ホーム » エッセイ » 【 担い手のいない「虚構の」成長戦略! アベノミクス 】《前篇》
高齢化・少子化・人口減少の続く日本で、誰が「成長」を担うのか?!
巨額の負債をさらに積み増す政策の向こう側には、1万円札が紙くずになるハイパーインフレ
ヴィーラント・ワグナー / デア・シュピーゲル 4月18日
日本の首都東京の土曜日の午後、ここは秋葉原の商店街の雑踏の中。
髪をブロンドに染め、明るくカラフルな衣装を身に着けた若い日本の女性たちが、通りで踊っています。
彼女たちはマンガ喫茶のプロモーションを行っているのです、ここでは漫画のキャラクターそのものの格好をした若者を見かけるのも珍しいことではありません。
通りを行き交う歩行者たちの頭上高くそびえるビルディングの中では、日本の証券会社が主婦やサラリーマン、年金生活者などを集め、小口投資家のためのセミナーを開催していました。
彼らは銀行預金よりも有利な預け先を探すためにここにやって来た人々ですが、セミナーは空席が見当たらないほどの盛況ぶりです。
このセミナーでは今話題の的になっている演題が取り上げられていました。
「アベノミクスで利益をつかんだのは誰か?そして、次に利益を得るのは誰なのか?」
「アベノミクス - Abenomics」は、日本の首相・安倍晋三の名字と英単語「経済学 - economics」を組み合わせた造語です。
自分たちが選んだ政府の新たな経済政策「アベノミクス」の利益の分け前に預かろうと、日本中の投資家たちが群がり集まる様子は、ここ東京にいても手に取るように解りました。
▽ 復活を果たし、今や『得意の絶頂?』
多くの人々がまさか、と思っていましたが、安倍首相と彼が率いる自民党は復活と政権への返り咲きを成し遂げてしまいました。
安倍首相はかつて一連の制作の失敗と健康上の問題により、2007年9月に首相を辞任しました。
彼は自分自身を再生し、経済の停滞に喘ぐ日本の救世主然として振る舞っています。
これまで長い間、安倍首相は、日本の平和憲法の改定を目指し続け、国の内外に波瀾を巻き起こしました。
しかし、今や彼は、その前に日本が中国や韓国のようなライバルに追いつくため、最初に経済的な成功を手に入れなければならないと認めているようです。
そのためのシナリオがアベノミクスであり、浜田孝一米国エール大学経済学名誉教授から伝授された戦略が基になっています。
浜田名誉教授は現在、政府の顧問を務めています。
浜田名誉教授は日本の中央銀行、日銀こそが長期の経済停滞の第一の責任者だと考えています。
長期に渡り日銀は、慢性のデフレに対し無力でした。
物価は下がり続け、会社は利益を減らし続けるか、場合によっては破綻への道へと追いやられて行きました。
そのあおりを受け、給与生活者の所得もまた、低下を続けました。
日本人は財やサービスを購入するための金を手元に残すため、四苦八苦の状況に追い込まれていたのです。
こうした状況を受け、企業の利益はさらに減少を続けました。
このデフレの連鎖から脱出するため、安倍首相は日銀に対し、政府から独立した権能の返上を迫ったのです。
彼は、新しい日本銀行の頭取に黒田東彦を任命しました。
黒田氏は旧大蔵省(現在の財務省)出身で、余暇にはアリストテレスのような西洋哲学書を読んでくつろぐのが好きな68才です。
寡黙な人間が多い日銀において黒田氏は饒舌さによって際立ち、堅実な政策を好む行風の中、ことのほか実験的政策の実施に熱意を持っています。
▽ リスク?それとも…
実際に日銀の新しい頭取は、2パーセントのインフレターゲットを設定しました。
政策の基となった理論によれば、価格上昇の進行により、企業は設備投資を進め、個人消費者の支出が増えることになっています。
黒田新総裁は2年以内の目標達成を目指し、そのためには『可能な限りの手を打つ』事を公約しました。
それは具体的にはどういう事なのでしょうか?
日本銀行が誰からも規制される事無く紙幣を大量に印刷し、市中の流通通貨量をほぼ倍にまで増やそうというものです。
その上、毎月7兆円以上という巨額の、これまでの約2倍自国の国債を購入しようというのです。
将来的には日本銀行は新たに発行される国債の70%を購入しようとしています、国債の利率を引き下げるために。
これは危険な戦略です。
日本にはすでに富士山ほどの公的負債があり、その総額は日本の一年間の国内総生産(GDP)の2倍以上の額に達しています。
例えばギリシャと対照的なのは、日本国債のほとんどを日本国民自身が保有しているという点で、国債の9割を国民が保有しています。
しかし本来なら国家の金融を監視するべき日銀は、ギャンブラーへと変身してしまいました。
例えば、日銀の新総裁は不動産ファンドのような数多くの危険な証券を購入することすら、検討を始めています。
日本のこの過剰な流動性はヨーロッパにまでその影響が波及し、各国の経済を脅かしています。
豊富な資金を手にした日本の投資家は、日本国内の金利の低下を見越し、外国債などの購入に向け動き出しています。
こうした動きの影響は、スペイン国内の金利の低下となって現れました。
〈後篇に続く〉
http://www.spiegel.de/international/business/risky-economic-plan-for-japan-inspires-hope-and-fear-a-894625.html
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今日と明日の2回に分け、ドイツのデア・シュピーゲルの『アベノミクス』に関する評論を掲載します。
実は今回の原稿のヤマ場は、公判に集中してしまっているので、前編はそれほど迫力を感じないかもしれません。
しかし後編で怒濤のごとく繰り返される、アベノミクスへの一撃、二撃、三撃、その内容についてご納得いただくために、この前編もぜひお読みくださいますよう、お願い致します。
ところで、東京都議会議員選挙が終わり、自民党が『圧勝』し、安倍政権のアベノミクスに対する高い評価がこの結果につながった、と日本のマスコミは報道しています。
そして民主党の惨敗。
民主党はなぜこれ程の低落を続けるのか?
民主党鳩山政権は『力不足』でした。
菅政権も福島第一原発での齟齬はあったにせよ、力不足だったと思います。
しかし、野田政権は違います。
野田政権は国民を『裏切り』ました。
原発廃止、そして一層の民主化を国民が願っていたにもかかわらず、その道を閉ざすような政治を行い、国民の怒りを買いました。
さらには、自民党を『意識的に利する』ような施策を次々行い、小沢氏を始めとする一部議員を民主党から追い出すなどし、民主党の弱体化を進めることにより、安倍政権誕生への道を開いたのです。
この一連の行為に対し、国民が抱いたのは失望では無く、『怒り』であったはずです。
野田政権が行った一連の行為について、民主党は一度国民に謝罪・総括しなければ、今後も低落傾向は止まらないと思います。
そしてアベノミクス、その正体は《後篇 - http://kobajun.biz/?p=12120 》で明らかになります。
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「最深部は地下9階!」
神秘的にも見えるマンハッタンの地下鉄建設現場、カメラマンが記録した3年9カ月
アメリカNBCニュース 6月17日
(写真をクリックして、大きな画像をご覧ください)
ニューヨークの地下鉄建設工事が90年続いているという事実は、誰にとっても印象深い物でしょう。
そして45億ドルを費やしてのニューヨーク交通局の、セカンド・アヴェニュー地下鉄建設工事もうまく行きそうです。
この工事は1932年以来、75年ぶりの地下鉄建設であり、2007年に開始され、マンハッタンの高層建築の下、最深部では地下9階の深さに達します。
完成すれば最初の電車は96番街から63番街まで走り抜ける予定です。
最終的にはローワーマンハッタンの全街区をこの地下鉄が結ぶ予定です。
地下鉄建設が始まり、カメラを構えるのに充分な大きさの穴が掘られると、写真家のパトリック・キャシンは建設の様子の撮影を開始しました。
「この場所に立つと、ここがとても危険な場所だという事が10秒間で理解できます。」
キャシンがこう語りました。
危険を承知で、彼は建設の様子を記録するため、2、3カ月に一遍、穴の中に入ります。