を要求
公表されているだけで準備に1兆7,000億円を費やした日本、東京2020はその行為の価値を問われる場と化した

                      

                   

影山ゆり、スティーヴン・ウェイド/ AP通信 2021年5月6日

                        

東京2020オリンピックの中止を求めるオンライン署名が日本国内で開始され、わずか数日で数十万件の署名を獲得しました。
こうした展開は新型コロナウイルスの特に変異ウィルスが猛威を振るい、感染が急拡大している非常事態宣言下の東京、大阪などの地域を中心にみられています。

                         

当初非常事態宣言は5月11日に終了する予定でしたが、現状を見る限り非常事態は延長される可能性が高いとみられています。

                        

延期されたオリンピックは、7月23日、3カ月弱ほど後に開幕する予定です。
署名は5月後半に日本を訪問する予定だった国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長に宛てられています。
バッハ会長は5月17日に広島県内で行われる聖火リレーに立会いり、小規模な反オリンピック・デモが計画されている東京にも足を踏み入れる予定でした。

                   


世論調査の結果、日本人の70%から80%の人々がオリンピックを中止または延期したいと表明していますが、こうした意見が現実に取り上げられる可能性は今の所ありません。
日本の菅義偉首相、東京組織委員会の橋本聖子会長、そしてバッハIOC会長は東京2020大会は予定通りに開催されると繰り返し述べています。

                      
主催者とIOCは先週、いわゆるプレイブックを公表し、新型コロナウイルスのパンデミックの只中にオリンピックを開催する具体的手法を解説するために、アスリートやその他の人々に守るべきルールについて説明しました。

                      

これまでの数日間、いくつかのテストイベントが実施されましたが、主催者はほとんど問題を報告していません。
オリンピック聖火リレーは約1か月間日本各地の会場を走り続けています。
主催者によると、リレーに参加したランナーのうち8人が新型コロナウイルスの検査で陽性と判定されてました。

                

                        
公表されているだけで準備に1兆7,000億円を費やした日本にとって、東京オリンピックはどうすれば面子を保てるかという試練の場と化しました。

                  

収入の73%がテレビ放映権の販売によるものであるIOCにとって、東京オリンピックを開催することは非常に重要です。
主催者側は東京オリンピックが「安心できる安全な大会」になるだろうと述べていますが、こうした見方については日本国内の医療専門家から疑問を突き付けられた上、4月発行のブリティッシュ・メディカルジャーナルの社説でもオリンピックのような大規模なイベントにおいて「安心できる安全な」状況はありえないと批判されました。

                        

主催者側はオリンピックの開催を支えるため10,000人の医療従事者が必要になると述べています。
主催者側は大会中、さらに500人の看護師と200人のスポーツ医学の専門家を派遣するよう要求しましたが、看護師協会は当惑しています。

                   

                  

今回の署名は東京知事選挙にに数回出馬した経験を持つ弁護士の宇都宮健児氏が立ち上げました。
開始後24時間で約50,000件、5月10時点では340,000件以上の署名を獲得しました。

                  

「日本政府の政策はオリンピックありきで進められ、コロナウイルスの感染爆発を抑え込むための対策はなおざりにされたままです。」
と宇都宮弁護士はAP通信の取材にこう語りました。
「医療機関はギリギリの状態で対応を迫られ、自宅にとどめ置かれたまま亡くなってしまった人もいます。

                        

署名キャンペーンの英語の見出しには、「私たちの命を守るために東京オリンピックを中止してください」と書かれています。

                       

                     

キャンペーンのメッセージにはオリンピックを安全に開催することは不可能だと訴え、オリンピック開催を強行すれば新型コロナウイルス・ワクチンの接種範囲の拡大など感染防止策として使われるべき国の資金を浪費することになると述べています。
これまで日本国内では新型コロナウイルス・ワクチンの接種を受けたのは国民のわずか2%にとどまっています。
日本国内では新型コロナウイルスにより10,500人の人が亡くなっていますが、世界全体と比較すれば少ない方ですが、近隣のアジア諸国ほど少ないわけではありません。

               

『東京オリンピック・パラリンピックを7月に開催するためには、大勢の医療従事者の方々、また医療施設や医療設備などの貴重な資源、その他のさまざまなリソースを割かなければなりません。』
署名キャンペーンの趣旨にはこう記されています。

               

毎日新聞が行った調査では、9つの都道府県知事が試合の中止または延期を望んでいることが明らかにされました。
その他の知事のほとんどは、自分には意思決定権がないと語り回答を拒否しました。

                      

https://apnews.com/article/olympic-games-health-coronavirus-pandemic-sports-8ec45735a8373f0468cca346a0298849

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今必死に人々の命を救おうと働いていただいている医療従事者の方々の命と健康を守る、そして私たち自身の命と健康を守るため、東京2020は中止すべきであることは明々白々。

                                  

そんなことが解らない政治家は現実を見る目すら持っていない、ということになり、すなわちその目は節穴だということになるでしょう。

『500人の看護師をボランティアとして差出せ』東京2020 – 怒りの声を挙げる日本の看護師たち – 国民の生命よりオリンピック成功を優先

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真夏のオリンピック「大会開催中は10,000人の医療従事者が必要」患者も看護師も健康と生命が危険にさらされている状況下で

                     

写真 : 新型コロナウイルスCOVID-19ワクチンの初回接種を受ける看護師

            

ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2021年5月3日

                    

日本看護協会に対し500人の会員看護師を東京2020に派遣するよう求める東京オリンピック組織委員会の要請に対し、医療関係者の怒りの声がわき上がっています。

                  

この要請は、開催国である日本で新型コロナウイルスの感染拡大が悪化の一途をたどる中、ただでさえ過剰な負担を強いられている医療関係者にこれ以上を負担を強いるべきでないという警告が繰り返されていたにもかかわらず、飽くまで大会開催を推進しようとする国際オリンピック委員会(IOC)と東京オリンピック組織委員会が行ったものです。

                 

日本国内での新型コロナウイルスによる死亡者の総数は、つい最近10,000人を超えました。
日本の死亡者数は極東アジア地域で最も多数にのぼりますが、メディアの報道によれば新型コロナウイルスの重症患者の数は昨週末には記録的な1,050人に達しました。
東京その他の患者が急増している地区の医療スタッフは、新型コロナウイルス患者に加え、感染拡大により適切な治療が受けられなくなっている他の病気の人々に専門的な治療を行うための態勢づくりが急務だと述べています。

                      

             

日本の第四波の震源地となった大阪府は、重病患者を収容するためのベッド数が不足し、新型コロナウイルスに感染・発症した人々は、入院する前に救急車で何時間も待つことを余儀なくされています。

                

さらに世界の中で大きく出遅れた日本のワクチン接種の対応は、オリンピック開催にさらなる暗雲を呼び込みました。
オリンピック大会組織委員会の関係者は、一年で最も暑い真夏に開催される東京オリンピックの大会中は、10,000人の医療従事者が必要になると述べています。

               

しかし、最近行われた日本看護協会に対する500人の会員看護師の東京2020への派遣要請は、ソーシャルメディアで『新型コロナウイルスの感染拡大の影響で忙しすぎて、オリンピックに時間を割くことができない』などと悲鳴に似た声を挙げる看護師などの渦を巻くような怒りの声に遭遇しました。

                    

オリンピック開催のための役割分担を求められることに反対を表明した地元の医療組合連合によるツイートは、数日で数十万のリツイートを受け取るほどの反響がありました。

                

日本医療従事者組合事務局長の森田進氏は、新型コロナウイルスへの対応を優先すべきだと語りました。

                 

                  

「新型コロナウイルスの急激な感染拡大と闘いのため深刻な状況を置かれている看護師を、オリンピックにボランティアとして派遣するという提案を私たちは阻止しなければなりません。」
声明のなかで森田氏はこう述べました。
「患者も看護師も健康と生命が危険にさらされている状況下で、飽くまでオリンピックの開催を主張する姿勢に激怒しています。」

       

2月中旬にワクチンの接種を開始した日本で、医療従事者は最初のグループでしたが、多くはまだ1回目の接種すら受けていません。
森田氏は、適切な予防措置を得ていない医療スタッフは、患者の治療やワクチンの投与中にウイルスに感染することを恐れていると述べました。

                  

これまで少なくとも1回のワクチン接種を受けたのは、1億2,600万人の日本の人口の2%未満です。
この数字はOECD諸国の中で最低です。

      

「怒りを感じるだけでなく、(要求の)あまりの鈍感さに驚きました。」
名護市の中心部で暮らす看護師の池田みきとさんはAP通信の取材にこう答えました。
「それは国民の生命がいかに軽視されているかを具体的に示すものです。」

                   

                 

過重なストレスや性も根も尽き果てたという形で仕事を辞めざるを得なかった事例も含め、仕事をやめた看護師をボランティアとして東京2020に参加させることを提案した菅義偉首相の発言が国内の反発を招きました。
「私が知る限りでは多くの医療従事者が休暇を取っており、それは可能であるはずです。」

                  

鳩山由紀夫元首相は次のようにツイートしました。
「今、日本の人々は新型コロナウイルスに感染して死ぬのか、それとも経済的困窮の末死ぬのだろうかと、ほとんどの人が追い詰められた状況にいます。そして大阪その他の場所では看護師たちに助けを求めています。さらにワクチン接種の場に看護師は必要ないのでしょうか?」

                  

野党国会議員の田村智子氏は、次のように述べています。
「事態は極めて深刻です。看護師のみなさんは、どうすればこの状況に対処できるかわからなずにいます。物理的にも不可能です。」

                    

菅義偉首相はIOCと組織委員会による「81日以内に安全で快適なオリンピックを開催することが可能である」という主張をそのまま繰り返し述べていますが、医療の専門家の疑問は深まる一方です。

               

                   

                      

4月のBMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル。1988年からBMJが正式名称となっているイギリスの医学誌)の記事は、日本はオリンピックの開催を「考え直す」べきであり、「国際的規模の大集会イベントは…まだ安全でも快適でもない」と述べています。

                 

東京医師会の尾崎晴夫会長は、最近累積症例数が60万人を超えた日本で、より伝染性の高いウイルスの亜種が蔓延している今、オリンピックを開催することは「非常に難しい」と語りました。
5月2日日曜日、日本は5,900の新たな感染とさらに61人の死亡を報告しました。
「大会開催を望むという精神論はもう十分に聞きました。」
尾崎氏はこう語りました。
「国内外で感染者数を増やすことなく、大会開催をすることなど非常に困難です。」

                 

菅義偉首相は先月、感染者数の急増を抑制するために東京、大阪、その他2つの感染が拡大している自治体で非常事態を宣言し、酒類を提供するレストランは少なくとも5月11日まで閉店するか営業時間を短縮し酒類の提供を行わないよう要請しました。

                    

                    

https://www.theguardian.com/sport/2021/may/03/japan-nurses-voice-anger-at-call-to-volunteer-for-tokyo-olympics-amid-covid-crisis

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自民党の改憲案に含まれる『緊急事態条項』。

この提案をする彼らの『緊急事態』というものが、国民の生命財産が危険にさらされることではなく、オリンピックという一大利権イベントが開催できなくなることを指すのだということを痛感させられる記事です。

戦後70年以上の時間をかけて日本の民主主義を進歩発展させようとしてきた努力を土足で踏みにじる気満々です。

事故前も隠蔽を繰り返し、事故後も隠蔽を続ける、それが日本の原発 – 100年災害!福島第一原発の崩壊《4》

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福島第一原発事故の真実を明らかにするための研究・科学的努力について、日本は国を挙げて妨害している

福島から避難した被災者の生徒が受けた差別は、広島長崎への原爆投下によって『被爆者』にされてしまった人々が直面した差別と同様のものである

処理済み放射能汚染水は実際には高レベルのストロンチウム90やその他の放射性物質で汚染されている可能性がある

『原子力、明るい未来のエネルギー』- 明るい未来とは双葉町・大熊町のゴーストタウンのことであったのか?!

                    

                   

トーマス・A・バス/ 原子力科学者会報 / フェアウィンズ 2021年3月10日

                      

放射線被ばくについて一般的に認められている安全基準は、年間1ミリシーベルトまたは1000分の1シーベルト以内です。
国によって基準は異なりますが、米国の原子力規制委員会は、一般市民の偶発的な放射線被ばく線量が自然界に存在する放射線量を上回る量を年間1ミリシーベルト(1,000マイクロシーベルト)以内に制限するよう、原子力発電所の運営者に要求しています。
年間のバックグラウンド放射線の制限値として、この数値はある程度国際標準になっています。
(比較のために記すと、バックグラウンド放射線の自然レベルは通常、年間平均で最大3.1ミリシーベルトの範囲に収まります。)

                     

しかし福島第一原発の事故後数ヶ月、日本政府が緊急事態に対処するためにあわててやったことは、この被ばく線量の許容値を引き上げた、それだけだったのです。(福島第一原子力発電所は廃炉にされることが決定し、現在そのための作業が行われています。
日本政府は現在、福島県の一般市民の偶発的な放射線被ばく線量が自然界に存在する放射線量を上回る量を年間20ミリシーベルトにまで引き上げた、アメリカの学術誌 Scientific Americanはこう報告しました。

                     

年間20ミリシーベルトという数値は、年間1ミリシーベルトという国際的標準値とかけ離れています。
許容被ばく線量20ミリシーベルトという数値は、福島県の子ども達は原子力発電所でフルタイムで働いている大人と同じ量の放射線にさらされる可能性があるということを意味します。

                    

福島の周辺地域を除く日本の他の地域の制限は、年間1ミリシーベルトのままです。
これはまるで被爆者の21世紀版ともいうべき状況であり、福島の許容放射線被ばく線量が一気に20倍にひきあげられたことに反対する人は誰でも『有害な噂 - 風評被害』を煽っていると批判されることになります。
中国や他の50カ国が放射能汚染の可能性があるという理由で福島県および周辺地域の食品の輸入を禁止した後、日本当局は激しく反応し、福島に関連するあらゆるものの取り扱いに対する日本政府の対応について批判をした人々は経済的妨害者のように扱われたのです。

                     

同様に、福島県から避難した人々は日本国内の他の地域で侮蔑的扱いを受け、それについて朝日新聞は「避難者の広範囲にわたるいじめと差別」の状況について報じました。

               

                    

こうした事実については英国の新聞ザ・インディペンダント(The Independent)も同様の見解を示し、
「福島から避難した避難者の生徒が受けた差別は、第二次世界大戦の原爆投下によって『被爆者』にされてしまった人々が直面した差別と同様のものである」と述べています。

                  

福島出身の女性は結婚相手として敬遠され、子供を福島第一原発からできるだけ遠ざけたいと願う妻と元の場所に戻ろうとする夫との間で新しい種類の福島型離婚という問題が出現しました。

                 

「原発事故の真実を明らかにするための研究・科学的努力について、日本は国を挙げて妨害している。」
核戦争防止国際医師会のドイツ支部共同議長を務める小児科医のアレックス・ローゼン氏がこう語りました。
「人類が共有することができる人体の健康への影響に関する公開された研究結果や文献はほとんどありません。これまで公表されているものは、日本国内で『ミスター100ミリシーベルト』の異名を持つ山下俊一氏を中心とする福島県立医科大学の少数の研究者グループが行ったものだけです。」

                       

山下氏は福島第一原発崩壊の巨大災害の初期日本政府のスポークスマンを務めており、2013年に辞任を余儀なくされる前に2年間福島県内で行われた健康調査を主導していました。
福島第一原発の事故以前の山下氏自身の研究とそのスタッフへの指導に反して、山下氏は100ミリシーベルトの放射線被ばくは無害であると日本国民に伝えました。
そして甲状腺がんを予防するためのヨウ素錠剤投与をしないよう勧め、放射線障害に対する最善の予防方法は笑顔で幸せに暮らすことだと主張したのです。

                   

                

今も事態の悪化が止まらない福島第一原発では、事故収束・廃炉作業のために毎日4,000人が働き続けています。
彼らは、損傷した建物の崩壊を防ぐのに苦労しながら、冷却水を炉心と燃料プールに送り込み続けています。
その結果オリンピックサイズのプール480杯分に相当する10億リットル以上の汚染水が、敷地内の錆びたタンクに貯めこみ続けなければならなくなりました。
東京電力は、このタンクの設置スペースが不足していると主張し、この水を直接海に放出することを計画しています。

                          

東京電力はこれまでずっと、比較的安全であると言われている水溶性の放射性同位体であるトリチウムを除き、福島第一原発の敷地内に貯蔵された水から放射性物質を除去したと主張してきました。

                     

しかし2014年、東京電力は汚染水の処理プロセスが失敗したことを認めざるを得なくなり、福島の処理済み放射能汚染水は実際には高レベルのストロンチウム90やその他の放射性物質で汚染されていることが判明したのです。

                

実は福島第一原発は操業開始当初から、近くの山から流れ落ちて工場内を流れる地下水を封じ込めるのに苦労していました。
今日の福島第一原発の敷地の下は、ストロンチウム、トリチウム、セシウム、その他の放射性物質で汚染された地下水と冷却水、すなわち放射能汚染水の泥地と化しています。
エンジニアは水路、ダム、排水ポンプ、および排水溝を張り巡らせてきました。

                            

2014年、東京電力は福島第一原発の地下を氷壁で囲むために300億円の公的資を与えられました。
凍土壁計画です。
しかし日本の原子力規制委員会はこのプランも失敗に帰したと認めています。
「効果があったとしても限られたものでしかなかった。」
原子力規制委員会委員長がこう認めました。

                 

http://www.tepco.co.jp/decommision/planaction/landwardwall/index-j.htmlより

                     

                       

2019年、日本経済研究所は福島第一原発の事故収束・廃炉作業にかかる費用は約80兆円に達する可能性があると推定しました。
しかし現実問題として、それで福島第一原発の事故崩壊がすべてカタがつくはずがありません。
溶け落ちた放射性核燃料、放射能に汚染されたコンクリートの残骸や金属片などはこれから何万年もの間、人が近づけばたちまち死に至る放射能を帯び続けます。

                     

チェルノブイリでは溶岩の塊のような溶け落ちた核燃料の塊は「ゾウの足」と呼ばれ、コンクリートを山のように盛り上げた下に埋め込まれました。
『石棺』と呼ばれるこの方法は一度では放射能を抑え込むことができなかったため、欧州連合が約1,600億円の資金提供して2度目の作業が行わました。

                  

まるで原子力発電の失敗の象徴を作るかのような方法を嫌った日本は、福島に同様のコンクリートの石棺を建設することを拒否しました。
その代わりに東京電力は、いまだ考案もされていない可能かどうかもわからない技術を使ってメルトダウンした原子炉から溶け落ちた核燃料を搔き出し、確保の見通しもない最終処分場に永久に保管することを計画しています。
それまでの間、福島第一原発は日本の太平洋岸に開いたままの傷口のように鎮座し続けるでしょう。

                      

一度は避難していなくなった住民を福島に呼び戻すために、2つの施設が作られました。
福島第一原発のすぐ南にある富岡町内には、かつてのエネルギー博物館が東京電力廃炉資料館と呼ばれるものに改築されました。
1つのフロアでは東日本大震災の災害シーンを再生する映画を上映し、別のフロアでは東京電力による『廃炉作業の進捗状況』を伝えています。
一方。、日本政府は福島第一原発の真北にある双葉町に東日本大震災・原子力災害伝承館という名称の3階建ての建物を建てました。

                 

                        

                    

福島第一原発・第二原発の労働者で賑わうかつてのブームタウンであった双葉町のメインストリートには大きなアーチ型の看板が設置され、太字で「原子力:明るい未来のエネルギー」と宣言していました。

                    

大沼雄二さんは中学3年生の時、課題を与えられこのスローガンを考えました。
大沼さんは町から表彰されました。
現在、大沼さんは福島から遠く離れた場所で暮らし、ソーラーパネルを設置する事業を営んでいます。
そして震災から数年後のある日、双葉町を訪れました。
その時の写真には、白い防護服を着込み、ブーツ、帽子、フェイスマスクを身に着けた大沼さんが写っています。
大沼さんの後ろには、崩れかけた建物が立ち並び、雑草が生い茂る双葉町のメインストリートが見えます。
大沼さんは東京電力の費用負担によって設置されたアーチ型の看板の上に、自分で制作した赤い文字が書かれたプラカードをかがけました。
そこには『原子力:制御できないエネルギー』と書かれていました。

                  

この後、アーチ型看板は撤去され、双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館内に保管されています。

                       

大沼さんはこの看板が廃墟と化した故郷の町に再び設置され、『明るい未来』とはこのゴーストタウンの姿であったのか、人々に問いかけ続けるよう望んでいます。
そして当時の原子力発電の推進が正しかったのかどうか、人々が答えを出すよう願っています。

                  

                          

町中に再び設置されることは無理でも、この看板が少なくとも原子力災害伝承館内に展示されることを願っています。
「私は間違ったスローガンを作りました。」
彼は最近、アメリカからやってきたインタビュアーに語りました。
「でも、生きている間に自分の間違いに気がついて良かったと思っています。」

                        

《完》
https://www.fairewinds.org/demystify/fukushimas-first-decade-in-a-100-year-long-catastrophe?ss_source=sscampaigns&ss_campaign_id=604974fba3438c548995b0b4&ss_email_id=60497ef445867a5842acaa5a&ss_campaign_name=Fukushima%E2%80%99s+First+Decade+in+a+100-year+Long+Catastrophe&ss_campaign_sent_date=2021-03-11T02%3A22%3A59Z
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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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