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福島第一原発事故・東京電力の役員に無罪判決・シリーズ2:世界のメディアはどう伝えたか?!《米国CNN》

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所要時間 約 12分

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結審した刑事裁判、しかし福島における何かが終わったわけではない
国会事故調査委員会の精密な調査報告書を無視し、権力の側に都合の良い判決を下した東京地裁・永渕健一裁判長
日本の行政も司法も東京電力の役員に対し、説明責任を果たすよう求めることすらしていない

               

写真 : 福島第一原子力発電所の原子炉3号機の外観

              

ジェームズ・グリフィス / CNN 2019年9月19日

                

2011年の福島第一原発事故をめぐっての唯一の刑事裁判において被告である東京電力の役員に無罪が言い渡され、避難生活を余儀なくされた何千何万という家族の希望を吹き飛ばしました。
彼らは3基の原子炉がメルトダウンした事故によって東日本の広域に降り注いだ放射性物質により、今後何十年もの間故郷で暮らすことができなくなった人々です。

               

東京地方裁判所は福島第一原子力発電所を運営していた東京電力の元会長と元副社長2人に無罪判決を言い渡したとNHKが伝えました。
彼ら3人は必要な安全対策を施すことを怠った過失を問われていましたが、全員が無罪とされました。

                  

勝又恒久前会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長は、災害を合理的に予見することはできず、従って緊急避難を強いられたことにより44人の入院患者が死亡したことを含め、福島第一原発の事故がもたらした様々な結果についても責任を負う必要はないと結論づけたのです。
過去東京地方検察庁は東京電力の役員の起訴を拒否し、死亡した人々の家族と福島第一原発の周辺地区から避難を強いられた人々が協力して行った法的努力の後になって、やっと刑事事件として立件しました。

                  

             

東日本大震災の地震により発生した巨大津波が福島第一原発を襲ったことにより発生した巨大災害の事故収束・廃炉作業には数十年の歳月と数十兆円の費用がかかると予想されています。
その原因を作った原子炉のメルトダウンからすでに8年が経過しましたが、いまだに何万人もの人々が避難生活を続けています。

              

9月、日本政府当局は破壊された原子炉炉心の冷却を続けるために注ぎ込まれた結果生じた100万トン近い放射能汚染水の貯蔵容量が限界に達する恐れがあるため、海洋投棄しなければならない可能性があると語りました。
福島第一原発では毎日約300~400トンの高放射性汚染水が生成されます
現在この放射能汚染水は敷地内に急造された数百基のタンクに保管されていますが、事故収束作業が開始されてから数年間で何度も漏出事故を起こしました。

                 

「(放射能汚染水を)思い切って放出して希釈するしか方法がないと思っている。」
9月10日の記者会見で原田義昭前環境相はこう語りましたが、他の当局者は口々に最終決定はまだ行われていないと主張しました。
放射能汚染水を海洋投棄して希釈する可能性に日本政府が言及したことを受け、隣国の韓国では緊急事態の態勢に入りました。

                

                

さらに太平洋での希釈が果たして目論見通り行くかどうかは別にして、海洋汚染への懸念により日本の漁業に悪影響が及ぶ可能性があります。
福島第一原発事故の発生は当初、中国と米国西海岸でパニックを引き起こしましたが、カリフォルニアのワインの原料となるブドウから放射性物質が検出されました。
東京電力は以前、福島第一原発の事故収束作業には約40年の歳月と約5兆円の費用がかかると試算していました。

               

▽ 洪水のように押し寄せた悲劇

            

日本の歴史上最悪の原子力発電所事故の発端は海の上で始まりました。
東京の北東約370キロメートルの場所を震源とするマグニチュード9.1の地震が発生、日本の本州を東に約2メートル動かしてしまったほどの強烈なパワーが海上の波にそのまま伝わり、たちまちビルディングほどの高さの津波に変えてしまったのです。

               

日本の東北地方沿岸に到達するまでに、津波の高さは最大40メートルに達し、地上の車をあっという間に押し流し、建物を崩壊させ、道路も高速道路も寸断しました。
最初の地震発生から50分経たないうちに、まさにこうした事態から福島第一原発を守るはずだった高さ10メートルの防波堤を津波が乗り越えて始めたのです。

              

            

福島第一原発の施設内に大量の海水が流れ込み、建物の基礎部分を完全に水没させました。
そこにあったのが緊急時用の発電機でした。
このため福島第一原発は主電源が喪失してしまった後いかなるバックアップもないまま、重要な原子炉冷却システムも電力の供給を完全に絶たれてしまったのです。

              

原子炉の暴走が始まりました。
炉心の燃料棒が溶け始め、周辺地域に人間の致死量を遥かに超える放射能が漏れ始めました。

            

事故発生から16時間後、1基の原子炉の燃料棒はほぼ完全に溶け落ち、残りの2基の原子炉が同様の事態に陥るのは時間の問題でした。
1986年のチェルノブイリ原子力発電所の爆発事故以降の最悪となる原子炉メルトダウン事故が起きましたが、日本政府がメルトダウンの事実を認めるまでにはさらに88日を要しました。

               

数十万人の周辺住民が緊急避難を行いましたが、中には自分の家に永久に戻れなくなった人々もいました。

               

福島第一原子力発電所周辺地域の一部はゴーストタウン化し、東京電力の職員、政府の調査関係者、そして人間として最悪の悲劇を自分の目で確かめようとする外部の人々の姿しか見られなくなりました。

             

▽ 誰に本当の責任があるのか?

                 

東京電力の責任は、原子炉のメルトダウン以降の論争の最大の焦点でした。

             

                   

東京電力は終始一貫して東日本大震災は想定が可能な範囲を完全に超えた、カタストロフィであると主張し続けました。
東北地方太平洋沖地震は世界史上4番目に大きなものであり、日本史上最大規模の地震であり、これほどの規模の災害は全く想定できるものではなかったというのが東京電力が主張する立場です。

                 

しかし永久に故郷に戻れなくなった人を含め避難を強いられた人々は、東電側の主張は福島第一原発に関係する職員が責任を逃れることを目的にしたものだと怒りを募らせています。

              

事故発生後の東京電力の対応は、
メルトダウンの発表が遅れたこと
安全上様々な問題があったのにそれらを軽視したこと
浄化プロセス中に放射能汚染水の漏出事故を何度も起こしたこと
など、事件を注視していた人々に多くの攻撃材料を提供した事は間違いありません。

             

2012年に国会事故調査委員会が作成した報告書は、東京電力と日本の原子力規制当局が災害に備えるために講じた措置は「不十分」であり、危機への対応は「不適切」であったと結論づけました。

               

綿密な調査と検証を行った国会事故調査委員会は、福島第一原発事故についてきっかけとなったものは自然災害であっても、予見し対策を取ることができたはずなのにそれをしなかったための『人為的な』大災害であると指摘したのです。
事実、福島第一原発の事故について検証した数種の報告書の中で、東日本大震災の災害規模を予測することもそれに備えることも、誰にもできなかったと結論を出したのは東京電力の内部調査報告書筆だけでした。

              

「事故の直接的な原因はすべて、2011年3月11日以前に予測することは可能であった」
これが国会事故調査委員会の結論です。

                  

                

しかしこれだけ不正の証拠が数多く揃っているにもかかわらず、日本の行政と司法当局は東京電力の役員に説明責任を果たすよう求めようとはしていません。
検察庁は3人の役員の起訴を2度にわたって拒否しました。
今週判決が出た刑事裁判は、住民が抗議し検察審査会の手続きを経て初めて実現したものだったのです。

                

19日木曜日の判決により、福島に関する刑事訴訟は一旦結審しました。
しかし、100万トンもの放射能汚染水が福島第一原発の敷地内に溜まり続け、事故現場には溶け落ちた燃料棒がそのまま残っています。
巨大事故の亡霊はこれから何十年もの間日本に取り憑いたまま、人々を苦しめることになるでしょう。

             

https://edition.cnn.com/2019/09/19/asia/japan-fukushima-trial-intl-hnk/index.html

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唐突ですが、もしこの裁判長が太平洋戦争後の東京裁判を担当していたら、A級戦犯とされた人間たちもすべて無罪にしてしまっただろうな…ふとそんな考えが頭をよぎりました。

「予見不可能」「当時の基準では違法とは言えない」等々

張作霖の爆殺を始めとする関東軍の暴走や南京大虐殺、盧溝橋事件の偶発的衝突やバターン死の行進など、すべて「予見不可能」「当時の基準では違法とは言えない」と判断されれば、戦争犯罪などというものも成立しなくなります。

しかし東京裁判では『人類の普遍の原理』の考え方が取られた結果、捕虜や市民の大量死を犯罪と断じたのだと思います。

                     

私個人は今回の東京地裁の判決は『人類の普遍の原理』という立場から俯瞰すれば、許しがたい判断だと思っています。

現在の日本はその異常さが日常的に見られるようになった、という危機感を一人でも多くの日本人が共有すべきではないでしょうか。

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