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原発事故対策に、『市民の財産の保護』は含められるべきか?[ニューヨーク・タイムズ]

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新たな原子力発電所への規制、それはどうあるべきか

マシューL.ウォールド / ニューヨークタイムズ 9月11日


ほぼ40年間に渡り、米国原子力規制委員会(NRC)にとって、『NRCの基準によって米国市民の健康と安全は適切に守られている』という言葉は、便利な呪文でした。
しかし18か月前に起きた福島第一原発の3基の原子炉のメルトダウンは、NRCが採用している『健康被害は直接的なものに限る』とする条文を見直すべきではないか、との疑問を投げかけました。
これを受け11日火曜日、NRCは委員と外部の専門家による審理を3時間かけて行いました。

この問題提起は前任のグレゴリー・ヤッコ委員長が今年初めに行ったもので、現在の米国原子力規制条文には欠けている部分があることを、福島第一原発の事故が明らかにしたという考え方の下、この機会に条文の見直しを行うべきだとするものでした。
福島の事故ではこれまで、直ちに健康被害を起こす程多量の放射線被ばくをした一般市民はいませんでした。

しかし土地が汚染されたことにより、数万人が元いた場所に住むことができなくなり、今のところ帰還することも困難であることを、NRCの聴聞会で何人かが言及しました。
「福島第一原発の事故は、これまでは想定されていなかった事実が、事故後起こりうるという事を明らかにしました。それは土地の汚染です。」
ヤッコ氏に代わり、今年7月に新たにNRC委員長に就任したアリソン・マクファーレンがこう述べました。

広大な土地が汚染されることについて、半ば以上は原子力産業側に立って証言を行ってきたラルフ・アンダーソン氏は
「いかなる観点から見ても、一般市民が生活の場を奪われるなどという事は、容認できることではありません。」
と語りました。
一方でアンダーソン氏とNRCのメンバーは、福島のような事故が起きても、一般市民が被ばくしないようにする対策を行うことによって、同時に広大な土地が汚染されることを防ぐことが可能だとの立場をとっています。


これに対し、原子力産業界とNRCの規制の在り方に批判的立場をとる、憂慮する科学者同盟の原子力の専門家であるエドウィン・ライマン博士は、以下のように指摘します。
すなわち、NRCの判断は、住民が避難を始める前の短い時間に浴びる放射線量を前提としており、長期に渡る被ばくについての観点が欠落している、と。
ライマン博士は福島第一原発が事故直後に放出した放射性物質の量は、それほど巨大なものでは無いが、しかし長期に渡る放出により、周辺の環境に夥しいダメージを与えた、と指摘しました。

不動産の財産保護についてNRCの条文には明記されていないが、あらゆる場面においてそのことは考慮の対象となるはずだとNRCのメンバーが語りました。

マクファーレーン委員長は、原子力発電所の事故が引き起こす経済的損害の評価について、NRCはどこまで関与すべきなのか?と言う疑問を呈しました。
彼女はその例の一つとして、福島第一原発の事故が日本中の原子炉を停止に追い込み、各電力会社が発電手段の一つを失うに至ったことに言及しました。


環境保護局の専門家で、国立環境経済センターのアル・マックガーランド所長は、彼の部門が行った巨額の試算に基づき、以下のような指摘を行いました。
「事故による土地の汚染が明らかになれば、その周辺の汚染されていない不動産の評価も低下してしまうのです。」

いくつかの政府機関にあっては、一般市民の保護こそ義務付けられていますが、市民の経済的損失などの問題についてはなおざりになりがちです。
求められるのは費用対効果の判断程度です。
放射線被ばくを避けるだけでなく、もし市民の財産保護まで求められるようになれば、米国原子力規制員会は原子力産業界に対し、さらに金のかかる対策を求めなければなりません。

NRCは規則の改正が必要かどうか結論を出すことに、期限を定めませんでした。
しかしマクファーレン委員長はこの問題を優先課題の一つとしたため、年内に評決が行われる可能性があります。

委員会は、完全さを求めて様々なレベルで規則を書き直すことを検討しています。
原子力発電所の安全についての定義に変更があるとすれば、問題のひとつは、既存の原子炉も新しい原子炉同様、より厳しい安全基準が適用されるのかどうか、という点にあるのです。

http://green.blogs.nytimes.com/2012/09/11/addressing-a-gap-in-nuclear-regulation/
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今日19日、日本の原子力規制委員会が発足しました。
これからの日本の原子力政策の大本をおさえる働きをするだけに、今後のあり方を注視する必要があります。
すでに人選において多くの方から、疑問を突きつけられています。
その上その承認手続きにおいても、本来必要とされる国会の承認を経ずに首相権限で行うなど、姑息な手法が用いられました。

こうした原子力規制委員会に対し、私たちはどう対応すればいいでしょうか?
私は議論の中身の徹底公開を求めていくべきだと、考えます。
誰がどのような発言を行い、結論に至った経緯を確認する。
つまりは原子力行政を監視する原子力規制委員会を、国民全員で監視していく。

こうしたことを私たちは3.11以前、考える事が出来ませんでした。
テレビの国会中継を見て腹を立てても、何も変わりませんでした。
しかし今や私たちはフェイスブックやツイッターを手にしています。
「おかしい?!」と思ったら、フェイスブックやツイッターを通し、表現する事が可能になりました。
意見を交換する事が可能になりました。
国政のいちいちを監視し、情報交換し、大いに議論を盛り上げていきましょう。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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