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ハラハラしながらトランプの顔色をうかがうアベ・ジャパン《前編》懸念が深まる日米同盟の行方

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トランプはこれまでずっと東アジア地区において安倍首相の存在を無視する外交を展開し、最大の屈辱を与えてきた
自動車輸出にまで高額の関税をかけられてしまったら、アベ外交のぶざまさは忍耐の限度を超えてしまう

 

エコノミスト 2018年9月6日

広島からそう遠く無い場所にある岩国基地にある管制塔に登ると、海軍と言う言葉の日本式婉曲的表現である海上自衛隊とアメリカ海兵隊が共同所有する巨大施設を1峯することができます。
眼下にある滑走路からアメリカ海兵隊のF-35戦闘機が空に向かって舞い上がっていきます。
すぐ近くに見える格納庫にあるのは、最新鋭の水上機です。

 

これまでの10年間で岩国基地はみるみる大規模な施設になってきました。
アジア太平洋地区に展開する米空軍にとって最大拠点の1つであり、約5,000人の米軍兵士と一緒に約1,500人の日本人スタッフが働いています。

岩国基地は、日本国内にある米軍基地としては異例の日米両国が共同で使用する形をとっています。

 

岩国基地は日米間の安全保障関係がどのように強化されているかを表す存在である、この基地のアメリカ軍の最高幹部であるリチャード・フュスト大佐と日本側の最高幹部である森田義和大将が異口同音に語りました
岩国に配属されているアメリカ海兵隊員たちは、数年前と比べ自衛隊との共同訓練の頻度が高くなっていると語りました。

共同訓練が頻繁になっているのは日本国内の他の軍事拠点でも同様であり、戦闘パイロットはもちろん、サイバー攻撃を担当するデスクワークの自衛官・兵士もまた同じです。

かつての太平洋軍司令官で米国のシンクタンク・笹川平和財団のデニス・ブレア氏は、日米間の軍事的連携はこれまで以上に緊密になっていると語りました。

 

米軍による防衛協力をかつて無いほど必要だと考えている日本にとって、これは幸運なことです。

中国は現在もなお1930年代から1940年代にかけて日本が行った侵略行為に対する憤りを隠そうとせず、そのことが東シナ海の島々の領有権をめぐる紛争の一因となっています。

 

中国の軍事力は急速に増強されており、アジア地区における覇権国家としてアメリカに取って代わることを熱望しているようにも見えます。
一方、北朝鮮は日本全国のどこであっても核兵器攻撃ができる軍事力を持っています。

 

日本はロシアとの間では、第二次世界大戦を正式に終結されるための平和条約の調印を行っていません。
日本政府関係者は9月中旬に、シベリアでロシアと中国が大規模な軍事共同演習が行われることについて懸念を深めています。

さてその日米同盟ですが、ドナルド・トランプ大統領(冒頭の写真 : まるで使用人のような態度をとっている安倍首相の向かって右側の人物)一人のせいでこれまでにないほどのストレスにさらされています。
日本政府が心配しているのは、トランプ政権が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記と予告なく合意を形成し、米国の安全だけを確保し日本に対するミサイル攻撃の危険性が解消されないという事態です。

 

最近の北朝鮮の核開発問題をめぐる各国の首脳級の外交において、日本はほとんど蚊帳の外に置かれていると感じてきました。
事実、安倍首相の外交特別補佐を務める河井克行氏は、6月のシンガポールで開催されたトランプ・キム首脳会談について日本に警鐘を鳴らす出来事だったと語りました。
会談後、トランプ氏は韓国との合同軍事訓練の中止を発表し、朝鮮半島から米軍を撤収する考えを示しました。
「日本が新しい安全保障環境に入ったことは決定的となりました。」

 

この問題についてトランプはやりすぎだと考えている関係者はほとんどいませんが、同盟国に対するこれまでの米国の対応に常に疑問を呈し、日本の繁栄を許したのは世界経済秩序のあり方に問題があるというトランプの信念について、日米両国の関係者は憂慮していることを隠しません。
しかし彼らはまだ公然とその懸念を公のものにしたいとは思っていません。

例えば河野太郎外相は、安倍氏とトランプ氏の間の個人的な親密を指して、日米の同盟関係が「かつてないほど強いものになっている」と称賛しています。
そしてトランプがどの国の国家元首よりも日本の首相と多くの時間を共にしているとも語っています。

2月14日、トランプと安倍首相は北朝鮮問題を軸に電話で1時間以上会談しました。
河野氏はバレンタインデーでのこれだけ長い時間のチャットは、自分は妻とだってしたことがないと冗談交じりに語りました。

 

日本の一部の関係者は私的な見解だと断った上で、トランプがアメリカは同盟国を含む世界各国にいいとこ取りされてしまっている上、アメリカ軍が世界中に展開している現状にも憤慨していると解り、だいぶ狼狽したと語りました。
しかし日米関係に詳しい人間は、日本に駐留するの54,000人のアメリカ軍の任務は日本の防衛だけではなく、東アジア地区のアメリカの覇権を守るためであることをトランプが理解していないようだと語りました。

 

そして今、最も危険な暴風雨になろうとしているのが貿易問題です。
トランプ氏はアメリカの貿易赤字へのこだわりが強く、最大の相手国の一つが日本です。
2017年の対日貿易赤字は700億ドル近くに上りました(図表参照)。
トランプが望むのは農産物の輸入関税引き下げを日本に押しつけることです。

日本は目下抵抗しています。
日本側はトランプが貿易収支だけでなく、アメリカに対する日本への投資規模も検討材料とすべきだと主張しています。
日本企業はアメリカ国内で毎年380万台の自動車を生産していますが、その数は日本からアメリカへの輸出台数の2倍以上になります。

 

しかし、元太平洋軍司令官のブレア氏(バラク・オバマ大統領時代の国家情報機関長官)は、鉄鋼とアルミニウムの関税強化から日本が免除されなかったことは、次に来るはずの事態の「舞台稽古」のようなものだと語りました。
日本は中国とは異なり、トランプの世界の自由貿易体制に対する横暴に対しては耐え忍ぶだけで報復しないようにしています。
しかしもしアメリカが自動車に25%の関税を適用することになれば、本人も語っていますが安倍氏といえど何らかの対応をしないわけにはいかなくなるでしょう。

 

過去6年間で日本の対米自動車輸出は倍増し、400億ドルに達しています。
すでにトランプはこれまでずっと東アジア地区において安倍首相の存在を無視する外交を展開し、最大の屈辱を与えてきました。
その上自動車という重要な輸出品目にまで高額の関税をかけられることになったら、安倍首相のぶざまさは忍耐の限度を超えてしまうかもしれません。

 

《後編に続く》
https://www.economist.com/asia/2018/09/08/japan-is-worried-about-its-alliance-with-america

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このところ掲載記事の公開日時の設定に関して度々間違い、先に公開予定のまだ編集中のものが意図せず掲載されるミスを何度か繰り返しました。

ご覧の皆様にはご迷惑をおかけしていますが、ご容赦ください。

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