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【 福島第一原発緊急作業員たちのくらし -放射線、消耗、そして浴びせられる批判 】

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世界で最も厳しい環境の中で働く人々

ジャスティン・マッカリー / ザ・ガーディアン(英国) 3月6日

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「まるで悪者扱い…」人々の視線に悩む福島第一原発の緊急作業員たち

見えない放射線の恐怖に直面させられている被災地の人々は、福島第一原発で働く緊急作業員たちに対し、ともすれば『目に見える敵』としての視線を送る傾向がある、作業員たちのカウンセリングにあたる精神科医がこのように指摘しました。

「緊急作業員たちは放射線の被ばくに関し最も危険な場所で働いていますが、彼らは数十年を要する廃炉・放射能除去作業そのものの一部と見られています。」
防衛医科大学校精神科学講座講師の重村淳氏が、ガーディアンの取材に対しこう答えました。
「彼らは東京電力の一員とみなされ、そのことが批判の矢面に立たされている最大の理由になっています。彼等は東京電力の役員などではありませんし、事故について直接責任もありませんが、罪の意識に苛まれ、責任を感じています。」

「彼らはもっと尊敬されていいはずです、世界で最も厳しい環境の下で働いているのですから。」

廃炉・放射能除去作業が何十年もの歳月を要することに対する批判に加え、作業そのものの精神的苦痛も加わり、途中でやめていく作業員が後を絶たないと言われています。

さらには重要な局面を迎えているにもかかわらず、福島第一原発の現場には技術者、そして各種の専門家の数が不足しているのではないかという、東京電力の取り組み姿勢に対する批判もあります。

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何重もの下請けを経て採用されている緊急作業員たちは、防護マスクを着用したまま何日も働く不快な労働条件、ストレスの多い作業、そして他と比較して低すぎる賃金に不平を抱いています。

東京電力が昨年何人かを選んで調査したところ、70%を超える作業員の時給は840円をわずかに超える金額でしかありませんでした。
日本の建設現場で働く作業員の自給がおよそ1,500円程度であることを考えると、その賃金の低さは憂うべきものです。

小規模の下請け会社に雇用されている40代の作業員は、ロイター通信の取材にこう答えました。
「慢性的に胃が痛むようになりました。常にストレスがかかっている状況で働いているからです。仕事を終えて宿舎に戻ってすることといえば、翌日のことを考えて憂鬱になる事だけです。もっとましな扱いをされたいものです。」

さらに年齢が高い労働者は、福島第一原発に長年勤めてきた関係により、危険なレベルに放射線量が近づいていることが解ってはいても、その恐怖を抑え込んで働かざるを得なかったと主張していました。

「放射線というものには色もにおいもありません。」
福島第一原発の敷地の中で最も放射線量の高い場所で、がれきなどの片づけを請け負っている会社の小林宏茂さんがこう語りました。
「普通の場所で働いていると、人間はいつの間にかその環境に慣れていきます。それと似たようなことが、この現場で働いている人々の心にも起きています。」

数千人の緊急作業員が取り組む汚染除去作業ですが、違法な雇用状態、そして健康基準、安全基準規則が日常的に守られていないことがこれまで度々報告されてきました。

今月には、厚生労働省が63人の福島第一原発の緊急作業員が、個人記録に記載されている以上の被ばくをしていたことを明らかにしました。

昨年夏には朝日新聞が、複数の下請け会社が、作業員が身に着けている線量計に鉛のカバーを取り付け、被ばく線量をごまかしていたと報道しました。

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そして昨年末、146人の東京電力職員と21人の派遣労働者の被ばく線量が、5年間の限度量である100ミリシーベルトを上回る被ばくをしたと報告しました、
事故直後にはいったん年間250ミリシーベルトまで引き上げられた作業員の被ばく限度量は、9カ月経って年間50ミリシーベルトまで引き下げられました。

毎日働いている労働者のうち、約3,000人程はもはや自分たちの健康について無感覚になっているという指摘について、福島第一原発の管理部門の職員がその見解を否定しました。

「安全基準や健康基準がなおざりにされているという問題については、労働者たちがこの問題に向き合おうとしなくなったのが原因ではないと思います。あまりに長い時間同じ作業を繰り返してきたため、そしてこの場所の労働環境を当たり前のように考えるようになった事が原因なのではないでしょうか。」
これ以上放射性物質が海に流れ込まないよう、防護壁を建設している会社の担当部長である内田晴文氏がこう語りました。

※氏名の表記は、原文が英文のため不正確な場合がありますが、ご容赦ください。

http://www.guardian.co.uk/environment/2013/mar/06/fukushima-clean-up-radiation-public-criticism?INTCMP=SRCH
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個人的には、福島第一原発で被ばくの危険にさらされながら働いていらっしゃる作業員の方々には、感謝の思いがあるだけです。
誰が好き好んでー放射能の中で、以下の言葉に象徴されるような精神状態に追い込まれながら働きたいと思うでしょうか?
「仕事を終えて宿舎に戻ってすることといえば、翌日のことを考えて憂鬱になる事だけです。」

その方々の時給が900円に満たないというのは、どういうことなのでしょう?
福島第一原発の作業現場の多重下請けについては、アメリカやヨーロッパのニュースメディアはたびたび取り上げていますが、日本の新聞・テレビはここでもまた、見て見ぬ振りです。
そして実際に働いていらっしゃる方には申し訳ないのですが、福島第一原発の現場では専門家、技術者の割合が少ないことが、数々のトラブルが発生する原因のひとつを作っているという指摘もあります。

東京電力が「第一次下請け」に支払う作業員の時給は2,000円前後だといわれていますが、命がけで働く作業員の方々には、そのわずか4割しか渡っていないことになります。
6割が多重下請けの中に消えていっていることになります。
その中には政治的利権、そして反原発の人々を脅して回るあの黒い街宣車の取り分が含まれているに違いない、個人的にはそう確信しています。

だからこそ日本のニュースメディアは、この問題を避けて通るのでしょう。
聞いてもいいでしょうか?
ジャーナリストとしての良心をお持ちですか?

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戦場カメラマン、バート・ハーディ生誕100年写真展

ザ・ガーディアン(英国) 3月24日
(写真をクリックすれば、大きな画像をご覧いただけます)

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カメラマンのバート・ハーディが生きていれば、今年ちょうど100歳を迎えたことになります。
才能に恵まれた戦場カメラマンであった彼が、日常生活の中の何気ないシーンを撮り続けた一連のシリーズは、彼の作品の中で異彩を放っています。
彼の作品展は4月8日から5月23日まで、ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーデ開催予定です。

1948年グラスゴー(写真上)。1951年バーギンガム(写真下・以下同じ。登場する地名はすべてイギリス国内。)
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1948年レスター。
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1942年5月23日、出生する兵士を見送る人々。ロンドン、パディントン駅。
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1954年、しゃれた身なりの闇屋たち。
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1951年、ブラックプール。
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1953年、ロンドン、ピカデリー地区のボタン店。
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母親が疎開を認めなかったため、写真の少女ヘレン・ブッシュはドイツ軍の空襲が続くロンドン市内に留まっていました。フランス人牧師が、空襲で破壊された家屋から衣類を回収する作業を、彼女が手伝っているところです。1943年ロンドン、イーストエンド。
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