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【 国民の信任を得ることなく、大勝した自民 】

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所要時間 約 13分

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軍事支出を増大させ、平和憲法を改正すること、本当にそれが日本人の望み?!

チコ・ハーラン / ワシントンポスト 12月16日

2011年3月15日付のワシントンポスト

2011年3月15日付のワシントンポスト


12月16日日曜日、日本の有権者は政権を再び自民党の手に渡しました。
第二次世界大戦の終了から2009年まで、途切れることなく日本の政権の座に座り続けた大政党の自民党の政権奪還はまた、これまで政権担当者の誰もが解決できなかった、大きな経済問題をも引き継ぐことになります。

投票が締め切られた後、衆議院議員選挙は現政権に対する国民の反発を、一層強調した結果となりました。
日本の公共放送であるNHKは、衆議院の定数は480ですが、自民党が前回118だった議席数を294にまで増やしたことを伝えました。
一方政権の座を追われることになった民主党は、選挙前の240から57にまで議席を減らし、景気を一層悪化させ、中国との領土紛争の処理を誤ったことに対する批判の大きさを物語りました。

この選挙結果により、国家主義者として知られ、2006年から2007年にかけ366日間一度首相を務めたことがある自民党総裁の安倍信三氏が、二度目の首相を務めることになります。
安倍氏は野田首相の代わりに首相に就任しますが、この20年で14度目の首相交代となります。

これ程頻繁に首相が交代してきた背景にあるものは、延々と続く政治抗争、そして高齢化が進み労働人口が縮小していく中、近代化された社会ではあっても世界でも最高水準の公的負債を抱え込んでいる状況には、簡単な解決の道など無いという事実です。

自民党は連立政権を組む公明党が31議席を得たため、衆院定数480の3分の2にあたる320議席に達することになります。この結果、憲法59条に基づき、民主党が多数を占める参院で否決された法案を衆院の再可決で成立させることが可能になり、自民党はいくつかの制約から解放されることになります。
16日深夜、民主党の大敗が決定的となり、野田首相は「厳しい結果に対する責任を取って」民主党の党首を辞任しました。

2009年に政権の座を降りたとき自民党は中道派でしたが、公共事業投資によるばらまき政策により農村部の支持を固める手法を長年用いてきました。
しかし安倍氏は、自民党にどんどん右寄りに舵を切らせる役割を果たし、今回の選挙でも『日本を取り戻す』というスローガンを掲げていました。
軍事支出を増大させ、平和憲法を改正することを優先事項に掲げる安倍氏の姿勢が国民の意向と一致しているのかどうか、2度目となる首相就任期間がそのことを明らかにするだろうと、多くの政治評論家が見ています。

安倍氏はまた、中国との紛争の原因になっている尖閣諸島に政府職員を常駐させたいと語っており、そうなれば中国側を激怒させることは必至であり、地域的な軍事衝突が発生した場合には日米の軍事同盟に基づき、アメリカ政府は日本側に立っての対応を迫られる可能性があります。

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安倍氏は首相就任後の最初の海外訪問先としてアメリカを訪れたいと語り、日米の関係改善に取り組む意向を表明しました。

自民党は16日地滑り的勝利を得ましたが、その支持率は20%台であり、これではとてものこと国民の信任を得たと言う事はできません。
数多くの小選挙区で自民党の候補者は多数の有権者の信任を得ることなく、当選者となりました。
12党が乱立しての選挙戦で、漁夫の利を得たのが自民党でした。
世論調査の結果は、2007年腸の病気を理由に首相を辞任したころと比較しても、それ程人気があるわけではないことを表しています。

「地滑り的勝利は、国民の圧倒的支持を得たことを意味してはいません。」
どの党派にも与(くみ)しない政治評論家の板垣英憲氏が語りました。
「自民党の幹部はこの点を心にとどめ置き、思い上がった態度をとらないよう注意すべきです。」

安倍氏が国民の大きな支持を得たいと考えるなら、論争の的となっている軍事問題は後回しにし、まずは国民が優先課題だと考えている経済問題の解決に焦点を合わせるべきだと、専門家は指摘します。
今回の選挙戦で安倍氏は、不動産市場と株式市場のバブルの崩壊により、20年以上も深刻な不況に落ち込んだままの経済問題に、演説時間の半分以上を費やしました。

安倍氏が唱える景気対策は、歳出削減を中心に据え、消費税増税について議会から承認を取り付けた緊縮財政派の野田首相とは対照的なものです。
安倍氏は大規模な財政出動を行う事を唱え、市場から歓迎されました。
日本をインフレに誘導することが彼の首相としての、最優先事項であると日曜日夜、強調しました。

安倍氏は現政権が目標としている1%を上回る、2%のインフレ目標を設定し、このために日銀に対しもっと積極的に紙幣増刷に踏み切るよう、必要なら無制限の金融緩和を行うように求めています。
安倍氏は日銀に国債の買取を命じることにより、その独立した権限を取り上げると脅した事すらあります。
安倍氏は金融緩和策により、建設事業に大規模な出費を行おうとしています。

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自民党は、これからの10年間に、現在の日本の国内総生産の40%に相当する約2兆3,800億ドル(約195兆円)を、地震、津波対策を中心とする公共事業に費やそうとしています。

この政策について専門家は、歳出が歳入を大幅に上回れば、インフレが天井知らずの規模で進行し、日本の公的負債が際限も無く膨らむ危険性があると指摘しています。
そうなれば日本の債務返済能力について、世界中の投資家の信頼を失うシナリオが現実になる可能性があります。

景気回復にのみ重点を置く政策は、また別の負担を国民に強いることになります。
昨年発生した福島第一原発の事故により国民の間に脱原発の機運が高まっていますが、重要な発電手段として原子力発電が見直されることです。
先に民主党政権は2040年までに原子力発電を廃止する方針を打ち出しました。
これに対し自民党はこの方針を廃止するだろうと、日本の共同通信社が伝えました。

http://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/opposition-party-wins-japanese-parliamentary-vote/2012/12/16/354b25e0-4780-11e2-ad54-580638ede391_story_1.html
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おおざっぱな言い方をすれば、日本の経済界、特に大企業が雇用や労働分配率を軽視しても利益を貯めこむことに腐心するのは、アメリカを中心とする、もっとはっきり言うならウォール街の金融資本に敵対的買収を仕掛けられないようにするためです。
経費を削り、利益を上げてできるだけ配当を行い、敵対的買収などの際に株主が株式の譲渡に応じないようにしなければなりません。

ウォール街などの外資により買収された企業の運命は、実に悲惨なもののようです。
一言で言えば、新たに企業の役員として収まり信じられないほど高額のサラリーを取った上で、搾り取れるだけ搾り取って外資に利益を移し、後は古雑巾を捨てるようにして去っていく。
折しもNHKの朝の連続テレビドラマで、大阪の老舗ホテルが外資に乗っ取られるエピソードが紹介されていましたが、そのあこぎを通り越した実際のやり口については、神谷秀樹氏著『強欲資本主義・ウォール街の自爆』(文春新書)を一度お読みになってみてください。

日本は世界有数の経済大国になった事により、好むと好まざるとに関わらずこうした舞台に乗ってしまったわけですが、まずは経済が優先という理由で原発の復活を目指す勢力は、現在のような厳しい世界の経済社会で日本が生き残るためには、原発のリスク、日本全国に核廃棄物があるという程度のリスクぐらいは覚悟してもらおう、という考えだと思います。
しかしそのリスクがどれ程恐ろしいものであるか、仙台市内に居て3.11と福島第一原発事故を見守り続けた私は、その事をとことん思い知らされました。

とにもかくにもまずは経済が優先という人々に対しては、原発の『非』経済性について徹底的に明らかにしていくしかないと思います。
幸いに、世界的に『原発の非経済性』が問題になっており、このことについて日本のメディアは取り上げずに『情報統制』に協力していますが、アメリカ、英国、ドイツなどのメディアは繰り返し取り上げています。
アメリカ最大の原子力企業のエクセロンの元会長( http://kobajun.biz/?p=2337 )や地球温暖化の問題への取り組みで知られるゴア元米国副大統領( ttp://kobajun.biz/?p=6615 )などが、原子力発電の『非経済性』について発言しています。

さらには、再生可能エネルギー開発への取り組みが、経済を活性化させているドイツやアメリカの事情。そして小規模な発電送電システムの方が災害にも強く、効率も良いこと。
こうした情報をどんどん日本国内に還流させる必要があります。

選挙結果を見て自分自身のモチベーションも低下傾向にある事は否めませんが、【星の金貨】もここでくじけるわけにはいきません。

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【 過酷な冬の到来に、苦しみばかりが募るシリア難民 】

AP通信 / アメリカNBCニュース 12月11日

就学年齢の子供たちは、満足に学校に通う事も出来ない

就学年齢の子供たちは、満足に学校に通う事も出来ない


残忍な行為が繰り返されるシリア国内を逃れた出た人々が暮らすこのキャンプに、過酷な冬の気候をしのぐことが出来る設備などはありません。
白いテントの下はぬかるんだ泥に埋まり、人々は一枚でも多く毛布を手に入れるため走り回らなければなりません。
咳をしたり、鼻水を流しっぱなしの子供たちが至る所に居ますが、薬の在庫は底を突き、ボランティアの医師の数も不足しています。

21カ月間続いたバシャール・アサド大統領に対する戦闘により、すでに300万人のシリア国民が難民となりました。
最新の予報では気温が低い上に降水量の多い冬になる可能性が高く、難民となった人々はその生存すら脅かされかねません。

トルコと国境を接するアトゥメ村難民キャンプにいる人々は、ここ数カ月間シリア政府軍が行った自国民に対する空爆をから、着の身着のままで逃げだしてきた人々であり、その数約12,000人です。

毛布と枕の配給に群がる難民キャンプの子供たち

毛布と枕の配給に群がる難民キャンプの子供たち


難民キャンプの子供たちの表情にも暗い影が見てとれる。

難民キャンプの子供たちの表情にも暗い影が見てとれる。


泥だらけの難民キャンプ。

泥だらけの難民キャンプ。


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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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