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星の金貨 東日本大震災や音楽、語学、ゴルフについて語るブログです。

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アメリカの除染の専門家が明らかにする、本当の汚染状況【 人の手によって作られ、人の手により悪化していく福島の危機 】〈第1回〉[フェアウィンズ]

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極度の汚染に恐れおののくアメリカの派遣チーム、何も知らず普段通りの生活をしていた日本人

アート・ケラー / フェアウィンズ 6月13日

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2011年3月11日、19,000人以上の日本人が波にのまれて、彼らの遺体が東日本の太平洋岸に散乱しました。
カリフォルニア州アナハイムに本社があり、災害復旧について豊富な経験と技術を持つ会社パワープラス社のケヴィン・ワン氏は、日本に渡りこの惨状から人々を助け出したいと思いました。
ありとあらゆる汚物や危険な物質によって汚染されたしまった環境を、再びよみがえらせるための機器や機械の開発に、ワン氏は何十年もの月日を費やしてきました。
大規模な原油流出、放射能汚染、そして大量の遺体の捜索や収容など…

東日本大震災の発生を見て、ワン氏はロサンジェルスにある日本総領事館を訪れ、地震、津波、そして福島第一原発の事故により深刻な状況に陥ってしまった人々を救出するため、彼の会社の技術を活用するよう働きかけました。
しかし日本の総領事の返事に、ワン氏はわが目と耳を疑いました。
「まったく必要ありません。」
ワン氏による申し入れは日本に対する侮辱と受け取られたに違いない、ワン氏がそう感じる程日本総領事の返答は無愛想で冷たいものでした。

ワン氏がまず体験させられた日本総領事の対応は、国際社会が福島第一原発の事故に関わろうとすることに対し、日本政府が極力それを排除しようとする態度の、その先駆けとなるものだったのです。

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ワン氏のこの最初の体験こそは、原子炉のメルトダウンというものがどれ程広範囲の環境を汚染するものなのか、その対応を誤ったという事実、そして放射性物質の拡散状況に対する不十分な検証、さらには迅速な対応を怠ったために一層状況を困難にしてしまった、日本の度重なる過失を象徴するものでした。

日本の当事者たちは政治的な影響を気にするあまり、技術的能力という要素を軽視し、当時現場で必要不可欠であった事故収束のための技術を移入することを頑なに拒否し続けたことに対し、今だに多くの批判が集中しています。

その時日本では津波により福島第一原発の冷却装置が機能しなくなり、大量の放射性物質が環境中に、そして海洋中に放出されました。
その様子を見たワン氏は日本領事の冷たいあしらいにひるむことなく、直ちに行動を起こしました。

ワン氏は独立して働いていた放射能汚染の除染技術者でチームを編成する一方、放射能汚染の除染のための機器を荷造りし、日本に向け発送しました。
そしてワン氏とそのチームは除染について実地にでもストレーションを行うべく、早くも2011年6月には日本に到着していました。

効果的な除染作業を開始するための取り組みとして、ワン氏とそのチームはその除染能力のデモンストレーションを数多くの見学者の前で実演するため、日本への渡航を繰り返しました。
2011年6月、同10月、2012年2月、そして最後は2013年1月です。

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彼らの実演にはテレビ局の取材陣、県市町村や政府職員、防衛省や環境省の幹部、そして多くの民間企業の関係者などが集まりました。
その中には福島第一原発を運営していた東京電力の幹部社員も含まれていました。

ワン氏とそのチームは福島第一原発の周囲に設けられた立ち入り禁止区域から牽引されてきた自動車の除染を行い、目覚ましい成功をおさめ、その除染能力の高さを証明して見せました。
彼らは放射能汚染の99%を除去してしまったのです。

しかし凹凸の多い材料でできた物質の除染については、必然的にその成功率も低いものとなりました。
また寒冷な条件下、一度ならず除染機器が故障したこともありました。

しかし全体を通して見れば、ワン氏とそのチームは高い除染能力を有していることを明らかにしました。
その能力は、通常除染することは不可能だと思われる動植物を、自生あるいは通常に生活している状態で除染してしまう程高いものだったのです。
その場所にある泥や草、そして水も除染可能であり、生きている桜の木の放射性物質を70%取り除いて見せることにも成功しました。
寒冷な気象条件の下、機材の故障に苦しめられた日々、凍りつく地面から20~40%の放射性物質を取り除くことにも成功しました。

公認放射線防護科学技術者であり、長年除染についての経験を積んできたサム・エンゲルハートは、独立したコンサルタントとして4度とも、ワン氏とそのチームの訪日に同行しました。
もうひとり、ウェイン・ショフィールドは数十年間放射線保健物理学者として放射能除染問題に取り組んできました。
彼はスリーマイル島とチェルノブイリ事故の現場も経験しており、2012年2月のワン氏の訪日に同行しました。

日本に到着してすぐ、彼らは福島第一原発の南西にある福島県白河市に向かいました。
エンゲルハートは荷物の中から放射線の測定機器を取り出し、測定を始めました。
彼の顔が凍りつきました。
この場所は福島第一原発から約80キロ離れているはずであり、原子炉建屋が爆発した当時はその風上にあったはずでした。
しかし線量計は現実にけたたましい警告音を発していました。

「我々が確認した放射線濃度は、通常の1,000倍というものでした。そして、それよりもさらに高い場所すらあったのです。」
エンゲルハートが当時を振り返りました。

放射性物質が降り注ぐ中
「この場所がもしアメリカ国内だったら、私たちはあわてて放射線防護スーツ、手袋そして防護マスクを着用し、完全防備の態勢を取ったでしょう。しかしこの場所と周辺のすべての物がどれ程汚染されてしまっているか、何も知らない日本の人々は普段と変わらない様子でその辺を歩き回り、そして仕事をしていました。」

〈 第2回につづく 〉

http://fairewinds.org/demystifying/cleanup-from-fukushima-daiichi-technological-disaster-or-crisis-in-governance
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今日からフェアウィンズのサイトに掲載されたこの原稿を、4回に分け掲載していく予定です。
原文はA4版に出力して8枚という長いものですが、何とか今週中に掲載を完了させたいと考えています。

しかし、こういう原稿を翻訳していると脱力感に襲われてしまいます。
なぜなら私自身、
「この場所と周辺のすべての物がどれ程汚染されてしまっているか、何も知らなずに普段と変わらない様子でその辺を歩き回り、そして仕事をしていた」日本人の一人だからです。

私が居たのは福島第一原発の北西約90キロの場所で、1号機原子炉建屋の爆発の後、北西の風が南南東の風に変わり、汚染物質が運ばれてきてしまいました。
ガソリンの供給が途絶してしまった仙台市内で、私は自転車で移動をしていました。
家族は食料品などを確保するため、スーパーの前に出来た長い行列に加わり、長時間を屋外で過ごしていました。
私自身はすでに50代の半ばであり、多少あきらめてもいますが、許せないのは自分の子供たちも含め周囲の若年層の人々が、何の情報も与えられずに汚染されてしまったであろうことです。

【星の金貨】のサイトマップを見ると、掲載本数がどうやら800本前後になったようです。
すべて自分が掲載したものですが、その原動力となっているものはそのあまりの理不尽さに対する怒りかもしれません。

【 日本でも始まっている!再生可能エネルギー革命 】《後篇》

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2013年、太陽光だけで原発5~7基分の発電設備が誕生する
その事実を伝えず、燃料費高騰など、原発停止による危機ばかりを煽る国内報道

チコ・ハーラン / ワシントンポスト 6月4日

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▽ 再生可能エネルギー固定価格買取制度

再生可能エネルギーの固定価格買取制度は福島第一原発の事故発生時の首相であり、不人気だった菅直人元首相が整備した制度です。
菅元首相は福島第一原発の事故後、地震が多発するこの国において原子力発電を継続することは危険だと判断しました。
菅元首相は当時野党だった自民党などと取引し、野党が再生可能エネルギー法案を含むいくつかの法案の成立に協力することを条件に、辞任しました。

菅元首相は2020年代までに日本の発電手段の5分の1を、再生可能エネルギーによって賄うべきであると主張しました。
辞任当時、日本における再生可能エネルギーの割合は10%程度で、そのほとんどは水力発電によるものでした。

その当時、菅元首相はこう語りました。
「ことエネルギー問題に限り、日本はゼロスタートを切るべきである。」

再生可能エネルギー固定価格買取制度は今年7月に始まりますが、電力会社に対し太陽光、風力、地熱発電などの再生可能エネルギーによって生み出された電力を、決められた値段で買い取ることを義務付けています。
ほとんどのケースで各電力会社は、民間の個人事業者や企業から再生可能エネルギーによって生み出された電力を購入することになります。

欧州各国では広範囲にわたる設備の実施が、太陽光発電技術の進歩と低コスト化を推進することを期待して、同様の制度が実施されてきました。

固定価格買取制度は、再生可能エネルギーに対する初期投資を促進するため、人工的に高い買取価格を設定しています。

投資を行なうのは多くの場合、先端技術企業では無く、主に農民や木材会社、あるいは地方自治体などです。
いったん太陽光発電設備を導入すれば、彼らもまた発電事業者としての副業を行うことが出来るようになります。

太陽光 1
固定価格買取制度は再生可能エネルギーによる発電を行う事業者に対し、今後20年間地元の電力会社が定められた価格で電気を買い取ることを保証します。
価格は発電手段により異なりますが、太陽光発電システムが最も有利です。

この制度の内容が明らかになった時、事業者は買取価格がドイツやフランスのほぼ2倍であることに目を見張りました。
結局政府は買取価格を10%引き下げましたが、その買取価格はすでに完成済みの設備には適用されず、新たに設備する施設に適用されます。

しかしシンクタンクなどは、今回の引き下げによる影響はさほどないものと見ています。

「この価格であっても、市場を活性化させるためのボーナス割合は確保されていると見るべきです。」
東京に拠点を置くブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスのアナリストであるトラヴィス・ウッドワード氏がこう語りました。
「不利になるのは消費者の方です。この制度は確かに素晴らしいものですが、上乗せ分はそのまま電気料金に反映され、その負担をするのは消費者という事になります。」

この制度が導入される以前ですら、日本の消費者は世界で最も高い水準の電気料金を支払っていました。

仮に15ギガワットの電力が、買い取り制度の対象となる太陽光発電システムによってすでに供給されていると仮定すれば、電気料金は5%程度高くなっているはずだとウッドワード氏が指摘しました。

▽ 電気を送る

進行中のプロジェクトのひとつの例として、コンビニエンスストア・チェーンのローソンは、数万店の店舗の屋上にソーラーパネルを設備しています。
そして九州地方にある離島では、開発業者が400メガワットの発電能力を持つソーラーパークを建設し、海底電線を使って九州電力に電気を送る事業に着手しています。

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太陽光発電システムの多くが小型のプロジェクトによって立ち上げられていますが、その重要な担い手のひとつが大規模商業ビルを運営する企業です。
昨年12月、大阪に本社がある住宅会社のエス・バイ・エルが、その本社工場の屋上を5,166枚の京セラ製の太陽電池パネルで覆いました。
その上で彼らは東京電力に電気を送るための送電設備を設置し、今年3月送電を開始しました。

「東京電力はこの全量を買い取ることになります。」
工場長の川崎氏がこう語りながら、工事用事務所の入り口にあるフラットスクリーン・パネルを指さしました。
このクリーン・パネルは太陽光発電の状況を表示するため設置されたものです。
晴れ時々曇りのこの日、同社の太陽光発電システムは午前中だけで2,355キロワットの電力を生産しました。

おかげで同社は、この日の午前中の分として100,000円ほどの売上金を受け取ることになります。

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/in-japan-new-policy-spurs-solar-power-boom/2013/06/04/63ce9556-c9cf-11e2-9245-773c0123c027_story.html

【 日本でも始まっている!再生可能エネルギー革命 】《前篇》

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2013年、太陽光だけで原発5~7基分の発電設備が誕生する
その事実を伝えず、燃料費高騰など、原発停止による危機ばかりを煽る国内報道

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(写真)釧路にある星ヶ浦ソーラーウェイで、太陽光パネルの点検をする日本アジア・グループ社の電気技師の吉田氏。

チコ・ハーラン / ワシントンポスト 6月4日

東京 — 日本の全域で今、これまでほとんど顧みられることの無かった太陽光発電分野で、技術系企業と民間投資家が争って装置の開発と設備投資を行なっています。
新たな大規模太陽光発電設備が1ダース単位で出現し、企業は競争するようにして倉庫や工場の屋根にソーラーパネルを設置しています。
こうした状況について、設備関係者は『爆発的』という表現を使いました。

爆発的ブームが始まった背景には、ひとつの単純な理由がありました。
約1年前、太陽光発電を始め、再生可能エネルギーによって発電された電気を販売する者には誰にでも、気前よく料金が支払われるという、日本政府の政策によるものでした。
突然決まったこの政策は、少しばかり注目を集めることになりました。

投資機関や民間の研究機関によると、再生可能エネルギーの固定価格買取制度として知られるこの方針が採用されたことにより、日本は世界で最も成長の早い太陽光発電の利用国になりました。
これはエネルギー資源に恵まれないこの国が、原子力発電に代わる自前のエネルギー資源を確保しようという取り組みの中から生まれてきたものなのです。

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日本では今年だけで、新型の原発5基~7基分に相当する太陽光発電システムが稼働を始める予定です。

2011年3月に福島第一原発で3基の原子炉がメルトダウンするまで、日本は再生可能エネルギーにほとんど無関心でした。
代わりに原子力発電の推進に熱心に取り組み、2030年代には日本の発電量の半分を原子力発電によって賄う予定でした。
しかし福島第一原発の事故によって、局面はすっかり変わりました。
日本国内には稼働可能な原子炉が50基ありますが、現在稼働しているのはこのうちの2基だけです。

しかし安倍晋三首相は安全が確認された原子炉については再稼働を推進すると宣言しており、日本国内の原子炉の停止は一時的なものに終わる可能性もあります。

しかし多くの日本人は原子力発電所の再開には反対しています。
そんな中、いくつかの研究機関などは、太陽光発電の爆発的な普及が、日本の異なる選択に対する需要に光を当てる可能性があるとしています。

しかし不利な面もあります。再生可能エネルギーは現段階では、原子力発電、あるいは化石燃料(例えば石炭、石油、天然ガス等)より数倍高くつきます。
太陽光発電の普及は、一方では発電コストの上昇につながります。
そしてそのことは、長く続いてきた経済の停滞から一気に脱出しようとしている安倍政権のプランの、障害になる可能性があるのです。

しかし多くの国民は、こうした負担は仕方がないものと考えています。

4号機付屋
そして原子力発電は事故収束・廃炉作業と補償のため必要になる巨額の費用について、隠し続けていたことが福島第一原発の事故の後初めてわかり、そのことに対する批判も巻き起こりました。

その一方で化石燃料は有害な温室効果ガスを放出し、オーストラリア、ロシア、インドネシア、そして中東から輸入しなければなりません。

県内に4か所の原子力発電所がある福井県で、5か所の太陽光発電施設の建設に関わった特定非営利活動法人の環境保護団体[エコプランふくい]の事務局長である吉川盛明氏が次のように語りました。
「この場所の人々は福島第一原発の事故以前でさえ、クリーン・エネルギー・プロジェクトを支持したいと考えていました。現在ではなお一層自然エネルギーに対する関心が強まっています。」

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの報告書によれば、2012年末の段階の日本の太陽光発電能力は7.4ギガワットでしたが、今年度2013年はさらに6.1~9.4ギガワット分が加わり、その能力が倍にまで拡大する見込みです。

その成長スピードは中国に次ぐものであり、発電能力においても日本を上回るのはドイツとイタリアだけという状況です。
ちなみに1ギガワットという単位は、一般家庭約250,000世帯分の消費電力に相当します。

〈 後篇につづく 〉

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/in-japan-new-policy-spurs-solar-power-boom/2013/06/04/63ce9556-c9cf-11e2-9245-773c0123c027_story.html
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自分でももう書き厭きた感がありますが、書かなければなりません。

日本のマスコミはなぜ、こういう大切なことを伝えないのか?

広告主を逃したくないからこの国の大切な真実はあえて無視する、報道人としての良心はどこへ行ったのか?

様々な立場の人が、それぞれの立ち位置から議論を重ねなければ、国も社会も発展も成長もしません。
その議論の前提には、正しい事実認識が無ければなりません。

なのに一方の側面ばかり強調する報道を繰り返す。

【 人類の歴史を踏みにじる、日本の右翼政治家たち 】

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日本の首相は中国、韓国、そしてアメリカとすら、その外交関係をゼロの位置まで押し戻すもり?

エコノミスト 6月3日

橋下徹
何だか生臭い血の匂いが、5月末の東京の外国特派員記者クラブに漂っていました。

将来の日本の首相候補として、これまで名前を売って来た政治界のスターは、歴史的にも政治的にも論議の的となる数々の妄言を放った挙句、厳しい視線を向ける外国特派員たちと向き合わされる羽目に陥りました。

中でも論議の的になったのは、日本維新の会の実質的な党首である橋下徹大阪市長が行った、第二次世界大戦中日本が組織的に行った性的奴隷である従軍慰安婦について、『必要悪』だったとする発言でした。
彼はさらに現代の問題についても言及し、沖縄には日本の米軍基地の75%が集中していますが、そこにいる「熱くなりやすい」兵士たちは、金銭による性欲の処理を行うべきだとも発言したのです。

これまの日本の政治家の常として、橋下氏は頭を下げて自らの発言について謝罪し、その上で外国人特派員との会見に臨むものと予想されていました。
しかし彼はそんなことはしませんでした。

長時間に渡った外国人記者たちとの会見において、橋下氏はアジア各地から200,000人の女性– 一部の研究者たちの試算によれば - を強制的に連行し、従軍慰安婦、つまり性的奴隷として使役したことに、当時の日本政府が関与したという証拠は無いという彼の持論を繰り返しました。
橋下氏は従軍慰安婦となった女性たちに対し一定の配慮を示す一方で、第二次世界大戦に関わった他の国々も、自分たちの過去についても正面から見直す必要があると語っています。

橋下大阪市議会
「戦時中の性的問題行動は、何も日本軍に限ったものではありません。」
彼はこう述べ、むしろイギリス軍、アメリカ軍、フランス軍、そしてソ連軍の方が戦場における性的問題行動は多かったと国名を列挙しました。

加えて沖縄の問題に触れた真意は、暴行などの問題を起こした米軍兵士は『心無い少数の例外』であることを強調したかった、その点にあったと語りました。
そして当然ながら、日米の軍事的関係を強化する狙いもあったと語りました。

橋下氏に対する大阪市議会の不信任決議は否決されました。
しかしそれによって、これまでの発言に対する決着がついたと言えるでしょうか?

政治評論家や報道解説者の多くが、橋下氏は自らその政治的経歴を破壊してしまったと見ています。
昨年12月の衆議員議員選挙で1,200万票を獲得し、選挙前の政権与党であった民主党をも上回る得票により、維新の会が国内の第2党に躍り出たことを考えると、今回の橋下氏の一連の発言には改めて驚きを禁じ得ません。

今回の一連の騒ぎは、その正体が何であれ、7月21日の参議院議員総選挙を控えた、安倍信三首相率いる現政権にも重要な教訓をもたらしました。

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安倍首相は橋下氏が発言する以前に従軍慰安婦について言及したことがありますが、その見解は橋下氏と同じ立場をとり、関係各国にとってはより一層耳障りなものです。

安倍政権のほとんどの閣僚は、橋下氏よりもさらに強硬な首相と同じ見解を有しています。

例えば橋下氏は慎重に言葉を選びながらも、日本が第二次世界大戦において、植民地獲得のための侵略戦争を行った点については、日本の政治家は認める必要があると語っています。
これに対し安倍政権の閣僚の実に13人が、従軍慰安婦という女性に対する虐待その他の戦争犯罪について、外交上謝罪を行う事を拒絶しているのです。
昨年12月に政権復帰を果たして以来、保守政党の自民党を率いる安倍首相は、橋下氏がはまった罠、すなわち過去の歴史認識に関わる問題には触れないよう、助言を与えられてきました。
しかし安倍首相にはこの問題に距離を置き続けることは無理だったようです。

今年4月、安倍首相は第二次世界大戦当時の日本の問題の中、戦争被害者に対する姿勢に疑問を呈され、『侵略』の定義について問われたことがありました。
安倍首相は根拠のあいまいな言辞を弄したあげく、1995年に当時の村山内閣が示した「日本が植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた」見解を覆す可能性を示唆しました。

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5月12日には、自民党の高市早苗政調会長が数百万人のテレビ視聴者に対し、安倍首相が軍国主義当時の日本とその指導者たちの戦争責任を断罪した極東軍事裁判(東京裁判)の判決を認めていないことを明らかにしました。
同じ月には記録的な数の自民党議員団が靖国神社に公式参拝を行いました。
靖国神社には東京裁判によって絞首刑となった戦争犯罪者が合祀されています。

靖国神社への参拝は、軍国主義当時の日本の指導者たちと、その目的に対する無言の支持を表すものです。

極東軍事裁判の判決すら否定するという事になれば、日本は中国、韓国、そしてアメリカとすらその外交関係をゼロの位置まで押し戻すことになります。

その影響は計り知れません。

こうした理由から、安倍政権はその実際の見解を曖昧なままにしておくことに腐心してきました。
政治姿勢を実際とは異なる中立的なものに見せなければならないという計算と、本来の右翼的・国権的立場を露わにしたいとの衝動のはざまで、首相自身が身もだえするような状況が続き、菅官房長官がその都度火消を行うという日々が続きました。

菅官房長官
首相が日本は戦争犯罪など犯していないと言えば、官房長官はそんなことは言ってはいないと否定し、首相が戦争犯罪に対する謝罪を撤回すると言えば、これまで通り政府として謝罪するという立場に変わりは無く、1993年の従軍慰安婦の問題の存在を認めた河野談話を撤回するつもりもないと弁明しました。

その安倍首相に今年の始め、政策協力を求められた橋下氏は記者会見で、日本の歴史認識の問題が行き詰ってしまったことを嘆いていました。
「私たちの世代の人間は国民のため、より良い未来を築くためにも、前を向いて進まなければなりません。」
橋下氏はそれまで3時間を費やして20世紀半ばの出来事についての見解を明らかにしたことなど、まるで無かったかのようにこう語ったのです。

http://www.economist.com/blogs/banyan/2013/06/japans-right-wing-politicians
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この人たちの発言を聞いていると、どうしても思い出すものがあります。
ナチス・ドイツが行った『絶滅政策』です。

塩野七生さんの『ローマ史』を読むと、ユダヤ人という人々は頑固に自分たち民族のライフスタイルを固守し、その点ではほとんど譲ることが無い人々だということが解ります。
その『異質』さこそが、ナチス・ドイツの『絶滅政策』の原因の一つになったのであろうことは容易に想像がつきます。

他と違う、あるいは多数と異なる意見を持っている、それが攻撃の対象になるのが全体主義の社会です。
ナチス・ドイツの『絶滅政策』の対象になった人々には、ユダヤ人の他、知的障害者、そしてリベラリストや社会主義者などがいました。

アンネ・フランクを追いつめた恐怖を、再びよみがえらせることは許されません

アンネ・フランクを追いつめた恐怖を、再びよみがえらせることは許されません


日本では『非国民』という言葉が多用されました。
権力構造の最下層に居る人間たちが、些細な落ち度を見つけ、この言葉を浴びせ威嚇する。
威嚇してもひるまないと、特高警察、つまり和製ゲシュタポに密告したり、けしかけたりといった行動に出る。

歴史の針を逆に回し、日本を再びそのような暗い、冷酷な社会に戻す真の目的は何なのか?
その事から決して目を逸らさないようにしないと、この先国民はどんな危険な目に遭わされるか…
杞憂だとお考えですか?

【 原子力発電所こそは、この地上における、最も巨大な『処理不能』の核廃棄物 】《第3回》

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廃炉途中に電力会社が財政破たんする恐れ
巨額の廃炉費用負担、国が基金を設立し、電力会社が応分の負担を行うよう法を整備せよ

デア・シュピーゲル(ドイツ) 5月10日

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「ドイツの軽水炉を廃炉にすることについて」は、
「完了可能である」と、彼らは結論付けています。
その上で、人々と環境への影響が「取るに足りないものである」と付け加えています。

廃炉に携わる技術者たちは廃炉作業行程のタイムテーブルについて、少なくとも理論上は、問題なく進めることが可能だと考えています。
彼らは廃炉を始める際の条件である、核燃料の低温状態はすでに確保済みであると判断しています。

その上での可能性は2つです。

廃炉作業をすぐに開始する。
あるいは将来の廃炉作業開始に向け、停止状態のまま放置される。
この場合はもっと放射線量が下がった環境で廃炉作業を行うために、原子炉は最大30年文字通り手つかずのまま据え置かれることになります。

▽破たんしたビジネス・モデル

しかし、ドイツの原子力産業界に批判的な立場の人々は、もっと早く廃炉作業を進めることを求めています。
彼らが何よりも恐れるのは、廃炉作業が完了しないうちに電力会社が破綻してしまう事です。
その懸念は根も葉もない事ではありません。

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それはつまり、ドイツのエナジーヴェンデ(エネルギー改革)- 原子力発電を段階的に排除して行き、発電手段は再生可能エネルギーに大きく依存しようという計画 -は、大企業による電力事業独占というビジネス・モデルを完全に否定するものだからです。
と同時にE-ON社のように原子力発電を行ってきた大手電力会社は数十億ユーロの負債を抱えることになってしまいます。

原子力産業界の関係者は、原発一基当たりの廃炉費用はおよそ10億ユーロ(約1,300億円)程度と見積もっています。
こうした経費を最終的に国家負担にしないよう、原子力発電所を運営する各社は毎年廃炉費用を積み立てることを法律によって義務付けられています。
現在、このための費用として300億ユーロ(約3兆9,000億円)が積み立てられています。

しかしこうした対策も、所詮は書類の上の事だけであるという批判があります。
「会社が破綻してしまえば積み立てられた数百億ユーロの予算もまた消滅してしまうことになります。」
緑の党のコッティング・ユール議員がこう語りました。

実際にこうした事実を裏書きするような出来事が、ハンブルグ近くの地域で原子力発電とのものになりました
ドイツ国内で原子力発電事業を行ってきたスウェーデンの国有企業であるヴァッテンフォール社は、同社がハンブルグ近郊に所有するクランメルとブランズベーテルの原子力発電所の原子炉のリスク負担を、ドイツの子会社に転嫁する措置を行ったのです。

こうした動きを見て、コッティング・ユール議員は廃炉を進めるために国が基金を設立することを求め、原子力発電によって利益を得ていた企業が応分の負担を行うよう法整備を進めるべきだと主張しています。
こうした政策は、スイスとスウェーデンで現実に行われています。

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しかしアルトマイヤー環境大臣は、そうした手法を用いることに反対しています。
アルトマイヤーは、国が基金を設立してしまえば、各電力会社がそれを口実に廃炉の責任を回避するのではないかと危惧しています。

債務超過保険の契約条項がこうした事態の助けとなる可能性はありますが、2013年9月に予定されているドイツの総選挙以前に、これらの内容を十分に検証する時間は無いようです。

政府当局は財政上の問題に加え、この問題に関わる科学者の中でいったい誰が放射性核廃棄物の移送と、地層処分について責任を取るのか、という点に大きな懸念を抱いています。

国際放射線防護委員会のドイツ政府の委員であるヴォルフラム・ケーニッヒは、
「1990年以来、原子力分野に進む学生たちの数が目に見えて減少していることを、目の当たりにしてきた。」
と語りました。

ドイツ政府と各州当局は、こうした流れに対し、一定の責任を果たすべきであると語りました。
「原子力を専攻した学生たちには、原子力発電所の存続の有無にかかわらず、退職まで正規雇用が継続されるよう、手を打たなければなりません。」

〈 完 〉

【 原子力発電所こそは、この地上における、最も巨大な『処理不能』の核廃棄物 】《第2回》

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放射性廃棄物の山は、見るものを戦慄させずにはおかない
これまで知られていなかった、新たなる核廃棄物の問題が表面化

デア・シュピーゲル(ドイツ) 5月10日

▽ 『静かな海と楽しい航海』には程遠い現状

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しかし、順調に進んでいることなど何もないようにも見受けられます。
それどころか、原子力発電を段階的に廃止するためには、国内にあるすべての原子炉を廃炉にするという、非常に困難の伴う事業をやり遂げる必要があります。
福島第一原発の事故を受け、原子力発電を廃止するとい政府の決定を受け、ドイツ国内ではまず8基の原子炉が直ちに停止しました。
そして残る9基についても、2022年までにすべて稼働を停止することになっています。

しかしこれらの原子炉の廃炉作業に関する、具体的なロードマップはまだありません。
さらに悪いことには、莫大な量の核廃棄物の存在が明らかになり、規制当局が対応に窮するあまり、廃炉作業に関する安全基準を緩めようとしているとの批判が巻き起こっています。

現在、最終処分場の候補地として、2か所の名前が挙がっています。
アルトマイヤー環境大臣の提案による廃棄物のための法案は、高放射性廃棄物を永久地層保存するための処分場を2031年までに決定することを求めています。

これまで長く、ドイツ西部のニーダーザクセン州ゴールベンにある岩塩ドーム(岩塩を採掘した後に残された地中の空洞)が、最終処分場の最有力候補とされてきました。
しかし地元で大規模な反対運動が起きるなどして、激しい議論の的になっていたこの計画は白紙に戻されました。
最終処分場の選定は、一からやり直さなければなりません。

廃炉05
中部ドイツ、ザルツギッター近くにあるコンラート鉄鉱石鉱山跡地は、すでに廃炉が完了した原子炉と現在廃炉作業が行われている原子炉から排出されるこ低レベルと中レベルの放射性廃棄物の処分場として検討されてきました。

しかし、利用開始時期がつい最近、2019年から2021年に延期される事態となりました。

そうしている間にも、中間貯蔵施設では核廃棄物の量が絶えず増え続けています。
例えばドイツ西部のノルトライン‐ヴェストファーレン州のアハウス、東部のメクレンブルク‐西ポメラニア州のグライフスヴァルトでは、核廃棄物を最終処分のために細かく裁断する作業が続いています。
こうして作られた放射性廃棄物の山は、100,000立方メートルに膨らみ、見るものを戦慄させずにはおかない状態になっています。

しかしこれらの場所でも量的な限界が近づいている上、保管状況にも問題が出始め、各電力会社は古い施設内にある核廃棄物を、もっと規模の大きな中間貯蔵施設に移し替えることを検討しています。
具体例としては、ドイツ南部のオブリグハイム、そして南部のシュターデでは巨大な発電機が原子炉から取り外されましたが、保管場所を確保できず、その一部をスウェーデンにまで運んでいかなければなりませんでした。

すでに明らかになったこれらの問題の他にも、新たな問題がある事がここに来て明らかになりました。
それはグラファイト廃棄物と劣化ウランの存在で、処分場所について、全く検討されてこなかったために、コンラート鉄鉱石鉱山跡地に送ることもできません。

廃炉07
これらは原子力発電所内において、放射性物質に高濃度に汚染されていると考えられ、これから検討しなければならない最終処分場に、高放射性核廃棄物と一緒に地層処分しなければならないものと見られています。
放射線防護委員会ドイツ連邦事務所の試算では、この核廃棄物が国内に105,500立方メートルあると見積もられています。

これまでこうした問題がある事は、一部の専門家の間でしか認識されていませんでした。

この問題はこれから行われるドイツの廃炉作業にとって、新たな難問の一つになるかもしれません。

「最悪の場合、この核廃棄物の処分場はドイツ国内のどこにも確保することが出来ない、という事になりかねません。」
ハノーバー在住の、独立した原子力発電の専門家であるヴォフガング・ノイマン氏がこう警告しました。
「これからさらに別の最終処分場を確保しなければならなくなるでしょう。」

ドイツ環境省はこれまで最終処分場の候補地として2か所を確保したのみですが、この第3の処分場の必要性について否定はしていません。

現在のところ、原子力発電所の廃炉作業を行わなければならない4つの電力会社は、この廃棄物については問題視していません。
しかしそれはNIS – インゲノイスゲゼルシャフトという、一民間企業の調査報告を根拠とする判断に過ぎません。
つい最近まで、この報告書はドイツ環境省の管理の下、一般には公開されませんでした。
緑の党のシルヴィア・コッティング・ユール議員の度重なる要求に応じ、彼女は新たな廃棄物の問題を軽視している証拠である、この調査報告書を入手し一般公開しました。

廃炉08
廃炉作業をすぐに開始する。
あるいは将来の廃炉作業開始に向け、停止状態のまま放置される。
この場合はもっと放射線量が下がった環境で廃炉作業を行うために、原子炉は最大30年文字通り手つかずのまま据え置かれることになります。

〈 第3回につづく 〉

http://www.spiegel.de/international/germany/germany-faces-tough-decisions-as-it-dismantles-nuclear-plants-a-899063.html
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この記事を読む進むうちに、良くわかることがあります。
それはこの地球上に決して建設してはならないもの、それが原子力発電所である、という事です。

ドイツが廃炉にしなければならない原子力発電所の数は18基です。
これに対し、日本は福島第一原発を含めると、いずれ54基に上る原子炉を廃炉にしなければなりません。
永久に使うことが出来る原子炉など存在しないからです。

現政権は国内では「原子炉再稼働を推進」し、インドやトルコを始めとする国々には原子力発電所の輸出を拡大すると宣言しました。
しかし原子力発電所の稼働によって排出される核廃棄物の最終処分については、何ら『明言』できずにいます。
出来るわけがないのです。

最終処分場の受け入れを明言した市町村など、どこにもありません。
敦賀原発の下に活断層があるとする原子力規制委員会の結論に対し、自分たちの利権が侵されたと憤る敦賀市議会議員も、こと核廃棄物の問題についてはまるで『ノー・アイディア』のはず。
無責任も極まれりと言わなければなりません。

【 原子力発電所こそは、この地上における、最も巨大な『処理不能』の核廃棄物 】《第1回》

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かつての産業技術の進歩の殿堂・原発は、今や人類最大の愚行を象徴するモニュメント

 

デア・シュピーゲル(ドイツ) 2013年5月10日

ルブミン原発廃炉
原子力発電を段階的に廃止することを決めたドイツにとって、国内の原子力発電所を廃炉にする作業は今世紀最大の課題のひとつです。
ドイツの全原子力発電所の廃炉作業は、すべてが順調に進んだとしても2080年までかかります。

もし廃炉が完了する前に原子力発電所を所有する電力会社が破綻してしまったら、いったい何が起きるのでしょうか?

政治家が過度に悲観的な演説を行う時、余程のことが無い限り、人々は用心するに越したことはありません。
比較や表現が極端であるにもかかわらず誇張されているようには感じられない、そんな場合にはえてして落とし穴があるものです。

もう少し具体的な話をすれば、ドイツ南西部のバーデン=ビュルテンベルク州知事で、緑の党のメンバーであるウィンフリート・クレッチマンは、『技術的タイムフレーム』の問題は、今や決断すべき時期に来ていると警告しました。
同じくニーダーザクセン州知事で中道・左派連立の社会民主党(SPD)のシュテファン・ワイルは、別の時間的枠組みについて問題にしています。
彼の出身地であるニーダーザクセンでは考古学者のショーニンゲン・スピアーズ博士が、旧石器時代の人類が用いていた狩りの道具を発見しました。
すなわち、300,000年前という時間が経過してなお、人間が作り出した道具がその場所に残るという事実を明らかにしたのです。

実はこれらの発言はすべて、ワイルの盟友である緑の党の院内総務であるユルゲン・トリッテンが、
「人類がこれまで作り出した中で、最も危険な廃棄物」
を安全に格納できる場所を見つけることのむずかしさを同僚である議員たちに思い起こさせ、その結果行われたものだったのです。

▽『核の平和利用』が作り出した、最も厄介な問題

廃棄物
彼らが言いたいのは、核廃棄物の存在、そしてそれをどうすれば安全に処分できるのかという問題なのです。
ドイツは戦争が起きても、革命が起きても、そしてもう一度氷河期が訪れても、決して損傷することの無い核廃棄物貯蔵施設を、地中深く建設しなければなりません。

原子力発電を行ったツケとして、人類は100万年以上、その核廃棄物を安全に保管し続ける責任を負わなければならなくなりました。

私たち人類の祖形であるホモ・サピエンスが地球上に現れてから、未だ10万年しか経過していないのに…

その事実こそ、先月ドイツ議会で示された法律の草案の目的であり、野党の政治家と政府側双方が襟を正して解決に取り組まなければならない問題だったのです。

ドイツの環境大臣ピーター・アルトマイアーはアンゲラ・メルケル首相率いる保守派のキリスト教民主同盟の内閣の下で、ドイツ国内の原子力発電所にあった高放射性核廃棄物の最終処分場をどこにするかの法案について説明を行いました。

提出された法案については現在は未だ議員がその細部についての検証と議論を行っている段階ですが、アルトマイアーはこの法案が目的とするのは『核の平和利用にまつわる、最後に残された、最も議論の多い課題』を解消することだと語りました。

廃炉現場 4
しかし国民の代表であるはずの政治家たちが口にしたがらない問題、それこそがこれから廃炉作業をどう進めていくのか、という問題なのです。

かつて原子力発電所の設備や建物は、技術の進歩を象徴する産業社会の殿堂でした。

しかし今や原子力発電所の冷却塔と原子炉ドームは、人類の最大の愚行を象徴する巨大なモニュメントになり果ててしまいました。

ドイツ環境省の試算により、国内の原子炉の廃炉によって生じる地下に永久保存しなければならない低レベルと中レベルの放射性廃棄物の総量が、173,442立方メートル(610万立方フィート以上)に達することが解りました。
それに加え、政府が所有する原子力関連施設からは107,430立方メートルの放射性廃棄物が排出されることも明らかになりました。

ベルリンで持続可能エネルギーの調査とコンサルタントを行っている、非営利団体のオーコ研究協会の原子力問題の専門家であるマイケル・ザイラー氏は、ドイツのこの記念碑的な事業となる全原発の廃炉は、控えめに見積もっても
「2080年までに完了することはないだろう。」と語りました。
「この予想は、これからどのような妨げも無く、全ての作業が順調に進むと仮定した上で立てた、控えめな数字です。」

 

〈 第2回につづく 〉

冒頭の写真 : ドイツのルブミン原子力発電所の廃炉作業を取材する日本の報道関係者
http://www.spiegel.de/international/germany/germany-faces-tough-decisions-as-it-dismantles-nuclear-plants-a-899063.html
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昨日に続き、核廃棄物の処分が如何にやっかいな問題であるか、そのことを伝えるドイツの報道誌デア・シュピーゲルの記事を3回に分けご紹介します。

ところで今回の最後の方、
「や原子力発電所の冷却塔と原子炉ドームは、人類の最大の愚行を象徴する巨大なモニュメントになり果ててしまいました」
という一文があります。

皆さんはこれを大げさだとお思いでしょうか?
その答えは第2回以降で、じっくりと明らかにされます。
最終回まで是非、おつきあいください。

【 地獄の辺土にたまり続ける核廃棄物、脅かされる人間、そして環境 】

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中間貯蔵施設付近の川では、毎年10億匹の魚類その他の水生生物が死滅

ジョージ・ガオ / IPSニュース 4月16日

インディアン・ポイント原子力発電所
核廃棄物問題と取り組む市民団体の調査によれば、ニューヨーク市の北方約60キロの場所にあるハドソン川沿いにある核廃棄物の一時保管場所には、ドライキャスク、そして使用済み核燃料プールの中に使用済み核燃料が、併せて数千トンも貯蔵されています。

これからの核廃棄物は、当初の計画ではネバダ州の砂漠地帯にあるユッカ・マウンテンの、国が建設を予定していた放射性廃棄物処分場に埋設されるはずでした。
しかし地元で強硬な反対運動が相次ぎ、オバマ政権は結局、ユッカ・マウンテンの最終処分場建設計画の撤回に追い込まれ、ハドソン川のこの多量の核廃棄物も行き場が無くなってしまったのです。

核廃棄物は人体にとって有害な放射線を長期に渡り放出し続けることで知られており、しばしば予測不能のガン発生や転移の原因を作ります。

この多量の核廃棄物は同じくハドソン川沿いにある、エンタジー社が運営するインディアン・ポイント原子力発電所によって生み出されたものです。
このインディアン・ポイント原子力発電所は稼働してきた52年間、度々放射能漏れを起こしたほか、電源トランスが爆発し、火災を起こしたこともあります。

インディアン・ポイント原子力発電所はその近さから、ニューヨーク市と周辺の2,000万人の住民を標的としたテロ攻撃の目標になる危険性を持っています。
また付近には2本の活断層の存在が確認されており、その立地条件の危険性から2011年3月に地震と津波により巨大原子力発電所事故を引き起こした福島第一原発に例えられ、「ハドソン川沿いのフクシマ」の異名をたてまつられました。

traffic Jam
このインディアン・ポイント原子力発電所が、4月初め、地元紙の第一面を飾ることになりました。
合衆国会計監査院が、もしインディアン・ポイントが事故を起こした際には、周囲16キロ圏に設定された緊急避難区域から人々が脱出する際、その避難経路で大渋滞が発生する危険があるとの報告書をまとめ上げたためです。

にもかかわらず、インディアン・ポイントでは2014年と2016年、それぞれ稼働中の原子炉について20年間の利用延長の申請を行う方針であることが明らかになりました。

「そんなことが許可されてしまったら、さらに1,000トンもの放射性核廃棄物が作り出されることになってしまいます。」

環境保護団体リバーキーパーの顧問弁護士で、インディアン・ポイント原子力発電所閉鎖のための法廷闘争を担当してきた弁護士のデボラ・ブランカード氏がこう語りました。

ドライキャスク処理による高放射性核廃棄物の保管、そして使用済み核燃料プール内での核燃利用の保管は、飽くまで一時保管のために考案された処理方法であり、長期間の保管に関する検証は行われたことが無いと指摘しました。

「使用済み核燃料プール内の放射能の量は、実は原子炉格納容器内の5倍に達するのです。そしてインディアン・ポイント原子力発電所はこれまですでに、一連の使用済み核燃料プールからの汚染水漏れトラブルを起こしています。同発電所では施設の劣化による安全性の低下化がすでに現実のものになっていると判断すべきです。」
IPSニュースの取材に、彼女はこう答えました。

政府から独立した機関として1974年に設立され、主にアメリカ国内の原子力発電所の安全管理を監督する立場の原子力規制委員会(NRC)の見解はどうなのでしょうか。
これについて、ブランカード弁護士が以下のように答えました。
「原子力規制委員会ははじめから、エンタジー社と同じ視点から現状を把握しようとしています。ですからその見解も似たようなものなのです。」

インディアン・ポイント原子力発電所
彼女は州当局と地元の環境保護団体などが、インディアン・ポイント原子力発電所の周辺環境に対する問題を指摘した場合であっても、原子力規制委員会がエンタジー社とともにそうした指摘を無視してきたと非難しました。

ハドソン川流域クリアウォーター環境保全活動団体のマナ・ジョー・グリーン代表は、IPSの取材に対し、インディアン・ポイント原子力発電所が環境中に放出している放射性物質と、中間貯蔵施設が地下水を汚染している現状は、周辺住民の健康に対する重大な脅威であると語りました。

「この問題についてNRCは早急に詳細な調査を行うべきです。しかしNRCは手をこまねいてばかりです。事態を傍観し、現在の法律は住民を守るという視点からは不十分なものですが、その法律に基づく対応すら検討しようとはしていません。」
彼女はこうした現状について、以下のように表現しました。
「インディアン・ポイント原子力発電所が周辺環境に及ぼす悪影響について、NRCは見ざる言わざる聞かざるなのです。」

「仮に原子力発電所が停止したとしても、正確な特定のガンや甲状腺がんなどの発症割合をその時点ですぐ明らかにできるわけではない、その事を私たちは常に念頭に置いておく必要があります。」

グリーン氏はこれまでハドソン川の環境を保全するために数々の市民運動を組織してきましたが、これまで彼女が関わりを持った行政機関について、IPSにこう語りました。
「合衆国環境保護局、ニューヨーク州保健局、そしてニューヨーク州環境保護局などは、公正中立を守り、一方に偏るという事がありません。」
「しかしそれはNRCには当てはまりません。」

「彼らの見解は時に原子力発電所を運営する企業よりも、人間や環境を守ろうとする人々に対して過酷です。彼らの視界にあるものは、原子力産業をこれまで通りに機能させることなのです。」

アメリカ原子力規制委員会は原子力発電所の安全基準の厳格さで国際的には評価されていますが、国内的には規制対象であるはずの原子力産業界に迎合しているとして批判されています。

米原子力規制委員会
2013年3月、そのNRの委員長を辞任したグレゴリー・ヤッコ氏が原子力発電調査機関の機関紙(NIW)のインタビューの中で、アメリカ国内にある108基の原子炉すべてについて、国民の健康と国家の安全を守るため、すべて段階的に廃止していく必要があると語りました。

原子力発電調査機関によれば、ヤッコ氏は5名の委員で構成されるアメリカ原子力規制委員会の委員長を務めていましたが、他の4名の委員が明らかに原子力産業界の意向を受けた対応に終始していたのに対し、ひとり中立公正な対応を貫いていました。
これを快く思わない産業界が他の委員を使嗾(しそう)し、2012年、ヤッコ氏を辞任に追い込みました。

「NRCの委員たちは、国内すべての原子力発電所で職務上、原子力産業界の人間と接触を持つ機会がどうしても多くなります。互いに知り合いになるうち、その関係が親密になっていくのです。」
グリーン氏がこう指摘しました。
「そのうちに打ち解けるようになって、いつの間にかツーカーの関係に陥ってしまうのです。」

▽ 核廃棄物と水生生物

環境保護団体リバーキーパー代表のポール・ガレ氏はIPSの取材に対し、インディアン・ポイント原子力発電所が排出した放射性物質を保管している中間貯蔵施設から放射性物質が地下水に浸出し、その地下水がハドソン川に流れ込み、最終的には海にまで汚染が広がっていると語りました。

インディアン・ポイント原発
「インディアン・ポイント原子力発電所周辺はニューヨークの大都市圏の中で最も危険であるだけでなく、河川や海洋生物にとっても最も危険な場所になってしまいました。」
「インディアン・ポイント原子力発電所は毎日10,000トンの水をハドソン川から汲み上げて利用し、再び川に排出しています。そのために毎年10億匹の魚類その他の水生生物が死滅しています。」

「私たちはその事実を目の当たりにし、原子力発電所の危険性に気づかされたのです。」

http://www.ipsnews.net/2013/04/new-york-nuke-waste-in-limbo-as-concerns-rise/
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「地獄の辺土」と訳したのは、原題の中の Limbo という単語です。
SPACE ALC( http://www.alc.co.jp/ )によれば、この単語の意味は
『辺獄、未洗礼の人の死後の地、地獄の辺土◆キリスト教において、洗礼を受けていない死者が行く場所。地獄と天国の中間的な場所。』
ということになります。
原子力発電所が排出する放射性廃棄物の、中間貯蔵施設にまさにうってつけの言葉です。

一度ご紹介しましたが、河北新報の『神話の果てに・東北から問う原子力』の記事は、日本における核廃棄物の問題が良くまとめられた、質の高い記事だと思います。
下記URLから入り、日本の核廃棄物問題の現実について、ぜひご検証ください。

第8部『核廃棄物の行方』

(2)惰性のサイクル/可否先送り、蓄積膨大( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130603_01.htm )

(3)袋小路/最終処分場化を懸念( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130604_01.htm )

(4)廃炉/行き場なく進む解体( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130605_01.htm )

核廃棄物/多種多様、東北に滞留( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130602_02.htm )

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ロバート・F・ケネディ、大統領候補の生と死

ザ・ニューヨーカー 6月5日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)

RFK 1
45年前の6月5日、カリフォルニア州の民主党大統領予備選挙に勝利した直後、ロバート・F・ケネディはロサンゼルスのアンバサダー・ホテルで銃撃され死亡しました。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺と踵を接するように、その2ヵ月後に彼は命を落としました。
42才の大統領候補の暗殺は、アメリカを悲しみと動揺の中に追いやりました。
ケネディの死は詩人ロバート・ローエルが後に論評したように、「この世代が成熟する機会を奪ってしまった」のです。

1968年6月22日には、ザ・ニューヨーカーの誌上でロジャー・アンジェルは、悲劇に続く一週間「アメリカは敬意を込めた哀悼の意を表し、深い悲しみを露わにした」
と解説しました。

『ロバート・ケネディーが殺されてしまって以来、私たちは毎朝身の毛のよだつ恐ろしいニュースに接することに慣れてしまいました。
私自身もまだ夢から覚めやらぬ間、やがて迎える朝に、耐えられないほど衝撃的事件のニュースが待ち構えているという現実が習慣化してしまいました。

朝が訪れを告げる物音、鏡に映る柔らかな朝の光、その次にやって来るものは容赦ない過酷な現実なのです。
まるで病弱な人のように、私たちはだんだん病んでいることにそれほど苦痛を感じなくなってきました。
病による混乱は、ひどくなる一方だというのに。』

ご紹介するのは、ロバート・ケネディーが大統領予備選挙に出馬する以前の幸福な時代の写真です。

1964年のポートレイト写真。(写真上)

1968年、インディアナ州でのキャンペーンで。(写真下・以下同じ)
RFK 2
1964年の上院議員選挙、ニューヨーク。
RFK 3
RFK 4
8人の子供たちと一緒に。
RFK 5
1966年、国会議事堂で。
RFK 6
1968年、キング牧師の暗殺後発生した黒人暴動が収まった後の写真。首都ワシントンで。
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ロバート・ケネディの遺体を運ぶ特別列車の通過の際、線路脇に整列して見送るメリーランド州の家族。
RFK 8

【 またも汚染水漏れ、改めて問われる東京電力の事故収束能力 】

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その隠ぺい体質に加え、原子力発電所の運営能力、福島第一原発の事故収束・廃炉作業の遂行能力すら問われる

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 6月5日

110802
福島第一原発を運営する東京電力は、5日水曜日、数百基あるタンクから汚染水の漏出があったと発表しました。
相次ぐ不測の事態に、東京電力に事故収束・廃炉作業をきちんと実行できる能力があるのかどうか、改めて疑問が突き付けられることになりました。

東京電力はこれまで福島第一原発に流れ込んでいる地下水は汚染されてはいないとの立場をとっていましたが、6月4日になってその見解を覆し、放射性セシウムの存在を認める見解を明らかにしました。
今回の汚染水漏れはその翌日に発覚しました。

東京電力は漏れ出した汚染水の量は少ないことを強調し、これまでのところ1リットル程度がしたたり落ちた程度であるとしています。
そして地下水に含まれるセシウムの量も、安全基準以下にとどまっていると語りました。

しかしそもそもの始め、2011年3月に3基の原子炉をメルトダウンさせるという事故を起こした張本人である上、事故後も数々のトラブルや深刻な問題を引き起こし続けている東京電力に、きわめて複雑で困難が予想される事故収束・廃炉作業をまかせきりにするという日本政府の判断に対しては、多方面から非難が集まっています。
そして今回のトラブルが、一連の問題に加わることになりました。

CNN04
現在東京電力は福島第一原発の敷地内に貯まり続ける、数十万トンの汚染水の処理と保管に苦慮し、敷地いっぱいに鋼鉄製のタンクを建設して何とかしのいでいます。
汚染水は破壊された原子炉建屋の基礎部分に地下水が流れ込むことにより、一日当たり約400トンのペースで現在も増え続けています。

メルトダウンした原子炉は24時間途絶えることなく冷却し続けなければなりませんが、現在は臨時に間に合わせで作った冷却装置がその作業を行っています。
原子炉建屋の地下に流れ込む地下水を放置すれば、この冷却システムが破壊されてしまう可能性があるため、この汚染水を毎日取り除く作業が必要になるのです。

東京電力はトリチウム(三重水素)以外のすべての汚染物質を除去できるという水質浄化装置を設置しました。
しかしこの装置が稼働したとしても、汚染水を施設の外に排出することは許されず、汚染水は福島第一原発の敷地内で保管を続けなければならない、それ以外の選択肢は無いのです。

5日に明らかになった水漏れは、もっと深刻な事態、大量の汚染水が敷地外に漏れ出し、太平洋岸にまで達する危険がある事を明らかにしました。

今回漏出が確認されたタンクは、つい先月、地下に作られた臨時の汚染水貯蔵施設から汚染水の漏出が起きたため、汚染水を移し替えるために作られたものでした。

110805
膨れ上がる汚染水の問題に対する批判が強まるのを受け、日本政府は東京電力に対し、原子炉建屋の周囲の土壌を凍結させることにより、地下水が原子炉建屋の基礎部分に流れ込まないようにする対策の実施を命令しました。
この新たな手法は、地下の土壌を凍結させることにより、原子炉建屋の地下に氷の壁を巡らそうとするものです。

東京電力は当初、地下水が流れ込む前にポンプでくみ上げてそのまま海に流し、原子炉建屋の地下に流れ込む量を減少させる計画を立てていました。
しかしこの対策を実施すためには、福島第一原発の周囲に設けられた避難区域外で生活する住民と、漁業で生計を立てている人々の了承をまず取り付ける必要があります。
これらの人々は福島第一原発が放出した大量の放射性物質により生活基盤を破壊されてしまいましたが、以前の生活を取り戻すために、ここに来てやっと少しずつ前に進み始めるようになったばかりです。
東京電力はこれらの住民や漁業関係者に対し、海に放出する地下水に放射性物質は含まれておらず、これ以上海を汚染する恐れは無いとしていました。

しかしこの計画も、地下水の中には原子炉がメルトダウンした際に放出された放射性セシウムが含まれていることが、4日になって公表されたことにより最早実施が危ぶまれています。

東京電力は以前行った検査に誤りがあったことを認めた上で、今回の検査によって検出された放射性セシウムの量は1リットル当たり0.39ベクレルで、政府が飲料水について定める安全基準の1リットル当たり10ベクレルには遥かに届かない量だと主張しています。
しかし微量ではあっても今回の発表により、地下水の海への放出は即時中止、あるいは実施の延期は避けられなくなるものと見られています。

110803
東京電力はつい先週、地元の漁業協同組合に対し、海への放出を予定している地下水の放射性セシウムの測定結果は「検出せず」であるとの説明を行い、放出に同意するよう説得を行ったばかりでした。

しかしこうした申し入れに対し、地元の漁業関係者は東京電力のいかなる見解についても、信用も出来ず、受け入れることもできないと激しく反発していました。
それは微量ではあっても放射性セシウムが検出されたと、公表される以前の出来事でした。

「これだけの核廃棄物を、いったいどうすれば処分できるのか…」

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【 原子力発電所の負の遺産に苦悩するドイツ 】

ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 5月17日

Gorleben01
ドイツ連邦議会はE-On社が運営してきた原子力発電所が排出した核廃棄物を、どうやって、どの場所で、地下深く安全に保管するか、その法案を作成するための長い議論を開始しました。
しかし法案の細部において、すでに激しい火花が散る事態となっています。

ドイツの環境大臣ピーター・アルトマイアーは、5月中旬、ドイツ国内にあった原子力発電所が排出した核廃棄物を地層処分する場所を決定するための法案を審議するための24名からなる委員会で最初の演説を行いました。
この委員会は2015年までに、処分場所について最初の素案を作り上げなければなりません。
そして「人類と地球環境にとって最適な」、花崗岩、岩塩、あるいは泥岩などによって構成される安定した地層の、最終処分場候補地が2031年までに決定されることになっています。

アンゲラ・メルケル首相率いる中道右派政権が行った『原子力発電の廃絶宣言』を受け始まった取り組みについて、アルトマイアー環境大臣は、ドイツ国内の原子力発電所が生み出した核廃棄物をどう処分するかという問題は、第二次世界大戦以降、最大で最長の国内の対立を生むことになるだろうと語りました。

Gorleben02
金曜日に始まった審議は、連邦議会において政府与党と対立する野党との間で今後の進め方について合意が得られ、ドイツの16州の代表によって構成される連邦参議院によって承認されました。

これら一連の議会における審議と手続きは、もちろんドイツが2011年に行った原子力発電廃絶宣言に基づくものです。
2011年3月の発生した福島第一原発の事故にドイツはいち早く反応し、2022年までに国内の19基すべての原子力発電所を廃止する決定を行いました。
すでに8基の原子炉が稼働を停止し、その分不足する電力を補うべく、風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーの発展が続いています。

▽「進展はある」

「これから数十年という単位で行わなければならない、核廃棄物をどう処分するかという議論において、今日は一定の進展がありました。」
アルトマイアー環境大臣が連邦議会でこう発言しました。
そして現段階における具体的な候補地は無い旨、付け加えました。
かつて候補に挙がっていたドイツ北部、ニーダーザクセン州の岩塩採掘跡地であるゴールベンを含め、現在のところ具体的な候補地というものは無いと語りました。

野党社会民主党(SPD)のニーダーザクセン州知事のシュテファン・ワイルは、連邦議会でこう発言しました。
「我々は、最終的な貯蔵所を見つけるために、新たな選定作業を急いで進めなければならない。」

Gorleben03
野党緑の党の議会院内総務でかつての環境大臣であるユルゲン・トリッテンは、アルトマイアー環境大臣に対し、イギリス、フランスで再処理を行ったガラス固化核廃棄物をゴールベンの臨時貯蔵施設に列車で運び込もうとして、かつてドイツ国内で騒乱寸前にまで騒ぎが拡大した事件に鑑み、二度とこうした行為を行わないよう要求しました。
ゴールベンの臨時貯蔵施設の設置期限は2034年までとなっています。

アルトマイアー環境大臣による委員会は6名の連邦議会の各党議員、そして12名の科学者、環境団体の代表、産業界、労働組合、そして教会関係者から構成されています。

▽ 少なすぎる『市民の代表』

ニーダーザクセン州東部のタンネンベルク地区で反原子力発電運動を率いるヴォルフガング・エームケ氏は、ドイツ・プロテスタント教会通信社(EPD)の取材に対し、今回の草案には、一般市民の意向が十分に反映されてしないと語りました。

別の反原発運動を率いるヨッヘン・ステイ氏はドイチェ・べレ(ドイツ国際放送)のテレビ取材に対し、アルトマイアー環境大臣が9月22日に行われる連邦議会選挙前に、ステイ氏が『急ぐあまり雑な内容の』法案を、市民に諮ることなく議会に提出したとして批判しました。

Gorleben04
同じ週、ドイツの原子力フォーラム – ドイツの原子力発電を行っている企業と原子力産業に従事する個人からなる団体 – は、核廃棄物の貯蔵施設の場所の選定と施設の建設のために必要な資金、20億ユーロのための献金を拒否しました。
原子力フォーラムは
「すでに、16億ユーロがゴールベン周辺の調査のために費やされたにもかかわらず、見るべき結果は何も得られず、これ以上の資金提供を行うべき理由は無い。」
とコメントしました。

7月5日には、ドイツ連邦参議院においてこの法案に関する投票が行われますが、すでにその雲行きは怪しいものになっています。

もう一人の社会民主党議員で、ドイツ北部シュレスヴィッヒ・ホルスタイン州代表のトリスタン・アルビグは、同州にあるブランズベッテル発電所跡地を、核廃棄物の一時貯蔵施設として利用するつもりなのかどうか、メルケル政権に対し6月13日までに答えを出すように要求しました。

もう一つ、臨時貯蔵施設の候補地になっているのはバーデン=ヴュルテンベルク州にある、フイリップスバーグ原子力発電所の施設です。
しかし現在バーデン=ヴュルテンベルク州の政権は、緑の党が運営しており、先行き予断を許さない状況です。

http://www.dw.de/bundestag-debates-nuclear-waste-disposal/a-16821122
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日本でも、福島第一原発の事故よって作りだされた核廃棄物をどうするか、大きな問題になっています。
しかし事故を起こしたことも無く、存在した原子炉の数も18基しか無かったドイツですら、そこから生み出された核廃棄物の処理問題は「国内で第二次世界大戦以降、最大で最長の対立を生む」ことになるだろうと予想されているようです。

では54基もの原子炉を稼働させていた日本はどうなのでしょうか?

今回は私が断片的に感想を述べるよりも、下記URLから河北新報の『神話の果てに・東北から問う原子力』の記事を、ぜひじっくりとお読みいただき、日本の核廃棄物問題の現状をご確認ください。

東北から問う原子力
第8部『核廃棄物の行方』

(2)惰性のサイクル/可否先送り、蓄積膨大( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130603_01.htm )

(3)袋小路/最終処分場化を懸念( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130604_01.htm )

(4)廃炉/行き場なく進む解体( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130605_01.htm )

(5完)50年先の悪夢/無期限貯蔵に現実味( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130606_01.htm )

核廃棄物/多種多様、東北に滞留( http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1098/20130602_02.htm )

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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