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【 福島第一原発の事故収束作業に、直接介入せざるを得なくなった日本政府 】《前篇》

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所要時間 約 11分

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安倍首相は、日本の原子力政策推進の熱心な擁護者
廃炉作業の期間を40年、費用を1兆円と試算したことが誤りである事を事実上認めた
2年半、福島第一原発の現場をかき回してきただけの東京電力を退場させ、正しい取り組みを行う以外の選択肢はもう無い

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 8月7日

汚染水タンク03
まず最初はネズミが間に合わせの冷却装置のむき出しの配線をかじり、メルトダウンした核燃料を再び暴走させないために不可欠な、冷却装置に電気を送るための電源を停電させました。
そして次は、莫大な量の汚染水を一時的に保管するため急造された貯蔵施設から、その汚染水が漏れ出しました。

そして今度はほとばしり出る放射能汚染水がそれを遮るための防壁を乗り越え、大量に海洋中へと流れ出していることが明らかになりました。

最新のこの問題についての規模が明らかになり、7日水曜日国内での支持率の高い安倍晋三首相はその閣僚に対し、2011年世界史上2番目に最悪となる原子力発電所事故を起こした福島第一原発の事故収束のため、日本政府が直接対策に乗り出すよう指示しました。

日本の原子力政策の熱心な擁護者である安倍首相は、現在停止中の原子炉をできるだけ多く再稼働させるという彼の原子力発電推進策を救い出すことを、彼の経済再生プランの柱のひとつとしています。
そのためには原子力発電に対する国民の信頼を再構築する必要があり、そのためには国が直接介入するのが最も効果的であるとの計算を働かせたようです。

安倍首相の原子力政策推進への目論見は、東京電力が福島第一原発で事故を起こした事だけでなく、その後2年半に渡り、何度も事態を悪化させるミスを犯し、そのためにいっそう危険な状態になってしまったことを繰り返し隠ぺいしてきたことを明らかにされてしまい、ことごとく邪魔をされてきました。

「この問題について、東京電力一社だけにすべての責任を負わせるわけにはいかない。」
事故発生以降いち早く重大問題化し、最早対応が不可能になりつつある汚染水処理の問題を討議するため召集された閣僚との話し合いの中で、安倍首相はこう語りました。
「我々は、国家レベルでこの問題に対処しなければならない。」

汚染水04
しかしあらゆる場所で放射性物質の漏出トラブルが続いている福島第一原発の、世界的にも前例のない作業の中で、日本政府が大きな役割を果たそうとすれば、東京電力同様に収束が不可能であることを露呈してしまう可能性もあり、安倍首相にとって政治的に大きな賭けとなる可能性があります。

多くの専門家は日本政府が直接介入する必要を認めたことについて、安倍政権発足当初、東京電力による福島第一原発の事故収束・廃炉作業の期間を40年、費用を1兆円と試算したことが誤りである事を事実上認めたことになると指摘しました。
政府関係者や原子力産業界との不適切な関係を清算できずにいる東京電力に、福島第一原発の事故収束・廃炉作業の主導権を握らせてきたことが、結局は危険を増す結果につながった重大な過失であったとの批判が数多く寄せられています。

東京電力は事故収束作業を成功裏に進めることによって名誉を挽回し、日本の実業界における指導的立場の企業として生き残るため、福島第一原発の現場にしがみつきました。

しかし東京電力は事故直後から繰り返し発生した福島第一原発の危機状況について常に過少報告を行い、被害の拡大を隠ぺいし、しばしば対応を誤って事態を悪化させるというパターンを繰り返し、結局は信頼を失い続けることになってしまったのです 。

事故発生直後、炉心が過熱して危険な状態に陥っていたにもかかわらず、東京電力は海水によって原子炉が使い物にならなくなってしまう事を恐れ、冷却のため注水することをためらいました。
また、3基の原子炉がメルトダウンした事実を、発生から2カ月間認めようとはしませんでした。

東電委員会
地下水による汚染水発生の問題では、海外の専門家をメンバーに加えた社内改革委員会のメンバーからすら
「自分がどんな行為を行っているのかまるで理解していない。計画的に物事を進めようというつもりもない。そして人々と環境を守ろうという意思も無い。」
と、対応の遅さを批判されました。
しかし同委員会は一方では、東京電力の福島第一原発における事故収束・廃炉作業について、相応の努力をしていると評価しました。
しかし外部の専門家や一部の監視機関は、状況が錯綜し、複雑な難しい作業を強いられる福島第一原発の事故現場で、東京電力に遂行能力があるのかどうか、疑問を突きつけています。

「今回日本政府が介入を決定したことにより、東京電力が事故収束作業において繰り返し誤りを犯し、正しい情報提供を行ってこなかったことを、実質的に認めたことになります。」
京都にある同志社大学の、科学技術政策を専門にする山口栄治教授がこのように語りました。

「2年半、福島第一原発の現場をかき回してきただけの東京電力を退場させ、正しい取り組みを行う以外の選択肢はもう無いのです。」

〈後篇に続く〉


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いずれ翻訳するつもりですが、同じテーマについて報道したアメリカNBCニュースでは、環境問題の特派員が
「ずらりと並んだ福島第一原発内の汚染水タンクは、東京電力の事故収束作業がきわめて不適切なものだった、そのことを象徴するもの」
と語っていました。

さすがにここにきて、海外のメディアも、東京電力と日本政府に対し、いらだちと怒りをあらわにしつつあります。
当然でしょう。

尚、この記事は以下に翻訳した第一報が速報として掲載された後、大幅に改訂され、現在の形になりました。
改訂により非常に読み応えのある記事になりました。
ご参考までに第一報も掲載いたしますが、上記本編をお読みいただけば十分かと思います。

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☆★ お盆期間の掲載について ★☆
8月14日(水)、16日(金)、18日(日)を休載日とさせていただきます。
ご迷惑をおかけいたしますが、よろしくお願いします。

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《第一報》【 日本政府、福島第一原発の汚染水問題の解決に、国としての取り組みを表明 】
果たして目的通り機能する「凍土遮水壁」を、作り上げることはできるのか?

ニューヨークタイムズ 8月7日

汚染水調査 1
8月7日水曜日、3基の原子炉がメルトダウンして以降、管理責任を持つ東京電力の度重なる過失により2年以上に渡り相次いで放射能漏れのトラブルをおこしている福島第一原発について、首相が日本政府として取り組みを開始するよう、指示を出しました。

最近明らかになった汚染水の太平洋への流れ込みについて「緊急の課題」と語った安倍晋三首相は、日本政府が福島第一原発の管理責任者である東京電力がこの問題を収束できるよう、国の予算を使う必要があると語りました。

この問題の重大性を示すものとして、経済産業省の担当者は、一日当たり300トンの放射能汚染水が福島第一原発の専用港内に流れ込んでいるものと思われると語りました。

先週日本の原子力規制委員会は、東京電力が6月に築いた『化学防護壁』が汚染水の漏出を止めることに失敗し、現在汚染された地下水がこの防護壁を乗り越えて太平洋にがれ混んでいるものとみられるとの見解を明らかにしました。

最新の汚染水問題は、今年に入り高濃度汚染水の漏出トラブル、ネズミが配電盤に入り込んだことによる停電トラブルが立て続けに発生した後、明らかになりました。
「この問題について、東京電力一社だけにすべての責任を負わせるわけにはいかない。」
官僚との話し合いの中で、安倍首相はこう語りました。
「我々は、国家レベルでこの問題に対処しなければならない。」

安倍首相自身は具体的にどのような対策を取るのか明言しませんでしたが、原子力発電政策を推進してきた経済産業省の官僚は地方の報道機関に対し、政府は汚染された地域の地下を凍らせ、地下水が流れ込まないようにする対策に、国が400億円の財政援助を行うことになるだろうと語りました。
この計画は、汚染がひどい原子炉建屋付近の土壌を凍結させ、この部分に地下水が入り込まないようにし、その上で汚染水の海洋中への漏出を止めようというものです。
そのためには地下30メートル、幅約2.5キロに渡る氷壁を地中に作りだす必要かあります。

政府の官僚はこれまでこうした試みが実行されたことは無いと語り、東京電力一社ではこれ程大がかりで複雑な作業をやり遂げることは不可能である事を認めました。

「これほど大規模に土壌を凍結させ、水を遮蔽するための壁を築いたという先例は、これまで世界中のどこにもありませんでした。」
菅官房長官が会見で語りました。
「その実現を可能にするためには、国が介入せざるを得ません。」

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