ホーム » エッセイ » 安倍首相の政治生命を脅かすウイルスCovid-19《前編》
ダイヤモンドプリンセス対応失敗が明らかになった時点でオリンピック延期が決まっていたら、安倍首相の政治生命は終わっていたはず
東京2020の延期決定は、前例のない規模で経済的、政治的、物流上の難題を次々運んでくる
写真 : 新型コロナウイルスを克服できれば、五輪マークは1年後も東京にとどまることになる
モトコ・リッチ、ベン・ドゥーレイ / ニューヨークタイムズ 2020年3月25日
新型コロナウイルスのパンデミックのために東京オリンピックを来年の夏まで延期するという過去に例がない決定は、主催者側はなんとか避けたいと考えていた事態でしたが、大会の中止を求めていたアスリートや各国の代表チームは一安心といったところです。
しかし日本にとっては、世界最大のスポーツイベントの延期は他の国が直面していない経済的、政治的、物流上の難題をもたらすことになるでしょう。
オリンピックの聖火を1年間もどこに保管するのか。
いつ開催されるかわからない試合の観戦チケットを所有する、何万という企業や個人にどう説明をするのか。
日本政府が投資した1兆円以上の投資資金の回収は期待できるのかどうか。
さらに東京組織委員会は、3,500人のスタッフを改めて確保する必要があります。
彼らの多くはスポンサー、企業から出向してきており、この秋には本来の職場に戻る予定でしたが、今後さらに12か月間オリンピック準備に関わるよう改めて依頼しなければなりません。
ホテルは何千何万という人々に再予約してもらう必要があります。
オリンピック村をコンドミニアムに改造する予定だった不動産会社は、改修スケジュールを1年延期し、数千件に上る買い手との契約をやり直す必要があるかもしれません。
延期された大会をどう呼ぶのかということすら問題になります。
小池百合子東京知事と東京組織委員会の森喜朗会長は、ぎこちない様子で2021年に開催されてもオリンピックは東京2020と呼ばれることになると述べました。
これに対し、ソーシャルメディアには『東京2020:2.0』や『東京2020ラウンド2』といった提案や、遊び心にあふれたオリンピックロゴのアレンジなどが投稿されていました。
日本が数兆円に上る規模のオリンピックの取り組みを1年延長することになったことにより、安倍首相は現在の日本が抱え込んでいる手に負えないほど困難な課題とハードルの組み合わせを、自分なら制御できるということを国民に納得させる必要があります。
現在世界で爆発的感染拡大が続く新型コロナウイルスについては、これまでは日本では比較的感染者数が少なく済んできたものの、いつ爆発的感染拡大が起きてもおかしくない状態にあります。
安倍首相にはこの問題についても、日本を深刻な状況に陥らせることなく切り抜けさせる責任もあります
他のあらゆるスポーツイベントの中止が相次いだ後、24日になってやっと延期を宣言したことについては対応の遅れが指摘されていますが、少なくとも現在は安倍首相に自身の初動対応のミスから立ち直る時間を与えることになりました。
今年2月、横浜港沖で2週間にわたり隔離されたクルーズ船ダイヤモンドプリンセス船内でのコロナウイルスの感染が発生したことへの対応を誤ったとして、日本政府に非難が集まりました。
さらに中国国内で武漢を中心に爆発的に感染拡大が続いていた時期、中国からの旅行者に対し日本国内への入国禁止の措置を行うタイミングについて、あまりにも長く待ちすぎたのではないかという疑問も提起されました。
「日本がほんの数週間前、クルーズ船ダイヤモンドプリンセスへの対応について日本政府への非難が強まっていた段階で東京2020の延期が発表されていたら、安倍首相の政治生命は危なかったかもしれません。」
ワシントンにあるブルッキングス研究所の東アジア政策研究センターの共同責任者であるミレーヤ・ソリス氏がこう語りました。
「ダイヤモンドプリンセス船内での混乱を見て、オリンピックの開催が不可能になる、あるいは日本国民が危険にさらされるかもしれないという疑念が一気に高まったに違いありません。」
しかし全面中止を回避できたという事実により安倍首相は
「最悪の展開をうまく切り抜けたという評価を得ました。」
ソリス氏はこう指摘しました。
同じワシントンのシンクタンク、テネオ・インテリジェンスで日本政治を専門に担当するトビアス・ハリス氏は、来年までに世界が新型コロナウイルスの抑え込みに成功すれば、延期されたオリンピックは「安倍首相退任直前のグランド・フィナーレ」になる可能性があると語りました。
「世界中から人々が東京に集まることが現実になれば、日本にとって大きな意義のある出来事になります。2021年のオリンピックは『新型コロナウイルスのパンデミックの克服を象徴する祭典』となり、日本はその喜びを世界の人々に代わって表現する役割を担うことになるからです。」
しかし新型コロナウイルスの世界的感染拡大の状況は日々変化し、今日の真実は明日簡単にそうで亡くなる可能性があり、日本史上最長の任期を持つ安倍首相の運命もそれに伴って変化する可能性があります。
現在のところ日本は新型コロナウイルスの感染拡大をある程度抑え込むことに成功しており、大量の死者や医療現場の崩壊などの報告はなされていません。
日本は他の国々と比べウイルス検査の件数が少ないことに疑いを持ち、感染率が大幅に過小報告されている可能性があると警告する人々もいます。
こうした専門家は世界の中で突出して多い日本の高齢者の間で感染が拡大すれば、重態者や死者の数が劇的に増加することを懸念しています。
米国コロンビア大学で政治学を専攻するジェラルド・L.カーティス名誉教授は次のように述べています。
「安倍首相の政治家としての運が新型コロナウイルスCovid-19に対し、持ちこたえられるかどうかが大きな疑問です。」
安倍氏の今後について、カーティス教授は次のように述べています。
「安倍首相は今、ロシアン・ルーレットをしているようなものです。
彼は今後日本では爆発的感染拡大は発生せず、ウイルス検査件数が少ないことによって国民が事実を知らないまま終息することに賭けているのです。」
「運が尽きて日本で感染が拡大すれば、延期されたオリンピックが開催される頃、安倍氏はもう首相の座にはいないでしょう。」
《後編》に続く
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現在、自民党内から「新型コロナウイルス経済対策』として具体的に挙がっている提案は、できるだけ多くの国民救済など念頭にない安倍政治の本質を見事に物語るものです。
肉の配布とか観光クーポンの配布とか、日々の生活が脅かされている人々を『愚弄』しているとしか思えないものばかりです。
つまりは政治家(本当は政治屋ですが)としての立場を確立している自分の支持基盤だけを見て、実は日本国民や国の将来など何も考えてはいないのだ、ということを自ら暴露しています。
もともと自民党議員は自分が属する産業界、ひどいのになると血族親類の利害を国政の場に持ち込むために議員になったという人間が多数。
表向き口を開けば国を大切にする、国の将来を良いものにするなどという言葉が出てきますが、そんなものはそれこそバーチャルリアリティです。
こうした政治家が『多数派』をしめる国会の動勢については、私たち国民は何より警戒しなければならないはずのもの。
ところが、そこが『民度』というものなのでしょう。
自動車保険や生命保険の保障はしっかり考えても、政治の保障についてはきわめて鈍感です。
東京2020(2021?)より、カジノの誘致より、米国製兵器の大量購入より、まずは暮らしに困っている国民の救済を最優先せよ!
私たちはその声を挙げていかなければなりません。