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偽りの『復興オリンピック』: 復興から置き捨てられた町、そして人々《前編》

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所要時間 約 11分

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1964年東京オリンピックが、敗戦からの『復興』の象徴とされたのと同じ手法

東京オリンピックに注ぎ込まれる多額の国の予算、本当の意味での復興に使うべき

                

                     

山口真理、スティーブン・ウェイド/ APニュース 2019年12月13日

                 

2020年東京オリンピックの聖火リレーは福島から始まります。
約9年前、福島は巨大地震、巨大津波、そして3基の原子炉のメルトダウンという三重災害により最もひどい被害を被りました。

                     

福島では来年、県内の一部でオリンピック競技の野球とソフトボールの試合が開催され、東京にあるオリンピック組織委員会と日本政府は『復興オリンピック』というラベルを貼ることにより、ある種の印象操作を行おうとしています。
それは1964年に開催された東京オリンピックが、第二次世界大戦の敗戦からの『復興』の象徴とされたのと同じやり方です。

                    

しかし現実はそのようなプロパガンダとは無縁のままです。
福島では放射線の被害をまぬがれるために避難を強いられた何万人もの、あるいはそれ以上の人々の生活は未だに回復せず、双葉町のような人里離れた場所に戻ることができません。

                     

2011年3月11日、東日本大震災が発生したとき、人口7,100人のこの町の時間は止まりました。

                  

写真[1]放棄された福島県双葉町役場の日付の表示は、3月11日金曜日になっています。すぐ近くにある福島第一原子力発電所を破壊した2011年の地震と津波が発生した日付を表しています。2019年12月3日撮影。(AP Photo / Jae C. Hong)

                

写真[2] 2019年12月3日火曜日、ハンガーにジャケットが掛かったままの福島県双葉町の廃屋の中。 (AP Photo / Jae C. Hong)

             

写真[3]廃校となった小学校の教室は、福島原子力発電所を破壊することになった2011年3月11日の地震の後、急いで逃げ出した子供達が残したランドセルやその他の持ち物が散乱したままになっています。2019年12月3日撮影。(AP Photo / Jae C. Hong)

                    

一軒の家の中にはクリーニング店から受け出した衣服がそのまま吊り下げられていました。
粉々になった窓と壊れたドアからは害獣や害虫が自由に出入りし、家族が親密な時間を過ごしていた場所を喰い荒らしました。
日本人は玄関で靴を脱ぐというきれい好きな習慣を持っており、それだけに誰もいない家屋の荒廃はより一層凄みを帯びて見えます。

                  

「復興オリンピックなどというのは名前だけです。」
吉田俊英さんがAP通信の取材にこう語りました。
彼は双葉町を捨てざるを得ず、結局現在は東京近郊で暮らしています。
「オリンピックのために費やされた金額は、本当の意味での復興に使うべきでした。」

                    

東京オリンピックの主催者は開催費用として1兆3,800億円を見込んでいますが、その60パーセントは公的資金です。
しかし会計監査院による監査報告書によれば、開催費用の総額はゆうにその2倍を超えるとしています。

               

日本政府は東日本大震災・福島第一原発事故で被災した東北地方の復興事業に34.6兆円を費やしきました。
福島第一原発の事故収束・廃炉作業は8兆円の費用を見込んでいます。

                  

写真[4]2019年11月27日、2020東京オリンピックで野球、ソフトボールの試合会場になる予定の福島県福島市にあるあずま球場で、朝礼をする労働者。 (AP Photo / Jae C. Hong)

                  

写真[5]2019年11月30日、あずま球場で2020東京オリンピックの野球、ソフトボールの試合が開催されることを祝うフェスティバルでストレッチに励む若い野球選手たち。 (AP Photo / Jae C. Hong)

                 

オリンピックの聖火リレーは、福島第一原発の事故収束・廃炉作業に従事する作業員の緊急対応詰所として利用されていた、元々はサッカースタジアムだったJ-ヴィレッジをスタートします。
リレーは11の被災市町村を巡る予定ですが、双葉町だけは外されました。
東京オリンピック観戦のため世界中から訪れる人々は、双葉町の本当の姿を目にする機会は全くありません。

                      

「オリンピックの聖火リレーが双葉町を通過することで、世界中の人々に私の故郷の現実を見てほしいと思います。」
吉田さんがこう語りました。
「双葉町は復興にはほど遠い状況です。」 

                    

福島第一原発から放出された放射性物質のせいで、一時は16万人以上に上る人々が故郷を捨てて避難することを余儀なくされました。
福島第一原発事故の被災地になった12市町村の中で、双葉町は唯一現在も居住制限区域のままです。
除染作業と再建事業のため、元の住民はかつての自宅の点検などの目的のための昼間の訪問のみが許可されています。

                      

双葉町の大部分は除染が行われ、訪問者は防護服を着ずにほとんどの場所に行くことができますが、身体に吸収される放射線を測定する個人線量計を携行し、手術用マスクを着けることが推奨されています。
主要鉄道駅は3月に再開される予定ですが、住民は2022年まで自宅に戻ることはできません。

                 

写真[6] 2019年12月3日、廃墟が連なる福島県双葉町を訪れた、元町役場の職員で現在も避難することを余儀なくされている大隅宗重さんと板倉雪美さん。

                  

写真[7] 2019年11月27日、雑草が生い茂る福島県双葉市の放棄されたコンビニエンスストア。 (AP Photo / Jae C. Hong)

                   

写真[8] 2019年12月3日、雑草に覆われる福島県双葉町の集合住宅。(AP Photo / Jae C. Hong)

                 

原子力発電所から約4キロメートル、東京の北250キロメートルに位置する双葉町のメインストリートであるショッピング・アーケードは、崩壊した店舗の前に並んでいます。
正面のドアがなくなってしまった化粧品店の店先には、資生堂化粧品を宣伝するポスターが貼られ、商品には値札がついたままになっています。
そしてギフト用のパッケージが床に散乱していました。

                      

双葉南小学校は、ほぼ9年間にわたり全く手付かずの状態で、そこはまるで霊廟です。
幸いにも避難中に死亡した人はいませんでした。
しかし200人近くの子供たちが脱出するため急いで外に出たため、ランドセルも教科書もノートも何もかもが散乱したままになっています。

                   

子供たちは町への立ち入りが許されておらず、黒板には「3月11日金曜日」の日付と次の宿題の提出日が書かれたままになっています。

                        

無人の町役場の1階のレセプションホールには等身大の『だるま』が薄暗い夜の光の中に浮かび上がっています。
床に落ちた紙片には、放射線から身を守るために家のドアは閉じていなければならないと書かれています。
その紙はこう警告していました。:「外に出ないでください。」
警告の下には赤でアンダーラインが引かれてありました。

                

写真[9] 2019年11月29日、福島県いわき市の校庭に集まる小学生。 (AP Photo / Jae C. Hong)

                 

写真[10]2019年11月27日、福島県伊達市の校庭でゲートボールをする年配者のグループ。 (AP Photo / Jae C. Hong)

                   

写真[11]2019年11月26日福島県いわき市、防波堤の階段を上る男性。 (AP Photo / Jae C. Hong)

                    

写真[12]2019年11月27日水曜日、福島県浪江市に新しくオープンしたイオン・スーパーマーケットで在庫の補充をする従業員。 (AP Photo / Jae C. Hong)

                      

《後編》に続く
https://apnews.com/2a0ef15f82ed9a5c1d4fe78f48504e81
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