ホーム » エッセイ » 【放射線への懸念と福島の子供たちの肥満】&【ドイツ原発帝国の落日】
「福島第一原発の事故前と比べ、子供たちの生活環境がきわめて劣悪に」
ジャスティン・マッカリー / ガーディアン 2012年12月27日
放射線に対する懸念から、できるだけ屋内に留まるようにしている福島の子供たちが、日本で最も肥満の傾向にある事が日本政府の調査で明らかになりました。
福島の子供たちは学校、そして親たちの指導により、屋外で過ごす時間を制限されています。
昨年の12月末に文部科学省により公表された報告で、福島県内の5歳~9歳、そして14歳~17歳の子供たちの肥満率が全国で最も高いことが解りました。
肥満と判断されるのは、同年齢の平均体重を20%以上上回った場合です。
この報告は3基の原子炉がメルトダウンしている福島第一原発の事故が発生してもうすぐ2年になる中、未だに続いている低線量の放射能による被ばくの危険性により、子供たちが健康被害を被ることを恐れる学校の先生や親たちが子供たちが屋外に出ることを制限するため、運動不足に陥っていることが肥満につながっているとしています。
この調査は2012年4月から6月にかけ、全国の5歳~17歳の子供たちを対象に実施されました。
事故発生以来、福島県内の学校では子供たちが屋外で過ごす時間を制限していますが、事故は原発周辺20㎞圏内に住んでいた住民150,000人にに対しても、避難を余儀なくさせています。
事故直後、子供たちが屋外で過ごす時間を制限した学校は福島県内だけで449校に上りましたが、2012年9月時点でなお71の小中学校がこの時間制限を継続させています。
肥満傾向は年齢が低いほど高くなる傾向があり、福島県内の6歳のこどもでは、2010年に6.3%だった肥満率が、事故後は11.4%に上昇しました。
8歳の女の子では、事故前と比べ肥満率は倍の14.6%になりました。
福島県教育委員会は肥満の原因となっているは、『屋外での活動を制限されることからくるストレス、そして避難生活による環境の変化からくるストレス』によるものであるとしています。
福島県の教育関係者は『放射線への懸念』が大きな原因の一つだとも朝日新聞の取材に応えました。
子どもたちが屋外で過ごす時間が減り、同時に体を動かす機会も減っているのです。
福島の子供たちは事故前と比較すると、政府が定めた放射線量の基準値を下回る地区でも、放課後、そして週末や休日も、屋内に留まる時間が長くなっています。
福島第一原発から約65km離れた郡山市内で暮らす沢村みえさんは、この18カ月で8歳になる息子の体重がずいぶん増えてしまったと語りました。
「事故前終日外で遊ぶことが多かったせいか、息子はほっそりした体つきをしていました。」
沢村さんは毎日新聞の取材にこう答えました。
「でも学校の健康診断では、軽度の肥満と診断されてしまいました。」
こうしたことから、福島県全域でかなりの数の屋内運動場が建設されました。
しかし郡山市でこうした運動場のひとつを管理する菊池新太郎氏は、施設まで通うための時間、そして利用時間が限られていることから、屋外での遊びやスポーツに代えられるものでは無いと、新聞社の取材にこう答えました。
「福島第一原発の事故が発生して以来、子供たちが体を使って遊んだり、スポーツをしたりするための環境は、きわめて劣悪なものになってしまいました。」
福島県がある東北地方は冬の間の厳しい寒さのため、屋内で過ごさなければならない時間が長く、伝統的に日本の中でも肥満のこどもが最も多い傾向にありました。
教育関係者はもともとこうした土壌があった上に福島第一原発の事故が重なったため、福島県の子供たちの肥満率が急上昇したものと考えられると語っています。
福島県と宮城県、そして岩手県の3.11の被災3県は、2011年の全国調査の対象にはなっていませんでした。
http://www.guardian.co.uk/environment/2012/dec/27/fukushima-radiation-child-obesity-fears
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
私のようなガサツな人間の幼年期・少年期は、とにかく外で遊ぶことで過ぎて行きました。
今となればその体験の中にかけがいのない思い出が多数あり、一人幸福な感傷に浸ることもあります。
そんな子供としての当然の権利を行使できない福島の子供たち。
もともと今の子供たちはあまり外で遊ぶことはしていない、そう指摘する人もいるでしょう。
でも『できない』のと『しない』のには、大きな違いがあります。
もし福島の子供たちが外で思い切り遊べないことを『些細な事』と考える人がいるとしたら、その人の心は病んでいます。
+ – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +
【 ドイツ原子力発電帝国の落日 】
巨大電力会社E.onの電力労働者、無期限ストの態勢
ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 1月16日
ドイツ最大手の電力会社(E.on)の数千人の労働者は、一定以上の額の昇給を要求してストライキを行いました。
しかし会社側は業績が低迷する中、昇給の要求を容れることはできないと語っています。
ドイツのVERDI(ヴェルディ – オペラの作曲家、イタリアのジュゼッペ・ヴェルディと直接の関係は無い)労働組合によると、全国の約7,300人のE.onの労働者がストライキに参加し、その影響はE.onのドイツ国内すべての施設に及びました。
この中にはグローンデ、ブロクドルフの2か所の原子力発電所も含まれます。
しかし、ドイツの最大の規模の発電事業には影響が無かった事を、労使双方が確認しています。
しかしVERDI労働組合の交渉担当責任者を務めるヴォルカー・スチューバー氏は、これから先も電力事業に影響が及ばないという保証は無い、と語りました。
E.onの労働者たちは6,000人規模の人員削減計画と、国のインフレ率を下回る昇給規模に対し、やや感情的になっているとも語っています。
VERDI労働組合と約30,000人のE.onの労働者が加盟するIG BCEは経営陣に対し、1.1%を超える賃金の上積みを求めています。
彼らは、目下の交渉の場では最高6.5パーセントの昇給を要求しています。
しかし会社側は、昇給の要求に対しては、目下の会社の業績をもって答えるしかないと語っています。
現在のドイツのインフレ率は2%です。
労働組合の代表は、インフレ率を下回る昇給を受け入れることはできないと語っています。
1月21日月曜日に、全国のE.onの施設で無期限ストライキを始められるよう、現在準備を進めていると労働組合側が公表しました。
もしそうなれば、ドイツでは歴史上初めて、給与条件等に恵まれていた電力業界の労働者が大規模ストライキを行うことになります。
http://www.dw.de/eon-utility-workers-walk-out-for-higher-wages/a-16520107