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【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈4〉

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所要時間 約 10分

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使用年限の到来により、原子力発電所の設備すべてが巨大な核廃棄物と化す
原子力発電所を建設するという事は、自分たちの子孫に巨大な核廃棄物を押しつけるということ
あまりに巨額の廃炉費用を賄うには不良債権化しか道はない…それでも核廃棄物の問題は全く解決できない
原発の不良債権化により負担は国民全体へ、しかし廃炉のスケジュールは早まる

デア・シュピーゲル 5月15日

Spirgel 1
▽電力会社、『冬の時代』

各電力会社は深刻な問題に直面する中、電気を生み出す代わりに日々損失を生み出しています。
このため数千人規模の人員整理を行い、手持ちの有価証券等を現金化して財源に繰り入れるなどの措置を強いられています。

電力事業の継続のため法律で定められた引当金を全額確保できるのは、E.onとEnBWの2社だけのようです。
現状ではRWEは事業を継続するためには、増資を行わなければならなくなっています。

これまで長い間考えられなかった、電力会社の経営破たんという事態もあり得ない事ではなくなってきました。
もしそうなればその会社が所有する原子力発電所の解体と原子炉廃炉のための費用は、ドイツ政府が支払わなければならなくなってしまいます。

ドイツ連邦会計裁判所は、最近以下の判決を行いました。
「電力会社が原子力発電所の解体・原子炉の廃炉を実行できなくなった場合、ドイツ連邦政府は保証人として部分的、あるいは全面的な信用供与を行うべきかどうか検討しなければならない。」

メルケル政権の経済・エネルギー担当大臣のガブリエルにとって原子力発電所の問題は、ドイツの再生可能エネルギー法の改正の次の主要な課題になりました。
普段は政府と対立する各電力会社も、この問題についてはガブリエル大臣に協力しないわけにはいかないでしょう。

Gorleben04
原子力発電所を不良債権としてしまうこと、あるいはもう少し歩み寄って『公益信託』とすることについては、ドイツ政府には3つの利点があります。

1番目はドイツ全体の送電網からの原子力発電所の除外が計画よりも早まること、あるいは電力が不足した時の予備電源として位置付けることにより、原子力発電の廃止のスケジュールが早まるという事です。
2番目は電力会社が経営破たんに陥っても、政府に直接の被害が及ばなくなるという事です。
なぜなら債権とした段階で、電力会社は負担しなければならない金額を事前に払い込まなければならないからです。

そして3番目が、電力会社が訴訟を取り下げることにより、ドイツ政府には原子力発電の全廃による補償金の支払い義務が消滅するという事です。

しかし利点だけではありません。
今後いったいいくらに膨らむのかその予測も出来ない核廃棄物の保管・処理費用については、ドイツ政府が全責任を負わなければならなくなるという大きな欠点があります。

▽公益信託を選択した場合のシナリオ

原子力発電所を段階的に廃止していくために公益信託をつくるというアイデアは、決して新しいものではありません。
すでに2年前、ラザルド投資銀行はこれと似た案を作成し、公表していました。

仏・フェッセンアイム
そして脱原発運動の先頭に立ってきたグリーンピースと緑の党も、政治の場において同様の提案を行ってきた経緯があります。

緑の党やグリーンピース側の提案は、電力会社の社内留保金すべてをこの公益信託に投入する一方、原子力発電所の廃炉と核廃棄物処理に伴うリスク負担に責任を持たせるというものです。

当然のことながらE.onを始めとする各電力会社は、自社の貸借対照表の中身が、すでに放棄したはずの原子力発電所という『負の資産』にこれから何十年もの間圧迫され続けることを嫌い、こうした提案をすべて拒否しています。
電力会社自らが『不良債権』という提案を行っている背景にあるのは、社内留保金を吐きだしたり、核廃棄物処理にともなくリスクを回避するためなのです。

結局のところ、原子力発電というものが本質的に持っている歪みが、今日の事態を招いたと言うことが出来ます。
これまで何十年もの間、原子力発電を使い続けるために様々な策を用いてきた電力業界は、今やできるだけ早く原子力発電と手を切りたいと考えています。

「早くこの問題に決着をつける必要があります。」
ひとりの電力会社の役員がこう語りました。

それができるかどうかは、電力会社とドイツ政府に係っています。
原子力発電所という『負の遺産』を整理するため、双方とも何千億、何兆円もの費用負担を迫られています。
しかしこの問題に決着をつけられるのは、電力会社でもなければ、政府でもなく、また環境問題に取り組む人々でもありません。

国民全員が負担しなければならないのです。

Chernobyl
不良債権とする・しないに関わらず、電気料金の値上げという形をとるか、増税という形をとるかの違いだけで、国民全員が莫大なコストを負担していくことになるのです。

〈 完 〉

http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
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この記事は『原子力発電所は使用年限が過ぎれば、設備全体が巨大な核廃棄物と化す』という重要な事実も伝えています。
という事は現在原子力発電所が立地している日本国内の各市町村は、いずれ巨大な核廃棄物を抱え込むことになるはずです。

今宮城県では山形県と境を接する山側の3つの市町のいずれかに、福島第一原発の事故で出た核廃棄物の処分場を作ろうという国の計画が持ち上がり、地元が猛反対しています。
当たり前の話で、これらの市町村は福島第一原発の運営によってどのような経済的利益を得ていた訳でも無く、事故によって『出てしまった』廃棄物を引き受けてくれと言われても、理不尽な話だとしか思えないはずです。

こうした状況を考えれば原子力発電所によって『潤っていた」市町村が、核廃棄物の保管場所の負担という問題については、いずれその『全責任』を負わなければなくなるのでしょう。
そんな事実を認めるくらいなら、むしろ再稼働の方を認めたい、そういう事なのかもしれません。

しかし認めたくなくとも、巨大な核廃棄物と化した原子力発電所という『事実』は残ります。
その負担を負わなければならないのは、ここでも将来の世代なのです。

明日15日(日)は休載日です。

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【 『原子力発電所を不良債権に』、ドイツの主要電力各社が提案 】

ドイチェ・べレ 5月15日

ドイツ・ブランデンブルグ門
ドイツは原子力発電の段階的廃止を決定しますが、巨額に上る原子力発電所の解体・廃炉費用について主要電力各社は、公的な負担を求めています。
これに対しドイツ政府は電力各社が責任を取るべきだとの見解を示しています。

ニュース誌デア・シュピーゲルの報道によれば、ドイツの主要電力各社は原子力発電所の解体・廃炉の責任を軽減するため、現在政府と交渉を続けています。

主要電力会社4社(E.ON、RWE、EnBW、スウェーデンのファッテンフォール)は、原子力発電事業と発電所の所有権を『不良債権』化し、公的資金による運営・整理についてドイツ政府と交渉を行っています。
この報道に対し、ドイツ政府はこの問題に関する各電力会社との話し合いが行われたことを否定し、どのような決定も行われてはいないとしています。
環境省は、原子力発電所を運営している各電力会社が、その解体・廃炉についての全責任を有していると強調しました。

電力会社の提案しているのは、これから8年間に渡り原子力発電所の解体・廃炉と核廃棄物処分について全責任を負う公的基金を設立するというものです。
電力会社側はこの基金を実現するため、すでに30億ユーロ(4,200億円)の資金を準備済みです。

ドイツ・核廃棄物
「この提案は、原子力発電所のに関わる一切のリスクを、ドイツ政府に転嫁するためのものです。」
ロイター通信の記者が、この交渉に実際に加わっている匿名希望の関係者の話を明らかにしました。

この計画の存在はデア・シュピーゲルが初めて明らかにしたものですが、ドイツ政府は交渉が存在すること自体を認めてはいません。
3年前、福島第一原子力発電所の事故の発生を見て、メルケル政権は2022年までにドイツの原子力発電の段階的廃止を決定しました。

http://www.dw.de/german-utilities-want-bad-bank-for-nuclear-energy/a-17629231

【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈3〉

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当初の試算をはるかに上回る、原子力発電所の解体・廃炉費用、資金調達に追われる電力会社
莫大な廃炉費用、訴訟の取り下げと引き換えに、政府資金の拠出を迫る電力会社
石炭やガス、そして原子力発電所による発電事業の収支は、もはや辛うじてとんとんという状態

デア・シュピーゲル 5月15日

Spirgel 1
▽ 大きな危険に直面させられる政府

ドイツ政府のエネルギー担当大臣であるガブリエリは、論議の的となっているこの課題の多い問題をこれから長く議論もしないまま放置するわけにはいきません。

ドイツの各電力会社は原子力発電が作り出した負の遺産である核廃棄物の問題から、できるだけ安い費用で逃れようとしていることは誰が見ても明らかであり、政府としてはそれをそのまま受け入れるのは困難です。
事実、政府側は電力会社の提案については交渉の上、手を加えなければ受け入れられないというのがその立場です。

長期間原子力発電を続けてきたE.on、RWE、EnBW、そしてVattenfall(ファッテンフォール)の電力各社だけが危険負担を強いられている訳では無く、ベルリンの政府も大きな危険に直面することになります。

これまで電力会社はいくつかの訴訟において、政府に対し約150億ユーロ(2兆1,000億円)の補償を求めています。

01ドイツ・反原発
福島第一原子力発電所の事故発生を見たメルケル政権はドイツの原子力発電の全廃を決定、これを受けE.onとRWEはドイツの違憲審査裁判所に補償金の支払いを求める訴訟を起こしたのです。
この訴訟はドイツ政府の決定が、電力会社の財産権を不法に侵害したかどうかについて争われています。
判決は2015年に下されるものと見られていますが、法律の専門家もこの訴訟の結審を予想することは難しいと語っています。

ファッテンフォール社は同じくクリューンメル原子力発電所とブルンスビュッテル原子力発電所の計画外の早期閉鎖について、30億ユーロの補償金の支払いを求めて、ワシントンにある調停裁判所に訴訟を起こしています。
エネルギー憲章条約の存在により、ファッテンフォールのような外国の企業がアメリカで訴訟を起こすことは可能であり、判決が下されればドイツ政府はこれに従わなければなりません。

これらの事実は、原子力発電燃料税を取り入れたヴォルフガング・シェーブル財務大臣(キリスト教民主同盟)にとっても頭の痛い問題です。
2011年に導入されたこの燃料税は電力会社に原子力発電所の使用年限の延長と引き換えに、燃料として使用したウラニウムとプルトニウムに課税するものです。

02ドイツ・反原発
2、3週前、ハンブルグの金融法廷は、この課税が憲法に反するものであるとの判決を下しました。
もしこの判決がドイツの憲法裁判所と欧州連合司法裁判所(EUの最高裁判所にあたる)によって支持されれば、ドイツ政府は最高で50億ユーロ(約7,000億円)の賠償金支払いを求められる可能性があります。
もしそうなれば、連邦予算の健全化を目指す政府の取り組みは、ほとんど達成不能に陥ることになります。
ドイツの電力会社はこの損害賠償請求訴訟を切り札に、政府との交渉を進めようとしています。

ドイツ政府がもし原子力発電所を不良債権化するプランに同意し、その後押しをするならば、E.On のCEOであるヨハネス・ティッセンとRWE社長ピーター・テリウムは、いくつかの訴訟を取り下げ、これ以上損害賠償請求を行わない用意があります。

各電力会社の経営陣は、この提案がモラルを無視したものであるとも、政府への脅迫でも脅かそうとする行為でもないと考えています。

もしそれが可能だと解れば、企業のトップは株主に代わり企業の損失に対する補償を求める義務があります。
それをしないというのであれば、株主に対する説明責任が発生することになります。

電力会社と政府との間の交渉のために残されている時間はどんどん厳しくなっています。
最初の判断は2015年前半に下されるものと予想されています。

anti04
これらを総合的に判断した場合、この訴訟に関わっている弁護士のうちのひとりが次のように語りました。
「訴訟に関しては多分、電力会社側に有利か評決が下されるであろうことは明らかだと思います。」
そうなれば、政府側にはあまり選択の余地はないということになります。

多くのエネルギーの専門家が分析するところでは、政府が交渉のテーブルに着かなければならない理由は他にもあります。
現在のところ、原子力発電所の廃炉とそれに伴って発生する核廃棄物の処分について、各電力会社はそれを秩序だって進めるための態勢が出来上がっているかどうか明らかではなくなっているのです。
専門家は、今後さらなる税金の投入が必要になるかもしれないと警告しています。

電気を供給する企業は、本来であればこうしたコストの発生に備え、財政的に準備を行う法的な義務があったはずです。
しかし多くの場合、それは発電所という『現物の資産』によって担保されることになりました。
これはリーマン・ブラザースが抱え込んでいた各種の金融資産よりも信頼性が高いと言えるかもしれませんが、この数年間で発電所の資産的な価値は大幅に減少しました。

ドイツが行っているエネルジーヴェンデ(エネルギー革命)により、補助金を給付された太陽光発電や風力発電などの発電量は増え続け、従来の発電手段にとって代わり続けています。

anti02
「石炭やガス、そして原子力発電所による発電事業は、」
E.On のCEOであるヨハネス・ティッセンは長年こう主張し続けてきました。
「もはやその収支は、辛うじてとんとんという状態なのです。」

RWEは今年度だけで、発電所の試算的価値を50億ユーロ(7,000億円)減額させなければなりませんでした。
各電力会社は実際に解体・廃炉作業を始めるまでは、原子力発電所は積み立てられてきた費用で十分賄えるものと考えてきました。
しかしエネルジーヴェンデ(エネルギー革命)の進展と原子力発電の廃止が決まった今、その試算はもはや有効ではないのです。

〈 第4回につづく 〉

http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
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この記事を読んで明らかなことは、
原発を1か所増やすごとに、社会的コストがその分膨らんでいくという事であり、
原発が1日余計に稼働すれば、やはり社会的コストがその分膨らんでいくという事です。
電力会社はそのコストについて精密な計算などはしておらず、その時になって足りない分はすべて国民にツケが回ってくるという事が実証されつつあるという事です。

現在の日本政府は経済の成長に原発の稼働は貢献をするという言い方をしていますが、それは
自分たちの政権が責任を持たなければならない「当面の経済成長に原発が貢献すると考えている」
というだけの事であり、
「多額の処理コストについては、自分たちは責任を取らずに将来の世代にそのツケを回す」
という事になります。

日本はこういう政治をいつまで続けるつもりでしょうか?

【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈2〉

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所要時間 約 6分

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反原発運等が行った数々の主張が結局は正しいものであった事を、電力会社の計画が証明することになった
原子力が安全で、完全に制御可能なテクノロジーであると主張することは、もはや不可能
原子力発電を始めて半世紀、核廃棄物を安全完璧に永久保存する方法も、無害なものへと変えてしまう技術も、現実には存在しない

デア・シュピーゲル 5月15日

Spirgel 1
▽ 解決されないまま残っている重要な疑問

まず言わなければならない事があります。
それは多くの場合、原子力発電所の解体・原子炉の廃炉費用が、当初予想した金額より多額に上ってしまうという事です。

そして中でも最も緊急性が高く重要なのは、高レベル放射性核廃棄物を、安全に保管できる場所を見つけられるのか?という問題です。
ドイツは原子力発電所を始めて半世紀が過ぎましたが、未だにこの答えは見つかっていません。

ニーダーザクセン州にあるゴールベンの岩塩ドームに核廃棄物を一時的に保管する作業が始まってすでに30年が過ぎましたが、中間処分場として本格的に利用するための安全審査は未だに完了していません。
さらに電力会社はこれまでに16億ユーロ(2,240億円)もの巨額の費用を使ったにもかかわらず、永久処分場は未だに確保できずにいます。

昨年ドイツ政府は、2031年までに永久最終処分場として確保できる可能性のある場所を、他の州で調査する決定を行いました。
1カ所の可能性のある場所の調査を行うだけで、その費用は10億ユーロ(1,400億円)以上に昇る見込みです。
しかもドイツ人が近年学んだことは、大規模な公共事業は当初の見積額をたちまちオーバーしてしまうという事です。
未だに開業できずにいる新しいベルリン空港しかり、あるいはハンブルグ・エルブ・フィルハーモニー・コンサートホールしかりです。

廃炉08
新ベルリン空港やハンブルグのコンサートホールは、あまりに複雑な構造のため建設予算がオーバーしてしまったとお考えですか?
であれば極めて危険な高レベル放射性核廃棄物を、数千年の間安全に保管し続けるための施設を建設するには、どれ程複雑な設計と工事が必要になるのでしょうか?
考えるだけでも、最高に複雑な設計と工事が必要になることは目に見えています。
10億ユーロ(1,400億円)、20億ユーロ、いや300億ユーロ(4,200億円)が必要になるのか、前もって予測する事は不可能です。

こうして理由から各電力会社は、原子力発電の解体・廃炉費用を政府に肩代わりしてもらいたいと考えるようになったのです。

▽ 反原発運動が正しかった事を証明する現実

1970年代と1980年代に巻き起こった、多数の人々が参加する事になった反原発運等が行った数々の主張が結局は正しいものであった事を、多くの点において各電力会社の計画が証明する事になりました。

1986年のチェルノブイリ原発事故、そして2011年の福島第一原発が引き起こした原子力大災害の後、原子力が安全で完全に制御可能なテクノロジーであると主張することは、もはや不可能です。
そして核廃棄物を安全完璧に永久保存する方法も、あるいは無害なものへと変えてしまう技術も、現実には存在しません。
これらの事実が明らかになった今、原子力発電のすべての経済的な側面が、白日の下にさらされる事になったのです。

anti04
現在太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー開発にそうしているように、政府は原子力発電の開始時期に補助金を出していました。
いずれが正しいかあなたの判断を待つしかありませんが、これまで政府は原子力発電に対し170億ユーロ(2兆3,800億円)〜800億ユーロ(11兆2,000億円)の国民の税金を投入してきました。

原子力発電が軌道に乗り、利益を上げ始めると、その利益は国民に返される事無く電力会社と株主たちの金庫の中にしまい込まれる事になりました。
そして原子力発電が終わりを迎えようとしている今、その費用負担が再び国民一般に求められようとしています。

現在のところ、ドイツの経済界、そして中道・左派連合を形成する社会民主党員(SPD)のエネルギー担当大臣のシグマール・ガブリエは、この問題に関する公式コメントを明らかにしていません。
5月上旬、ガブリエ・エネルギー担当相はE.onとRWEの社長との会談を土壇場でキャンセルしました。
その理由について、ドイツの原子力発電からの転換の道筋を定める再生可能エネルギー法の解説の手続きを一刻も早く完了させたいというものでした。

〈 第3回につづく 〉

http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html

【 原子力発電所は国家の『不良債権』!原子力発電所の危険負担はあまりに長期間、あまりに巨額 】〈1〉

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廃炉費用は当然電力会社が負担するもの…そんな考えは覆され、あなたに請求が回ってくる
原子力発電所を廃炉にするための方法など未確立、そこにどれ程の危険が潜んでいるのか、費用はいくらになるのか不明のまま
原子力発電所を不良債権化して責任転嫁、廃炉費用の負担から逃れようとする電力会社

デア・シュピーゲル 5月15日

Spirgel 1
追加費用が天文学的な金額に上る事を恐れ、ドイツの電力会社は廃炉の責任を政府に転嫁、費用の支払いを国民の税金によって賄うべく動き始めました。
そうなれば数十億ユーロの費用が必要になりますが、この提案をのむほか無いのではないか、ドイツ政府はそう考え始めている節があります。

ドイツの最新の、そして最難関となる課題の重量は275,000トンです。
これはオブリヒハイム原子力発電所を廃炉にする際に排出される鋼材、セメント材その他の放射性廃棄物の総重量です。
この莫大な量の放射性廃棄物があるのは、バーデン・ビュルテンベルグ州オブリヒハイムの町の中です。
ここにある放射性廃棄物は原子力発電所で使われていた配管類、発電部門の機械部品、タービン、発電機、そして原子炉圧力容器など。
そしてそのままでは放射線量が高過ぎるため、移動も解体も出来ない高レベル放射性核廃棄物が約10,000トンあると見られています。
これらは廃炉作業の中でまず、超音波洗浄やサンドブラストなどの前処理を行わなければなりません。
そして人間が行うには危険すぎる作業は、遠隔操作ロボットを使う必要があります。

原子力発電所の解体・廃炉は、完了するまでに15~20年を要する、技術的に極めて複雑、そして困難な仕事です。
オブリヒハイム原子力発電所は本来、ドイツの電力会社EnBWの持ち物ですが、廃炉完了までに要する費用は5億ユーロ(約700億円)と見積もられています。
しかしドイツの他の原子炉と比較すると、オブリヒハイムの加圧水型原子炉は比較的小さい方なのです

グンドゥレミンゲンB号機(ミュンヘン北西)、あるいはバイエルン州のイサー2号機の様なさらに大きな原子炉を廃炉にするためには倍の10億ユーロ(約1,400億円)画筆用になるだろうと見られています。

廃炉05
多くのドイツ人は廃炉のタイミングが訪れれば、原子力発電所を使ってこれまで何10億ユーロもの利益を上げてきた電力会社が、当然その費用を負担するものと考えてきました。
自家用車のオーナーはそれがもう使い物にならないと判断すれば、自分で廃車費用を支払って処分する義務を負っていますが、電力会社だけには違うルールを認める必要があるのでしょうか?

ドイツの3大電力会社とその代表、E.On のCEOであるヨハネス・ティッセン、RWE社長、ピーター・テリウム、EnBW社長のフランク・マステューは原子力発電所の廃炉に何十億ユーロもの自社の資金をつぎ込むのではない、電力会社にとつて願っても無い結論で一致したのです。
彼らはドイツ政府とドイツ国民に、原子力発電所の廃炉の責任を転嫁したいと考えています。

▽ 原子力発電所は国家の『不良債権』

今や電力会社は彼らの経営にとって最大のリスクとなっている原子力発電所について、その廃炉を行うため、電力業界の『不良債権』とする事を提案しているのです。

2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故を見て、福ドイツのアンゲラ・メルケル首相はエネルギーヴェンデ、すなわちエネルギーの転換政策実行を決断し、ドイツ国内のすべての原子力発電所を、2022年までに段階的に閉鎖し、主に再生可能エネルギーに変える方針を導入しました。
閉鎖した原子力発電にとって、次なるステップは原子炉の廃炉です。
その廃炉作業に伴うリスクのあまりの大きさを見て、ドイツの各電力会社の経営陣は現存するすべての原子力発電所の所有権を放棄し、これから8年間の原子力発電所の経営を公共事業とするよう求めているのです。

そのために原子力発電所を不良債権とし、原子力発電所の廃炉と放射性廃棄物の処理を付帯する義務にしようとしているのです。
[下図 : ドイツ国内に残る原子力発電所]
Spiegel 2
この不良債権の処理責任はドイツ政府が負う事になります。
計画によれば、ドイツの電力会社は併せて300億ユーロ(約4兆2,000億円)をドイツ政府に提供します。
この金額は各企業において長年にわたり積み立てられ、この資金を基に最終的にドイツ政府によって廃炉作業と放射性核廃棄物の最終処分が行われる事になります。
資金の提供と引き換えに、政府は現在電力会社が原子力発電所に関わって持っているすべての危険負担を肩代わりする事になります。

この提案についての政府側の反応について、すべての電力会社がシュピーゲルの取材に対する返答を拒否しました。

E.On CEOのヨハネス・ティッセン、RWE社長のピーター・テリウムは、今年始め彼らのプランについて、その概略をドイツ政府に説明しました。
現在計画の細部に渡る作り込みが続けられており、彼らの提案が政府を取り上げる事になれば、直ちに交渉を始められるよう準備が進んでいます。

この時点で確実な事は、ドイツ国内の原子力発電所を廃炉にするための方法など確立しておらず、そこにどれ歩程の危険が潜んでいるのか、またその費用も不明のままであるという事です。

一方明白な事は、ドイツ国内のすべての原子炉を廃炉にするのに、300億ユーロ(約4兆2,000億円)ではとても足りないだろうと言う事だけなのです。

〈 第2回につづく 〉

http://www.spiegel.de/international/germany/utility-companies-want-public-trust-for-winding-down-nuclear-plants-a-969707.html
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今日から「原子力発電所は国家の『不良債権』」を3ないし4回に分け、掲載致します。
原子力発電所の運転を続ければ。核廃棄物だけでなく、原子力発電所そのものが巨大な核廃棄物と化す。
福島第一原子力発電所のように事故を起こさなくとも、そこに原子力発電所が出現すれば、現にそこにあれば、それそのものが巨大な核廃棄物なのだという事をしっかり認識する必要があります。

そしてその巨大さは作った張本人の電力会社だけでは、いずれ処理しきれなくなる運命を持っているのだと言う事を。

【 福島第一原発の犯罪現場を検証する : 3号機 / その原子炉格納容器で起きていること 】〈後編〉

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深刻な汚染が続いている福島第一原子力発電所の状況を、東京電力が正しく理解していない
史上最悪の産業事故が起きた現場の状況を、東京電力も日本政府も把握できていない、まして「コントロールしている」などは論外
東京電力は事故の発生原因をゼネラル・エレクトリックに押しつけ、自らを被害者の位置に置こうとしている

フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイション 2014年2月19日

CSI: Fukushima from Fairewinds Energy Education on Vimeo.

原子炉格納容器は原子炉建屋と呼ばれる建物内にあります。

これは福島第一原発で3基の原子炉がメルトダウンした直後、爆発を起こした原子炉3号機の原子炉建屋です。
原子炉格納容器は電球を逆さまにしたような形をしており、基礎にドーナツ状の輪がついています。

格納容器内で水素ガスの量が増え、その圧力によって格納容器の蓋を止めていたボルトが伸び始め、蓋の隙間から 水素ガスが原子炉建屋内に漏れ出します。
この状況については、フェアウィンズではすでに2011年時点で動画を使ってご説明しています。(【 新たな欠点が確認されたBWR Mark1型原子炉 】 http://kobajun.biz/?p=1858 )

原子炉格納容器は放射性物質を含んだガスが周辺環境に漏れ出さないよう、いわば人々を守るために考案された装置ですが、福島第一原発の事故では発生から3日目に環境中に放射性物質が放出されてしまいました。

次に起きたことは原子炉格納容器につながっている電線類のシールド(絶縁)と配管類の破壊でした。
これらはいずれもゴム製、プラスチック製であり、原子炉のメルトダウンのような超高温状態に耐えられるように設計されていなかった上に、炉心を冷却するため急きょ注ぎ込まれた大量の海水の塩分によって破壊が進んだものと考えられます。

さらにゴム製、プラスチック製の絶縁機能の喪失は汚染水の漏出を引き起こし、結果として周辺の土壌や環境の汚染を引き起こしてしまいました。

120125
そしてメルトダウンした燃料が分厚い原子炉の底を突き破って外に漏れ出すメルトスルーが発生し、冷却水を循環させるための配管類も破壊されてしまったのです。
そのためにどんな形で水が入り込んでも、その水は床の上にこぼれることになるはずであり、まして東京電力が主張するように主蒸気配管を通ってきちんと回収されるはずなど無いのです。

現在こうして各所が破られた配管の中に毎時4トンの冷却水が送り込まれ、結果として大量の汚染水が作られ環境中に漏れ出してしまっていますが、配管類の水位はこの破れ目が現在の基準になっています。

図面を使い、原子炉格納容器内の水位と水が漏れ出している場所に着目してみましょう。
格納容器内の水位は東京電力が水漏れがあったとして特定した場所よりも、はるかに低い位置であることが解ります。
ご存知のように、水は低い場所から高い場所へは移動しません。

ただし、事実解明に多少の混乱をもたらしている事実があります。
今回発見された漏れだした水の放射線量は、原子炉の基礎部分から汲み出される汚染水の100分の1でしかないという事です。
しかし、現在メルトダウンした原子炉の炉心を冷却するために注入が続けられている地下水と比べれば100倍の放射線量を持っています。

そこでどうしてもこの疑問がわいてきます。
福島第一原発3号機は本当は一体どうなっているのか?

CB06
これまで福島第一原発では実に多種多様のトラブルが発生し、フェアウィンズとしてもこの汚染水の漏出問題だけの検証にとどまっている訳にもいきません。
しかし今回の発表を見て解った事は、東京電力自身この汚染水の正体も、漏出原因も解明できていないという事です。
ただ単に『雨水ではないのか?』と推量しているに過ぎません。
この事実は私も含め、世界中の核技術者・専門家から見れば福島第一原発にとって、周辺環境にとって、そして日本中の人々にとって喜ばしい事ではありません。
なぜなら、深刻な汚染が続いている福島第一原子力発電所の状況を、東京電力が正しく理解していないと推論せざるを得ないからです。

原子炉に送り込まれるはずの冷却水が、途中で漏れだしている可能性は無いのか?

漏れだしている汚染水が20度前後である事を考えると、原子炉を冷却した後の汚染水が床にこぼれだしている可能性も考えられる

漏れだしているのが原子炉格納容器の中からであれ、外からであれ、史上最悪の産業事故が起きた現場の状況を、東京電力も日本政府も把握できていないのです。
という事はつまり、福島第一原発を未だコントロールできてはおらず、相変わらず放射性物質が周辺環境、水資源、海洋汚染を続けており、大気中にすら放射性物質の放出が続いている可能性を否定できないのです。

アメリカには犯罪現場の科学的検証を徹底的に行って犯罪の全容を解明していく『CSI』という人気番組がありますが、技術者である私の同僚は、もし『CSIフシマ編』という番組があれば、原子炉3号機付近とそこにつながっているすべての配管からタンク類まで、あらゆる場所の水のサンプルを収集・分析する事になるだろうと語りました。

廃炉13
真犯人を特定するために血液型とDNA鑑定が行われるように、水か存在する場所すべてからサンプルを収集し、それを科学的に、放射線科学的に分析を行わない限り、漏れだしている水の正体を特定する事などは不可能なのです。

私は先出の同僚の意見に全く賛成です。
東京電力は事故の発生原因を福島第一原発にあるマーク1型沸騰水型原子炉を製造したゼネラル・エレクトリックに押しつけ、自らを傍観者の位置に置く事をやめなければなりません。
そして犯罪科学捜査の責任者として、原因究明に全力を尽くさなければならないのです。

〈 完 〉

http://www.fairewinds.org/csi-fukushima/
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この稿の原題は[CSI Fukishima]というのですが、このCSIの意味が妻と娘が毎晩見ていたアメリカの科学犯罪捜査番組のタイトルだと気づくまでしばらくかかりました。
日本のマスコミやそこに登場する『専門家』は、福島第一原発を決して犯罪とは言いません。
どころか、事故ですら無く避けようの無い『天災』であったかのような報道、解説をする場合すらあります。
ガンダーセン氏やフェアウィンズと比べると、その良心の欠如に彼らの正体を見る思いです。

【 福島第一原発の犯罪現場を検証する : 3号機 / その原子炉格納容器で起きていること 】〈前篇〉

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機能しなかった環境と人間を守るための設計、新たなトラブルが示唆するものとは?
東京電力は国民一般に対し、3号機の本当の状況を明らかにしているだろうか?

フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイション 2月19日

CSI: Fukushima from Fairewinds Energy Education on Vimeo.

福島第一原発の事故において問題なのは、東京電力が事故を起こした張本人でありながら、あたかも史上最大の産業事故の被害者であるがごとき振る舞いに終始していることです。
フェアウィンズ・エネルギー・エデュケイションのアーニー・ガンダーセンは、福島第一原発の3号機で新たに明らかになった放射能漏れについて分析を行い、東京電力がこの問題について厳格な対応を行なおうとはしていない、その怠慢について検証します。

原子炉格納容器は放射線をその中に閉じ込めることにより、付近で暮らす人々と周辺環境に放射能の被害が及ばないように設計されています。

フェアウィンズのアーニー・ガンダーセンです。
原子炉格納容器は付近で暮らす人々と周辺環境に放射能の被害が及ばないようにするための、最後の防衛線として設計・製造されています。
しかし福島第一原発の3基の原子炉がメルトダウンしてしまった事故では、ジェネラル・エレクトリック(GE)マーク1型沸騰水型原子炉は放射線を封じ込めることが出来ず、設計製造に問題があったことが明らかになりました。

原子炉建屋
福島の悲劇が発生した当初からフェアウィンズは度々原子力発電の格納容器の問題を取り上げ、以来3年に渡ってこの問題について議論を続けてきました。
この福島第一原発が放射線をその中に封じ込めておくことに失敗した件については、ニューヨーク医科大学における私の詳細な解説がお役にたつと考えています。

2014年2月初旬、東京電力は原子炉3号機において、新たな放射線の漏出個所を発見したとする発表を行いましたが、その時に公表されたデータは整合性の取れない奇妙なものでした。

まずはじめにこの問題に関する東京電力の公開資料を見てみましょう。

1.東京電力は福島第一原子力発電所、原子炉3号機内のロボットシステムが水漏れを感知したと公表しました。

2. ロボット・カメラがとらえた映像は、3号機が置かれた床を横切って人間の足幅ほどの水が流れ出している様子をとらえていました。

3.この水漏れが発見された当初、東京電力は雨水であると主張しました。

Workers
4.その後東京電力は水温を測り、摂氏20度であることを確認しました。
当時の気温は摂氏7度であり、その時の雨水が20度であるという事はあり得ない話でした。
5.次に東京電力はこの水を検査し、高濃度の放射性物質を含んでいることを確認しました。
温度が高く、高濃度の放射性物質を含んでいる以上、単純に考えても東京電力はこれを雨水だとは主張できなくなりました。

この問題は法科学的に検証する必要がありそうです。

水温は漏れ出している水の正体をはっきりさせるためのリトマス試験紙の働きはしません。
雨はどこにでも降り、何か熱いものに触れれば簡単に水温が上昇します。

同じことは、放射性物質についても言えます。
原子炉3号機は爆発事故を起こし、広範囲に放射性物質をまき散らしました。そして東京電力は未だに原子炉格納容器内にある爆発物の破片などを除去できずにいます。
従って3号機の原子炉建屋内に入り込んだ雨水は、格納容器から漏れている放射性物質を他に拡散してしまう働きをすることが考えられます。

3号機4号機
原子力発電所の仕組みを考えれば、原子炉格納容器内に侵入した雨水が各部にある放射性物質を拾い集め、大量の放射性物質によってそのまま周辺環境の水資源や環境を汚染してしまう事はありうることです。

まず指摘しなければならないのは、東京電力が原子炉3号機周辺で雨水の漏出を公の場で認めたという事は、とりもなおさず放射性物質が周辺の水資源や環境中に漏れ出している危険性を明確に認めたということになるのです。

次に確認された水は温度が高く、放射能によって高濃度に汚染されているという事実から、この水が格納容器内の破片やがれきと接触したか、あるいは原子炉炉心の冷却を行うために常時送り込まれている冷却水と混じり合った可能性が考えられます。
ここで考えなければならないことがあります。
事故発生から3年が経過した現在も、各原子炉の格納容器、そして原子炉の炉心、さらには溶け落ちた核燃料が再び過熱して核反応を起こさないように冷却を続けるため、福島第一原発では毎時4トンもの水が送り込まれているのです。

第3の問題は、東京電力が考える以上にここには多くの問題が存在している可能性があります。
漏れ出しているこの水はいったいどこから来たのでしょうか?

3号機
東京電力はこの水は主蒸気分離バルブが置かれている部屋から流れ出していると主張しています。
この弁は事故が発生した場合に閉まるように設計されている、巨大なバルブです。
この場所から原子炉の冷却水が漏れることは、設計上あり得ないことなのです。

なぜこの場所から水が漏れているのか、ジェネラル・エレクトリック(GE)マーク1型沸騰水型原子炉の設計図を見ながら検証して行きましょう。

〈 後篇につづく 〉

http://www.fairewinds.org/csi-fukushima/
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【 ノルマンディ上陸作戦70周年 】〈後篇〉

アメリカNBCニュース 6月5日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
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写真左 : 1944年8月21日、ノナン・ルパンに作られたドイツ軍兵士の捕虜収容所と警備をする連合軍兵士。
写真右 : 2013年8月24日、かつて捕虜収容所があった場所にそのまま残る農家。(写真上)

写真左 : 1944年6月6日、連合軍が上陸したジュノービーチから英国本土に送られるため行進する、捕虜になったドイツ軍兵士。
写真右 : 2013年8月23日、ジュノービーチで日光浴をする女性。(写真下・以下同じ)
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写真左 : 1944年6月6日、激戦地のオマハビーチ(ヴィエルヴィル・シュルメール)に上陸するアメリカ軍増援部隊。
写真右 : 2013年8月23日、ヴィエルヴィル・シュルメールの海水浴客。
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写真左 : 1944年6月6日、上陸用舟艇からオマハビーチに上陸するアメリカ軍部隊。
写真右 : 2013年8月22日、ランディング・セールクラスのレースに参加する観光客。
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写真左 : 1944年6月5日、上陸用舟艇に乗り込むためイングランドのウェイマスを行進するアメリカ軍レンジャー部隊。彼らはこの後、オック岬のドイツ軍陣地を攻略する任務を与えられていた。
写真右 : 2013年7月13日、イングランドのウェイマスの港近くを歩く観光客。この港はノルマンディ上陸作戦の、連合軍艦艇の集積基地のひとつでした。
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写真左 : 1944年6月8日、破壊されたオック岬のドイツ軍陣地に立つ星条旗。上陸する連合軍兵士の命を守るため、この重砲陣地の攻略は作戦の要でしたが、アメリカ軍レンジャー部隊が到達したときには、ドイツ軍の重砲舞台は内陸に移動した後だったのです。
写真右 : 2013年8月22日、戦場跡の掩蔽壕を見学するイタリア人観光客。
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【 新たな太陽光発電技術開発、世界に先駆け一層の加速に踏み切れ – アメリカ政府 】

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10年以内にアメリカの太陽光発電システムは、コスト的にも能力的にも、際立った進化を遂げる
米国エネルギー省が開発研究の財務面を強力にバックアップし、市場の投資も促進されている

米国エネルギー省 / ブレイキング・エナジー 5月30日

CSP03
米国エネルギー省は、革新的な集光型太陽熱発電(CSP)技術を進める6つの新しい研究開発プロジェクトのために、今日新たに1000万ドルを投資することを発表しました。
新しいシステムは従来の高価な蓄電システムに代わり、熱化学電池を進化させることにより太陽光からより効率的に電気を生み出し、併せてコスト削減を実現することを目標としています。
さらに同日米国エネルギー省は、すでにクリーンな再生可能エネルギーの生成を達成した5つの代表的なプロジェクトについても新しい報告書を公表しました。

「集光型太陽熱発電(CSP)技術の一環として蓄電技術を進化させることにより、日射強度が弱い時でも太陽光発電システムによるクリーンな電力供給を安定した信頼性の高いものへと進化させることが可能になります。」
米国エネルギー省のアーネスト・モニズ長官がこう語りました。

集光型太陽熱発電技術は、鏡を使って太陽光を受光部分に集中させ、その熱を液体を使って発電を行うブロックに移動し、電気を作りだします。
今回発表された研究開発プロジェクトでは、新しい熱化学エネルギー貯蔵システムを研究・開発することになります。
その開発が成功すれば、高温・高電圧の太陽光エネルギーを化学素材を組み合わせた化学エネルギーの状態で保存し、必要なときに必要なだけ取り出して使用することが可能になります。

大学、国立研究所、そして研究機関から参加する6つのチームが産業界のパートナーと協力しながら、集光型太陽熱発電(CSP)サーモ化学エネルギー保管技術に関するそれぞれ異なる化学プロセスを研究し、CSP技術をさらに前進させていきます。
このようにして産業界のパートナー企業によるアメリカ政府のサンショット・イニシアティヴ( http://kobajun.biz/?p=16736 )が掲げる集光型太陽熱発電の技術的・価格的目標の達成が容易になるように、援護を続けていくのです。

CSP01
米国エネルギー省の『2014年 :太陽光発電開発に集中する年度』という題名の報告書では、2014年、世界的にも最も先進的な取り組みをしているアメリカ国内の5つの集光型太陽熱発電(CSP)開発プロジェクトに焦点を当て、この中で米国南西部で米国政府と産業界が共同で開発をおこなっているプロジェクトが2014年にフル稼働する見通しであることに触れています。
このプラントが実際に稼働すれば、1.26GWの電力を生み出すことになり、それは全米の太陽光発電量の4分の1を提供することになり、平均的アメリカ家庭350,000世帯以上に必要な電力を供給することになります。

これに加え、5つの先進的なCSPプロジェクトは、米国エネルギー省が債務保証を行ったことにより、こうしたプロジェクトに対するに個人的な市場投資が促進され、商業ベースでもこれらのテクノロジーの開発発展が加速されることになるでしょう。

米国エネルギー省が太陽光発電システムに積極的に新しい投資を行なうことにより、アメリカでは太陽光発電のコストが総体的に低下し、産業用・家庭用を問わず、太陽光発電システムがより身近で使いやすいものとなっていくはずです。

CSP02
2020年の末までには、サンショット・イニシアティヴにより革新的なCSP技術が開発され、太陽光発電が従来の発電技術と比較しても、コスト的に全くひけをとらないものとなるはずです。

集光型太陽熱発電(CSP)技術を含めた商用ベースでのクリーン・エネルギー技術開発、あるいは設備実施に対するアメリカ合衆国政府の財務面での支援の詳細については、( http://energy.gov/lpo/loan-programs-office. )を参考にしてください。

Energy Department Announces Projects to Advance Cost-Effective Concentrating Solar Power Systems


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このところ1日おきの掲載が続いているのは、実は私の現実面での取り組みである太陽光発電システムが5月30日についに稼働を始め、社内のプロジェクトの責任者としての仕事がどうしても多忙となってしまっているからです。
幸いシステムは順調に稼働し、着々とクリーン・エネルギーを生産し続けています。

今回のシステムを立ち上げるに当たり、問題のひとつとなったのがやはり蓄電システムの高価さでした。
私が勤務する会社では災害時対策用として10Kwhの蓄電池を購入したのですが、一機800万円強という金額でした。
この分野も開発競争が進み、中には300万円を切る価格の製品も実用化されていますが、今回は東京消防庁も採用しているという最も安全性の高い機種を選んだため、この金額になりました。
しかしこの記事を読む限り、その分野でのコスト低下が十分期待できそうです。

危険な原発や地球温暖化を進める化石燃料を使った旧式の火力発電を止めるために、誰もが現実面での取り組みができるよう、太陽光発電システムの一層の価格の低廉化を期待しましょう。

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【 ノルマンディ上陸作戦70周年 】〈前篇〉

アメリカNBCニュース 6月5日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

dday01
1944年6月6日Dデイ、連合軍兵士はナチスとの戦いに終止符を打つべく、大挙してフランス北岸のノルマンディ地方において上陸作戦を行いました。
今日、世界中の多くがこの作戦の成功の70回目の記念日を祝う式典などが開催されていますが、70年の年月はかつての激戦地を全く別のものに変えました。

しかし景色は変わっても、あの日の重要な出来事は人々の記憶の中に生き続けています。
ロイター通信のカメラマン、クリス・ヘルグレンは1944年の作戦当時の写真を編集し、同じ場所を訪れ、同じアングルから撮影を試みました。

写真左:1944年6月、カナダ軍がサントーバン・シュルメール、ノルマンディ上陸参戦のジュノービーチに上陸を果たした後に残された、アメリカ軍の戦闘機の残骸。
上陸したカナダ軍は英国部隊として、この後カーンのドイツ軍守備隊との間で約2ヵ月間、文字通りの死闘を繰り広げることになりました。
写真右 : 2013年8月23日、かつてのジュノービーチであるサントーバン・シュルメールでくつろぐ観光客。(上の写真)

写真左 : 1944年7月、激戦の後がカーンのドイツ軍隊が降伏、廃墟と化したルー・サン‐ピエールをパトロールするカナダ軍部隊。
写真右 : 2013年8月23日、ルー・サン‐ピエールを散策する買い物客。(写真下・以下同じ)
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写真左 : 1944年6月6日、ゴールドビーチへの上陸を果たし、内陸へ向け進撃するイギリス第7機甲師団。
写真右 : 2013年8月23日、かつてのイギリス軍の進撃ルートを歩くカップル。
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写真左 : 1944年6月6日、砲撃によって死んだ牛がそのままになったユタ・ビーチ近くの農家の庭で、作戦の打ち合わせをするアメリカ陸軍部隊。
写真右 : 2013年8月21日、自宅の庭に立つ上陸作戦当時19歳だったレイモンド・バルトー。
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写真左 : 1944年6月18日、オマハビーチを見下ろす丘の上のドイツ軍燃料集積所脇を進むアメリカ軍歩兵部隊。
写真右 : 2013年8月23日、コルヴィル・シュルメールの同じ丘を登る若者たち。
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【 福島第一原発の事故収束・廃炉作業を描いた漫画、現場の真の姿とは… 】

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世界で最も危険な産業事故の収束作業現場、その作業員たちの日常の真の姿が描かれる
現場にいる作業員は普通の人間、しかし一方で報酬の搾取が存在することも事実…
事故収束・廃炉作業を成り立たせることがますます難しくなっている現状への懸念

ジャスティン・マッカリー / ザ・ガーディアン 5月22日

漫画1F
実際に事故収束・廃炉作業に従事した竜田和夫氏は、メディアが決して見ることのできない福島第一原発の現実を、この漫画を通して伝えられればと考えています。

過去3年に渡り福島第一原子力発電所で働いた何千もの他の多くの男性同様、立田一人(たつたかずと)氏を動かしたものは使命感でした。
「私は東日本大震災の発生当時、ずっと職を探していて、自分が災害地で何かできることがあるかどうか、正直なところわかりませんでした。」
立田氏がこう語りました。

現場で作業を請け負う無数の下請け会社の作業員として福島第一原発の現場に入った竜田氏は約6カ月に渡り作業を行いましたが、被ばく線量の合計が法律で制限されている20ミリシーベルト近い値となり、現場を去りました。

この間、おそらくは世界で最も危険な産業事故の収束作業現場における作業員たちの日常の真の姿について、竜田氏は消すことのできない感慨を持って現場を去ることになりました。
今その彼は『いちえふ(1F)』という新しい漫画作品の中にあり、その出版は現在稼働停止している日本国内の原子炉の将来のあり方について、議論の材料を提供することになりました。

Jビレッジへのバス待ちの列
▽ 内部関係者の証言としての『いちえふ』

この福島第一原発の作業員日誌としての性格を持漫画は、これまで福島第一原発の情報については日本政府と東京電力が公表してきたすべてがつまびらかにされていない情報と、報道内容によっては多くが推測の域を出ていないメディア報道の、その隙間を埋めるべきものとしての評価を得て、福島第一原発についての真実の情報を探し求めている人々の支持を集めています。

かつて一緒に作業をした登場人物たちについて、あえて大まかな描写を行う一方、竜田氏自身は判断を読者に任せることはありません。
福島第一原発の近くの市町村にある作業員用の宿泊施設を朝早く出発する際の描写や、彼らが毎日脱ぎ着しなければならない複雑な構造を持った放射線防護服に関する詳細な描写もあります。

きびきびした対話の中では、実際に現場で働いた人間だけが知っている言い回しや、作業の際の手順などが多数取り上げられています。
作業員たちは後退の時間が来ると、互いに『無事でいろよ』という意味の言葉をかけ合います。
この漫画の短いタイトル『いちえふ』は、現場関係者と地元住民だけが使う、一般には知られていない福島第一原発の呼び名です。
竜田氏は危険な作業に従事しているという意識は無かったと語りました。
そして防護服と防護マスクを着用したまま過ごす時間は厳しいものでしたが、やめようとは思わなかったと当時を振り返りました。
ただいちばん辛かったのは、防護服を着用している間はトイレに行けなかったことだと語りました。

竜田氏は作業中はスケッチはもちろん、ノートをとることも許されませんでしたが、福島第一原発を訪れたことがある人であれば、竜田氏が苦心して再現した作業現場から捨てられてしまった周辺の市町村の描写の正確性を
検証することが出来るはずです。

110624
「私はそれ以前に漫画家として若干の仕事をした経験を持っていました。しかし、私はマンガを書くつもりで福島第一原発の現場に入った訳ではありませんでした。」
今年49歳の竜田氏は東京郊外のスタジオで、ガーディアンの取材に対しこう答えました。

2012年に福島第一原発の現場を去ってすぐに、竜田氏は漫画を描くことを思いつきました。

彼は第一部の絵と文章を書き上げると、その原稿を持って各出版社にあたってみましたが、興味を持ってくれる編集者にはなかなか出会うことが出来ませんでした。
そして講談社に接するにおよび、やっと関心を持ってくれる編集者と出会うことが出来たのです。
昨年秋から『いちえふ』の連載を始めた週刊漫画雑誌『モーニング』の編集者、篠原健一郎氏は次のように語りました。
「私たちは『いちえふ』が非常に独創的な作品であるということがすぐにわかりました。」
「それは私たちの予想を超え、明らかに普段はマンガを読まない人々の興味・関心までも、ひきつけたのです。」

『いちえふ』の初版は4月末に単行本として刊行されましたが、たちまちに150,000部を売り上げ、比較的無名の漫画家の作品としては異例の反響の大きさを記録しました。
講談社は今後、英語、フランス語とドイツ語版の発行を検討しています。

GRD01
しかし福島第一原発の下請け企業が暴力団などの犯罪組織と密接な関わりを持ち、作業員がろくな訓練も受けず、そして充分な装備も与えられず、危険な現場に送り込まれているという現実をこの作品によって確認しようとして読者は、失望させられることになりました。

「グループとしても個人としても、私は現場にいた作業員全員が礼儀正しい人々であると認識しています。」
竜田氏がこう語りました。
「私の作品には、現場の作業員たちがスポットライトの当たらない場所で、与えられた仕事を最善を尽くしてやり遂げようとしている姿を伝えたい、それ以上の深いメッセージはありません。政治家や専門家たちは、いつもテレビなどの陽の当たる場所で福島について議論する機会を与えられています。しかし現場の労働者にはそうした機会は与えられません。私は漫画を通して現場の労働者の声を伝えたかったのです。」

東京電力は年に何度もジャーナリストなどを招いて福島第一原発の現場を視察させ、事故収束・廃炉作業の進行状況についてその都度説明を行っています。しかし3,000人の現場作業員の実態については、未だに多くの事が隠されたままです。

「メディアが伝えた情報によって作られた一般の人々の認識と、福島第一原発の実態との間にはギャップがあります。」
竜田氏はこう語ります。
彼は二度と福島第一原発の現場に戻れなくなってしまう事態を避けるため、本名と素顔を隠しています。
そして何より現場の労働者との絆を大切にしたいと考えています。

汚染水タンク
「一般の人々はメディアが詳しく報じた問題については、たくさんの情報を持っています。汚染水問題や核燃料アセンブリの取り出し作業などの問題について。でも私が人々に伝えたいのは、メディアが決して伝えることのない事柄なのです。」

竜田氏はすべてを記憶に頼りながら、消耗しきった作業員たちが食べたり、休んたりしている場所、たくさんのトラック、バス、車両が作業員や各種装備を運び込んだりしている場所、そして未だに増え続ける汚染水を収納するためのタンクを製造している現場へのバーチャル・ツアーへと読者を導いていきます。

彼はしかし、福島第一原発の労働者たちが搾取を受けているということについては、事実ある事をほのめかしました。
竜田氏は福島第一原発の現場作業員として求人に応じた際、募集要項には1日あたり20,000円以上とありましたが、半年間働いて実際に受け取った金額はその半分をも下回っていました。

彼はまた、熟練した作業員が被ばく放射線量の限界に達してしまい、次々と福島第一原発を去っている現在、事故収束・廃炉作業を成り立たせることがますます難しくなっている現状について懸念を深めています。

GRD 02
かつて福島第一原発の作業現場での体験をメディアに語った少数の作業員と同様竜田氏もそこで過ごした時間を、過酷な労働体験、だからこそ培われた作業員同士の連帯感とがない混ざったものとして思い出します。
「福島第一原発で働いている作業員は、一部のメディアによってゆがんだ形で伝えられており、不当な扱いを受けていると思っています。」
竜田氏がこう語りました。
「福島第一原発の作業員は粗野で無教養な人間であるように描かれていますが、東京都内で見かける建設現場で働いている人たちと、何ら変わるところは無いのです。」

http://www.theguardian.com/world/2014/may/22/manga-fukishima-cleanup-becomes-hit-japan
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この稿の翻訳中、ちょうどNHKの『クローズアップ現代』で、福島第一原発の事故を取り上げた漫画の特集をしていました。
番組の制作意図はつかみかねるというのが見終えての感想でしたが、コメンテーターとて出演した漫画家が
「放射線の健康被害については、専門家の議論に任せておけば良い」
という発言をしていたのが気になりました。

フェアウィンズのアーニー・ガンダーセン氏を始め、世界中のメディアが福島第一原発の事故発生以来、原子力発電が抱える深刻な課題として挙げていたのが『市民の無関心』、そして『権力にすり寄る専門家の心無い行動』であったからです。
なぜ健康被害を受けた市民本人が発信をしてはいけないのか?
『風評被害』という言葉も含め、そこにガリレオ・ガリレイを宗教裁判にかけたのと同じ意図を感じます。

【 日本の平和主義を一方的に後退させる安倍政権 】

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安倍政権により現実になる、日本の民主主義の後退と国権主義の復活
政府の権限だけを一方的に強めていく安倍政権のやり方は、第二次世界大戦以前、軍部の権限のみを一方的に強めていった軍国主義日本と同じ

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 5月15日

安倍01
5月15日、日本の安倍首相が任命した政府諮問委員会が、同盟国が攻撃を受けた場合の軍隊の使用について、日本国憲法による厳しい制限を緩和すべきであるとの答申を行いました。
安倍首相はこれを利用し、戦後日本の平和国家としての成り立ちを変えようとするその最大の宿願のひとつの実現に本腰を入れる姿勢を見せています。

安倍政権によって任命された委員たちは、、戦争の放棄を規定している日本の平和憲法の解釈の変更により、実質的に日本の軍隊である自衛隊の役割を拡大するように求めています。
実質的に軍隊ではあっても自衛隊は第二次世界大戦終了後の創設以来、その役割を自国の領土と国民を守る事に厳しく制限されてきました。

状況についていくつかの制限はありますが、今回の憲法の解釈変更により、日本が直接攻撃を受けた場合でなくとも日本は自衛隊による武力行使が可能になります。
例えば北朝鮮がアメリカ合衆国に向けミサイルを発射した場合、これを途中で迎撃する事が出来るようになりますが、これは現状では不可能です。
さらに委員たちは国連の平和維持活動(PKO)でも積極的に大きな役割を果たすべきだとしています。
日本は1992年以降自衛隊を平和維持活動に派遣していますが、厳しい制約の下での行動を求められています。

この提言が受け入れられるれば、実質的に日本の軍隊である自衛隊が根本的な変換を遂げる事になります。

japan03
安倍首相はこの提言に直ちに支持を表明しました。
この提言は現在与党内で検討されていますが、連立を組む公明党からの反対の直面しています。
この反対により安倍政権の採択前に委員会の提言の内容が若干弱められる可能性がありますが、先行きは不透明です。

国民の権利よりも国家の権能を優先させるべきであるとの姿勢をとる国家主義者、安倍首相はこの提言を平和憲法を改変し日本を戦争できる国にする取り組みの第一歩として利用しようとしている、そう考える人々を中心に国内に幅広く反対の機運が広がっている事を世論調査の結果が示しています。

「これは合理的かつ論理的制限を越えて、第9条の拡大解釈をしようとするものです。」
紛争解決手段としての戦争を否定している現行憲法の内容と照らし合わせながら、上智大学の政治学者である中野孝一教授がこのような指摘を行いました。
「この提言は憲法第9条でなく、日本国憲法そのものを否定しようとする動きの先駆けをなそうとするものであり、国民の多くがその点を心配しているのです。」

安倍首相はこの提言について
「軍事的敵対行動を一方的に強める中国と核兵器開発を進める北朝鮮に対抗するため、アメリカ合衆国と緊密な安全保障関係を築き、オーストラリアとインドなどの民主主義国家との軍事同盟締結を可能にするため」
憲法解釈の変更が必要なのだとの見解を示しました。
そして安倍首相は憲法解釈の変更が、日本を軍事紛争に引きずり込むものだとの批判を否定しました。

日米艦船
テレビで放映された演説で安倍首相は自身が規定している『積極的平和主義』に基づく持論を展開し、日本は軍事力を強化する事により国の平和を守る事が可能になるのであり、地域の平和と安定の維持に貢献するのだと強調しました。
「日本がもう一度戦争を行う国になるという誤解があります、しかし、私はこうした考え方を全面的に否定します。」
安倍首相はこう語り、次のように続けました。
「私は、日本国憲法の平和主義の原理を壊すつもりはありません。自国の抑止力を強化する事により、私たちの日本が戦争に巻き込まれることを避けることができるようになるのです。」

今回の提言は安倍政権の支持者の言うところの『日本の防衛力の強化』を進めるための手順のひとつとして、政府が取り上げる事になります。
しかし政府の権限だけを一方的に強めていく安倍政権のやり方は、第二次世界大戦以前の日本が軍部の権限のみを一方的に強めていった軍国主義国家のやり方に通じるものがあるという批判があります。

2012年12月の就任以来、安倍首相は国民の反対を押し切る形で国家秘密保護法を成立させてアメリカ合衆国スタイルの国家安全保障会議を創設し、続いて武器輸出を制限していた内国規定を解除しました。
5月にはヨーロッパに渡り、共同で軍備を開発するために、フランスと英国の首脳との同意を行いました。

秘密保護法07
憲法の再解釈はさらにエスカレートしていくでしょう。
いずれ日本の自衛隊は他国の軍隊と、何ら変わらない形をとる事になると思われます。
そのために安倍首相が作った諮問委員会は、同盟国を敵の攻撃から守る事も『正当な自衛行為』に含まれ、その行為は現行憲法の下でも許されるべきものであると要求しています。

2012年12月の就任以来、安倍首相は国民の反対を押し切る形で国家秘密保護法を成立させてアメリカ合衆国スタイルの国家安全保障会議を創設し、続いて武器輸出を制限していた内国規定を解除しました。
5月にはヨーロッパに渡り、共同で軍備を開発するために、フランスと英国の首脳との同意を行いました。

憲法の再解釈はさらにエスカレートしていくでしょう。
いずれ日本の自衛隊は他国の軍隊と、何ら変わらない形をとる事になると思われます。
そのために安倍首相が作った諮問委員会は、同盟国を敵の攻撃から守る事も『正当な自衛行為』に含まれ、その行為は現行憲法の下でも許されるべきものであると要求しています。

政治問題の専門家は、安倍首相は日本の国防問題の相対的な見直しを要求する事により、同首相が時代遅れの戦後占領軍の押しつけと呼んでいる平和憲法を、改変するための足がかりとするつもりなのかもしれないと指摘しました。

安倍 1
しかし世論調査による国民の平和憲法に対する支持は強く、安倍首相は当面は憲法の改変ではなく、解釈の変更で我慢するしか無いと思い定めているようです。

「安倍首相は目的達成手のため、より時間のかからない方法を探しています」
と、中野博士は言いました。
「しかし、政府が単に解釈を変更する事で実質的に憲法を改変するような事になれば、日本は国家としてその品位を問われる事になるでしょう。」


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安倍首相が任命したNHKの放送委員を勤める作家が、南太平洋の小国家を「軍隊も持てない、泥棒に入る価値もない貧乏国家」と揶揄して物議をかもしています。
しかし一方ではこの手の人間たちの本音がどのようなものなのか、改めて確認する事も出来ました。
すなわち、金と力こそが正義であり、金も力も無い人間たちは無価値に等しい…

これは強制収容所で拘束されているユダヤ人たちに向かい、次の言葉を浴びせたナチス・ドイツと考え方の基本が全く同じです。
「お前たちユダヤ人は人間として全く無価値な存在なのだ。無価値な存在なら、死ぬしか無いだろう…」

中国がこれだけ強大になってしまったのは、日本人を始めとする資本主義社会が「人件費が安い」という理由で、日本国内の生産設備をどしどし中国に移転させてしまった事にも原因があるはずです。
そのために多額の人件費や租税公課が中国に移籍しました。
その金を使ってどんどん強化された軍隊が、日本の安全を脅かしている。
だから今度は憲法を書き変えて、日本も軍備増強する。
何だかすごくばかばかしい話だとお思いになりませんか?

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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