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【 日本の原子力政策、プルトニウム備蓄への異常なこだわり 】〈前篇〉

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所要時間 約 7分

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将来日本を再び、原子力政策を強力に推進する国家にする!核燃料サイクルはそのための橋頭堡
安倍政権のエネルギー政策の基本は、あくまでも原子力発電の継続・推進

田淵ひろ子 / ニューヨークタイムズ 4月9日

Japan Plutonium
兵器級プルトニウムの国内貯蔵をあきらめることに同意したちょうど数週後、核拡散の危険性が生じることになるにもかかわらず、日本はこれから数十年間に渡りプルトニウムの新たな生産を行う計画の推進を決定しました。
これから日本国内で生産されるプルトニウムは核兵器を作るのに最も適した形のものではなく、その分すぐに脅威になる訳ではありませんが、相応の知識と技術、そして時間があれば核兵器用のプルトニウムに生成することは可能になります。
すでに日本国内には相当量のプルトニウムが保管されていますが、新たな生産によりその備蓄量は一層の拡大を見ることになります。

「日本政府は数百キログラムのプルトニウムを米国に変換することは大々的に宣伝する一方、国内にそれ以上のプルトニウムの備蓄がある事については、きわめて軽い扱いしかしていません。
東日本大震災において内閣総理大臣補佐官(東北地方太平洋沖地震による災害及び原子力発電所事故対応担当)を務めた馬淵澄夫衆議院議員がこのように指摘しました。
「その対応は偽善者そのものです。」

Gorleben貯蔵所
国内に蓄積されているプルトニウムの使い道は、福島第一原発の事故発生後、批判が高まり続けている日本の核燃料サイクル計画です。
この核燃料サイクル計画は、早ければ11日金曜日にも安倍内閣によりその推進が承認されることになっています。
核燃料サイクル計画は使用済み核燃料の中からプルトニウムを抽出し、再び核燃料として利用しようとするものです。この計画を支持している人々は、天然資源にめぐまれない日本がエネルギー面における自立を達成出来る手段であると考えています。

しかしこの核燃料サイクル計画を行うには莫大な費用がかかる上、核兵器の拡散に反対する内外の専門家からも批判を浴びており、与党内部にも反対の声が多く、そのため核燃料サイクル計画の承認は繰り返し延期されてきた経緯があります。
核兵器不拡散を求める専門家が恐れるのは、核燃料サイクル計画によって生み出されたプルトニウムがテロリストによって盗み出される事態、あるいは攻撃目標そのものになってしまう事です。
同じ懸念を有するアメリカ政府は、これまでプルトニウムの備蓄を増やすことについては考え直すよう、静かではあっても強い要請を繰り返してきました。
日本国内の多くの原子炉で燃料として使われているウランと比べると、プルトニウムを核兵器に転用することははるかに容易です。

Reactor 4
福島第一原発の事故を体験したことで、原子力発電が持つ途方もない危険性に気づいた多くの日本人の間では、一度は民主党政権が原子力発電を段階的に廃止すると国民に約束したにもかかわらず、安倍政権がそれを覆し、さらには核燃料サイクル計画の実施にまで踏み込んだことは、将来日本において原子力政策が再び強力に推進されることになる、その兆候ではないかとの懸念が深まっています。
現在国内にある稼働が可能な日本の原子炉は、福島第一原発の事故後に導入された新しいより厳格になった安全基準の下、すべてが稼働を停止しています。

核燃料サイクル計画は、いったん事故を引き起こせばウラン燃料以上にな危険なプルトニウム混合燃料が国内の数基の原子炉で使用されることを意味します。

核燃料サイクルによって生産されるプルトニウムは単体では原子炉の燃料として使用する言葉出来ないため、ウランと混ぜ合わせたMOX燃料(モックスねんりょう - 混合酸化物燃料)に加工する必要があります。

日本がプルトニウムの備蓄を積み増そうとする計画は、領土問題や歴史認識の問題においてすでに関係が悪化している東アジア地区の近隣諸国の、現在の日本政府に対するいらだちや懸念を一層強めることにつながり、この地区の政治情勢の一層の不安定化につながっています。

原爆
4月に入って中国政府は日本が『平和利用をはるかに逸脱する規模で』プルトニウムとウランの備蓄を行っているとして批判しました。
言外には日本が核兵器の自前での開発を決定する場合に備え、日本がプルトニウムの備蓄を増やそうとしているとの批判の意味が込められています。

しかし安倍首相を始め日本の核燃料サイクル計画を支持する人々にとっては、計画の実施によりもたらされる危険よりも、日本の歴代の政治家指導者などが数十年思い描いてきたエネルギー資源の独立により得られるメリットの方が大いに価値があるのです。

安倍政権は現在はウラン燃料の入手は容易であり、価格も安価にとどまっているものの、将来入手が困難になったり価格が高騰した場合には、日本のエネルギー政策が脅かされることになると主張しています。
「日本は、核燃料サイクル計画を続けなければなりません。」
経済産業省で長年エネルギー政策に携わってきた元官僚の石川和男氏がこう語りました。
「日本のエネルギー安全保障は、核燃料サイクル計画にかかっているのです。」

しかし日本の核燃料サイクル計画については、世界中から懸念の声が上がっており、これから何十年もその状態が続くことになるのです。

〈 後篇につづく 〉


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手違いにより公開時刻が送れてしまった事をお詫び申し上げます。

この記事中に出てくる元官僚氏の発言には、核燃料サイクル計画について「福島第一原発の事故『程度の事』で、この計画をあきらめられるものか!」という本音が透けて見えるようです。
いつも思う事ですが、日本の官僚政治に欠けているもののひとつは、現実を見ながら軌道を修正していくという柔軟性です。
おそらくは日本の政策は一度計画が動き出すと、『官僚利権』『政治家利権』とも言うべきものがぞろぞろ発生するのだと思われます。
それが政策が持つべき現実性、方向性をどんどん狂わせていく。

六ヶ所村再処理工場の核燃料サイクル計画などはその最たるものではないでしょうか?

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