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【 憲法改定の宿願、周囲の顔色をうかがう安倍首相 】

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安部首相の保守的なイデオロギーの在り方に対する不信感が拡大、憲法第9条改定への支持率が低下

憲法が実現させた平和主義的な制約を取り払い、戦前同様の軍制に戻そうという動機が隠されている

 

ロイター  2017年6月4日

 

日本は来年、平和憲法の改定について是非を問う初の国民投票を行う可能性が出てきました。

日本にとって歴史的とも言える転換点となるこの試みに成功すれば、安倍首相の保守派としての積年の宿願が達成されることになりますが、一方では国論を二分し、さらには韓国、中国の懸念を増幅することにもなりかねません。

 

安部首相は今年5月、公布されて70周年を迎えた憲法記念日に戦争放棄を宣言している第9条について予期せぬ提案を行いました。

2020年までに憲法第9条にこれまでその存在について明確な定義の無かった日本の軍隊である自衛隊について、条項を追加し、国軍としての定義を明確にすることを提案したのです。

 

第9条を改めることは日本という国のあり方の基本に関わる問題です。

戦後の民主主義、平和主義を支持する人々は、憲法第9条がその基盤を作って来たと考えています。

しかし保守派の多くは第二次世界大戦(太平洋戦争)に敗北した結果、占領軍であったアメリカに押しつけられた屈辱的なものだと考えています。

もし憲法の改定が行なわれれば、日本の伝統的価値観の復活と軍事的制約を取り払う事を長年の課題としてきた保守タカ派の安倍首相にとっては明らかな勝利となります。

 

「いつか自分の実績について振り返ったときに、安部首相は『憲法を改正したのは私だ。』とはっきり言えるようにしたいのです。」

元防衛副大臣の長島昭久衆議院議員がこう語りました。

 

憲法第9条を改定する具体的手続きが開始されれば、太平洋戦争当時に日本軍による直接的被害を被りその記憶が風化していない中国と韓国が反発を強める可能性がありますが、アナリストは北朝鮮のミサイル開発プログラムについて日本と協力しなければならない韓国は日本に対する直接的非難を控える可能性があると語っています。

これに対し、中国外務省の報道官は次のようにコメントしました。

「歴史的事実に基づき国際的コミュニティ、とりわけアジアの近隣諸国は、日本国内で軍国主義的傾向が強まっていないかどうか、これまで常に注意深く観察を続けてきました。」

中国は日本が「平和憲法の精神を大切にする」選択をすることを願っていると語りました。

 

安部首相が提案しているのは、戦争を行う権利を放棄し、常設軍隊の保持を禁止している既存の条項に自衛隊を合法化する条項を加えることです。

こうした考え方は安倍首相が率いる自由民主党と連立を組む公明党が過去に提案したことがありますが、第9条の廃止そのものを目指す自民党案とは若干異なる内容になっています。

 

「安部首相は思い切ってハードルを下げました。」

船田元自由民主党憲法改正推進本部長代行がロイターの取材にこう答えました。

 

自民党は2017年末までに憲法改定案を立案した上で、来年には議会に提案・審議し、その年のうちに議決する可能性があります。

その後に続くのが国民投票であると船田氏が語りました。

 

日本政府はこれまで、実質的に自衛隊の存在を合法化するために憲法第9条の解釈の変更を繰り返してきました。

2015年には国を挙げて激論が続く中、国会は集団的自衛権の行使を容認し、同盟国が攻撃を受けている場合に軍事的援護を可能にする安全保障関連法案を可決成立させました。

これも憲法そのものの改定ではなく、解釈の変更に基づき別の法律を成立させるやり方が採られました。

日本の防衛政策の変更による影響については、いかなる問題も熱い議論の的となります。

 

安部首相による憲法の改定を支持する人々は、今回の提案は現実をそのまま憲法の条文に書き込むだけのことだと主張しています。

しかし批判的な立場の人びとは日本の自衛隊が海外での軍事行動に道を開くことになると懸念を表明しています。

憲法改定の正式な手続きを行うためには、衆参両院の3分の2以上の賛成、そして国民投票において有権者の過半数の承認を必要とします。

 

▽ 残された時間は限られている

 

憲法改定を辞ししている人々は、今こそそのタイミングだと意気込みます。

「私たちがしなければならないのは、わかりにくい憲法の解釈変更によってではなく、明確な形で自衛隊の存在を規定することです。」

安部首相の顧問を務める柴山正彦氏がこう語りました。

 

しかし、残された時間は限られています。

安部首相は2018年に終るはずだった自民党総裁としての任期をさらに3年延長し、3期続けてその地位に留まり続けることに成功しました。

しかし同じ年の後半に実施される衆議院議員選挙では、自民党と公明党の連立与党は現在占めている3分の2の議席を減らす可能性も充分にあり得ます。

 

日本の有権者の意見は割れています。

日本の公共テレビ放送NHKが2017年初めに行った世論調査では、憲法第9条を改定することに対する支持は2002年の30%から25%に低下しました。

一部の専門家はこの原因について、安部首相の保守的なイデオロギーの在り方に対する不信感が拡大していることが原因だと見ています。

 

日本経済新聞が5月下旬に行った世論調査では、現実を憲法の上に明確に書き込むだけであるという安部首相の提案に対する支持が51%に達し、提案が過半数の国民に受け入れられたかのようです。

しかし憲法改定に反対する人々は、安全保障関連法案を可決成立させたことにより安倍政権はすでに憲法第9条を骨抜きにしてしまっており、安部首相の提案を許せば自衛隊が海外での軍事活動を拡大する恐れがあると指摘しています。

「憲法第9条の規定にもかかわらず、自衛隊はすでにイギリスの国軍と変わらないくらい大規模なものになりました。」

上智大学の中野孝一教授がこう語りました。

「憲法改定の狙いの背後にあるのは、戦後実現した平和主義的な制約を取り払い、戦前同様の状態に戻そうという動機であることは明白です。それこそが間違いなく彼らが達成しようとしているものなのです。」

 

http://uk.reuters.com/article/uk-japan-constitution-idUKKBN18U0XD

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