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【 安倍政権下、教科書に突きつけられる『国家主義史観』の記載要求 】《後篇》[ニューヨークタイムズ]

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沖縄の小さな島の教育委員会の抵抗を、『見せしめ』に葬ろうとする安倍政権
「子どもたちに平和の尊さを伝えたい」そう願っての教科書採用は、イデオロギーの押しつけ、法律違反

マーティン・ファクラー / ニューヨークタイムズ 2013年12月28日

NYT Text Book
新しい教科書検定基準では『愛国心』の定義が漠然としているため、かえって広範囲にわたる改訂が行われる恐れがある事を教育関係者は懸念しています。

日本が第二次世界大戦中に行った行為に関する否定的な記述を減らすことは、国家主義者たちが長年画策し続けてきたことであり、安倍首相もそうした動きをバックアップしてきました。
教科書の改訂に反対する人々は、教科書の中身を書き換えるため、国家主義者たちが新たな手法を用い始めていることを確認したと語りました。
すなわちこれまで国家レベルで行おうとして失敗した改訂を、地方レベルに押しつけることです。

水牛が引く荷車とサンゴ礁に囲まれた静かで美しいラグーンで知られる竹富島は、こうした教科書をめぐる戦いの激戦地になってしまった観があります。

トラブルは2年前に始まりました。
隣り合う石垣島で新たに選出された自治体の首長が幹部の入れ替えを行った教育委員会が、中学3年に右翼系出版社の教科書を採用したのです。
この教科書には現在の日本国憲法は日本を弱体国家としておく目的のために、占領国によって押し付けられたものであるなどの記述が成されています。
竹富島の教育委員会はこの教育委員会の下にありますが、この教科書の内容があまりに歴史を歪曲するものだとして、その使用を拒絶しました。

戦後制定された日本国憲法を書き換えることは、安倍首相のライフワークです。

沖縄戦01
竹富島の教育委員会は今年は32名いる中学3年生用について、現在の教科書の使用継続を改めて提案しました。
この教科書は平和主義的な理念に基づく現在の憲法を、支持する立場をとっています。

当初日本政府はこの小さな教育委員会が挙げた声を無視しました。

しかし複数のアナリストが、昨年政権に返り咲いた安倍首相率いる自由民主党の保守派から選ばれた安倍政権の閣僚たちは、彼らが言うところの『極端に左傾化している』現在の教科書を修正させる取り組みの中で、竹富島の問題を『見せしめ』にする固い決意でいるようだと指摘しました。

これまで竹富島の教育委員会は、石垣島教育委員会の決定に従うようにとの日本政府の命令を拒否してきました。
町の教育長の嘉田森氏は、国家主義的な教科書では子供たちに自分たちが体験した過酷、そして残酷な戦争体験を伝えることが出来ないのだと語りました。

第二次世界大戦の終盤、激戦となった沖縄戦の時、日本兵にマラリア蚊でいっぱいのジャングルに避難することを強制され、竹富村の住民数百名が死亡しました。

沖縄戦03
「我々には、将来の世代に戦争の悲惨さについて教える義務があります。」
今年72歳の嘉手森氏がこう語りました。
嘉田森氏は当時の遊び仲間が、マラリアの熱で震えながら死んでいった様子を忘れることが出来ません。

安倍政権内でもとりわけ右翼的な閣僚たちが、これまで長い間続いてきた反軍国主義的感情に政治的な勝利を収めることの象徴として、沖縄の隅のこの小さな島に狙いを定めている、嘉田森氏と地元の教育関係者はそのように見ています。

これに対し自民党のメンバーは竹富島教育委員会が地区の決定に従わないのは、法律違反だと反論しています。
この事態は左翼系の教員組合によって引き起こされており、イデオロギーを強要するものだというのです。

自民党衆議院議員の義家弘介(よしいえひろゆき)氏が次のように語りました。
「これは軍国主義への回帰などではありません。アメリカ合衆国やその他の国では、愛国教育を行うのは当たり前の事です。」

沖縄戦04
各市長村長に学区内の状況に関する責任を負わせようと言提案は、竹富島を命令に従わせようとするさらなる試みであると、教育関係者は見ています。
しかしそこにはさらに大きな目的が隠されているという批判もあります。
地方の指導者の中に同調者を増やすことにより、これまでほとんど採用されることが無かった国家主義的な教科書を採用できるよう、途を開こうとしているのだとの批判も高まっています。

今回石垣島で採用が決まった育鵬社の教科書は、文部科学省によれば、中学校の社会・歴史の250万の教科書の中、わずか4%を供給しているに過ぎません。
これとは対照的に竹富島でも採用されている、平和主義的な考えに力点を置く東京書籍の教科書は、全国の半数以上の学校で使われています。

「保守主義者たちは竹富島の例を、他の場所においても育鵬社の教科書を採用させるための先例として、マニュアル化しようとしているのです。」
沖縄県教職員組合の小浜前組合長がこう語りました。

教育長の嘉田森氏は、日本政府の圧力に屈せず戦いつづけるには、竹富島はあまりに小さく、それだけの力も無いと語りました。
しかし一方ではこう誓っています、決して降参はしないと。

「私たちが子供たちに平和の尊さを教えることを、なぜ、日本政府は黙って見ていることが出来ないのでしょうか?」

〈 完 〉


  + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – + – +

「見せしめ」という言葉は、強権体質、恐怖政治について回る言葉です。
でなければ、暴力団組織などで頻繁に使われる言葉なのではないでしょうか?
それが国家の閣僚という立場の人間が、地方の小さな組織に対して「見せしめ」にする、と発言したことは、現政権の『性格』を端的に表していている、私はそう受け止めています。

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ほんとうの「今」を知りたくて、ニューヨークタイムズ、アメリカCNN、NBC、ガーディアン、ドイツ国際放送などのニュースを1日一本選んで翻訳・掲載しています。 趣味はゴルフ、絵を描くこと、クラシック音楽、Jazz、Rock&Pops、司馬遼太郎と山本周五郎と歴史書など。 @idonochawanという名前でツィートしてます。
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