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SEALDs【 日本の学生たちの抗議 : バリケードの前でも礼儀正しく!】[ECO]

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所要時間 約 9分

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防衛政策の根本的転換を進める政治への抗議に自ら立ち上がり、他の年代の人々に問題の深刻さを認識させた学生たち
右翼のブロガーや安倍政権に近い人間たちが流す悪意の虚報にも動ずることなく

エコノミスト 9月19日

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8月30日最大野党民主党の岡田克也党首が国会議事堂周辺でこの数年で最大規模となった市民による抗議集会の会場で演説を行っていましたが、その声はともすれば付近の別の集会から湧き上がるヒップホップのリズムに乗せたシュプレヒコールとドラムの音にかき消されそうになっていました。
声をあげていたのはSEALDs- Students Emergency Action for Liberal Democracy(シールズ -日本の自由で民主的な社会を守るための緊急アクション)です。

若さが輝く顔、流行のファッションを身にまといそれでいながら礼儀正しさを感じさせる彼らは、安倍首相が進める国策、中でも同盟国 - 特にアメリカ合衆国の軍隊が攻撃を受けた時には援護のための武力行使を可能にする安全保障関連法案に対し、ここ数ヶ月間抗議の声をぶつけることにエネルギーを費やしてきました。
すでにエコノミスト誌が伝えている通り、この一群の法案は9月連休前、国会を通過しました。

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この若者たちの抗議は、政治に対する若い世代の関心が先進国の中で著しく低い日本という国にあっては、目新しいものです。

もっとも近い国政選挙が行われたのは2014年12月でしたが、20代で投票を行い政治に多少とも関心を示したのはわずか3人に1人という割合でした。

日本においてこうした抗議活動を主に行うのは、比較的年齢の高い左派系の人々です。
しかしファッョナブルな若者たちによる路上の抗議がごく当たり前のように行われている様子は、これまでの日本では見られなかったものです。

「彼らは自分たちの主張が社会から取り残された人間のそれでないことを、危険思想でも変わった考えでもないことを自ら証明して見せたのです。」
テンプル大学のジェフ・キングストン教授がこう語りました。

学生たちは5月に集結を始め、現在は約1,000人のメンバーを数えます。
彼らは、ひときわ目立つトークショーの主役たちです。
女性リーダーのひとり、柴田まなさんには一団のファンの存在すら確認できます。

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もう一人のリーダーである奥田愛基さんは、9月15日に参議院において自説を述べる機会を提供されました。
彼は議場にふさわしくしようとしてその日の朝、スーツを購入しそれまでの茶髪を黒く染め直しました。
SEALDsの若者たちはウェブに精通し、コンビニエンスストアで安倍首相がが進める政策を揶揄し批判するための反アベ・ポスターを印刷するやりかたなど、抗議運動に新しい手法を持ち込みました。

SEALDsについて右翼のブロガーは、韓国人だとか中国のスパイだとか、さらにはもっと汚い悪罵を投げつけています。
阿部政権に近い人間たちの中には、SEALDsが日本共産党の青年部の指導下にあるという噂をまことしやかにささやきますが、いずれについても奥田氏は否定しています。

安倍首相の与党である自由民主党関係者の多くは来年夏に予定されている参議院選挙を前に、首相の低い支持率を懸念するようになりました。

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学生たちは、他のグループにも団結するよう呼びかけを行いました。

3児の母である28歳の西郷みなこさんは、SEALDsの学生たちの活動を目の当たりにした後の7月、母親たちの抗議グループを組織しました。
そしてその月のうちに約2,000人の母親たちが東京の渋谷で、安倍首相の安全保障関連法案に対する抗議デモを行いました。

国会周辺で抗議を行っている中には学術関係者のグループ、さらには安倍政権の連立与党である公明党の支持母体であり、本来なら平和主義を貫く仏教徒の団体である創価学会員たちの姿もあります。
彼らは安倍政権の安全保障関連法案の成立に、公明党が揺るぎない支持を与えていることに怒りを募らせています。

奥田氏は日本が少しずつではあっても「自分を表現し、自分自身の意見を言える文化が存在する」場所になりつつあると語りました。
そして安全保障関連法案については、何があっても一般市民は抗議を止めることはないと強調しました。

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1960年代と1970年代の学生運動では機動隊との衝突で死亡する学生もいましたが、奥田氏たちグループの礼儀正しさはまるで別世界から来たのかと思えるほど異なります。
最近の日本では抗議行動で道路を封鎖することは少々急進的だとみなされる可能性がありますが、メンバーの一人、本間信和さんが次のように語りました。
「だからこそ僕たちは礼儀正しく振る舞い、ゴミは家に持ち帰るようにしています。」

http://www.economist.com/news/asia/21665051-students-have-energised-protests-against-japans-new-security-laws-barricades-politely?zid=306&ah=1b164dbd43b0cb27ba0d4c3b12a5e227
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SEALDsの若者たちの抗議活動には賛否両論あるようですが、問題の存在を認識し、皆で議論しようという姿勢である以上は前向きに評価されるべきだと思っています。
民主主義の老舗とも言うべき国々はそれぞれに市民革命を経験しているのに対し(アメリカの場合は独立戦争)、日本はどうしても太平洋戦争後に『突如民主主義が持ち込まれた』観が否めません。
戦後生まれの私たちは日本には空気と同じように民主主義が存在すると考えがちです。

しかし民主主義は壊れやすいものです。
第二次世界大戦前、世界で初めて基本的人権の概念を成立させたと言われる民主国家であったドイツのワイマール共和国が、経済の破たんを機にナチスドイツに変身してしまったその過程は、実に巧妙狡猾に計算されたものでした。
日本の議事堂前の抗議活動は、市民の声というものが確実に存在するのだという事を改めて示したという点において、意義があると思います。

問題はそれを誰が、政治的な力としてまとめ上げるのかという点にあるのではないでしょうか?
来年に予定されている参院選の結果こそが重要だという指摘は正論だと思います。

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【 9月21日までの報道写真から 】

アメリカNBCニュース 9月21日
(掲載されている写真は、クリックすれば大きな画像をご覧いただけます)

DAY 1
9月21日キューバを訪問したフランシス 法王を出迎えるラウル ・カストロ大統領 。(写真上)
フィデル・カストロ、ラウル・カストロ兄弟のいるキューバには多くのカソリック信者がいますが、これまでローマ法王が訪問したことはありませんでした。

9月21日トルコの警察がイスタンブールからヨーロッパに向かう途中にあるエディルネへの道路を封鎖したため、行き場がなくなり路上で眠るシリア難民。(写真下・以下同じ)
新たな脱出ルートを求めてトルコ国内を移動していたシリア難民は、トルコ警察が築いたバリケードにより行く手を塞がれる形になりました。
難民たちははじめバスでの移動を試みましたが、警察がこれを阻止すると、今度は徒歩でヨーロッパに向かおうとしたため、トルコは完全封鎖に踏み切りました。
Day 2
9月21日旧ユーゴスラビアのマケドニア領内、水たまりに映るシリア難民たち。
当初ハンガリーからEU圏を目指した難民たちは、ハンガリー国境の封鎖により、今度はEUの最も新しいメンバーであるクロアチアを通って西ヨーロッパを目指すようになっています。
Day 3
9月21日『償いの日』の訪れを前に、地中海を見下ろす丘の上で祈りを捧げるユダヤ教徒ウルトラ・オーソドックスの男性。
Day 4
9月21日、アメリカ、フロリダ州のバル湾で降りしきる雨の中、パドルボードをする男性。
Day 6
http://www.nbcnews.com/news/photo/today-pictures-september-21-n431236

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